夕闇が迫る頃、シュタルクとリリがギルドのロビーに戻ると、そこにはベンチで真っ白に燃え尽きたベル・クラネルの姿があった。
「……あ、シュタルクさん……リリさん。おかえり、なさい……」
「お疲れベル! エイナさんの講習、相当効いたみたいだな」
「はい……頭の中に、一生分の知識が流れ込んできたみたいで……」
フラフラと立ち上がるベルの肩を、シュタルクがガシッっと支える。
「よし、それじゃあ一旦ホームに戻ってヘスティア様を呼んでくる。今日はベルの加入祝いだ。全員で『火鉢亭』にメシを食いに行くぞ!」
1. 賑やかな祝宴
数十分後。豊饒の女主人の次くらいに活気ある酒場『火鉢亭』に、ヘスティア、シュタルク、リリ、そしてベルの四人が顔を揃えていた。
「ベルくんの加入に、乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
ヘスティアの音頭で、賑やかな宴が始まった。串焼きを頬張りながら、ベルは今日学んだばかりの知識を必死に二人に報告する。
「エイナさんに言われました。冒険者にとって一番大事なのは『冒険』することじゃなくて、『生きて帰る』ことだって……」
「その通りだ。……それでベル、明日からのことだけどさ」
シュタルクは少し真剣な表情になり、ジョッキを置いた。
2. シュタルクの激励と支援
「早朝から今後は戦い方を教えることになる。それと初めの数回は、俺とリリがダンジョンに同伴して立ち回りを教える。でも、ベルが行ける階層が増えるまでは、基本的には一人で低層での実戦訓練になると思う。……冷たいようだけど、自分で経験を積まないと、本当の力は身につかないからな」
ベルが不安げに頷くのを見て、リリが補足するように優しく言った。
「大丈夫ですよ、ベル様。シュタルク様が厳しく言うのは、あなたのことを信じているからです」
「……それにさ、お金のことは心配しなくていいぞ」
シュタルクはポン、とベルの細い肩を叩いた。
「生活費や装備の準備は、俺とリリでしっかり稼いでくるから。ベルは自分が稼げるようになるまで、余計な心配をせずに訓練と成長に集中してくれ。……俺も修行ばかりの毎日だったが生活は師匠に、そうやって面倒をみてもらったんだ」
シュタルクの言葉には、かつてアイゼンが自分に向けてくれた不器用な優しさが宿っていた。ベルの瞳に、じんわりと熱いものがこみ上げる。
「いいのかい、シュタルクくん。ベルくんにそんなに甘くして」
ヘスティアが少しだけ茶化すように言うと、シュタルクは照れくさそうに笑った。
「甘やかしてるんじゃなくて、投資だよ…ヘスティア様。……ベルはきっと、俺たちが驚くくらい強くなってくれると俺はそう信じてるからな」
「シュタルクさん……。ありがとうございます! 僕、一生懸命頑張ります!」
少年の純粋な決意。それを見守る神様と、少し呆れたような、でも満足げなサポーター。
こうして【ヘスティア・ファミリア】は、また一つの家族としての絆を深め、新たなに歩を進めた。