十種影法術で逝く青春記録   作:段差ダンサー

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普通(笑)の少女そして狐

どこかで爆発が起きている。銃声も聞こえるし悲鳴ならすぐ近くで鳴っている。

いつものブラックマーケットだ、もうここまでくると安心してくる。

 

俺は面倒事が嫌いだ。

関わって得が無い、面倒事に関わるくらいなら寝てた方がマシである。

常々そう思っている。思ってるんだが...

 

「なんでこんなことになってんだ?」

 

 

 

 

〈数分前〉

 

 

 

 

 

 

トリニティの制服を着て、ペロロの鞄を背負った中学生くらいの少女が大量のスケバンに追われている。なんで制服着てブラックマーケットに居るん?馬鹿なのか。

 

見た目は美少女なのに中身がアウトロー過ぎる、ブラックマーケットに学校帰りみたいな状態で来るとか肝っ玉座りすぎだろ。心臓だけゴリラみたいになってそう。

 

とはいっても

 

「流石に見捨てる程落ちぶれちゃいないけどさぁ...」

 

自分の影を広げて少女の進行方向にある曲がり角の先に簡易的な落とし穴を作る。

それに気付けず曲がった瞬間落ちていく少女、追ってるスケバンから見たら曲がり角で急に消えたようにしか見えないだろう。

 

暫くして、スケバン達が散った後に影から出す。

 

「よお、大丈夫か?」

 

「ぇ?あっ、え?」

 

「なんだ、影に落ちた事は無かったか?」

 

「そんな事あるわけないですよ!」

 

「どうどう、落ち着けって」

 

「はぁ...」

「えっと、助けてくれたってことでいいんですか?」

 

「そうだ、感謝しな」

 

「ありがとうございます!!それでは!」

 

「おう、じゃあな」

 

...「じゃあな」はダメじゃね?今行ったらまた同じことになんだろ。

というかそっち外じゃねえぞ、もっと中心に近い方向なんだが。

 

「あー、ブラックマーケット始めてか?外はあっちだぜ」

 

「まだ限定ペロロ様缶バッチを買えてないんです...邪魔するんですか?」

 

ほんわかしていた雰囲気が一変し、鋭い目つきでこちらを睨んでくる少女。

 

「その、な?そういう訳じゃないんだが」

 

ほら、やっぱヤバい奴じゃん。助けなきゃよかった。

 

「今行ったらまたスケバンが追ってくるからさ、後日とかでいいんじゃないか?」

 

「そんな悠長な事言ってたら他の人に()()()()ペロロ様がとられてしまいます!」

 

すごい剣幕でそう怒鳴る少女。明らかに中学生なのに覇気が中学のソレじゃないぜ...

 

「あークソ、だから面倒事は嫌いなんだよ」

 

どうする?

候補としては

 

1.このままさよならする

2.無理矢理外に連れ出す

3.護衛する

 

の三つだろう。

まず1は論外。

そして2は...いったん外に出してもまたすぐ戻ってくるだろう、却下だ。

3の護衛するは、クソめんどくさいが一番安全だ。塵芥がどれだけ来ようとも大丈夫だしな。

 

なら、護衛するしかないってのか?

 

――否、絶対に俺が護衛しなければいけない訳じゃない。

 

そうだ、思い出せ俺の術式は十種影法術。

式神を操る禪院家相伝の術式!

 

片手の薬指と中指の間を広げてもう片方の手を重ね、両親指を耳に見立てる。

 

「玉犬・白、黒」

 

「わあ!おっきなワンちゃんですね!力尽くで止めるつもりですか?」

 

「違う、こいつらにお前を護衛させる。早く目的を達成して帰れ」

 

「っ!いいんですか!?」

 

「声がデカい。早くしろ」

 

「ありがとうございます!!」

 

声がデカい...

 

「そうだ、名前は?」

 

「私ですか?阿慈谷ヒフミです!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

さて、少女...阿慈谷ヒフミに玉犬を護衛に付かせる時に、一つ命令していたことがある。

 

『二匹じゃ対応できない存在が襲撃してきたら遠吠えで知らせる事』

 

その説明を何で今したかって?

