ならもう俺が魔法少女になるしかなくね?   作:来宮 エリカ

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第二章∶雷轟と閃光の如く
《次の目的》


 あの廃ビルでの戦いから次の日。

 廃ビルで起きた数々の出来事はまるでなかったかのように、学校はいつも通りの日常を映していた。

 

 一つ変わったことがあるとすれば、エリカが学校に来なかったことだろうか。

 

 いつも休むのを嫌がっている彼女が、今日は自ら休んでいる。

 その意味がわからないほど俺も鈍い男ではない。

 

 

「昨日のアレが……俺のことだとバレたのか……?」

「それはない、少なくとも今はな」

 

 

 俺の独り言に返答をするのは、机の上に浮かんでいる黒い靄のようなもの。

 野球ボールぐらいのサイズのそれは、ふわふわと浮かんでは俺の周りを動き回っている。

 

 これは影だ。

 俺に懐中時計を押し付けた張本人。

 

 奴は昨日の夜、突然『制御権』の一部を取り戻した、とか言い出して、このような姿に変化すると同時に、途切れ途切れだった話し方から普通に話せるようになったのだ。

 

 

「なんでそう言える」

「もし仮にバレていたとすれば、休むと思うか?」

「……それはない」

「それにわかっているだろう。奴の監視能力も万能じゃないことぐらいは」

「万能じゃないのは、俺が現実改変に干渉されないからで……」

()()。仮にそうだとしても、奴一人で監視できるならば魔法少女たちをあのように配置する必要はない」

「……穴はあると?」

「現実改変は万能過ぎない、ということだ」

 

 

 影の言葉には、正直理解できる部分がある。

 瞬間移動ができる、だがそれは目に見えてる部分だけ。

 テレビに映った景色に移動できるし、本で見た景色に行くこともできる。

 

 逆に見えていない部分は不可能だ。

 

 

「そして奴は、執着心から他人にお前の監視を任せない」

「……どういうことだ」

「そのまんまだ、お前が奴に執着されてるのは理解してるだろう?」

 

 

 執着、か。

 いつからかエリカは俺に執着を見せるようになった。

 愛……愛にしては些か重すぎるそれは、俺の行動を段々と縛るようになっていた。

 

 縛るようになりはしたが、それでも最終的には俺の選択に委ねるようなものだ。

 

 だから完全に執着されてるとも言い難い。

 が、執着されてることには違いない。

 

 

「それはわかるが……それがどうして見られていないことになる?」

「つまり自分だけが見守っていたい、という欲望さ。そしてこれはヤツが遠隔からお前を見る能力を持ち合わせていないという証明にもなる」

「つまり俺はエリカにバレることなく、魔法少女に変身できる、と。随分と都合が良いな」

「都合良くしたんだろう。多少でもお前が自由になれることを、奴は望んでいる」

「……わからない。エリカは何したいんだ?」

「それは──」

 

 

 そこで影は言葉を止める。

 俺が影のことをじっと見つめても、影はそれ以上何も喋ろうとはしなかった。

 

 その反応は知らない、と言うよりもーー何かを隠そうとしている反応のようで。

 恐らく影は知っている……かもしれない。

 

 そしてそれは少なくとも、影にとっても()()()()()ことの可能性がある。

 

 ……俺は一体何を信じて、何をすればいいんだ。

 このまま魔法少女になって戦うのは、正しいことなのだろうか。

 

 それともこれを……。

 

『エリカを、止めてくれ……どうか、この物語に、終幕を……』

 

 昨日の魔法少女の言葉が脳裏をよぎる。

 少なくとも、今ここで辞めるのは……違う、そんな気がしてしまった。

 

 俺はポケットに手を突っ込んで、そこにある懐中時計を力強く握る。

 幾ら力を入れてもびくともしないそれに、普通のものでないと実感してしまう。

 

 

「……俺は、これからどうすればいい」

「戦うのか、魔法少女として」

「まずは……自分の目で見て決めようと思う」

 

 

 と、なれば。

 これからどうするかを決めなければならない。

 

 まず一つ、昨日あの魔法少女は手がかりを一つ残した。

 

『頼、む。止めて、くれ……次、は……としょ、かん──』

 

 この発言は考えずとも、次の手がかりが図書館にあることを指し示している。

 図書館……図書館か。

 一応この街にも一つだけデカい図書館はあるが、あそこに一体なんの手掛かりがあるというのか。

 

 

「図書館、か」

「昨日言っていたな」

「図書館に一体、何があるって言うんだ?」

「言ってみればわかるだろう。少なくとも、手掛かりを残したんだ、それには意味があるはずだ」

「……そうだな。行ってみるか」

 

 

 ……しかし。

 この影は相変わらず何なんだろうか。

 

 俺に様々な助言をくれるし、魔法少女に変身するための懐中時計──魔換変機なるものをくれたのもこいつだ。

 

 全ての始まりはこいつ、黒い影。

 こいつの手によって俺の戦いが始まったようなもの。

 

 

「なぁ」

「なんだ?」

「お前のこと、俺はなんて呼べばいい?」

「……ふむ……そうだな……名前か……」

 

 

 そう呟いた後、少し静まり返る。

 しばらく黒い影を見つめていたが、あっ、と何やら声を上げると、黒い影はふわふわ浮いてきて俺の顔の前に着くと告げる。

 

 

「俺のことはライサーと呼べ」

「ライサー? ……なんていうか、変な名前だな」

「まぁ……それは自覚してる。けどそのぐらいしか思いつかなくてな」

「思いつかないって……今考えたのかよ」

「……なんだ、悪いか」

「まぁ、呼びやすければ何でもいいけどさ」

 

 

 なんて言葉を交わしていると、次の授業を知らせるチャイムが鳴り響く。

 生徒たちが次から次へと席に座る中、黒い影は俺のカバンへと潜り込んでいった。

 

 そして鞄から顔(?)を覗かせて言う。

 

 

「それでは放課後、図書館だな」

 

 

 次の目的は図書館。

 そこで何かしらの手掛かりを見つける。

 

 エリカをどうにかするための手掛かりを。

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