ロッテが仮面の男、アリアの下へ行く途中、私達はロッテが何か妙な行動をしないか見張りながらついて行った。
ロッテは此方のことを気づいているのかは分からないが、表面上は特に変化はなく歩いていた。
やがて私達は仮面の男が居る部屋にたどり着く。
「この部屋に仮面の男が居る。一応暴れないようにバインドで動きを封じているが気お付けてくれ」
クロノも形式上の警告をロッテに言う。そして部屋の鍵を解除する前に部屋内にいる監視兵に連絡を取り、異常がないことを確認してから部屋の鍵を解除する。
「入るぞ」
部屋に居たのは仮面の男と後ろで見張る監視一人、そして部屋の扉の前で三人を迎えたもう一人の監視だ。
「何か変わったことはあったか?」
クロノが監視に聞くが、
「いえ、先程までと変わらず、ずっと黙ったままです」
「分かった、引き続き監視をしてくれ」
「はっ!」
「ロッテ、あいつが今回なのはの戦いの最中にリンカーコアを抜き出した男だ」
そう言ってクロノはロッテに向かって言う。
そのロッテは仮面の男をしげしげと見「ふーん、こいつがねー…」とつぶやきを漏らす。
その様子は興味はあるがあまり関係無いなというに見える。
だが此方は二人の関係はほぼ確信しており、後は決定的な証拠を掴むのみとなっている。
ロッテにすれば如何に証拠を残さずにアリアを逃がすかになるので、今は無関心を装っているのだろう。
しかし、私だけはこっそりシャドウにシフトしているので現在、二人が秘匿念話で会話しているのがまる分かりだった。
(アリア、助けに来たわよ)
(ロッテ!助けに来てくれたのは嬉しいけど…ダメよ!下手をすれば貴女まで捕まるわ)
(心配しないで、今はまだ無理だけどお父様から策をいただいているわ。私がここから出て数十分後にアースラに干渉するウイルスプログラムが起動するわ。
ウイルスが起動するとアースラの監視システム関係がすべて一時的にダウンするわ。照明も落ちるからその時に脱出して)
(お父様が…ロッテ分かったわ、少し厳しいかも知れないけど何としてもここから抜け出すわ)
(本当は直接助けたかったけど、こうまで監視が厳しいとそれはできなかったわ)
(いえ、充分よ。貴女のためにも、そしてお父様の悲願のため必ず脱出するわ)
アリアとロッテはその後、大まかな念話のみをし、そして、
「クロすけもういいや、私はもうそろそろお父様のところに戻るわ。……
「そうか、見送りは必要か?」
クロノは確認するように聞くが、
「見送りが必要な年じゃないんだから不要よ」
と、笑って返していた。
そしてトランスポートに取って返し、
「じゃあねー、任務頑張ってね」
ロッテは手を振りつつアースラから去っていった。
*************
ロッテがアースラから去ってすぐ。
「ロッテのやつ特に何もしなかったな」
「ええ、ですがまだ何かあるかもしれません。油断はせずに行きましょう」
念話のことが盗聴出来るとわかると色々と都合が悪いため、クロノの言葉に私は念話のことは話さず注意を促した。
私は先程の二人の念話を知っているため、この後の展開も既に分かっていた。
要約すると、この後ロッテがアースラから去った35分後、アースラに打ち込まれたウイルスプログラムに因ってアースラの監視システムと照明が一時ダウンする。
そしてその混乱に乗じてアリアは監視を気絶させ部屋を脱出、そしてウイルスプログラムに因って行き先を固定されたトランスポートに乗り込み即座に起動、アースラから脱出。
これが大まかな流れだ。ちなみに固定されたトランスポートの行き先の履歴は完全に削除されるそうだ。追跡されないための措置だ、当然だろう。
「エイミィ聞こえるかしら?」
『はいはーい、聞こえますよー何でしょうか艦長?』
「リーゼロッテは特に何もせずに去ったけど、まだ何かあるかもしれないわ。すまないけどもう暫くアースラのシステムを視ていてちょうだい」
『はーい、分かりました。でもどれぐらい監視するんですか?あまり長いのは勘弁なんですけど』
「そうね……一時間だけ監視してちょうだい」
『了解です』
クロノはリンディさんの時間に質問した。
「かあ…いえ、艦長、その一時間というのは何か根拠があるのですか?」
「根拠というほどではないわ。ただ、数分とかだと早すぎて警戒される、かといって二時間や三時間だと逆にアリアの脱出時の集中が切れるかもしれない。
