休日は書く時間いっぱいでいいですね。
前回のあらすじ
指パッチン(サノス)
Side サーシャ 1人称
奈落 玉座の間
私達は完全に敗北した。
あの
なす術はあった。格上を想定した作戦もあった。
しかしその全てが、効かなかった。
近くで嗚咽を漏らすライト君。
これで仲間を失うのは2回目だが、1回目とは訳が違う。
仲間は最後まで忠義を尽くしていた。最善を尽くし、最高のパフォーマンスで、最高の動きをしていた。
しかし結果は…完全なる敗北。
ライト君は…
「僕は…何も…出来なかった…あいつに…グングニールも、何も……」
その言葉に、「あなたは良くやった」なんて気休めの言葉を吐く気にはなれなかった。
私だって、アヴニールに傷を負わせる事は成功したけど…それでも、あいつの能力は何一つとして弱体化しなかった。ただただ、脅威を教えただけだった。
何も出来ていない私は…気休めの言葉でさえ、喋る権利は無いだろう。
もっとレベルが高ければ。
ヴィーナスエクスカリバーノヴァを一回撃っても死なないようになれたら。
もっと良い動きが出来たら…。
そんな意味のないたらればが、ずっと頭の中で渦巻いている。
「ナズナ…エリー…メイ…」
ライト君は失った仲間の名を呼ぶ。
その名を呼んでも…ただこの広すぎる部屋に反響するだけで、何も返ってこない。
普段なら…どこで呼んでも一瞬でやってくるのに。
「…………」
ただ私はそれを眺める事しか出来なかった。
数十分が経ち、ライト君は少し落ち着いた。
でも、悲しみが薄れれば…
「アヴニール!!あいつ、あいつ!仲間を、みんなを奪いやがって!僕が何をしたんだ!何もやってないだろう!?殺してやる!絶対に、絶対に全ての地獄を見せて絶望しか無い状態で殺してやる!」
怒りの感情が湧いてくる。
ライト君は、裏切られたあの時より怒りが強い。
ライト君の故郷が滅ぼされていたあの時のように。
レベル9999の本気の威圧感が空間を軋ませるが、私にはそれがとても悲しく思った。
ライト君は何かを失い続ける運命にあるのか、と。
「ライト君…私は…」
「サーシャさん…僕は、あいつを殺すためだったら何でもする。失った仲間達の分の苦しみを、あいつにぶつけるためだったら…僕は…世界を滅ぼす」
「……………」
何も言えない。
私の中にある負の感情の全てが、吐き出し先を喪失していた。
ライト君は本当に世界を滅ぼす気でアヴニールへの復讐を進めるだろう。
もう差別の撤廃とか、他の種族とか、そういうのを全部捨てて。
ただアヴニールを殺すためだけの道具としてしか使わない。
ライト君はきっと、故郷の村以外の場所全てを更地にして、ライト君とその家族しかいない世界を作ってしまう。
でも…私も止めることが出来ない。
止めるべき人が…肝心のブレーキが、そうするべきだと強く思っているから。
理不尽に大きな何かを失うなら、もういっそのこと世界なんて滅んでしまえばいい。
ライト君の怒りに同調するように、私の考えもまとまっていく。
この世界が喪失を強制すると言うのなら、完全に滅ぼして喪失を強制されない世界を作ろう。
こんな世界は─────
私の思考が一つになりかけたその瞬間。
「!? 誰だ!」
空間に入ったヒビは徐々に大きくなっていき、何かの門を開きそうな、そんなイメージを抱かせた。
襲撃者?こんな方法が取れる奴なんて、マスターかアヴニールくらいしかいない。
まさかアヴニールがまた来た?いや、早すぎる。
そんな思考を巡らせながら臨戦体制に入る。
コンディションは最悪。ライト君も、同レベルを相手取るにはあまりにも精神的に不調が激しい。
その上、全てのバフが切れて半分が黒く染まり、呪いに蝕まれてまともに動ける状態じゃない。
カードも全てあいつに奪われた。
打つ手無しかと覚悟を決めようとしたその時…。
白かと見間違うほどの肌。黒い手袋。フリルがついたゴスロリのような服。
そして特徴的な魔女帽子。そして呆れたような表情を浮かべ、こちらを見るその顔。
そう、ヒビから出て来たのは…マスターでもアヴニールでも無く、仲間であるエリーだったのだ!
「勝手に…殺すんじゃないですわ!!!まだまだ元気ですわよ!なんか浮遊感感じたと思ったらなんか真っ暗な場所に飛ばされて!絶対座標覚えて無かったら間違いなく終わってましたわ!」
「「エリー!!!」」
失ったと思った仲間が戻って来た!
