勘違い戦士、ダンジョンを揺らす   作:お粥のぶぶ漬け

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第14話

 活気に溢れる迷宮都市オラリオ。その中心にそびえ立つギルド本部には、今日も多くの冒険者が行き交っている。

 リリが【ヘスティア・ファミリア】に加わってから、早いもので一年が過ぎた。当初はボロボロだった廃教会の地下ホームも、シュタルクが稼いでくる安定した収入とリリのやり繰りによって、今では「家」と呼べる温かさを持つようになっている。

 そんな中、ギルドの受付窓口には、すっかり顔馴染みとなった担当アドバイザー、エイナ・チュールと、彼女の自慢の担当候補である二人の姿があった。

 

「……はい、確認したわ。シュタルクくん、リリルカさん。今月のステータス報告ね」

 

 エイナは提示された数値を資料に書き込みながら、感嘆のため息をついた。その眼鏡の奥の瞳には、驚きを通り越した畏敬の念さえ混じっている。

【シュタルクの現在値(1年後)】

• 力 :D 520 (+511)

• 耐久:D 513 (+505)

• 器用:E 410 (+405)

• 敏捷:E 480 (+474)

• 魔力:I 0

 

「本当に……信じられないわ。一年の間、平均して『7から8』もの上昇を全項目で維持し続けるなんて。普通はどこかで成長が停滞するものなのに、あなたは一度も足を止めなかった。……どれほど血の滲むような努力をしたのかしらね」

 

 エイナの言葉に、シュタルクは照れくさそうに頬を掻いた。彼にとってこの数値は、決して「無理」をした結果ではない。むしろ、師匠であるアイゼンとの地獄のような日々に比べれば、今の探索はまだ「準備運動」に近い感覚なのだ。

 

「あはは、毎日リリが効率のいいルートを組んでくれるおかげですよ。俺はただ、必死に斧を振ってるだけなんだから」

「シュタルク様が謙虚すぎるだけです、エイナ様。リリもこれほど安定して成長する冒険者は見たことがありません」

 

 シュタルクの隣で、リリは完璧な営業スマイルを浮かべて応じる。しかし、その内心は一年経っても変わらぬ戦慄に支配されていた。

 

(……ええ、驚きですよ。一年前、中層で数え切れないほどのミノタウロス狩りをした時ですら、ステータスは『8』しか上がらなかったんですから。この人は一体、どれほどの地力を持っているっていうんですか……!)

 

 リリは知っている。シュタルクが戦えば戦うほど、地力が強すぎてステータスが思うように上がらないことを。だが、神の恩恵という「器」に反映されるのは、常に「7〜8」という、彼にとっては塵のような一部でしかない。この男は、ステータスという概念では計りきれない何かを、その身に宿しているのだ。

 エイナは晴れやかな笑顔でシュタルクに許可を告げた。

 

「約束通り、10階層近辺……第10階層から12階層くらいまでの探索を許可します。このステータスなら、今の階層では物足りないでしょうしね。おめでとう、シュタルクくん。これでようやく、中堅冒険者への第一歩だね」

「ありがとうございます、エイナさん! どんな状況からでも撤退出来る準備はちゃんとしときます!」

 

 シュタルクの返答に、エイナは苦笑いした。口を開けば「撤退」や「逃げる」という言葉が出る。だが、それこそが彼をこの一年、一度も危うい目に遭わせなかった最大の武器であることを彼女は思い込んでいた。

 

 許可を受け、意気揚々と窓口を離れる二人。

 その時、入れ替わるように窓口へ向かってきた一人の少年と肩がぶつかりそうになった。

 

「あ、すみませんっ!」

 

 慌てて謝ったのは、白い髪に赤い瞳をした、うさぎのような見た目のひどく初々しい少年――ベル・クラネルだった。

 まだ冒険者の「ぼ」の字も知らないような少年の背中を見送りながら、唐突な遭遇に胸をざわつかせた。




訂正に伴い少し変えました

あと補足ですが担当アドバイザーの詳しい仕事を知らないので
エイナさんはいつダンジョンに入ったかくらいと定期的にステータスのパラメータの確認を行っているという事にして下さい

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