タイトルでもう分かると思いますが、今回関わるのは『死』です。
だって前回ほぼ死んだからね。
前回のあらすじ
エリーとサーシャが回復不可の槍で貫かれた
side サーシャ 1人称
常世と現世の境界線
気付けば私は、エリーと一緒に真っ暗な空間にいた。
そうとしか言えない。
ヴィーナスエクスカリバーノヴァを撃とうとしたら、私の心臓が槍で貫かれていた。
そして意識を失い、この場所で目覚める。
「死んだ…のか…?」
エリーはまだ起きていなかったので、揺らして起こす。
エリーは最初は困惑していたようだったが、すぐに状況を把握した。
状況を把握どころかその先に行っていた。
「……やられましたわね…おそらく…協力者…?」
「?? 協力者?どういう事?」
情けない事に、ヴィーナスエクスカリバーノヴァを連打するbotと化していた私にはアヴニールが何をしたいのかあまり理解できない。
アヴニールが道理存在とかいう奴で、かなり危ない橋を渡っている事は理解できたけど…。
それがどうして現在心臓を貫かれた瞬間にここに居るのかに繋がるのか…あ、いや、そういう事か!
「心臓を貫かれただけなら、ミキの蜂でなんとか出来る…なのに何故かここに居るという事は…」
「わたくしたちが死にかけた瞬間即座にここに引き摺り込んだ誰かがいる…という事ですわ」
そう、何も失った部位をどうにかするのは『超再生蜂』だけじゃない。
失った部位の機能を遠隔で代用できる『
「あいつ…この世の存在じゃないから、あの世の存在まで仲間に引き入れたのか?」
「アヴニールは…協力者がいるようには見えませんがね…見かけに寄らないという事でしょうか…」
とりあえずあいつに協力者が居るという事は、そいつをどうにかしないとここから脱出なんて出来ない。
現世の方じゃミキが『身体蜂』を使って身体を機能はさせているはずだから…脱出自体は簡単なはずだ。
「しかし…レベル1000で一回死んでるサーシャ様はともかく、わたくしまで一回あの世に来るとは思っていませんでしたわ…」
「あの世は見てないけどね…」
そんな事を言いつつも、エリーが探知をしようとする。
「あの世と言っても、魔力自体はあるようですわね。『
エリーが何かを捉えたと思った、その瞬間だった。
全ての『死』が、そこにあった。
病に蝕まれて死ぬ者が老いて死ぬ者が幼くして死ぬ者が生まれた瞬間に死ぬ者が刃に斬られて死ぬ者が槍に貫かれて死ぬ者が矢に射抜かれ死ぬ者が弾丸に穿たれ死ぬ者が炎に焼かれ死ぬ者が氷に閉ざされ死ぬ者が雷に打たれて死ぬ者が海に呑まれて死ぬ者が大地に押し潰されて死ぬ者が飢えに倒れ死ぬ者が渇きに朽ち死ぬ者が病に侵され死ぬ者が毒に蝕まれて死ぬ者が戦場に散る者が愛する者に殺される者が愛する者を守って死ぬ者が裏切られて死ぬ者が誰にも看取られず、誰にも悼まれず、誰の記憶にも残らず死ぬ者が希望を失って死ぬ者が希望を抱いたまま死ぬ者が夢を叶えられずに死ぬ者が夢を叶えた直後に死ぬ者が運命に定められて死ぬ者が運命に抗って死ぬ者が。
完全な平等において、そこに
『死』を束ね、その全てを担う存在。
いや、そこにいたというのは不適切だ。
何故なら、ここは『死』そのものであるからだ。
死した者が来る空間。ただ真っ暗なだけなのに、ここがあの世だと信じたのは。
『死』が、すぐそばにあったからだ。
私は自分の2度目を死を確信した。
目の前の存在は、そういう存在だ。
『死』がそこにあり、自分たちを見ているという事は、自分たちの死を悟り、迎えに来たんだろう。
そうに違いない。現世の方では『身体蜂』の適用が間に合わなくてそのまま死んだのかもしれない。
エリーはそんな顔をしていなかった。
死を確信した顔ではなく、心の奥底から、まるで自分の見えなかった地雷を踏まれたかのような、そんな嫌悪感に満ち溢れた表情をしていた。
どうして、『死』を前にそんな顔が出来るんだろう。
そんなんじゃまるで、これからも生きていくという確信があるみたいな───────
「正気に!戻りなさいな!」
パチーン。
そんな音が、私の頬から響いた。
いつの間にか目の前にいたエリーが、私をビンタしたのだ。
「『死』がそこにいるからと言って!あなたが完全に死んだ事は意味していませんわ!因果関係は何一つ変わっちゃいません!ただ、『死』の担い手がそこに居るだけです!当てられないでくださいまし!」
そうだ。私はアヴニールから何を知ったんだろう。
担い手。そう、こいつは…くたびれた初老の男みたいな見た目をしたこいつは…『死』の担い手。
それも、3つに別れたとか、まだ覚醒してないとかそんな事ない、完全なる
それが目の前に現れただけだ。
「……ありがとう、エリー。そうだよね。私は、まだ死んじゃいない。一度死んだんだから、分かってたはずだよね…」
完全に正気を取り戻した私は改めて『死』の担い手を観察する。
喪服を着ている全体的に細い印象を感じるこの男は、一枚の写真らしき物を持ってただそこに立っていた。
そして無表情。あらゆる感情が死んだかのようなその表情は、生命の死がこいつである事を無理やり理解させる。
そして、『死』が喋り始める。
「素晴らしい。エリーの力もあったとはいえ。
「不純物…アヴニールも言っていたな。私が転生者で不純物なら、あのマスターとかいう奴らも不純物じゃないかな?ミキは転生者だし、ダイゴとかいうのも転生者だ。私は…そいつらと何も変わらないのでは?」
私の質問に、『死』は意外そうな顔で答える。
「知らなかったのか?本来なら、
「……確かに、不自然だ…外はエルフ種なのに、魂が人間だったのか…?だから恩恵を得られたのか…」
「そうだ。だから、担い手達はお前を不純物と呼んだ。しかし世界にとって害があるわけでも無いからな、『
ワールドアーティスト…アヴニールの事か?
