今回はなろう版8章を1話で終わらせます。
あとライトの復讐心の話。
前回のあらすじ
アーヴッヴッヴ!2ヶ月後に干渉するアヴねえ!
Sideサーシャ 一人称
奈落。執務室。
ライト君と2人で公会議に行って来た。
もちろん観光するためじゃなくて、冒険者としての立場を利用した護衛としての入場だ。
途中でクローという王子が妨害してきたが、国王に問い合わせしたところ無断での行動とのこと。
それがバレたクローは逃亡し、そのあとは何もせず。
まあその国王は今回の公会議の議題である『巨塔の魔女について』の巨塔の魔女の息が掛かってたんだけど…。
国王は奈落の戦力と、今後の目標を嘘偽り無く伝えたら喜んで協力してくれた。
それで王女であるリリスが公会議に出席する事を許可するようにさせて、それで公会議で堂々と流れガン無視で『私が王女になるが、賛成意見は?』と大声で出した。
事情を知らなかったらただの狂人だが、それで傀儡化してしまった国家2つと協力関係にある国家(ドワーフ国)が賛成してしまったのを見れば、まあ策略だって分かる。
そこにはライト君の復讐相手であるディアブロもいたし、情報はかなり得られただろう。
今回の件で
魔神国マスターはもうすでに亡命してるミキがいるからあまり意味は無いが、一応念のためだ。
そしてリリスが女王となってからエリー登場。
敵の目の前で敵の会議する奴はいないという事で公会議は中止、本当にこっちにとって都合の良い会議になった。
中止になったら途中の決定が全て無効になるとかも無く、リリスは女王になった。
一応こっちの方で国王は奈落の護衛1人を付けて隠居生活をしてもらうつもりだ。一応協力者だしね。
スパイの方は、ノノ以外ほぼ処刑になった。親類縁者は国外追放、ノノは処刑を免れ国外追放になった。
まあ情報抜かれるとか冗談じゃないからね…ノノは長年勤めて来た幼馴染みたいな存在だったからギリギリ許されたけども、普通だったら公開処刑でもおかしくない。
そんな感じで長い間準備を進めて来た公会議は終わった。
長い間と言っても、1ヶ月くらいかな?まあ作られてからもう直ぐ1年の奈落にとっては十分長いと言える。
「そんな公会議も終わり、魔人国から情報が入るようになったね〜」
「本当は竜人国側に潜らせたかったんだけど…護衛が少なすぎて隙がなかったんだよね。でも、今はディアブロの復讐に集中しよう!二つの事を同時に進めると碌なことにならないって言うしね!」
「特にライト君にとって大事な復讐だもんね…失敗できない以上は慎重にならなきゃね」
ヒロは正直私もライト君レベルの憎悪を持っているが、あいつがあまりにも慎重に動くせいで情報が本当に集まらない上に何をしようとしてるかも不明…『P・A』なる計画はなんなのか?それがどう影響を及ぼすのか?
魔人国マスターのミキにはわからない。
分かることといえば、魔人国マスターと竜人国マスターが分断された時期から考えて発足はそんな昔でもない事くらいだ。今でも動いてない事を考えると、かなり大規模な計画だと思われるけど…。
そもそもの復讐に対する私自身の感想としては、ガルーは正直何にも印象が残らない典型的すぎる獣人だったから、正直無関心寄りの人が拷問されてるだけって考えると…まあ、可哀想と思わなくはないかな?
