精霊使いの転生者   作:キジトラのヌコ

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精霊使いの転生者 57

 グレアム提督からはやてを助けてくれと頼まれた次の日。

 

 「私はリーゼアリア、お父様、グレアム提督の使い魔をしています」

 

 「リーゼロッテよ、もう知っていると思うけど、クロすけ「おい」クロノの師匠をやっていたわ」

 

 グレアム提督の下からアリア、ロッテの二人がアースラにやってきた。

アリア、ロッテとも今の姿ではグレアム提督の前まで会っていなかったので、今回で二度目になる。

そんな中、ロッテがこんなことを言ってきた。

 

 「えっと、たしかエルナトだっけ?私は貴方の力を知らないの。アリアは知っているみたいだけど、私も貴方の力を知りたいの。

だから、私と摸擬戦をしてくれないかしら?」

 

 その言葉に私ではなく周りの者が先に反応する。

 

 「おい、ロッテ悪いことは言わん。やめておけ」

 

 「ロッテ、やめておきなさい後悔するだけよ」

 

 「えっと、ロッテさんでしたよね。やめたほうがいいと思いますよ」

 

 上から順にクロノ、アリア、なのはだ。三人が三人共同じことを言ったのでロッテは、

 

 「なんでみんな同じこと言うの!?」

 

 流石のロッテもこれには驚いたようだ。それでも、

 

 「私は貴方がアリアを圧倒したといっても、その姿を見たわけじゃないわ。だから私と戦ってその力を見せてもらうわ」

 

 「はぁ…ロッテは言いだしたら聞かないし。ごめんなさい少し面倒かもしれないけどロッテの相手をお願いできるかしら?」

 

 「私はかまいませんよ。味方の戦力が分からないのは不安でしょうから」

 

 「話が分かるわね、さぁさぁ早速トレーニングルームでやりましょう」

 

 そうして私とロッテ、そして野次馬もとい、観戦者がトレーニングルームに移動する。

 

 

 

*************

 

 

 

 トレーニングルームで相対する私とロッテ。

 

 「勝負の内容はどうしますか?」

 

 「そうね、私はアリアと違って魔法よりも近接戦が得意なの。だから魔法なしの戦闘をお願いするわ」

 

 「分かりました」

 

 「じゃぁ行くわよ!」

 

 

 

*************

 

 

 

 モニタールームでは二人の戦いを観戦しているクロノ達が話をしていた。

 

 「アリア、エルナトとロッテの戦いはどうなると思う?」

 

 クロノの問いにアリアは青い顔をしながら、

 

 「そうね……魔法戦だったらロッテに勝ち目はほとんど無いと思うわ、私でも魔法戦で勝てるかどうか…(勝てなかったけど…)

でも格闘ならロッテが勝つかもね!」

 

 自慢げにアリアはロッテを語る。しかしエルナトの戦いを観ていたクロノの意見は違ったようだ。

 

 「そうか、だけどロッテには悪いけど、格闘で勝てるかどうか…エルナトは魔法だけじゃなく格闘もかなり使えるんだ」

 

 「なによ、クロノはロッテがあいつに勝てないっていうの?」

 

 「まぁ言っても信じないだろうから、見たほうが早いだろう」

 

 そう言ってクロノは二人の摸擬戦を映すモニターに視線を移す。それを見たアリアも同じように二人の摸擬戦を観戦するためにモニターに視線を移す。

 

 

 

*************

 

 

 