いや、そんな事を話している場合じゃない。今はアヴニールと戦闘をしているんだ。
私とエリーの『死』は『身体蜂』で振り払える。ただ心臓を穿たれただけだから。
「……悪いけど、今はそんな話をしている場合じゃないんだよね。『泡沫』。同じ担い手なら知ってるでしょう?」
「ああ。知っているさ。お前達がそいつと戦っていることも、分かってるさ。お前達は
突如として指名されたエリーは、嫌悪感を隠さない。
普段は冷静に思考して、目の前の存在に対してどう対処するのか考えてくれるのに。
どうしてエリーは、そんな顔をしているんだろうか…?
「そうですか、では、さっさとその用を終わらせてくださいな。さっきからあなたを見ていると鳥肌も嫌悪感も止まらないんですのよ…」
「用ってのは、エリー…お前に伝えたい事が…いや、
エリーという存在なら知らなければならない事…?
どういう事だ…?
エリーは普通の───ものすごいレアという事を除いて───無限ガチャから出てきた仲間のはずだ。
確かに、不自然なところもあったけど…アヴニールの返却の影響をあまり受けていなかったり、新魔法を1週間で生み出したり。
でもそれは『禁忌の魔女』であり全ての魔法を極めた存在であるからこそ、不自然には思うがまあ出来る範疇だろうとは思っていた。
「わたくしは…ライト様に召喚された1人の
エリーのその言葉に頷いた『死』は、伝えたい事を言う。
「
「………早く言ってくださいまし…いくら
エリーは、手を前に出そうとして下げる動作を繰り返している。
まるで目の前の存在がエリーにとっての絶対悪であるかのように、エリーは衝動が増している。
エリーの正体。
目の前の『死』が、エリーがただの『禁忌の魔女』ではない事を遠回しに言っている。
でも、エリーが『禁忌の魔女』ではなかったら、なんだと言うんだ…?
私には想像も付かない。
「ああ。では、伝えよう。お前の正体を。お前の真実を…」
エリーは今すぐにでも『死』を消滅させたい衝動を抑えるのに必死だ。*1
手が出かかって、魔法を全力で打ち込んでその姿を消し去ってやりたいというのが漏れ出している。
そんなエリーを無視して、しかしエリーではない何かを見ながら『死』は言った。
「結論から言おう。エリー、お前は…」
「『
私は一瞬、ピンと来なかった。
1週間でゾルトラークが開発された時も、「エリーは凄いんだなあ」程度にしか思わなかったし、『禁忌の魔女』という二つ名からも、別に正体が魔法のシステムそのものでも別に良いんじゃないか、って。
むしろ、なんでそう思わなかったんだろうという納得感が私の胸に落ちていた。
しかし、エリーはそうではない。
呆然とした顔をしている。
今までの衝動が消し飛び、代わりにアイデンティティが崩れ落ちているような表情。
それを見た瞬間、私は考えていた事の愚かさに気付いてしまった。
エリーは震える声で、答え合わせをしてしまう。
その賢さ故に、エリーは
「わたくしは…わたくしは…『無限ガチャ』によって呼ばれる前は…ただの意思の無いシステムにしか過ぎなかった…ということ…ですの?」
「でも…エリー。ライト君の無限ガチャによって人格が付与されたのなら…それは、ライト君に創られたと言っても過言じゃないの…?」
その可能性を完全に否定するように、『死』は言った。
「違うな。無限ガチャはただのきっかけに過ぎない。魔法システムの設計者は
エリーはその先を聞きたくないために、絶叫する。
絶対に聞いてはならない。
その先は、自分の意思の否定であり、アイデンティティの完全な崩壊だ。
「辞めて…!辞めてくださいまし!!!」
「適当。ただランダムに魔法関連のそれっぽい名前にして、それっぽい性格に設定して、性能は魔法のシステムそのもの。無限ガチャが与えた影響は、顕現するタイミングと忠誠心だけだな。この世界にある魔法システムの、人格構成クラスをピンポイントでキャッチしてカードにして召喚したようだが…どこを掴んでも一緒だったな、『E.R.M.S』。お前は…偽物だ」
魔法を上手く扱える?
