偽りの仮面   作:來々來李

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今年最後の投稿になります


俺は雪ノ下雪乃が嫌いなのかもしれない

突然だが我が高校である総武高校は歪な形である。

教室などの普通校舎、そしてその校舎と平行して特別棟が並んでいてそれに渡り廊下をくっつければ完成だ。

 

何故急にこんな話をしているかと言うと…

 

「平塚先生。なんで僕達、放課後なのに特別棟の部屋の前にいるんですか?」

「雄沢、理由なら…っと、すまなかった。君にはまだ説明してなかったな。これから君達にはここで奉仕活動をしてもらう」

「奉仕活動ねぇ…」

 

まぁ、別にいいか。

奉仕活動なら内申点上がるだろうしな。

 

「…雄沢?聞き覚えがあるような」

 

そんなヒッキーくんの呟きもカラリと戸を開ける音がかき消した。

 

「げぇ…」

 

平塚教諭が開け放った扉から見えた中の光景に思わず素が少し出てしまった。

 

積み上げられた机や椅子はこの際どうでもいい。それより問題は中にいる人物だ。

 

端正な顔立ちに流れるような黒髪。斜陽が黒い髪にキラキラと反射して眩く感じる。

そんな美少女が一人教室の片隅で本を読んでいた。

 

雪ノ下雪乃。

 

それが彼女の名前だ。

我が校の誇る国際教養化J組一、頭が良い少女。

それはつまり学年一、頭が良いと言うことだ。

 

そんな才女であるが…正直、俺は奴が苦手だ。

 

しかし、実を言うとそんな彼女と俺は僅かながら接点がある。

それは…

 

「平塚先生。入るときはノックを…あら?なんでこんなところに雄沢くんがいるのかしら?」

 

なんてことない、俺がその国際教養化J組の一人なだけだ。

 

しかしながら…俺の名前を覚えているとは意外だな、雪ノ下雪乃。

興味なんて微塵も湧かない唯のクラスメイトの存在なんてどうでもいいと覚えていないもんだと思ったが。

 

「そう言えば雄沢はJ組だったな」

「悪かったですね、J組で。こんな目でも成績には関係ないんですよ」

「あぁ!J組の雄沢ってあの雄沢か…」

 

え?何、ヒッキーくん俺のこと知ってるん?

 

「何、意外な顔しているのかしら雄沢くん?意外でもないでしょう。あなた、目つきが悪いから有名よ」

 

これが苦手な理由だ。

冷めてる性格ならまだ許容範囲だが…それに加えて毒を吐くことを自然とするのだ。

 

一年前にクラスメイトだから一応全員に話かけた時にこのアマは「その飢えた野獣みたいな目で私を見ないでくれるかしら?」とか抜かしやがった。

 

普通、初対面の人間にそこまで言うか?

傷つくが、百歩…いや、千歩譲って悲鳴や引き攣りなら許すというか、目つきの悪さを自分でも理解してるからしょうがないと思える。

だが、毒を吐かれたのは流石にムカついた。

それ以来、クラスメイトの人間とはある程度の関係は持ちながらもこのクソアマだけはノータッチを貫いてきたのだ。

 

あぁ、思い出したら腹が立ってきた。

言いたいこと好き勝手言いやがって。

学校外で会ったら覚えてろよ。

あれ?もしかして俺、あのアマが嫌いなのか?

 

「それで雄沢くんは良いとしてそのぬぼーっとした目の人は?」

 

良いってなんだよ。

あれか、無視して良いってか、あぁん?

 

「あぁ、彼は比企谷八幡。入部希望者だ」

 

ヒキガヤ…なる。

それでヒッキーか。

つーか、ヒキガヤってどういう漢字書くんだ?

 

っとそんなどうでもいいことよりヒッキーくんに自己紹介しとくか。

一応、奉仕活動を一緒にするみたいだし。

 

「自己紹介遅れたね。僕の事は知ってるみたいだけど…一応。二年J組、雄沢八雲です、よろしく」

「お、おう。二年F組比企谷八幡です。先生、入部ってなんだよ」

 

あ、それは俺も気になった。

 

「君達にはここでの部活動を命じる。ここで反省しろ」

 

はぁ!?部活?