ナーノは…正直すごい嫌いだからあそこまではしなくとも良いとは思うけど、まあ別に良いんじゃないかなって思う。
でもライト君にとってはヒロと同レベルの復讐対象。
何故そこまで燃えるのか分からないが、まあ裏切って自分殺そうとしてぬくぬくと贅沢生活しているのは許せないんだろう。少なくとも私は復讐理由にこれを選ぶ。
まあなんでこんな話をしたのかと言うと、結構大事な話をライト君とするからだ。
『復讐に対するモチベーションの違い』という大事な話を。
「ねえ、ライト君」
「ん、何?」
執務が進み、時計が4時を記した頃、私はライト君に問いかける。
「ライト君ってさ…どうしてそこまで復讐に燃えれるのかな、って…ヒロは正直ライト君と同じ気持ちだし、復讐したいって気持ちもすごい分かるけど…元『種族の集い』相手にどうしてそこまで燃えれるのかなって…」
「………僕の復讐を否定したい訳じゃないよね?」
ライト君がそう問いかける。
以前奈落のメイドが失言───といってもライト君が聞こえる範囲で「ライト様の復讐相手の首私が持って来れるのに…」的な発言をしただけだ───をした時にかなりの威圧感を出して「僕から復讐を取り上げたいのか?」とそんな感じの事を言っていた。
つまりライト君は復讐のためなら仲間も処分…というか取り上げられるのが本当に嫌なんだろう。そんな事されるならお前はもう仲間じゃない的な感じの事をしてしまう。
でも今のライト君は違う。単純に、よりによって信じている家族の私にまで復讐を否定されるのが怖いだけだ。
「そういう訳じゃないんだけど…ライト君がそこまで燃えてるのなら、実益をもたらしてくれるなら…まあ良いかなって思ってる。実際、ドワーフ国は国交を結べたし、獣人もガルー経由で傀儡にもできた。でも…私にも気持ちはあるから。たとえライト君にとっては憎い相手でも、私はそうじゃないかもしれない。復讐に対してのモチベーションが違うのよ…」
「………復讐に対する…モチベーション……」
そういうと、ライト君は黙ってしまった。
私としてはよく考えて欲しかったので、執務を進めながら返答を待つ。
長い長い長考の末に、私が書類の8割を処理し終えた時にライト君から返答が返って来た。
「じゃあ…サーシャさんは…ガルーとか、ナーノの事どう思ってるの?僕はアレじゃないと気が晴れないし…今更殺せと言われても…」
「可哀想だから殺せって訳じゃないわ、ライト君。私から見てガルーは本当に印象が薄くて、ほぼ無関心に近かったとしても…アレは少し可哀想だなって思うけど…ライト君がそこまでしたいのならまあ…うん…って感じ。ナーノは…別にあのままで良いんじゃないかな?個人的には嫌いだし、妖刀なんてものを作ったりしちゃったし…あの扱いは別に良いとは思う…けど」
私は本題を口に出す。
「どうしてライト君は仇でもないのにそこまで憎めるのかなあ…って、ずっと思ってたのよ。確かに仕事とはいえ騙して信頼させて殺そうとしたのは間違い無いけど、それで殺したいほど憎いってのは分かる。でも…そこまで長続きするのかな?したとしても、復讐心なんて下火になっちゃって…笑い話になっちゃうかもしれない。そんな事思ってたな〜って、なるかもしれない…でもライト君は、言ってしまえば仕事に忠実に従っただけの相手を、この世全ての仇かのように嫌ってる。なんでそこまで思えるの…?」
「……………………」
いつもなら『3年間のアレが全て虚飾で、僕を虫ケラのように殺そうとして来たから』と言うだろう。
本当はもっと長いけど、大体こんな感じの事を言うはずだ。
しかし、今は黙り込んでしまっている。
多分…反論の言葉が浮かんできては、直ぐに消えてしまうのだろう。
真っ当にそれを表現する言葉が見つからないから。
心の中にある復讐心に疑問を持ってしまったから。
言語化が出来なくなってしまっている。
そんな時、執務室のドアから3回ノックの音が聞こえた。
「失礼いたしますわ。ライト様に許可を頂きたいことが……」
一瞬で状況を把握したエリーは、そそくさと退出してそっ閉じしようとした。
「待って!」
そう止めたのは、意外なことにライト君だった。