魔法のシステムだから当然だ。
全ての魔法を極めた?
魔法のシステムだから当然だ。
オリジナル魔法を開発した?
魔法のシステムが、ただそのルール内で魔法を新たに生み出しただけに過ぎない。
自分の全ては、ただただ魔法のシステムに則って動いていた、ただの意思なき人形。
自分の意思が、自分の意思ではないという事に気付いてしまった絶望。
それに気付いてしまったエリーは、ただ絶望することしか出来ない。
私は仲間が精神的に死に向かっていくのを感じ、怒りのままに『死』に言った。
「それで?要件はそれだけ?仲間の事を偽物だとか、ただの魔法システムだとか…そんなに言いたい放題言われて、私が何もしないと思う?」
エリーは…奈落がまだ巨大な施設でもなく、まだ召喚した仲間がナズナしかいなかった頃に召喚した、奈落の古株にして、私たちの頼れる仲間。
その合理的な思考で物事を高速で解決して、私たちが出る幕を極端に減らす、万能の仕事人。
そして…何よりも、転生者である私を理解してくれて、受け入れてくれた人だ。
『死』を相手に何が出来るのかは分からないが…やられっぱなしは嫌だろう。
そう思い光の剣を構えようとしたが、魔力が上手く操作出来ない。
『死』の手元にある写真がうごめいているのが見えた。
「出来ない。ここは…
「くっ…!」
何も出来ない。こいつに一矢報いることすら出来ない。
こいつの知識を上回る事が出来ない。
こいつの技量を上回る事が出来ない。
どうすれば…!
「わたくしは…一体…何者なんですの…?」
隣に居るエリーが、呟くようにそう言った。
そうだ…『死』に一矢報いる事は不可能でも…。
「エリーを、説得する」
そうすれば、エリーは立ち直り…奈落の仲間としての自分を取り戻してくれるだろう。
エリーのアイデンティティは魔法だけでは無いことは、私が知っている。
「わたくしは…なんの意思も…ない…?」
「それは違うと思うよ、エリー!」
『死』は一旦安堵したかのような表情を見せて、すぐに無表情に戻った。
エリーの説得は、まだ始まったばかりだ。
エリーはただの魔法システムの人形じゃない、『本物』である事を証明するんだ!
ちなみに『死』が現れた瞬間、ここに引きずり込んだのは誰なのかを悟り、2人は『死』を振り切って脱出するのと、アヴニールの協力者である線を捨てた。
あと、アヴニールの返却の影響を受けていなかったのはエリー自身がそもそもこの世界出身だから、です。
並行世界に返却するのに、エリーが別に並行世界の存在じゃないならそりゃ返却されるはずないって話です。
しかし『カードで召喚された』という共通点は持ってたので、エリーという意識が生まれる前に居た場所に強制送還という形で返却されました。
アヴニールにとって2人が『死』と邂逅するのはガチで想定外。
アヴニールはエリーの正体自体は知っていたが、ライトを怒らせる事にはあまり関係しないと判断し、言わなかった。
それはそれとしてサーシャが反論を開始した時作者のサーシャの脳内音声が桜庭エマになった。
「それはおかしいよ!」
「ちょっと待って!」
「ビンを炙ると、炙りビンになるよ!」
憑依サーシャが言うかどうかなら、結構言いそう。
裏設定
『死』の
名前は『
権能は『生きているものを問答無用で殺す』。
簡単に言えば、直死の魔眼の超超超上位互換。
『死』の許可があれば死者の魂を現世に戻す事ができる。
『死』の協力があれば蘇生魔法の条件が超緩くなる。
たまにいる魂関連のモンスターは『死』の権能をほんの少し借りてるだけ。
魂龍は『死』の権能を0.001%程借りている。
領域を展開する事が可能であり、そこがこの世界における『あの世』となっている。
領域内限定で概念的なものも殺す事が可能になっている。
領域内限定でなら
見た目は一枚の真っ暗な写真。
殺したいものを思い浮かべると写真にも写り、いつでも殺す事が可能となる。
いつもはこの世の殺せる物全てが写っている。
生きているなら対象に制限はない。
死の概念がなくても、生きているという条件を満たしているなら権能で殺せる。
概念的な防御は流石に無理。領域内でしか概念防御は突破できない。
『死』本人は俗世に関わる気が全くないので、これが猛威を振るう事はない。
救世主ナズナ(創世級全部持ってる)はこれも持ってるってマジ…?
次回、エリーへの説得。
失敗したらエリー自害か奈落vs『E.R.M.S』戦が始まります。
自害ルートならただのBADENDですが、『E.R.M.S』戦になった場合、最低でも世界が滅び、最悪の場合記録者が死に、あまねく世界全てを破壊しようとします。そうなった場合、上位次元の神が全力で『E.R.M.S』を消去しにかかります。