 

「先生、それ、僕は無理です」

「ほぅ…何故だ?言ってみろ」

 

言うから睨むなよ。

こっちだってちゃんとした理由(捏造)あるんだし。

 

「僕、バイトやってるんで無理です。ちゃんと許可書の申請も通ってますよ、ほら」

 

財布から学校側から出された許可書を取り出して見せる。

やっべ…焦った。ライターまでボロりそうになった…バレたらまずいだろうし。

 

「ふむ…本物だな。さて…これはどうしたものか。因みに曜日と時間は?」

「平日は毎日ですよ。時間は6時から9時までの三時間ですけど」

 

嘘だ。本当は土日の10時から5時までの休憩有りの7時間だ。

それにバイトと言ってもそんな大したもんではない。

知り合いのカラオケ店でただ店番しているだけだ。

 

「ほほう…嘘だな。あの店は少なくとも水曜日は休みの筈だ。つまり君の言っていることは嘘、そうだろう?」

「…ちょっと待ってください。先生うちの店を知ってるような口ぶりですね」

 

いや、まてよ。

うちの店、店長(笑)の意向で稀に合コンを開催して…あっ、察し。

 

「おい、その生暖かい哀れみの視線をやめたまえ。思わず殴りたくなるじゃないか。コホン、という訳で、見れば分かるように彼らは根性が腐っている。片方はそれで孤独な憐れむべき奴だし、もう片方は君も知っている通り問題児だ」

 

孤独で憐れむでヒッキーくんを問題児で俺に視線を向けてきた。

ヒッキーくんが所謂『ぼっち』なのかは知らないが…

自分のことに関しては否定ができないし、否定する気もない。

 

「こいつらの捻くれた態度や孤独体質の更正が私の依頼だ」

 

依頼?奉仕活動の話は…いやまてよ。

平塚教員は嘘を言わない…とまでは言わないが嫌う傾向がある。

奉仕活動と言うのはここにつれてきたそれなりの理由があるとしていいだろう。

そして、依頼と言うワード…あぁ、読めたぞ。

 

「先生が躾ければ良いんじゃないでしょうか?いつもの通り殴るなり蹴るなりすれば良いんじゃあないでしょうか?」

「比企谷はそれでどうにかできるか分からないし、まず雄沢は本気で殴りかかっても当てれそうにないからな。それに最近は各所で五月蝿いからな。肉体的な暴力はなしだ」

 

おいおい、考え事してたら物騒な言葉が飛び交ってるんだが何でだ?

つか、思考回路ショートしすぎだろ、コイツら。

平塚教員は直ぐに暴力に頼ろうとするからいつまでも結婚が出来ないんだよ。

 

「お断りします。その二人の下心…訂正します。下心に満ちた下卑た目と殺意に満ちた凶悪な目を見てると色々な意味で身の危険を感じます。第一、雄沢くんの目は明らかに私には無理です。近くの整形外科にお願いします」

 

あいも変わらず自意識過剰過ぎるな、雪ノ下雪乃。

美人なのは認めるが…だからと言って流石に度を越えてんな。

第一、俺の好みはこう…起伏に富んでいるナイスバディな女の子だっつーの。

あと、目に関して余計なお世話だ。

 

「安心したまえ、雪ノ下。比企谷は目と性根が腐っているだけだ。リスクリターンの計算と自己保身しか考えていないような人間だ。例えるなら…典型的な小悪党って所だな。雄沢についてだが…まぁ、流石に学内では大きな騒ぎを起こすような奴ではないだろう、学内では」

「小悪党…確かに。雄沢くんに関しても同意ですね。流石の彼も学内では問題を起こせないでしょうし」

「納得しちゃったよ…」

「…『学内では』って酷いなぁ」

「ひぃっ!」

 

あと、平塚教員はまだしも雪ノ下雪乃。

てめぇは俺が好んで問題を起こすような奴だと言ってんだな?喧嘩なら良い値で買うぞ。

 

自身の頬がピクピクと引き釣っていることを自覚しながらも努めて笑顔を見せたつもりだったがどうやら失敗していたようだ。

ヒッキーくんが短い悲鳴と共に隣で身体をガタガタと震わせいる。

 

…なんかすまないなヒッキーくん。

脅かすつもりはなかったんだ。

罪悪感が沸くから震えないでくれよ…

あとで飲み物でも買ってあげるから。

 

「一応、先生直々の依頼ということもありますから無碍にはできませんし…できることはやってみます」

 

本当に嫌そうだな、雪ノ下雪乃。

思いっきり、溜息なんてつきやがって。

 

「そうか。すまないが後は頼んだぞ」

 

雪ノ下雪乃にそれだけ告げると踵を返してさっさと教室を去っていく平塚教員。

 

 

 

…おい、この三人で放置とか何考えてんの?

傷害事件が起きちゃうよ?




皆さん、来年もよろしくお願いします
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