フェイトの案内についていき、やがて一つの扉の前にたどり着く。フェイトが扉を叩き部屋にいるだろう人物に声を掛ける。
――コンコンコン
「母さんフェイトです。樹を連れてきました」
「そう、入ってもらって」
フェイトが扉を開き中に入っていく。
「失礼します」
部屋の正面にはフェイトによく似た黒髪の女性が座っていた。隣には女性の使い魔だろうか?猫耳と尻尾を備えた女性が立っていた。
「貴方が樹君ね」
「はい、そうです。初めましてフェイトのお母さん。……随分とお若いですね」
「あら、ありがと、お世辞でも嬉しいわ。自己紹介が遅れたわね。私はプレシア・テスタロッサ。フェイトの母親よ。そして私の横に居るのは」
「初めまして、プレシアの使い魔のリニスです。フェイトの家庭教師もしています」
二人が自己紹介をする。この人がプレシアで間違いないようだ。
「それで私を呼んだのはどんな御用ですか?」
「それなんだけど…フェイト、この子をお話ししたいから別の部屋で待ってて頂戴」
「え?でも……」
プレシアの言葉にフェイトは少し躊躇するが、
「お願い、この子をどうこうする訳ではないから」
「分かりました、アルフ行こう」
「樹、何かあったら叫びなよ、助けに来るからね!」
そう言って二人は部屋から出ていった。
*************
二人が出て行ったのを確認してからプレシアは話しだした。
「まず、フェイトと仲良くしてくてれありがとう、これからも良くしてあげて」
「いえ、こちらこそ。ただ今は敵対状態になってしまっていますが」
「あら、それはどういうこと?」
「フェイトは現在ジュエルシードとよばれるロストロギアを集めています」
私の答えにプレシアは疑問を持った。
「そのジュエルシードとはどういうものかしら?」
「簡単に言えば願望機です。ただし願いを歪んだ形で叶えてしまいます。例えば力が欲しいと願うと化物の姿になってしまうとかです」
「それはまた欠陥品のロストロギアね」
「プレシアさんはフェイトから何も聞いてなかったのですか?」
私の問いにプレシアが答える。
「フェイトが隠れてなにかしていた事は知っていたけど、まさかロストロギアを集めていたとは知らなかったわ」
「プレシア、まさかフェイトは貴女の体のことを知っていたんじゃ…?」
「それは後でフェイトに聞いてみましょう。それより貴方に聞きたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「この飲み物のことよ」
そう言ってプレシアが差し出したのは……以前私が作った野菜ジュース(特製)だった。
「あぁこれ私が作った野菜ジュースですね、これがどうかしましたか?」
「やはり貴方が作ったのね……お願いこの魔法薬の作り方を教えて!」
「ちょちょっと待ってください、魔法薬ってそんな風に作ってませんが」
「そんなはずはないわ。飲んだだけで体力の回復に魔力の増加、私だってこんなすごい魔法薬は作れないわ!」
プレシアはかなり興奮しているが、私としては片手間で作ったはっきり言えば本物の劣化品だ。
その事をプレシアに説明するが納得しないため、仕方ないため私の能力、精霊の事を話した。
もちろん誰にも話さないよう約束してもらったが。
「つまり私ではこの魔法薬は作れないと」
「はい、そういうことになります。そもそもなぜ魔法薬が必要なのですか?」
「それは…」
プレシアが言い淀むとリニスが、
「プレシアは病に蝕まれもう長くないのです」
「リニス!」
「プレシア、私達だけあの子の秘密を知って此方が教えないのは平等ではないです」
「……確かにそうね」
「病気ですか…治したいのはフェイトの為ですか?」
「……そうよ」
プレシアは一瞬言い淀むように返事をした。もしかしてフェイト以外にも理由があるのだろうか?
私がそんな考えをしていたら、私の内側からウィスプが話しかけてきた。
『樹ちょっといいかい』
「『ん?ウィスプどうかしたのかい』」
『あぁ、どうやらここには僕たち以外にももう一人いるんだ』
「『それって別の部屋にいるフェイトじゃないんだよね?』」
『見た目はフェイトって子にそっくりだ。ただ年齢が違うと思う。視たかったら僕にシフトすれば視れるよ』
ウィスプがそう言ったので私はプレシアに一言断りを入れる。
「プレシアさん、少し精霊の力を使いたいのですがいいですか?」
「え?なぜかしら」
「少々気になることが出来たので。あ、攻撃とかじゃないので安心してください」
「怪しいけど……まぁいいわ好きにしなさい」
プレシアは此方の言葉に訝しんだが一応許可をした。
「それでは失礼して【エレメンタル・シフトウィル・オ・ウィスプ】」
ウィスプにスフトすると同時に魔力光が白に変わる。続いて付加効果を発動して見えない物を視える様にする。
するとプレシアの斜め後ろにフェイトによく似た…というかそっくりの子がいた。
私が気づいてその子に視線を向けると、向こうも気づいたのか手を振ってくれた。思わず此方も手を振ったらプレシアは何をしているの?という疑問の顔をしていた。
だが手を振ったその子は私が視えていることに気づきしきりに口を動かす。
しかしその子の言葉は紡がれず此方には聴こえない。
私が挙動不審な行動していることに流石に気になったのかプレシアが口を開く。
「貴方さっきから怪しいわよ」
「そうですね、私も気になります話してください」
プレシアの言葉にリニスも続く。
「ええと、なんて言えばいいのか…フェイトにそっくりな大体5歳くらいの女の子がプレシアさんの斜め後ろにいるんですが……」
そう言った途端二人に劇的な変化が表れる。
「貴方、それはどういうことかしら?」
「どうとは言われても…そこにいるとしか言えないので…」
私がどうやって説明しようかと考えに耽っていたら、
『ふむ、ならば我の力であの者の姿を視える様にしよう』
「『シェイド!?そんなこともできたの!?』」
『うむ、短時間なら実体化が可能だ、本人との会話も可能になる』
「『そうか、ありがとうやってみるよ』」
此方がずっと黙っていたのを見かねたのかプレシアが口を開く。
「黙っていないで何か言ったらどうなの」
「すみません、ちょっと精霊と話してました。論より証拠、ということで今から実体化してみます」
「何を言って…」
「【エレメンタル・シフトシェイド】
私が魔法を発動すると女の子の姿が少しづつ顕れる。ある程度影が濃くなり女の子の向こうが僅かに透けるぐらいになると魔法の発動が終わる。
「これでこの子が私以外にも視えるし、君も喋ることができるはずだよ」
プレシアが後ろを振り向くとそこには姿は薄いが確かに存在する少女がいた。
「……まさかアリシアなの?」
「アリシア?それがこの子の名前ですか?」
プレシアの呟きに私は反応する。そしてアリシアと呼ばれたその子が語りだす。
《そうだよー私はアリシア、アリシア・テスタロッサだよ、よろしくね》
その子は屈託のない笑顔で答えたのだった。
第31話終了です
やっとアリシアの話まで来ました