勘違い戦士、ダンジョンを揺らす   作:お粥のぶぶ漬け

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第13話

夕闇が迫るオラリオ。廃教会の地下ホームに、シュタルクとリリの足音が響く。

「ヘスティア様、ただいま帰りましたよ!紹介したい人がいるんだ!」

 

 シュタルクの背後から現れたリリを見て、ヘスティアは目を丸くした。

 

「おかえりシュタルクくん! ……おや、その子は? 今朝言っていたサポーターの……」

「リリルカ・アーデです。今日、シュタルク様に救われ……【ヘスティア・ファミリア】への移籍を希望しに来ました」

 

 リリの神妙な挨拶にヘスティアは驚きつつも、首を傾げた。

 

「移籍? それは構わないけれど……相手の神様にはちゃんと許可を取ったのかい? 確か【ソーマ・ファミリア】だったね。あそこは脱退するのが大変だと聞いたことがあるけれど……」

「それが、ソーマ様に会いに行ったら、リリの覚悟を認めてくださったんです。リリが自分の腕を噛んでまで意志を示して……。それを見たソーマ様が『お前の脱退を認める』と仰って、そのまま送り出してくれたんですよ」

 

 シュタルクは嘘は言っていません。**「窓から団長を投げ捨てたこと」や「神に趣味で脅したこと」**を伏せただけです。

 ヘスティアはそれを聞いて、感動に目を潤ませました。

 

「へぇ……! あの無関心なソーマがねぇ。……そうか、君たちのその真っ直ぐな想いが、神の心を打ったんだね。シュタルク君の誠実さは本物だ。素晴らしいじゃないか!」

 

1. ステータス更新と労い

「さて、ついでにシュタルクくんの更新からだ。……おや」

 

 ヘスティアの手が止まりました。全項目がまた8から9も上がっている。

 

「シュタルク。今日も随分と伸びているね……。 Lv.1の冒険者が、毎日これだけの上昇量を維持するなんて、早熟スキルの影響かな?普通じゃ考えられないよ」

 

シュタルク(Lv.1)

力 :I 17 (+8)

耐久:I 15 (+7)

器用:I 12 (+7)

敏捷:I 14 (+8)

魔力:I 0

スキル:戦士の心得

(戦士として戦う度に早熟する)

 

 シュタルクは冷や汗を流しながら、事実の一部だけを伝えました。

 

「あ、それは……今日もリリが、魔物のたくさんいる場所へ案内してくれたんです。そこで俺、必死に斧を振るって……。正直、夢中でよく覚えてないんですけど、リリを危ない目に遭わせないように、必死だったというか……」

 

 するとヘスティアは、優しく微笑んでシュタルクの肩を叩きました。

 

「……そうか。君、本当に頑張ったんだね。一人で戦うよりも、誰かのために戦う方が、君には向いているのかもしれない。リリくんを無事に守り抜いて、自分も成長して帰ってくるなんて、誇らしいよ」

「あ、はい! !」

 

 シュタルクは、ヘスティアが深掘りせずに自分の「頑張り」を認めてくれたことに、心底ホッとしました。リリも隣で深く頷きます。

 

2. 加入の儀式

 こうして、ヘスティアはリリの加入を祝福しました。背中に神聖文字が刻まれ、リリは正式に家族となります。

「リリルカくん、これからよろしく頼むよ。君が支えてくれれば、シュタルクくんももっと頑張れるはずだからね」

「はい……! シュタルク様が道を外れないよう、精一杯お支えします」

 

3. 静かな夜の共有

 宴が終わり、ヘスティアが寝静まった後。地下の談話室で二人は一息つきました。

 

「……シュタルク様。ヘスティア様、凄く喜んでくれましたね。本当に本当のことを言わなくて良かったんですか?」

「ああ。ヘスティア様が安心して笑ってくれてるなら、それが一番だよ」

 

 リリは、かつて絶望に満ちていた自分が、たった2日で今こうして温かい場所で「明日」を考えていることに、静かな幸せを感じていました。

 シュタルクは床下に隠したヴァリスを思い出し、(いつかこれで、二人に内緒で美味しいものをたくさんご馳走しよう)と、密かに決意するのでした。

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