祝宴の帰り道、夜風が火照った体を冷ましていく。
上機嫌なヘスティアとベルが先を歩く中、シュタルクとリリは少し後ろを歩いていた。ふとした拍子に、魔法使いの相棒っていいよねくらいで、シュタルクがかつて夢みていたの旅の話を少し変えて、お伽話のように語り出した。
「……リリ、俺の故郷のさらに遠く、北の方に伝わる古い物語があるんだ。ある戦士と、ある魔法使いの女の子の話なんだけどさ」
シュタルクは、自分の体験を他人事のように伏せて語る。
臆病で震えながらも最後には必ず壁になる戦士。そして、その隣に立つ、冷静で少し口の悪い魔法使いの少女。
「その女の子は、とにかく魔法を撃つのが速いんだ。彼女がメインで使うのは、**『魔物を殺す魔法(ゾルトラーク)』**。貫通特化の魔力砲でそれを誰よりも速く、誰よりも正確に放って、戦士が踏み込むための道を切り開くんだよ」
1. リリの抱いた「嫉妬」と「祈り」
シュタルクは懐かしそうに空を見上げて笑う。
「戦士が安心して斧を振れるのは、彼女が後ろにいて、どんな敵の装甲も貫く魔力砲を撃ってくれるって信じてるからなんだ。軌道を曲げてでも、絶対に戦士のピンチを救う……最高のコンビだったんだよ」
リリは黙ってその話を聞いていた。だが、その胸にはチリリとした小さな痛みが走っていた。
それは、純粋な嫉妬だ。自分の知らない「戦士」の隣で、圧倒的な実力を持って背中を預けられている見知らぬ少女への嫉妬。
(リリは……サポーターです。シュタルク様の荷物を持ち、後ろをついていくだけ。リリには、シュタルク様を助けるための、敵を貫くような『力』はありません……)
もし、自分がその物語の少女のように、速攻の魔法を操れたら。
シュタルク様が攻め込む一瞬の隙を、貫通力の高い魔力で援護できたら。
「……その女の子は、幸せ者ですね」
リリは絞り出すような声で言った。
「え? まあ、喧嘩ばっかりしてたけど、いい相棒だったと思うよ」
「リリも……いつか、そうなれるでしょうか。ただ荷物を持つだけじゃなく、あなたの隣で、光の弾丸を放って戦えるような……」
シュタルクは足を止め、少し驚いたようにリリを見た。そして、いつものように優しく彼女の頭を撫でる。
「リリならなれるよ。……っていうか、俺にとってはもう、リリは十分すぎるくらい俺を支えてくれてる最高のパートナーだけどな」
2. 深い眠りの中で育つ「芽」
「……ずるいです、シュタルク様。そんなこと言われたら、リリ、もっと欲張りになっちゃいますよ」
リリは顔を伏せたが、その瞳には小さな決意の炎が灯っていた。
語ってもらった物語の中で戦士を支えた少女のように、自分も「彼」の隣に立つに相応しい力が欲しい。
(シュタルク様に立ちたい…誰にも隣を譲りたくない、肩を並べて実力をもって援護できるような……最短・最速の一撃を……!)
この夜、リリの中に芽生えた強烈な「憧れ」と「独占欲」。
それがダンまちの世界における「魔法」の種子となり、後に彼女のステータスに刻まれることになる。
【魔法:ゾルトラーク(貫通攻撃魔法)】
――その一撃は、後にオラリオの常識を塗り替える「速攻魔法」として顕現することになるが、今はまだ、少女の祈りの中に静かに眠っていた。
魔物を殺す魔法でゾルトラークなのはわざとです
所詮魔法使いの相棒っていいなーってくらいで話を変えながら話しただけってことで
リリには何かしら理由をつけてグリモアを与えたいですね