ギャンブラー勇者の鉄壁なる「棺桶」管理術 作:ドラクエ風短編小説
旅を続ける一行は、どんな死者をも蘇らせるという伝説の「世界樹の葉」の噂を耳にした。 「勇者様!世界樹の葉があれば、やっとジェニーさんを生き返らせられますね!」 リンが希望に目を輝かせ、セーラも「……理論上、どんな深い魂の眠りも覚ますはずよ」と頷く。
俺は内心で(チッ、余計な情報を……)と舌打ちしながらも、顔には聖母のような微笑みを浮かべた。 「ああ。俺もそれをずっと願っていた。……行こう、ジェニーのために!」
1. 聖域への登頂
世界樹の頂上。黄金に輝く葉が、そよ風に揺れている。リンが駆け寄り、一枚の葉を手に取ろうとしたその瞬間――。
「待て、リン! 触れてはいけない!」 俺の切実な叫びが、聖域に響き渡った。
「えっ……? どうしたんですか、勇者様!?」 リンが手を止め、驚いて振り返る。セーラも杖を構えて警戒する。
「……気づかなかったのか? この葉からは、微かに『試練の波動』が出ている」 俺は世界樹の葉を鋭い目で見据え、もっともらしい嘘を並べ立てた。
「今ジェニーにこれを使うのは…もったいな……いや、あまりに危険だ!ジェニーは今、棺桶の中で『純粋な魂の孤独』を磨く修行の最終段階にいる。そこに、この強力すぎる聖なるエネルギーを与えたらどうなる? ……彼の魂は、あまりの光の強さに耐えきれず、消滅してしまうかもしれないんだ」
2. 美女たちへの「高度な説得」
「えっ……消滅……!?」リンが顔を青くする。 「セーラ、君ならわかるはずだ。不純物が混じった魂に、高純度の魔力を流し込む危険性を」 俺がセーラに話を振ると、彼女は思慮深く顎に手を当てた。
「……確かに、急激な魔力の流入は精神を崩壊させるリスクがあるわね。ジェニーの今の『不完全な魂』の状態では、毒になる可能性も……否定できないわ」
俺はさらに畳み掛ける。 「今、ここで俺たちが勝手に葉を使うのは、俺たちの『エゴ』だ。ジェニーは棺桶の中から、俺たちに『まだその時ではない』と、必死に訴えかけている……。俺には聞こえるんだ、彼の震える声が!」
棺桶の中のジェニーは、俺の言葉に激しく揺さぶられていた。 (あ、兄貴……!ボク、そんなに危ない修行の真っ最中だったんだね……!ボクを消滅させないために、あんなに必死に止めてくれるなんて……やっぱり兄貴はボクの命の恩人だよ!)
3. 「尊い」決断
「……そうですね。ジェニーさんのために、今は耐えましょう」 リンが涙を拭い、世界樹の葉から手を離した。 「……そうね。彼の魂が修行を終えるその日まで、この葉はそのままにしておきましょう」
俺は二人の肩を抱き、優しく微笑んだ。 「ありがとう、二人とも。ジェニーもきっと喜んでいる。……さあ、彼が安心して修行を続けられるよう、この神聖な場所から離れようか」
俺は、スッと世界樹の葉を手に取り「しおり」代わりに自分のギャンブル必勝ノートに挟み、美女二人をエスコートして木を下りた。
後ろで引きずられる棺桶の中から、ジェニーの(兄貴ぃ〜!一生ついていくよ〜!)という感謝のすすり泣きが聞こえてくる。
「……ふぅ。世界樹の葉(期待値)を無駄に消費せずに済んだな」 俺たちは、夕日に向かってさっそうと歩き出すのだった。