精霊使いの転生者 34
ジュエルシード事件が終わりフェイト達がミッドに旅立って数日。
ユーノも事件の後始末の為ミッドに付いていった。もっともユーノは裁判なんて物はない為、少なくとも一ヶ月以内に戻ってくるそうだ。
なのははフェイト達とどっちが先に戻ってくるか期待しているらしい。ただ、なのははフェイト達とビデオレターで連絡を取り合っているみたいだ。
恐らくプレシアさんは此方で住むつもりなのだろう。どこで住むのかは知らないが、その時は僭越ながら手伝おう。
ともかく私達は久しぶりの日常を謳歌していた。
今は五月連休も目前、皆で休み中に何をしようかと翠屋に集まって話し合っていた。
「そういえば樹、もう大丈夫なの?」
「何がだい?」
アリサが唐突に聞いてきた。
「ほら、あんた達が長い間休んでいた理由よ」
どうやら学校を休んでいた理由のようだ。
「それならもう大丈夫だよ、全て終わったから」
「そう、樹にも事情があるだろうから詳しくは聞かないでおいてあげるわ」
「そうしてくれると助かるよ」
私は僅かに苦笑する。
「それで連休の予定はどうなの?私はパパのパーティーがあるからそっちに出ることになるけど」
「私も同じような模様しがあるからみんなと一緒に遊べないかも…」
アリサとすずかはどうやらパーティーに参加で一緒にいられないらしい。
「私はお店の手伝いかな?この時期になるといつもお客さんが沢山来るから、私も手伝ってるの」
「それで樹はどうなの?」
私は特に予定は無いのでそのことをそのまま伝えた。
「私は特に予定は無いね。まぁ強いて言えば新しい料理でも挑戦してみようかな?」
私達がそれぞれ連休の話をしていたら、
「あら、樹君お休みの予定はないの?だったら家のお店を手伝ってくれないかしら?」
横から桃子さんがそんな事を言ってきた。どういうことかと尋ねてみると、
「実はね、連休でアルバイトしてくれる娘が急用で出てこれなくなってね、代わりの人を探していたの。
盗み聞きしてたのは悪いけど出来れば手伝ってくれないかしら?」
桃子さんの話に、
「構いませんよ、料理はいつでもできますから」
「本当!?それじゃ三日の朝〇時にお店に来て頂戴」
「分かりました」
桃子さんは嬉しそうにして仕事に戻っていった。……ただ振り向いた時に何やら邪悪な笑みを浮かべていたのは誰も気付かなかった……
*************
店の手伝い当日、私は指定された時間の10分前に到着した。
既に桃子さんや士郎さんが店の準備に取り掛かっており忙しそうに動き回っていた。
「桃子さんおはようございます」
「あら樹君おはよう、早いわね。じゃあ早速で悪いけどこの服に着替えてくれるかしら」
そういって桃子さんは服が入っているだろう袋を私に渡してきた。
「分かりました、じゃあちょっと着替えてきますね」
暫くして……
「あの桃子さん…?なぜこの服なんですか?」
「まぁ聞いてたとおり良く似合っているわ!」
私は桃子さんのその言葉に何か引っ掛かりを感じ思わず聞き返した。
「聞いてたとおり?私がこの服を着たことを知っているのはそれ程多くないはずけど……
まさかなのはじゃ…」
「違うわよ、私が聞いたのは忍さんよ」
私の疑問に桃子さんが答える。というか…
「忍さんって……なぜ?」
「あの人とは小学校の保護者会つながりよ、それになのはとすずかちゃんにアリサちゃんとも一緒に遊んでくれてるからね」
そういって桃子さんはとても素敵な笑顔で答えてくれた。
「それにもう開店まで時間がないから仕事の内容を話すからちゃんと聞いてね」
私は諦めて頷いたのだった。
*************
―――二日目―――
お店の来客にある噂が広まった。
曰く、見たことのない美少女がお店を手伝っている。
曰く、天使のような笑顔で男だけでなく女も虜になっている。
曰く、その娘はメイド服で手伝っている。
「いらっしゃいませ翠屋へようこそ。お冷とおしぼりをどうぞ。ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい。それでは」