負の感情は8割吹っ飛び、歓喜が私を包み込む。
全力で踏み込み、衝動的に全力で飛びついてしまったが、それはライト君も一緒のようで…。
「ふぐうお!?な、ちょっと…あなた達、特にライト様!あなたレベルなんだと思っていらっしゃいますの!?普通にめっちゃ痛いですわ!」
「ごめんごめん!戻って来たのが本当に嬉しくって!」
「大型犬か何かですの?はあ…全く…とにかく!わたくしエリーはここにいますわ!あの女の返却ごときで断ち切れる縁じゃないですわ!」
飛びつかれたエリーは踏ん張れずに吹っ飛び、地面に押し倒す形になる。
腕が無くなりかけてるライト君はエリーのお腹に頭を乗せていた。
私の方は…押し倒す形になった時にすぐに立ったから、気まずい事態になる事は回避された。
そんな事は気にしなくても良いかもしれないけど…。
私たちが落ち着いた後、ライト君の部屋に転移してエリーが治療しつつ、色々説明をする。
「まず、ライト様の容態ですが…治療不可ではないですわね。緊急用生命維持装置を使いますわ。そこまで侵食されてるとなると、新しく部位を生やすのも楽ではありませんもの」
「緊急用生命維持装置?そんなの作ってたの?」
「そういえば、前にエリーが緊急用の体制に備えた新施設創設許可とか言って僕に許可を取りに来てたよね…まさかそれ?」
「まさしくそれですわね。今使う事になるとは思いませんでしたが…」
その緊急用生命維持装置に入ったら3日は会話出来なくなるので今は説明をしてから治療を開始するらしい。
「まず、あのアヴニールの返却についてですが…」
「あいつの返却で、僕の仲間がエリー以外…」
「
「!?」
どういう事だ?
ライト君の恩恵はランダムに、滅んだ並行世界の中からカードを引く。
一度でもカードを全て返却されてしまったら、もう一度引き直す必要がある。
並行世界の数は無限大にあるので、当然のように同名のカードも存在する。
仮にもう一度引けたとしても…それは以前まであった物と同一なのか?
そう思っていたら、そういう意味じゃなかったようだ。
「取り戻すと言っても、もう一度引けという意味じゃありませんわ。アヴニールの持つ『泡沫』は、あくまでも
「でも…
「その点については、問題はありませんわ。現在に強く干渉は、本気を出せば出来るとアヴニール本人が言い切ってますから。問題は…『返却先』ですわ」
返却先…?
仲間達が返却されたのは…仲間が元々いた滅んだ平行世界…並行世界?
「あっ!!」
「気付きましたか。どうぞ」
「『泡沫』は現在と未来に干渉出来るけど…
「その通りですわ。サーシャ様。正確に言えば、現在は管轄外ですが…。でも、ライト様が目で言いたい事も伝わって来ます。それならどうして返却は実行されたのか?と…」
ライト君は頷いた。
返却先が干渉範囲外なら、エラーが出て何かの形で弾かれるはずだ。
それなのに返却は問題なく実行された。エリーは何故かこの世界に戻ってこれたけど、それ以外のみんなと物は全てしっかり返却された。カードに戻って。
「それは、
「……それが、どう仲間を取り戻す事に繋がるの?」
「はい。ここからが本題ですわ。かなり無茶をして並行世界に物を返却した結果、問題が発生します。それは…
「!! それなら…」
「そうですわ。今のアヴニールは、
…………はず、ですわ」
最後に自信なさげに付け加えたが、論理的に考えてこれ以外の可能性を考えられない。
さすがエリー。
「そういえば、返却された時時間が止まっていたはずだけど…エリーはどういうふうに感じたの?」
「意識が普通にありましたし、アヴニールの言葉も聞こえてましたわ。ライト様しか聞こえてなかったら、詰んでたかも知れませんわね…」
説明は終わった。
仲間は取り戻せる。アヴニールを倒せば、あるいは『泡沫』を弱体化させれば、
返却が定着しきれなかった仲間達が全員戻ってくる。
しかもそのアヴニールは並行世界への返却を維持するために弱体化している。
時間が経って全快状態のライト君は、今度こそ100%を解放するタイミングを間違えない。
バリアを破った瞬間に、絶死の槍がアヴニールに襲いかかる…。
「うん…まだ…取り戻せる。アヴニールは殺すけど、まだ絶望的じゃない。まだ、奪い切れてないんだ…」
ライト君は希望を噛み締めるように喜んだ。
表情も先ほどと異なり、安心感を感じている表情だ。
かくいう私も、今までの日常を取り戻せると気付いたから平常心を取り戻せている。
ライト君も冷静な思考を取り戻したようだ。
「みんな。仲間を取り戻そう。そしてそのためにまずは…巨塔の混乱をなんとかしよう。あそこは警備としてメイドを配置してたけど、それが居なくなったら混乱する。メイが居ないのが痛いけど、とりあえず…治療の前に、最低限ガチャを引く。巨塔街の失った人員を補充できる分だけガチャを引いて、代理指揮はエリーに任せる。住んでる人々の混乱は女神をやってるサーシャさんに任せる」
「「了解(ですわ)!」」
ここから奈落の反撃が始まる。
待ってろよアヴニール…お前は必ず殺す!
