成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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13話 マッシュVSドゥウム戦

「……やっと来たか」

「待たせすぎだぜ……」

 

 ランスとドットが呟くように言う。

 

「マッシュくん……」

 

 ようやく来てくれた。

 フィンも思わず呟いていた。

 

「……いくら君でも、奴は強すぎる。私たちも協力を……」

 

 倒れて息も絶え絶えで動くこともやっとのはずだ。

 しかし、それでもライオは折れることなく戦う意志を見せた。

 

「これ食べて体力回復させてください」

 

 そんなライオの前にマッシュが置いたのは、食べかけのシュークリームだった。

 

 みんなもと言ってそれぞれの前にシュークリームを置く。懐に直接入れていただろうシュークリームを床へ直置きだ。

 そんなマッシュに誰も何も言わない。

 

「あとは全部、僕に任せてくださいよ」

 

 そして、ドゥウムへと向き直るとそう言った。

 

「1人で私に勝つつもりか。5割の力さえ出していない私に完敗したことを忘れたのか」

「どうでもいいですね。遠い昔のことなんか。今から勝つのは僕なんで」

 

 マッシュの拳での一撃にドゥウムが膝をつき、その次の一撃で吹き飛んだ。

 

「お前は僕の友達を傷つけたんだ。こい」

 

 マッシュは手の平を上に向け手招きをした。

 

「9割だ」

 

 マッシュとドゥウムの戦いは苛烈する。

 

 そして10割、全ての力を解放した上で魔法を使い分裂したドゥウムでさえも、地面に埋めてマゴル城から落下させるという荒業で対応した。

 

「最後にアナタの全力に付き合ってあげますよ。仕方なくね」

「貴様に出会えたことを……心底光栄に思うよ」

 

 ドゥウムが剣を構える。

 マッシュがドゥウムへ向かって行き、ドゥウムの横振りを躱すと背後へと回り腕で相手の首を押さえ、えびぞりの状態にするとそのまま地面に座り込んだ。その衝撃に床は割れドゥウムは大量の血を吐いた。

 

 床に倒れたままドゥウムは動かない。

 

「……一つだけ聞かせてくれ。その強さをもって、貴様は何を目指すのだ」

 

 ドゥウムはマッシュの強さを認めた。この強さを得るためには並大抵の目標がなければ到達できない。ドゥウムはその目標に興味があった。

 

「パティシエ」

 

 マッシュの言葉に困惑した様子でドゥウムが繰り返した。

 

「人を傷つけても誰も幸せになんないけど、甘い物を食べたらみんな幸せになるし」

 

 その理由は、マッシュらしいとても優しいものだった。

 

 私もパンケーキでも作るかと言ったドゥウムに対してマッシュは興味なさそうに好きにすればいいと答える。

 そんなやり取りすら面白かったのか、ドゥウムが小さく笑う。

 

「完敗だ……」

 

 そして、ドゥウムは自身の負けを宣言した。

 

 その戦いを投影魔法で見ていた観衆は喜び歓声を上げ、マッシュが勝利の舞を踊る。

 

『おめでとう。まさかドゥウムに勝つとはね。正直、驚いたよ』

 

 その時、ファーミンに対して指示を出した時のように炎が広がり投影魔法がイノセント・ゼロを映し出した。

 

『だが、君たちの運命は変わらない』

 

 そう続けるイノセント・ゼロのすぐ横にマッシュが映る。

 言葉の途中で隣に立つマッシュに気がついたイノセント・ゼロがマッシュを見た。

 

「最後まで私の邪魔をするのは貴様か。マッシュ・バーンデッド」

 

 話しながら杖を取り出しイノセント・ゼロは臨戦態勢に入った。

 

「アナタが家で大人しくしていれば、僕はわざわざ関わりませんけど……」

 

 と、マッシュが言ったまでは良かった。

 次にマッシュが「ずっと思っていたんですけど」と前置きして言った言葉に問題があった。

 

「いい歳なってイノセント・ゼロとか名乗るのはやめた方がいいですよ。少し痛いかも……」

 

 それはマッシュなりの気遣いだったのであろう。

 しかし、それを言われたイノセント・ゼロはあからさまに殺気立っていた。

 

「あとちゃんと働いた方がいい気がします。不老不死とか言ってないで」

 

 続く台詞はどう考えても煽っているようにしか思えなかった。

 

「相変わらず面白いな――タイムズ」

 

 イノセント・ゼロの持つ杖の先から放たれるローマ数字の波に飲み込まれたマッシュの左手が急速に老化した。

 

「私の魔法に触れたものは100年の時を経る」

 

 左手はもう使いものにならないと話すイノセント・ゼロに対してだったら右手で。とイノセント・ゼロへ殴りかかろうとしたマッシュが動きを止め、後方へと下がった。

 注意深く見れば、イノセント・ゼロの体は魔法で覆われており、触れた瞬間に老化してしまう状態になっていた。

 

 マッシュは考えるように右手を顎に添えると少ししてから何か閃いたように手を打った。

 

 スタスタと部屋の出口へと戻ると、近くに倒れていたファーミンを見つけた。そのままだと戦いに巻き込まれて危ないと思ったのか、担いで広間へと戻ってくる。

 そして、フィンの近くにファーミンを降ろした。

 

「待って何で僕の近くに置くの!?」

「え、だってその人がフィンくんの近くにって言ったから」

 

 知り合いかと思ったと言った後でマッシュはドゥウムの元へ行ってしまった。

 

「借りますね」

 

 ドゥウムの返答を待たずに床へ刺さった剣を抜く。

 

 そして、マッシュはイノセント・ゼロのいる部屋へと戻っていった。

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