成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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本日2話目の投稿です。
1話目がまだな方はご注意ください。


11話 ドゥウム戦(2/3)

 オーターを中央にしてその左右にレイン、フィンが並ぶ。

 ドゥウムはそんな3人を見るとおもむろに床へバツ印をつけた。

 

 レインはドゥウムが盲目であることを伝えると懐から魔力濃縮液を取り出した。

 

「オーターさんこれを。魔力濃縮液です」

 

 レインから渡されたそれは確かに魔力濃縮液だった。

 魔力濃縮液はイノセント・ゼロの手の者がイーストンの学生と手を組んで他の学生から魔力を奪うという事件を調査した際に発見された。

 魔力を奪いつくされた者は魔法を使えない魔法不全者となってしまう。早期発見と対処によって大事には至らなかっただけで、一歩間違えば大事件となっていた。

 頭の痛いことに、その事件に関わっている学生の1人はオーターの弟だった。

 

 回収された魔力濃縮液に行われたラベリングもなく、管理されていたものとはまた別のように見えたがオーターはその魔力濃縮液を一息に呷った。

 

 入手経路が不明なこともあり毒を疑わないわけではなかったが、連戦によって魔力は枯渇寸前で敗色濃厚。

 何より、魔法道具管理局局長であるレインが渡してきたもので、あれば使わないという選択はない。

 幸いにも毒は入っていなかったようで調子がおかしくなることもなく、染み渡るように全身に魔力が広がっていく。

 

「2人で挟み撃ちだ」

 

 オーターの指示にレインは短く返事をし、2人は行動を始めた。

 

 オーターは砂にレインはパルチザンに乗ってドゥウムの左右から攻撃を行う。

 ドゥウムはまずオーターへ向かって剣を振りかざした。オーターはしゃがんでそれを躱し、反撃しようとするもすでにドゥウムの姿は消えていた。背後にいたドゥウムが振り下ろす剣をその場から飛びのくことで避ける。剣が床を割ったと思えば次の瞬間にはその剣が目前へと迫っていた。

 受けるには重い一撃。かろうじて砂で防御するも防ぎきることはできずにその勢いのままオーターは弾き飛ばされる。

 

「オーターさん!」

 

 フォローに入ろうとするレインだったが、突如として背後から切りつけられ吹き飛ばされる。

 先ほどまでレインがいたところに現れたのは、無表情ながらもどこか殺気立った様子を見せる両手にチャクラムを持った道化姿の男。

 

「デリザを殺したのはお前だな」

 

 悪魔の五つ子、次男のファーミンだった。

 

 弾き飛びされたオーターはドゥウムが刻んだバツ印の上、ファーミンに吹き飛ばされたレインはそれよりも後方に着地した。

 ドゥウムが剣を横に薙ぎ払い、オーターとレインは砂と剣を混ぜた壁を作り上げる。しかし、それでもドゥウムの横薙ぎを止められず、壁は切り裂かれその奥にいたオーターたちまでをも切り裂いた。

 

 ドゥウムから近い距離にいたオーターは崩れ落ちるように両膝をつき、レインも片膝をついた。ドゥウムと距離があったレインはそれだけ負傷も浅くすんだが、それでも軽傷とは言えない。

 

 何より、ドゥウム1人でさえ突破口が見えず苦戦しているところにファーミンまでが加わればより戦況が厳しくなる。

 幸いなことと言えば、ファーミンのターゲットが明確であることくらいだった。

 サーカスでの戦闘とは違って何倍も広い場所での乱戦。攻めることも守ることも難しい状況ではあるが、だからといって諦める者などいなかった。

 

 立ち上がり杖を構えたレインをファーミンが見る。

 

「眼鏡じゃない方はオレが殺す。横取りするな」

「……好きにしろ」

 

 こういう時のファーミンは相手をするだけ無駄であることをドゥウムは知っている。

 ファーミンは自らの欲望に忠実だ。ここで拒もうものなら「だったらお前を先に殺す」と向かってくるのがファーミンだ。

 平時ならそれでも良い。しかし今はお父様の長年の計画の最終段階であり、優先するべきは侵入者の排除だ。

 故にドゥウムはファーミンにレインを譲った。

 

「チェンジズセコンズ、バタフライサニタテムズ」

 

 レインへ譲渡した魔力を魔力濃縮液を飲むことで回復させたフィンがセコンズを使用する。輝く蝶が現れ、オーターとレインを始めドットとランスの傷を癒した。

 

「お前、邪魔だな」

 

 その結果、ファーミンはレインからフィンへとターゲットを変更した。

 レインが舌打ちと共にファーミンへパルチザンを放つが、それが届く前にファーミンは姿を消してしまった。

 

「フィンのフォローに入るぞ」

「あったりめぇだ!」

 

 ランスからの指示にドットも応じてフィンを守るように集まる。

 

 ファーミンは周囲を警戒しているフィンへたちへ近づくとその背中に向かって左右に持ったチャクラムを振りかぶった。

 その刃がフィンへ当たる直前、どこからともなく現れた矛が床に突き刺さりその刃を受け止めた。

 

 フィンはすぐ背後から聞こえた何かが刺さる音と固い物がぶつかる音を聞いて反射的に振り返った。

 そこには、自身の攻撃を防いだ矛を見て微かに目を見開いて体を硬直させたファーミンの姿があった。

 

「……デリザ? 何でだ?」

 

 困惑するように呟くファーミンはフィンではなく矛を見ていた。つられるように矛へと目を向ければ、それは紛れもなくデリザスタの固有魔法、アスカロンだった。




次話は20時に投稿です。
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