勘違い戦士、ダンジョンを揺らす   作:お粥のぶぶ漬け

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第4話

 その日の夕暮れ。シュタルクは、エイナによる「地獄の新人講習」を終え、精根尽き果てた様子で古い教会の地下室――ヘスティア・ファミリアのホームへと帰り着いた。

 

「ただいま戻りました、ヘスティア様……」

「お帰りシュタルクくん! 随分と遅かったじゃないか、初陣はどうだったんだい?」

 

 ヘスティアは、初めての眷属の帰還にテンションを上げてパタパタと駆け寄ってきたが、シュタルクの疲れ切った顔を見て首を傾げた。

 シュタルクはソファにどさりと崩れ落ち、深い溜息をついた。

 

「……疲れました。今日、ダンジョンには一歩も入れなかった……」

「ええっ!? 何があったんだい?」

 

 シュタルクは、ヘスティアが用意してくれたお茶を啜りながら、今日一日の出来事を愚痴り始めた。

 

「ギルドの受付にいたエイナさんって人が、俺の担当アドバイザーになったんだけど……。俺が恩恵を受けたのが初めての新人って知ると顔色を変えて講習室に連行されて。そこから日が暮れるまで、ずっと座学だった…」

「あはは、エイナ君のところかい。彼女は真面目だからねぇ」

「真面目なんてレベルじゃないよ! 『あなたは死にます!』って何度も断言されて、分厚い教本で頭がパンクするまでゴブリンの弱点とか、イレギュラーとか起きた時の念の為って13階層くらいまでの情報を叩き込まれて。俺、これでも師匠と山で修行してきたのに、まるで全然戦えない子供みたいに扱われちゃって……。さすがにちょっと、悲しくなったよ」

 

 ヘスティアはシュタルクの隣に座り、彼の大きな手をポンポンと叩いて励ました。

 

「まあまあ。エイナ君がそこまで言うのは、それだけ君が『放っておけない顔』をしてるからだよ。君、見た目は凄く優しそうで、都会の悪い奴にすぐ騙されそうだからねぇ。僕だって、君を送り出す時は心配で堪らなかったんだから」

「……ヘスティア様まで。俺、そんなに頼りなく見える?」

「頼りないっていうか、危なっかしそうに見えるんだよ。でも、それだけ君を死なせたくないと思ってくれる人がいるのは、幸せなことじゃないか」

 

 ヘスティアはそう言って笑うと、明るい声を出した。

 

「いいじゃないか。知識はあって困るもんじゃない。明日はその学んだことを活かして、慎重に、ゆっくりと一歩目を踏み出せばいいさ。僕も、君が最初の魔石を持ち帰ってくれるのを楽しみにしてるからね!」

 

 シュタルクはヘスティアの明るい笑顔に、少しだけ心が軽くなったのを感じた。

 

「そうっすね。ヘスティア様、俺……明日はちゃんと『安全に配慮した戦い』をするように心がける…」

「うんうん、その意気だよ! さあ、今日はもう休もう。夕飯は、バイト先で貰った揚げたてのじゃが丸くんがあるからね!」

 

 二人は、ランプの灯りに照らされながら、温かいじゃが丸くんを囲んで明日の希望を語り合った。

(……ベル君はまだいないけど、ヘスティア様とこうして過ごすのは、ちょっと否とても楽しいかも。俺がこのファミリアを支えられるくらい、ちゃんと稼げるようにならなきゃ)

 

 シュタルクは「明日は丁寧に、安全に戦おう」と決意して、健やかな寝息を立て始めた。

 

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