勘違い戦士、ダンジョンを揺らす   作:お粥のぶぶ漬け

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第10話

15階層での「狩り」を終え、リリの背負う巨大なバックパックは、八割がた中層の質の良い魔石でパンクしそうなほどに膨れ上がっていた。

 

「……信じられません。数時間で、中堅ファミリアがパーティーで稼ぐ以上の稼ぎです。シュタルク様、あなた本当に何者なんですか……?」

「え? いや、ただの運がいい新人だって。さあ、帰るよリリ!」

 

 シュタルクは、リリの重そうなバックパックを片手で軽々とひったくると、もう片方の腕で再びリリを「ひょい」と抱え上げた。

 

「ちょっ、またですか!? 今度は荷物まで! 重いですよ!?」

「全然! 修行で使っていた大岩より全然軽い!」

 

 再び爆速で上層まで駆け戻り、人目のない第2階層あたりでようやくリリを下ろす。

 

「……ふぅ。ここからは別々に行こう。俺、15階層の魔石を持ってるのがバレるとエイナさんに怒られちゃうから、偽装用にゴブリンの魔石をいくつか集めていくよ」

 

 リリは呆れながらも、大量の中層魔石を抱えて換金所へ。一方のシュタルクは、そこらへんのゴブリンをパシパシと叩いて、いかにも「新人が頑張りました」という数個の小粒な魔石を手にしてギルドへ向かった。

 

「あ、エイナさん! 今日も頑張ってきたよ!」

 換金窓口でエイナを見つけ、シュタルクは努めて「爽やかな新人」の笑顔を作った。

「お疲れ様、シュタルクさん。……ええと、今日はゴブリンが五匹? ふふ、いいわね。無理せず、一歩ずつ。順調に成長してるよ!」

「はい! ありがとうございます!」

 

 エイナに褒められ、シュタルクは内心で冷や汗を流しながらギルドを後にした。

 

(……よし。なんとか誤魔化せた。でも、いつまでこれ、続けれるんだろうな……)

 

 外に出たシュタルクの顔には、どこか微妙な陰りがあった。

 一方、リリは換金所を出て裏通りで、見たこともない額の金貨を手に震えていた。

(……どうしましょう。このままあの人のサポーターを続ければ、リリはすぐ目標額を貯めることが出来るでしょう。でも、シュタルク様の強さは異常すぎます。いつか、他の冒険者と騒ぎを起こすんじゃ……)

 

 リリが自問自答しながら待ち合わせ場所に向かうと、そこには約束通りシュタルクが待っていた。

 

「リリ! お疲れ様!」

「……シュタルク様。あの、リリは……」

 

 リリが何かを言いかけたその時、背後から下卑た笑い声が響いた。

 

「おいおい、リリィ。景気が良さそうじゃねえか。新しい『カモ』でも見つけたのか?」

 

 現れたのは、ソーマ・ファミリアの団員たち。リリから稼ぎを搾取し続けている男たちだった。

 

「ひっ……!」

 

 

 リリの体が恐怖で硬直する。男たちはシュタルクを鼻で笑いながら近づいてきた。

「おい、そこのガキ。そのサポーターは俺たちの所有物だ。いい思いをしたなら、俺たちにも相応の挨拶をしてもらおうか……」

「……あ! 後ろに師匠が!!」

 

 シュタルクが突然、真剣な顔で男たちの背後を指差した。

 

「あぁ!? 誰だそりゃ――」

 

 男たちが反射的に振り返った一瞬。

 

「リリ、捕まってて!」

「えっ、あ、ひゃい!?」

 

 シュタルクは電光石火の速さでリリを抱え上げると、男たちが向き直るよりも早く、その場から完全に消失した。

 後に残ったのは、猛烈な突風に煽られて尻餅をついたソーマの団員たちと、何が起きたか分からず呆然とする周囲の通行人だけだった。

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