 摸擬戦の初手はロッテからだった。ロッテはエルナトに向かって一直線に向かうように見せて、直前で地面を蹴って横に素早く移動する。

直前で高速移動することで消えたように錯覚させる。私から見て左側からロッテが襲い掛かってくる。

私は当たる寸前でそれを一歩引くことで回避することに成功する。

ロッテは回避されたと判断した瞬間直ぐに次の行動に移る。

パンチと蹴りのコンビネーション、更に時折フェイントを混ぜこちらに行動を読ませないようにする。

その戦闘は早さだけならフェイトのほうが早い、だけど戦闘の巧みさ、駆け引きの上手さは比べられないほどだった。

これほどの格闘戦、私の記憶にあるのは士郎さんと恭也さん、少し落ちるけど美由希さんこの三人が直ぐに浮かんだ。

士郎さんは未だに魔法なしだと勝てる見込みがなかった。恭也さん相手でもたまに引き分けるぐらいで未だに勝てなかった。

唯一美由希さんだけには勝つこともあったが、御神流の技を使われると中々勝つのが難しかった。

ロッテの動きを見るに美由希さん並みの動きと技だった。

ならばこちらも魔法など使わず今まで鍛えてきた柔術と合気、棒術を遣って相手をする。

 

 「ルビス!棍を!」

 

 私の言葉にすぐ反応したルビス=ニンフはストレージから棍を取り出す。

飛び出した棍を左手で掴みロッテの右フックを棍で受け流す。

ロッテは棍で防御されたのを見て後方に下がり距離を取る。

 

 「それがあんたの武器かい?ただの棒に見えるけど扱いは流石だね」

 

 「お褒めにいただき恐悦至極、これでも一応修行していますので」

 

 「そうかい、なら私も本気を出していこうかい!」

 

 そうロッテが言うと拳や脚に魔力が纏われ始める。

それを見た私も棍に魔力を纏わせ攻撃に備える。

棍に魔力を纏ったのを視たロッテは笑みを浮かべ攻撃してくる。

 

先程よりもさらに早く重い攻撃が一撃事に繰り出される。

私はその攻撃を時に受け、流し、回避する。合間の僅かな隙を見て棍で反撃はするがロッテもこちらと同じように腕で受け流したり、回避をする。

何度かの攻防が繰り広げられその度に同じように攻防が入れ替わる。

 

 摸擬戦を観戦している者たちは二人の戦いに声も出ないようだった。

 

 しかし何十という攻防の後僅かにロッテが押され始める。ロッテの動きが悪くなったのではない。

むしろ始める前より動きはいいほうだ。ならばなぜ?観戦者達で気づいたのはアリア、クロノ、プレシアこの三人がほぼ同時だった。

次に気づいたのはリンディ、そしてフェイト。最後になのはが、

 

 「あれ?エルナトさんの動きが変わった?」

 

 そう、今も攻防を続ける二人だが、明らかにロッテよりエルナトの攻撃頻度が多くなっていた。

その理由は樹とニンフ、精霊達しか知らないことだ。樹の特典である成長速度だ。

この戦いを通して今もなおすさまじい速度で成長していた。

樹は仕事で武術を修行していたが、樹ほどの腕前を持つ者はいなかった。そのためあまり武術も鍛えることができなかったのだ。

唯一、高町家では自分より高みにいる士郎さんや恭也さんが相手になってくれていたが、手加減されそれほどよくはなかった。

美由希さんは自分と同程度だったが、怪我をさせるわけにもいかず、主に受けや合気での返し、間接技での無力化が主な内容だった。

そのため今のロッテのようにお互い全力を出せることが無かったのだ。

武術の修行は手加減していたら上がらない。

だからこそ樹は今まさに武術の腕が上がっていくのだった。

 

幾度の攻防の末、棍に纏った魔力とロッテの腕に纏った魔力がぶつかり二人は同時に距離を取る。

 

 「……はぁ…はぁ…あんた始める前とはまるで別人じゃないか…」

 

 ロッテはいつの間にか息が切れ始めていた。そして私も…

 

 「…ふぅ…はぁ…そういうロッテさんもまだ余裕そうですね…」

 

 「そうね…でも長すぎるのもアレだから、次で決めるわよ」

 

 「分かりました、ではこちらも…」

 

 私とロッテは息を整えながら少しずつ近づいていく。どちらもあと一歩の距離なると足を止め動き出す瞬間を待つ。

先程までの激しい動きがまるで嘘のように今度はどちらも動かない。

 

 やがて、トレーニングルームの床に双方の汗が落ちた、その瞬間!ロッテが踏み出し右の回し蹴りを放つ!

