次元転送魔法を習得してから更に半年後。ここは第1管理世界ミッドチルダ。フリーの魔導師が集まる酒場である。
「やぁマスターまた来たよ」
「よう、エルナトじゃねぇかまた依頼の受注かい」
「ええ、何か良い依頼はないかな?」
「そうだな……お前さんならこんなところだろ」
そう言ってマスターは数枚の紙を取り出した。ちなみにエルナトとは私がミッドでフリーの魔導師として活動するための偽名である。
そして現在の姿は変身魔法で19歳の姿で、服装は巫女のような紅白の袴で顔の横に狐のお面を付け髪は後ろで一纏めにしている。
やはり此方でも性別を勘違いされたが、魔導師として活動するなら性別を確り伝えないといけないと思いマスターには私は男だと伝えたのだが、
マスターはまるで信じてもらえず最近やっと分かってくれたのだ。
「こいつとこいつは要人警護、これは発掘現場の警備、他のも似たような物だな」
私は依頼書を次々捲っていき最後の依頼書を見たときある名前を見つけ
「ん?マスターこの依頼書だけど依頼者の名前これ本当?偽物じゃないの?」
「どれのことだ?あーこれか、一応本物…のはずだが、この人はたまにどうでもいい様な依頼を出してくるんだ。
まぁあっちでは言い出しにくいんだろ、形としては護衛だが中身は殆ど暇つぶしの為のお喋りの相手だ」
「こんな偉い人がそれでいいのかな?とりあえず本物なんだね」
「あぁそれは間違いない」
「ふーむ、ならこれにするかな、最近は戦場の依頼が多くて殺伐してたからゆっくりしたかったし」
「そうだな、あんたの性格ならこういうのが性に合ってるだろ、それにお前はうちの稼ぎ頭だ頑張ってきな」
「私以外にも沢山いるでしょ」
「そりゃいるが、依頼達成率9割以上はお前だけだぞ、期待するなってものが無理だろ」
「私が受けているのは簡単な物のはずだけど」
「それでも期待してるんだよ、評判が上がればうちの店も鼻が高いんだよ」
「まぁいいわ、それじゃ私はこの依頼を受けるから手続きよろしく」
「おう」
*************
数日後とある場所
「ここだね」
『へー、随分デッカイところだな樹』
『そうですね、周りとは一線を書いてますね』
『んーうちは綺麗な水があればそない文句は言わんなー』
『おいらは広いところがいいなー』
『わしは静かなところがいいのう』
『皆結構好き勝手言うね、まぁ私もこんな場所で一度は住んでみたいけど、やっぱり我が家がいいからねー』
『同感』×5
そんなことを精霊達と話していた
『さて依頼じゃ一応護衛だからいつもの様にドリアドでいくよ』
『解りました』
『【エレメンタル・シフトドリアド】』
周りに気づかれないよう素早くシフトする、ちなみに現在は茶色のカラーコンタクトをしていて瞳の色が変化しているのを判らないようにしている。
ドリアドにシフトしたのは付加効果が五感、及び第六感の強化だからである。
護衛対象に危害が出る前に察知するためだ
「さてシフトをしたし行きますか」
私は受付に回り要件を言う
「すみません〇〇の依頼からやって来ましたエルナトです」
「エルナト様ですか少々お待ちください」
受付の人は手元の端末で照会しているようだ、程なくして
「依頼の照会をしました、案内人が来ますので暫くお待ちください」
「解りました、ありがとうございます」
私は受付から離れて案内人が来るのを待っていた
「ねぇ、あの人だれ、すっごい美人なんだけど」
「んーとね、データから見るとフリーの魔導師みたいで名前はエルナトだって」
「え!?エルナトって最近噂になってる魔導師じゃない」
「そうなの?」
「そうよ、なんでも依頼達成率が9割を超えててほとんどの依頼を成功させてるとか、戦場に出れば敵は無傷で捕獲するとか、とにかくすごいのよ」
「え、でも手元のデータだと魔力ランクはAだよそれ程凄腕に見えないけど」
「そう、だから皆あの人にはレアスキルがあるんじゃないかって言ってるの」
そんな話を受付嬢達が話していたが、樹にはばっちり聞こえてた。何せ現在はドリアドにシフトしているので五感、
つまり聴力が上がっているので丸聞こえなのだ
「『ねぇニンフあんな事言われてるんだけどどう思う?』」
[『陰口ではないですし、問題ないのでは。マスターが敵を無傷で捕らえているのも事実ですし、レアスキルと思われるのは仕方ないのでは?』]
「『確かに捕獲時には逃げられないようバインドには精霊の力も使ってるからレアスキルとしても間違ってないけど』」
[『それより話の内容ではやはりマスターが女性として扱われているようですが』]
「『それこそ今更でしょ、一々訂正もめんどくさいし。っと、お喋りはここまでみたいだ、案内人が来たね』]