エリーが退出しようとしたのは、恐らくライト君が自分と向き合っているからと判断したからだろう。
深刻な悩みなら私に相談すれば済む話だからだ。
しかし私がライト君と向き合って、その上で無言で向き合っている状況。
何かしらの相談をして悩みまくっていると判断したエリーは、2人の時間を増やそうと計らったんだろう。
「この状況は、ライト様1人で考えておられるから意味が発生しますわ。つまり、わたくしが入ると邪魔になりますわ…」
「そんな事はないんだ…ただ、僕のアイデンティティの一つが、崩れかけてて…」
「一大事じゃないですの!? ちょっとサーシャ様! 一体何を聞いたのですか!?」
「今後の復讐のために色々合わせた方が良いかな〜って思って…そうしたらこうなっちゃって…」
「何をやっていますの!?」
エリーは詳しくライト君から説明を受けた。
「つまり、元『種族の集い』をあそこまで苦しめる理由があるのかどうか分からなくなってしまったと…そういう事ですわね?」
頷いた。
「以前までのわたくしなら…ライト神様を傷付けた塵屑共はああなって当然、むしろもっとやれ…とでも言ったのでしょうが、1人の『エリー』として意見させて頂きますわね。仕事に私情を持ち込み、わざわざ対象をみすみす見逃しただけにあらず、普通に素行に問題あり…仕事をしただけとはいえ、復讐する動機を与えただけでなく、シンプルに無能。そんな無能に殺されかけたとなれば…殺したいと思うくらいが正当だと思いますわ。ですが…この世の地獄を味合わせるのは見合いませんわね。何故なら奴らは『ライト様の親しい縁者に手を掛けてないから』。つまり、仇ではないですわね。………これはあくまで、『エリー』という一個人としての意見であり、ライト様が復讐のために命令されるのであれば、喜んで実行致しましょう」
それを言っちゃうと私が『私情で仕事を放棄してパーティを裏切った奴』になっちゃうな…。
事実そうだけど、子供を守るためならしょうがなくない?
あんな子供を無惨に殺せるのかって言われたら、答えはNOだ。
冒険者時代の私も子供に化ける幽霊系のモンスターが大の苦手だった。
あまりにも心情的に攻撃しずらいからだ。
今でこそ大人びてるけど、あの頃は確かに純粋な少年だったんだ。
まあ私情でパーティ裏切ったのはヤバいと思うけど…。
「…………………」
また考え込んじゃった。
でも仕方ないか。
こんなに重要な事は、今日決めるべきじゃない。
幸いなことに、時間ならいくらでもある。
復讐の規模を小さくするのか。それとも今のままにするのか。
残念ながらみんなに決めてもらうなんて事はできない。
奈落の共通認識は、『ライト様をあんな目に合わせた塵共に地獄を見せてやろう』が共通認識であり、それがライト君から賜った共通の命令だからである。
そんな状態で復讐の規模を決める投票なんてすれば、“今のままでいい”で99.9%埋まるだろう。0.1%はエリーだ。
そんな共産主義的民主投票に意味はない。
だから、個人の意見が大事になってくる。
でも、最終的に選ぶのはライト君だ。
「別に、選択肢は2つじゃない。ライト君が強く思うのなら、何個でも選択肢が出来るはずよ。だから…長い時間をかけて、ゆっくり考えて。結論は今日出す必要はないわ」
「………そっか…なら、隙間の時間とかに考える事にして…とりあえず仕事しよう」
その言葉にそうだねと返しつつ、エリーの本来の入室目的を果たして、仕事を進める私たちなのだった……。
時間は無限にあると思っていた。しかし、実際にそれを考える余裕がある時間はもうない。
ライトに疑問を残す回でした。
ガチャから出た人にそんなこと言われても復讐心は揺らぎませんが、言われたのが『種族の集い』を裏切ってまで自分を守ってくれた、3年間の思い出が本物だった家族のような人だったからです。そして今家族が妹しかいない現在は、年上で頼れる家族がサーシャしかいないというのもあったからでしょう。
あと、ヒロについてはエリーもサーシャもライトも『絶対に地獄を見せてやる』で統一されてます。
家族(主君)の故郷滅ぼした仇だし当然。
すぐそこ(あと2週間)
次回、アヴニール襲来。