勘違い戦士、ダンジョンを揺らす   作:お粥のぶぶ漬け

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第15話

 ギルドの喧騒の中、シュタルクと肩がぶつかりそうになった少年――ベル・クラネルは、振り返って何度も深々と頭を下げていた。

 

「あ、すみませんっ! ぼんやりしていて……!」

「あはは、大丈夫。俺もリリと話してて前を見てなかったし」

 

 シュタルクはいつもの気安い笑顔で応じる。だが、ベルの瞳には、目の前の戦士が放つ「静かな重圧」がはっきりと映っていた。

 

(……すごい。この人、僕と同じくらいの細身に見えるのに、立っているだけで隙がない……!)

 

 そんなベルを、エイナが窓口から呼び寄せ話を聞く。

 

「君、受付はこっちよ。……ちょうど良かった。シュタルクくん、このベルくん、今日オラリオに来たばかりで、入団先を探しているの。もし良ければ、探索系ファミリアの募集情報を一緒に見てあげてくれないかしら?」

 

1. ベルの苦難とシュタルクの提案

 掲示板の前で、三人は募集情報を眺める。だが、並んでいるのは「女性のみ」や「入団試験あり」など、訓練をしてないように見えるベルのような新米には厳しい条件ばかりだ。ベルの肩がみるみると落ち込んでいく。

 

「……やっぱり、どこも厳しいですね。僕みたいな素人は、相手にもされないのかな……」

 

 シュタルクは、かつて自分もこうして彷徨うはずだったことを思い出し、ベルの背中をポンと叩いた。

 

「ま、オラリオは実力主義だし、最初はみんなそうだよ。……もし、どこにも決まらなくて本当に困ったら、俺たちのところに来ればいい。うちは神様と俺とリリだけの零細派閥だけど……神様はすごく優しいし、居心地はいいよ」

「……えっ? いいんですか?」

「ああ! ま、まずは一通り当たってみなよ。応援してるからさ。じゃ、俺たちはダンジョンに行ってくるから! 行こう、リリ」

「はいっ、シュタルク様!」

 

 リリはシュタルクの腕を自然な動作で抱き寄せ、少しだけベルを牽制するように微笑んだ。この一年、彼女のシュタルクへの愛着は深まる一方で、彼に向ける笑顔は「家族」を超えた熱を帯びている。

 

2. 夕暮れの再会

 夕刻。15から17階層までの探索を終え、ホクホク顔でギルドに戻ったシュタルクたちの前に、階段に座り込んで今にも泣き出しそうなベルの姿があった。

 

「……ベル? もしかして、全滅だった?」

「あ……シュタルクさん……。はい……全部、門前払いで……。僕、もう、どうしたら……」

 

 途方に暮れる少年の姿は、一年前、オラリオに来たばかりのお上りさんだった自分と重なった。場合によってはこうなっていたのだろうと、シュタルクはリリと顔を見合わせ、頷き合う。

 

「よし! なら、約束通り俺の神様に引き合わせてあげるよ。……断られる心配はしなくていい。うちの神様は、君みたいな一生懸命な子が好きだから」

 

3. ヘスティアへの引き合わせ

 廃教会の地下ホーム。シュタルクがベルを連れて帰ると、ヘスティアが「おかえりシュタルクくん!」と勢いよく飛びついてきた。

 

「ヘスティア様、ただいま。……あのさ、新しい家族の候補を連れてきたんだけど……いいかな?」

 

 シュタルクを見つめるヘスティアの瞳は、一年前よりずっと慈愛と独占欲に満ちている。彼女にとってシュタルクは、ファミリアを支え続けてくれた、自分のたった一人の初めてできた「特別な眷属」だ。

 

「シュタルクくんが連れてきた子なら、悪い子のはずがないね! ……それで、君。ベル・クラネルと言ったかい? それじゃベルくんだね。君も僕の家族にならないか?」

 

 ヘスティアの差し出した手に、ベルは震える手で応じた。

 こうして、一人の少年が【ヘスティア・ファミリア】に加わった。それは、最強の戦士シュタルクと、知略のサポーター・リリ、そしてのちに「未完の英雄」と呼ばれるベルが揃った、オラリオの運命が動き出す瞬間だった。

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