ベッドの上で、私は天井を見上げる。
排斥者の人達の拠点は四人ではとても使いきれない程に大きいからと言われ、拠点の一室に私の私室を用意してくれた。
部屋は元々あった家具を整理してそのまま使っている。
不思議なことにこの拠点はアビドスの砂漠の真話したのん中だと言うのに水も電気もあり、生活するのに苦はない。
「ホシノちゃん、大丈夫かな………」
ベッドの上で後輩のホシノの事を思い、心配で胸が一杯になる。
ホシノと最後に話したのは口論の後だった。
私は毎回バカな事を言ってはホシノを困らせて、なんだかんだ言いながら一緒に頑張ってくれるホシノに甘え切っていたのだと今更ながら自覚する。
「ホシノちゃんなら、大丈夫だよね」
ざわつく胸の奥の感情を落ち着けるために自分に言い聞かせる。
(ホシノちゃんは強い。私なんかよりずっと。だから、せめて────
「あの黒服って人との約束は守らなきゃ」
今はただ、ホシノの身の安全を保証するために頑張らなければならない。
彼女は私の唯一の後輩で友人だ。
絶対に、失いたくない。
「でも、寂しいなぁ」
腕を目の上に置いて暗闇を作る。
胸が押し潰されそうなほどの寂しさに私は泣きそうになってしまう。
しばらくすると、強い眠気が私の意識を襲い、気づけば私は夢の中にいた。
夢の中の私は生徒会室の中にいて、いつも通りマイナスが頭に付き、大量のゼロが羅列された数字の数々が載った資料が三十センチ程積み重なっている。
私はふと目の前にある資料をつついてみた。
すると、バランスを崩した資料はバサバサと音を立てて崩れ落ちて行き、床に資料がばら撒かれる。
私は椅子から立ち上がってばら撒かれた資料の数々を一枚一枚手に取って行き、ある一枚のポスターが目に入った。
「これって………」
私がポスターを持ち上げたその時、生徒会室の扉がゆっくりと開き、その奥から一人の少女が入ってくる。
「帰りましたよ、先輩」
私の後輩、小鳥遊ホシノは持っていたショットガンを机に置いて身に付けていた装備を脱ぎ始めた。
「お帰り、ホシノちゃん」
私が微笑み掛けると、ホシノはため息を吐いて私に詰め寄って来る。
「先輩、最近備品の方が………何持っているんですか?
私はホシノの睨むような目にほんの一瞬だけ躊躇するが、気を取り直して満面の笑みを浮かべて後ろ手に隠したポスターを目の前に突き出す。
「ホシノちゃん見て見てー!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよー!この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がってたんだよねー。あ、このポスターは記念にあげる!」
私はポスターをホシノに渡す。
「えへへ、すっごく素敵でしょー?もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって──」
「奇跡なんて起きっこないですよ、先輩。そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!」
「は、はう……」
ホシノが私の声を遮って声を張り上げ、私は怖気付いてしまい言葉が出なくなる。
「こんな砂漠のド真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずないでしょう!?夢物語もいい加減にしてください!」
「うえぇ、だってホシノちゃーん……」
「……っ」
私はただ情けない声を上げ、私の態度にホシノは更に表情を険しくして顔を伏せる。
「そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだの何だの……。もっとしっかりしてください!あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!」
ホシノは私の渡したポスターを怒りに任せてビリビリと破り捨て、生徒会室から姿を消した。
「ホシノちゃん……」
私は去って行く後ろ姿に手を伸ばすが、それは虚しく空を握るだけ。
「私、いつの間に寝てたんだろう」
起き上がり、時計を見ると意識の途切れた頃から三時間ほど経っていた。
眦に浮かんだ涙を拭い、洗面台で顔を洗う。
顔を上げて鏡を見ると酷くやつれた自分の顔が映る。
「ひどい顔……」
苦笑して私はタオルで顔を拭き、新品の服に着替え、新品の装備を体に装着していく。
制服は綺麗に畳んで箱の中に片付け、私は部屋を出て会議室に向かう。
会議室にはすでにユメ以外の者達が席に座り、ユメを出迎えた。
「遅れました」
「気にするな。予定の時間より早いぐらいだぞ」
ユメにアスカが笑いかけ、ユメに席に座るように促す。
ユメが席に座ったことを確認次第、アカリが口を開く。
「揃ったね。最後に作戦を確認しようか」
そう言ってアカリは数刻前に立てた作戦の確認を淡々と行って、全ての確認を終えると排斥者達は各々の装備を持って起立する。
「さあ、出動だ」
ゲヘナ西区の商店街にて、ソレはただ一人でゲヘナ風紀委員の生徒達を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していた。
降り注ぐ銃弾はソレに傷を一つもつける事なく跳弾する。
飛んでくる戦車の砲撃はソレの片手で握り込まれてぐしゃぐしゃに潰れる。
ソレの握った拳は戦車をいとも容易く地に埋めた。
そして、ソレは溜め息を吐いて眼前の
「この程度ですの?たかだかこの程度で私を止められるとでも?さあ、もっとかかって来なさいゲヘナ風紀委員会の皆様?」
その啖呵に風紀委員の生徒達は慄き、足を竦ませる。
啖呵を切ったソレの名は栗浜アケミ。
後に七囚人と謳われる者であった。