ギャンブラー勇者の鉄壁なる「棺桶」管理術   作:ドラクエ風短編小説

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第三章:黄金の賄賂と、届かぬ祈り

「勇者様……。やっぱり、このままジェニーさんを箱に入れておくのは、あまりに不憫ですわ」  セーラが、沈痛な面持ちで俺に訴えかけてきた。隣ではリンも、今にも泣き出しそうな瞳で棺桶を見つめている 。

 

 当然の考えであったが、彼女たちの献身的な優しさは、俺にとって最大の「障壁」だった。ここでジェニーを生き返らせてしまえば、美女二人との甘い時間は、あのうるさい遊び人の騒ぎ声によって台無しにされてしまう 。

 

「わかった。二人の熱意に免じて、一度教会を頼ってみよう」  俺はもっともらしい顔で頷くと、一行を連れてアリアハンの大教会へと向かった。

 

 だが、俺の「勝負」は彼女たちが教会に入る前から始まっていた。 「二人とも、先に中に入って祈りを捧げていてくれ。俺は、ジェニーの魂を呼び戻すための『特別な儀式』の準備をしてくる」  二人が教会の重厚な扉をくぐったのを確認すると、俺は裏口から神父の控え室へと忍び込んだ。

 

 そこには、長年「神の代行者」として、迷える冒険者の財布を管理してきた老神父がいた。 「神父様、折り入って相談……いや、『投資』の話があります」  俺は懐から、カジノでかすめ取った「黄金の延べ棒」を卓上に転がした 。神父の目が、神への信仰心など一瞬で忘却したかのように、強欲な光を放つ。

 

「蘇生は『形だけ』でいい。あいつはまだ、棺桶の中で『魂の忍耐修行』を続ける必要があるんだ。……わかりますね?」  俺が耳元で囁くと、神父は延べ棒を素早く懐に隠し、慈愛に満ちた(皮肉なことに)微笑みを浮かべた。「……神の思し召し、というわけですな。承知いたしました」

 

 数分後。リンとセーラが見守る中、教会の祭壇で「偽りの蘇生儀式」が始まった。  神父がそれらしい呪文を唱え、棺桶が光に包まれる演出がなされる。だが、当然ながら蓋が開くことはない。

 

「……残念ながら。彼の魂は、まだ現世に戻ることを拒んでいます」  神父が神妙な面持ちで、台本通りの台詞を吐き捨てた 。

 

「そんな……っ! ジェニーさん、どうして!」  リンが棺桶に取り縋って号泣する 。セーラもまた、「私たちの祈りが足りなかったの……?」と、自責の念に駆られていた 。

 

 俺は、ここぞとばかりに膝から崩れ落ちた。 「くっ……! ジェニー、お前……! そんなに自分を責めなくていいんだぞ。俺の力不足だ。俺の徳が足りないせいで、お前を連れ戻せないなんて……!」 渾身の演技だ。リンとセーラが俺の両肩に手を置き、優しく、温かな体温を伝えてくる。美女二人との絆が深まるたび、俺の心の中の期待値カウンターは最高潮に達していた 。

 

 一方で、棺桶の中のジェニーは、俺の「絶叫」を外から聞いて、幽霊ながらに号泣していた。 (兄貴ぃ……! ボクのために、そんなに必死になってくれてたんだね……! 自分の修行不足で、兄貴にこんな悲しい思いをさせるなんて……ボク、もうわかったよ! もっともっと、棺桶の中で精神を鍛えて、いつか兄貴を助けられる大賢者になってみせるからね!)

 

 ジェニーの健気な決意が、木箱を小さく揺らす。 「……見てください。ジェニーさんが、勇者様に応えようと震えています」  リンがさらに感動し、俺の腕に手を回す。

 

 こうして、神父への「黄金の賄賂」により、ジェニーの蘇生は無期限に延期され、俺のハーレム旅は守られた 。 「さあ、行こう。ジェニーの覚悟、決して無駄にはしない」  俺は二人の美女にエスコートされながら、内心で神父と勝利のウィンクを交わし、意気揚々と教会の階段を下りていった。

 

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