だから集中が続きそうな一時間ということにしたの」
「なるほどそうでしたか…分かりました、なら僕もそれまでは注意していきます」
「ええ、クロノもお願いね」
そんな話を聞きながら私はアリアが脱出した後の追跡をどうやって成功させようか考えていた。
そして散々悩んでいたら精霊のウィスプが話しかけてきた。
『樹、悩んでいるなら僕が行こうか?』
「『ウィスプ?どうしたんだい急に』」
『探査と追跡が必要なんだろ?僕なら光を操って視えなくすることも出来るからね。
それに、僕達精霊は適性を持たないと感じることも出来ないし、僕とシェイドなら長時間顕現していられるから』
「『やってくれるならありがたいけど、本当にいいの?』」
『任しておいてよ樹』
「『分かった、じゃあお願いするよウィスプ』」
こちらの準備も完了し、そしてロッテがアースラから去って35分が過ぎた。
念話の内容が合っているのなら直ぐにでもアースラのシステムが落ちるはずだが……
そしてその時が来た。アースラの照明が落ちたのだ。
リンディさんとクロノはエイミィに連絡と確認を入れている。だがウイルスの影響なのか、通信が上手く繋がらないようだ。
私は暗くなった瞬間、ウィスプを召還する。一瞬だけ周りが明るくなる、私はそれをごまかすため同時に照明の魔法を発動する。
「二人とも落ち着いてください、これは恐らくロッテの仕業です。直ぐに監視している部屋に行きますよ」
と言いつつ、私はウィスプをトランスポートに先回りするようにお願いした。
「クソ、予想の一つが当たったか!艦長!」
「ええ、行くわよ」
私達三人がたどり着いた時には既に扉は開かれており、見張りが倒され気絶していた。
そのことを内心謝りながら二人に進言する。
「二人とも、ここは既に突破されています、奴が脱出しそうな出口を確保するんです」
「そうだったわね、クロノ手分けして探すわよ」
「はい艦長」
リンディさんとクロノは心当たりのある場所に向かっていき、そして私はトランスポートに向かう。
そこにいたのは起動しかかっているトランスポートにいた仮面の男アリアだった。
此方を確認したアリアは、
「残念だったな、さらばだ」
消える寸前、現場にたどり着いたリンディさんとクロノは歯噛みしながらその姿を見送った。
姿が完全に消えた時それまで張っていた緊張が切れ、皆息を吐く。
「ふぅ…やはり逃げられましたか。……エイミィ、トランスポートの転送履歴からあいつの転送先を探れないかしら?」
既にシステムは復旧していたのでエイミィに追跡が出来るか確認をする。
『ダメです艦長。どうも先程のウイルスで転送履歴が完全に削除されています。これでは追跡はできません』
「参ったわね、どうしたものかしら…」
そんな様子を見ながら私はウィスプに連絡を取る。
「『ウィスプ聞こえる?』」
『聞こえるよ樹』
「『そっちの状況を教えてくれる?』」
『OK、アリアが転送された場所はどこかの無人惑星みたいだね。今はもう変身魔法は解除して元の姿になっているよ。
姿はロッテによく似ているね、流石は双子ってことなのかな?』
「『そうか、ロッテは近くに居そうかい?』」
『まだ姿を見せてないけど、こっちに近づいている反応が一つあるよ。多分それがロッテかな?』
「『そうか、合流してもそのまま尾行はできそうかい?』」
『任しておいてよ樹』
「『頼んだ』」
ウィスプとの連絡を終え二人に意識を向ける。
リンディさんとクロノはどうやってアリアを追跡しようかと議論しているようだ。
私はそこに話しかける。
「安心してください。私が探査魔法で追跡中です。暫くすれば探査も終わります、少し待ってくださいね」
「本当かエルナト!」
「助かったわエルナト。設置していた監視機器はどうやら全て破壊か無効化されていたみたいなの」
「それで探査完了したら直ぐにでも追跡しますか?」
「そうね…準備だけはちゃんとしておきましょう」
こうして私達三人はすべての準備が終わり次第アリアの後を追うのだった。
第55話終了です
今回はアリアがアースラから脱出しました
本来ならとっとと変身魔法を解除して正体を暴いたほうが展開も早かったのですがなぜかこうなりました。
次回はグレアム提督と会うことになります。
追記
今回もずいぶんと投稿が遅くなってしまいました