私は今メイド服を着てお店を手伝っている。感情を押し殺して営業スマイルの愛想笑いで仕事をしていた。
だがそれでもお客にはウケがいいようで、初日はいつも通りと思ったら午後から何故か人が多くなったような気がした。
そして二日目の今日。昨日より客が明らかに多くなっていた。
耳を澄ませていると、なにやら噂が流れておりその噂を元にやって来たらしい。迷惑な話だった……
*************
―――三日目―――
噂を聞きつけたアリサ、月村姉妹になぜかメイドのノエルさんとファリンさんまで来店した。
私は恥ずかしさに死にそうだったがそれをとにかく隠して無視して仕事に専念した。
それでも隠しきれない恥ずかしさが有ったのかは自分自身では判らない。
アリサはずっとニヤニヤしており、月村姉妹は何故か若干顔を赤らめていたし……
ノエルさんとファリンさんだけはメイドの観点で見てくれたのか、時折アドバイスをしてくれた。
連休の仕事が終わって…
「ありがとうね樹君、とても助かったわ。私達だけだったらとても回らなかったわ」
「樹君、私からもありがとうね!」
「いえ、お役に立てたのなら何よりです」
三日間のお店の手伝いが漸く終わり、私としては物凄く精神を削られた…
「また今度手伝ってくれないかしら?」
桃子さんがそんな事を言ってきたが、
「女装しないなら……まぁ考えておきます」
そう曖昧な答えを言ってその場を凌いだ。
「それじゃあ私はこれで……」
「気を付けて帰るようにね」
私は重い足取りで翠屋を後にした。
*************
―――後日―――
『それでね樹君がお店を手伝ってくれたの!』
ここはミッドチルダ、フェイト達が裁判の為に滞在している部屋である。
「あれ?フェイトそのビデオレターはなに?」
「あ、姉さん。これはね私の友達のなのはからのビデオレターだよ」
アリシアの疑問にフェイトが答える。
「へぇー、それでなんて言っているの?」
「どうもね、なのはのお店で樹が手伝ってたみたいなんだけど…」
「イツキのお手伝いかー、見てみたいなー」
アリシアのその言葉に反応したかのようにビデオレターのなのはは続いてその言葉を言い放つ。
『このビデオレターの最後に、樹君のお手伝い姿も撮影した動画も一緒に入れておいたよ!
また何かあったらビデオレターで連絡するねフェイトちゃん』
そうなのはの言葉が終わると一旦画面が止まり直ぐに別の動画が再生される。
その再生された動画をみた二人は……
「「……………」」
ただただ言葉が出ず黙っていた。やがて…
「お母さんお母さん!リニスにアルフも!ちょっと来て!!」
アリシアが騒いでプレシア、リニス、アルフを呼ぶ。その声に反応して三人がすぐにやって来る。
「アリシアどうしたの?」
「どうしましたか?」
「どうかしたのかい?」
異口同音に聞く三人に、
「いいからまずこのビデオレターを視て!」
そこにはメイド服を着て仕事に勤しむ樹の姿が写っている。
「あら?この娘は…?」
プレシアだけは声が出ていたが、残りの二人は声も出ないようだ。
二人がショックから立ち直ったのは結構経った後だった。が、どうもプレシアとリニス、フェイトは樹の姿に悶絶していたようだ。
ただ、プレシアはそこまで顔に出ていないが……
アルフは、
「樹のやつも災難だね……」
と言い、アリシアは、
「いいなぁ…私もあれ着たい」
と言う。そんな中アルフとアリシア以外の三人は……
「これは永久保存決定ね!リニス絶対にデーターが破損しないように保護をしてちょうだい!」
「分かりました!これは保存しないといけませんね!」
「樹……可愛い……」
もうこの三人はダメかも知れない……
後にこの樹のメイド姿の動画がプレシアからリンディに流れるのだが……またそれは別の話。
第34話終了です
今回は翠屋でのお手伝いの話です
この話から樹にどうにかして女装させるサークルが結成されますが……
構成員は月村忍、月村すずか、高町桃子、高町なのは、ノエル、ファリン、プレシア、リニス、フェイトになります
まともなのはアリス、アルフだけです
アリシアは若干ズレています