聞こえるからだよ!!クソデカい遠吠えがな!!!

 

アオオオオオォォォォォーーーン!!!

 

クソッ、急ぐか。まだ耐えているようだがいつまで持つか分からん。

 

両手を交差させて翼を表現し、親指をくちばしに見立てる。

 

「鵺」

 

鵺に乗り、空を最高速で駆ける。そこまで離れていなかったこともあり十秒程度で到着した。

 

「見つけた!」

 

着物を着て狐の面をかぶっている生徒が玉犬と戦っている。百鬼夜行の生徒か。

玉犬二匹相手に余裕をもって戦っている、遊んでいるのか?随分楽しそうだ。

 

「鵺、そのままあいつに電気纏って突進しろ」

 

玉犬を白黒どちらも影に戻す。

 

片手の中指と人差し指を少し曲げて鼻、小指と人差し指を立てて牙、片手を重ねて頭、親指を口として見立てる。

 

「来い、満象」

 

出来るだけ影を大きくなるように操作する。

そこから現れるのは、通常の象のサイズを優に超越した額に辺津鏡の文様がある巨大な象だった。

 

 

轟音

 

 

地面が割れ、近くのビルは崩れ落ちる。

 

衝撃波は周りの物を吹き飛ばし、粉塵が周囲に舞う。

 

「やべ、やり過ぎたか?」

 

「やり過ぎですね、当たっていれば致命傷でしたよ」

 

殺気。

しかも特級のやべー奴。

 

「そのまま死んでくれた方がマシだったかな...」

 

「あら酷い、野蛮な殿方は嫌われますわよ」

 

「はぁ...」

 

俺は困ってた美少女を助けただけなのに、

 

「なんでこんなことになってんだ?」

 

なあ

 

 

「『災厄の狐』」

 

 

「知られていましたか」

 

「当然、傭兵業は情報も大事なんでね」

 

その瞬間、『災厄の狐』弧坂ワカモがシユウに銃口を向ける。

 

銃声

 

ワカモが放った鉛玉を目視したシユウは影を操り壁を作る。

 

影の壁に吸い込まれた弾丸は勢いをなくしシユウの足元の影から排出された。

 

壁を目くらましに回り込んでいたワカモが倒れるかのような低姿勢で銃剣を振るう。

 

後ろに跳ぶことでそれをさけ、跳びながら影から取り出したサブマシンガンを乱射する。

ワカモは瞬時に当たる弾と当たらない弾を見分け、当たる弾だけを銃剣で弾いた。

 

(今だ)

 

「満象、撃て」

 

その言葉を合図に先程から溜めていた水を高速で噴射する。

それは即席のウォーターカッターであり、生徒の身体を切断までは行かないものの吹き飛ばすほどの威力があった。

 

「ッ!?」 

 

ワカモはそれに直撃、しかし全く効いた様子は無く何事も無かったかのようにその場に立っている。ワカモは反撃と言わんばかりに満象の目をライフルで打ち抜く。

 

それにより満象はダウン、シユウは即座に満象を影に戻した。

 

「脱ッあぶねェ!」

 

いつの間にか短刀を取り外したワカモはシユウに向かってそれを投げた。

シユウは右側に跳躍して避ける。

 

「そんな簡単に跳んでいいのですか?」

 

再び銃声

 

(防御姿勢ッ間に合わない!ならば集中的な呪力強化...!ッ間に合った!)

 

「随分な火力だな、神秘が詰まってやがる。腕がしびれたぜ」

 

「真面に喰らってそれですか」

 

「頑丈さには自信がある」

 

これ...このまま逃げていいんじゃね?鵺使えば追ってこれないでしょ。

別に俺が戦う理由ないし、呪力探知で分かるが阿慈谷はもう逃げてるからな。

 

両手を反対に向かせて人差し指で頭、下のほうの手で足、上のほうの手で中指と人差し指を立てて耳を見立てた。

 

「脱兎」

 

脱兎を影から召喚する。

 

「なっ!?」

 

本体だけを持ち去り、さっき出した鵺の足につかまる。

 

「あばよ、もう二度と会いたくないぜ」

 

そのまま鵺でその場を跳び去った。

 

 

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