アヴニールの返却から4日後。
初日にライト君はガチャで人員を補充後、エリーによる最低限の治療を受けたのち、生命維持装置のカプセルの中に入っていった。治療には3日掛かったが、無事全快した。
その間に巨塔街では目の前から突然カードになってどこかに飛んでいったメイド達という事件を女神の言葉としてカバーストーリーを用意した。
女神直々に言う訳にはいかないので、女神より言葉を授かったという建前でミヤちゃん経由でカバーストーリーを広げる。
「皆さん!皆さんの目の前で、女神さまの御使が、何処かに立ち去ってしまわれたように見えたかも知れません!しかし違います!女神さまより言葉を賜わりましたので、どうか聞いてください!
『私の眷属達は、私の故郷にて起こった天変地異を抑えんとするがために私自身が呼び寄せました。この天変地異を解決した後に、またいつも通りの日常が帰ってくるでしょう』
と仰りました!」
と、なんか恥ずかしいが混乱を抑えるためにしょうがない事…いやでもなんか恥ずかしいな。
辞めるつもりは無いけど。
エリーはメイの仕事を時々見ていたからか、割とメイと変わらないくらいの的確な指揮をしていた。現状維持をするだけなら完全記憶があるエリーなら余裕だろう。最初は少しぎこちなかったけど。
後
あとは…。
「はあ!?スズちゃんが奪われたぁ!?ちょっと何やってんの!?ミキィが亡命した理由分かってるの!?」
こいつ…ミキだった。
こいつを抑えていたマジックアイテムはガチャ産だ。おまけに監視していたメイド達も居なくなった。
完全に解放されたレベル9999のミキは私たちに色々問い詰めるも、自分がスズの妻であるという幻覚を勝手に
見ているミキにスズを取り返せる可能性を説明したところ、喜んで協力すると言った。
「アヴニールゥ…ミキィの妻兼夫を奪いやがって…NTRは受け付けられないのよぉミキィは…!」
「スズは誰とも結婚してないけどね…?」
寝てから言ってほしいが、こんな奴と寝てほしくない。
スズは尻軽じゃないのだ。
とまあこんな感じに、足りない戦力を補ったり、混乱を鎮めたりした。
期限は1カ月以内。
そこまでに何処まで戦力とカードを補充出来るかが勝負だ。
もぬけの殻になった奈落を寂しく思いつつも、対アヴニールに備えて準備を進めるのだった…。
すぐそこにある脅威に気付かぬまま。
原 作 9 章 1 0 章 開 幕
分身ユメちゃんが消えて人種王国でも結構な騒ぎになってます。
そして
相手になるかどうかは…まあ、うん。
とりあえず言える事は今奈落は情報を集めてる場合じゃないって事ですかね。
緊急用生命維持装置について
エリーがデザインした生命維持装置とは名ばかりの治療カプセル。この中に入れると脳さえ生きてる限り何処からでも復活出来る。なお生きてる脳だけ入れると完全復活まで1000年はかかる模様。一応生命維持も出来る。基本は治療目的でしかないが。長期的に見れば究極級治療魔術より凄い。
「再生アンプルさえあれば…こんな物要りませんのに…」
(再生アンプルはこの装置の効果を液体を人体に注入するだけで実現出来るぞ!再生も二秒ちょっとで終わるぞ!詳しくはリンバスカンパニー4章をやろう!)
ミキが一時的に仲間になりました。
一応レベル9999だし…。スズに惚れてる以上奈落と敵対する理由ないし…。
今の奈落の総員
ライト(9999)
サーシャ(1000)
エリー(9999)
ミキ(9999)
(ここから戦力外)
ユメ(1)
メイド達(平均500)
以上。戦力不足が深刻すぎる…!
え?鬼島?
……(単行本勢なのでそこまで行ってない)
次回
脅威()