私は一歩後退しそれをかわす。しかしロッテは右足を付けた瞬間身体をひねり、左の踵落としを高速で落とす!

ロッテの踵落としが当たる寸前、ロッテは「勝った!」と思った。

 

しかし!エルナトの姿がブレると踵落としはそのまま通過する。

手ごたえのない感覚にロッテは強烈な寒気を覚える。

次の瞬間、ロッテが着地した脚を棍の先端が払う!

バランスを崩したロッテが次に見たのはこちらを狙うエルナトの棍だった。

真っ直ぐに突いてきた棍を両腕で防御する。しかし棍に込められた魔力によって一時的に両腕が動かなくなり腕が下がってしまう。

ロッテは更に見た。エルナトが何故か棍を背中に回しその両端をそれぞれの手で押さえているのを。

次の瞬間、エルナトが左手を離すと今までにないほどの速度で自分に迫ってくる。

思わずロッテは小さく悲鳴を上げ目を瞑ってしまう。

 

 しかし、いつまでたっても衝撃はやってこない。ロッテは恐る恐る目を開けると自分の顎先に棍があるのを見て驚いた。

 

 (あれほどの速度を持った棍をギリギリで止めるなんて……負け…ね)

 

 ロッテが負けを認めたため摸擬戦はそこで終了した。エルナトの勝利だ。

 

 「参ったわ、私が格闘で負けるなんてね。それに最後の連携は凄かったわ、なんていう技なの?」

 

 「特に技名は付けていませんが、そうですね…仮に【無双三段】とでも付けておきましょう」

 

 「【無双三段】ね、名にたがわず凄い技だったわ」

 

 (恐らく最初の払いはこちらの体勢を崩すためのもの、そして二段目の突き、あれは棍に込められた魔力で防御を無力化させることが目的ね。

体勢を崩されてかわすことも出来ないから、腕で防御するしかない。だから二段目が命中する。

最後に三段目の切り上げ…寸止めされたから判らないけど、とんでもない威力を持った一撃だった。

まともに受けたら意識が持っていかれたでしょうね……)

 

 ロッテは先程の技を思い出して寒気がした。ロッテの側にアリアがやってきて「大丈夫なの!?」と聞いてくる。

それに対しロッテは、

 

 「大丈夫よアリア」

 

 と、答えていた。

私は私で周りになのはやフェイト、クロノがやってくる。なのは、フェイトは「すごかったよエルナトさん」と言い。

クロノは先程の技を聞いてきた。なのでロッテにも言ったように仮の技名だけ教えてあげた。

 

 リンディ、プレシアはモニタールームで先程の摸擬戦の録画を観ながら話し合っていた。

 

 「これだけやっていてほとんど、というか魔法は使っていないとか…()きれるわね」

 

 「そうね、せいぜいがそれぞれ腕やあの棒に纏わせていた魔力だけなんてね」

 

 二人はエルナト、ロッテが魔法を使っていないことを正確に見抜いていた。

厭きれているのは二人がそこらの魔導師が魔法を使っても敵わないほどの格闘の腕前を持っていたことだった。

 

 「でも敵に回れば厄介だけど、味方ならこれほど頼もしいのはないわね」

 

 「そうね、それには同感だわ」

 

 そしてリンディは砂糖入りお茶を、プレシアはコーヒーをそれぞれ飲み、皆がモニタールームに戻ってくる様子を眺めていた。




第57話終了です
今回はロッテとエルナトがお互いの戦力を確かめる摸擬戦を書きました。
戦いの最中、樹の特典である成長速度増加が猛威を振るいました。
作中に出てきた【無双三段】ですが、■マサガに出てくる槍技を参考にしています。
あちらは叩き付け・突き・切り上げの三段ですが、
作中は払い・突き・切り上げと最初が違います。
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