ならもう俺が魔法少女になるしかなくね? 作:来宮 エリカ
放課後。
俺たちはこの街に存在する、一番大きな図書館へと向かって歩いていた。
なにか話をしよう、という気にもなれなかったが、そんな俺の気持ちなんか知らぬと言わんばかりに、影がふわふわと浮いては話しかけてくる。
「ユウキ」
「……なんだ?」
「三年前、ある組織があったことを覚えてるか?」
「三年前? ……いや、組織って、まさか──」
組織……そう言われると、一つだけ心当たりがある。
この世界には週に一度、怪物が現れる。
魔法少女はそれを討ち果たし、毎週世界を救っているのだが──当時、人間の身でありながら、怪物側につき、人類に敵対した組織が存在する。
もはや名前は覚えていない……いや、存在していないが、それをもし呼ぶとするならば──
「悪の組織ってやつだ」
そう、まさに『悪の組織』と言う奴だった。
「それならなくなってはないだろ。……まぁ、今となってはエリカと茶番を繰り広げるだけの組織だから、ある意味なくなった、とは言えるだろうけどさ」
「そうだ。その組織の名前、覚えているか?」
「いいや、全く。エリカに消されたんだろ」
「そう。消された。名前だけ、な。それを聞いて確信したよ──これは、お前に奴の現実改変が
俺はその言葉に思わず目を見開いて、影に視線を向ける。
それはありえない。
エリカの記憶改変は俺に対して通用はしない。
エリカの能力をずっと身近で浴び続けてきたからこそ、俺はエリカの能力を受け付けない状態になっていた。
だからこそ、あの時──
『ち、違うのっ……わ、わた、わたしっ、そんなはずじゃっ……』
……2年前。
エリカがあんなに取り乱すことはなかったはずだ。
「取り敢えず否定するのは、俺の考察を聞いてからにしてくれ」
「……わかった」
「まず奴の能力には、内部的要因と外部的要因の二つに分かれている」
「内部と、外部?」
「そうだ。まず内部的要因は、エリカが現実改変を直接行うもの……つまり、お前が効かないほうだな」
これはわかる。
俺は彼女から、直接的な現実改変を及ぼされることはない。
怪我をしたとしても治ることはないし、逆に現実改変を用いて直接、害されることもない。
……まぁ、現実改変で攻撃を飛ばしてきた時、その攻撃自体を消すことができないが。
「じゃあ外部は」
「これこそが問題でだな。別のものに対して現実改変を行った時、その
「と言うと?」
「
「……待て。それってつまり、この世から組織の名前が、なかったことになったから、俺は覚えていない……いや、そもそも知らない?」
「そう。お前は耐性があるから、
確かに……その部分に対して、俺は疑問を持つことはなかった。
なんとなく、忘れちゃったんだな……程度の認識でしかない。
忘れた、のではなく、そもそも存在していなかった、ということなのか。
それならば理解できるし、納得もできる。
だが一つだけ、気になることが。
「それなら、なんで名前を消したんだ? エリカが意味もなく名前を消すとは思えない」
「……そうだな。それは考えるべきだ」
考えるべき、とは言うが……。
手がかりも何もない以上、今は考えても無駄だろう。
心配すべきはやはり、奴らが敵となるかどうか、だ。
奴らが暴れていた当時、やつらは普通の人間であり、エリカを始めとして魔法少女たちには毎日のように戦いを繰り広げていた。
魔法少女となった今の俺ならば、そりゃ勝つことはできるだろう。
もし戦うのが当時の奴らのままならば、だけど。
俺が心配しているのは、エリカの現実改変の影響が奴らにどれだけ及ぼされているか、という話だ。
「……もし戦うってなって、勝てると思うか?」
「まぁ、場合によるとしか言えないな」
流石に不確定過ぎるようだ。
それならばそれ以上、何かを語ることもできないし、話すこともない。
「……はぁ。このまま魔法少女続けるべきなのか、本気で悩み始めたよ、俺は」
「一先ず続けるんだろう。ならばサポートはするさ」
「そうしてくれ。……よし、まずは──」
そう言って俺は立ち止まり見上げる。
そこは3階部分まである、非常に大きな建物。
先進的なデザインと、エリカの不条理により積み上がった異常な建物。
図書館。
「吉が出るか、凶が出るか──しばらく通わせてもらうとしようぜ」