建物の奥から制服を着た女性がやって来た
「初めまして、私はエレン・カーソン陸曹長です」
「初めましてエルナトです」
「依頼内容を話しますので着いて来てください」
私はカーソン曹長に着いて行く途中三方向から視線を感じていたが、殺気は感じなかったのでとりあえず無視することにした
「此方です」
ある一角の部屋に着き部屋に入るように促された
「失礼します」
部屋には一人の女性がソファーに座っていた
「案内ありがとうねカーソン曹長、下がってください」
曹長は礼をして退出していった
「さて初めましてミゼット・クローベルよこの度は私の依頼を受けてくれてありがとうね」
部屋にいたのはかの有名な三提督の一人ミゼット・クローベルその人だった
「こちらこそ初めましてエルナトと申します。
依頼書を見たときはまさかとは思いましたが本人だとは思いませんでした」
「私はねあの店には結構依頼を出すのよ。ただ誰も受けてくれなくてね。
それで依頼なんだけど、私の護衛よ。もちろん表向きだけどね」
「解りました。では裏の話ですがこのまま話しても大丈夫ですか?なんなら結界を貼りますが」
「問題ないわよ大したことじゃないから、ただ私の話し相手になって欲しいの」
「店のマスターからも聞きましたが本当なのですね、他の皆さんは相手になってくれないのですか?」
「皆私の前だと緊張して話してくれないの普通にしてくれればいいのに」
「伝説の三提督のお一人だから仕方ないのでは」
私はミゼットにそんな話をしながらこれまでの依頼や魔導師として支障がない程度に話をしていたのだった
*************
数時間後、時計が時報を鳴らし
「あら、もうこんな時間なのね。今日の依頼はここまでにしましょう、話し相手になってくれてありがとうね」
「いえ、こちらも久々にゆっくりできたので感謝してます」
「そう言ってくれると此方も嬉しいわ。今後も話し相手になってくれるかしら」
「いつでも良いとは言えませんが都合がつけば此方もよろしくです。
連絡先なのですが私のデバイスかあの店に私を名指して依頼してくれれば大丈夫です」
「なら貴方のデバイスの通信コードを教えてちょうだい」
「解りましたルビス、コードを」
[了解マスター]
ルビスとはエルナト状態時のニンフの偽名だ。私はミゼットにコードを渡し依頼は終了と立ち上がり扉の開き掛けたところで止まり
「そういえばあまり関係ない話ですが、ここに入る途中視線が3つほどありました。
殺気が無いため無視しましたがあまり妙な真似をしないように忠告してくださいね」
と何でもないように話、私は部屋を出ていった
*************
私が部屋を出ていった後
「うーん、密かに監視してたあの子達に気づくなんて凄いわねー。
しかも一人二人ならともかく三人目はかなり離れていたはずよね、うちにほしいわー」
ミゼットがそう呟いたとき手元の端末に通信が入る
《ミゼット統幕議長、護衛任務終了しました》
「《ご苦労様です、カーソン曹長にもよろしくと伝えてください》」
《解りました、ところであのエルナトという魔導師はどうでしたでしょうか》
「《魔力ランクは資料道理Aでしょう、ですが監視させていた貴方たち三人全員に気づいていたようです》」
《まさか!他の二人はともかく私は少なくとも5kmは離れていたはずです、それなのに気づいたのですか?》
「《本人はそう言っていました、あまり敵にしたくはないですね》」
*************
建物を出た後、私とニンフは先程の監視に付いて話し合っていた
「『ニンフ、さっきの監視だけどどう思う?』」
[『そうですね、やはり此方の実力を測っていたのではないかと思われます』]
「『やっぱりそうか、それじゃ今後魔力が上がっても仕事時はリミッターを掛けてAまで下げよう。
それと通常生活の時はリミッターをさらに付けて魔力をEまで下げるよ、普段の生活で詮索されたくないしね』」
[『了解ですマスター、それとミゼット統幕議長のことは大丈夫でしょうか』]
「『それはこっちが何もしなければ流石に仕掛けてこないはずだよ、それにこちらとしても大物とのパイプが出来たのはいいことだし、
もしかしたら私が変身魔法で姿を変えてる事を気づいたかもしれない。』」
「『まぁ彼方がその話を出したらその時はミゼットだけには事実を教えるしかないかな』」
[『解りました』]
私とニンフはこうして今後について話したのだった
第8話終了です
今回ドリアドの付加効果が出ました
五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)と第六感の強化です
三人目の視線は六感で感づきました