成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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14話 マッシュVSイノセント・ゼロ

(フィン視点)

 

 フィンはマッシュが近くに置いていったファーミンを恐る恐る見た。

 ファーミンは仰向けの状態で無表情のままフィンを見ていた。その体には痛々しい傷が刻み込まれており未だ血が流れ続けている。それでも生きているようで少し苦しそうに呼吸をしていた。

 

 悪魔の五つ子の次男、ファーミン。強欲で見境がなく、イノセント・ゼロも警戒しているという話だったが、アルフを大切に思い彼を殺したイノセント・ゼロに対して反旗を翻したことも事実だった。

 だからもしかすると、事前情報よりも話が通じるかもしれない。

 

「お前」

「は、はい」

 

 フィンが覚悟を決めて話しかけようとするが、その前にファーミンから話しかけられてしまった。

 

「デリザの矛、まだ残ってるだろ。オレの時も1度使えた。あれも1度は使える。デリザが残したものだ。無駄にしたら殺すからな」

 

 無表情ながらも殺気立つファーミンに、フィンは内心でこえぇー! と悲鳴を上げた。

 

 それでもフィンはしっかりはいと返事をして床からアスカロンを抜いた。

 

 アスカロンはフィンが思っていたよりも重かったが不思議と手に馴染んだ。ふと矛先を見れば刃先が丸くなっている。

 それはシラフになったアルフが苦し紛れに放ったアスカロンを思い出させた。そのアスカロンでさえ、アルフはフィンに攻撃することができなかった。

 

「……アルフさんらしい」

 

 そう呟いた後、フィンはレインの言葉を思い出し小さく首を振った。

 今はまだ感傷に浸っている暇はない。アルフもそれを望まない。

 

 フィンは投影魔法に目を向けた。

 

 そこに映っていたのは、マッシュが床に伏せた状態で人一人分の太さはある石の柱を両足で持ち、イノセント・ゼロへと投げつけたところだった。

 マッシュはイノセント・ゼロの魔法によって両手が老化したせいでまともに使うことができない。その結果が石の柱を両足で持つという結果になったことはフィンにも理解できた。

 

 しかし、頭で理解できても心で納得できるかは別問題である。

 その衝撃的な光景にフィンの顎が落ちた。

 

 マッシュが投げつけた石の柱はイノセント・ゼロへと直撃し、イノセント・ゼロがその衝撃に後退する。

 それに対してマッシュは肩で歩きイノセント・ゼロへと距離を詰めていた。しかも、かなりの速度で。

 

 イノセント・ゼロもその光景に呆けた表情を見せながらも空中へ距離を取って対策した。

 が、マッシュは足に挟んだ石の柱を投擲することでイノセント・ゼロへ命中させていた。

 石の柱がなくなってマッシュはすぐ近くにあった石の柱を両足でへし折って次々にイノセント・ゼロへと投げつけた。

 

 魔法を使わない、圧倒的なパワーでの攻撃。直接的な攻撃を封じていたはずのイノセント・ゼロもその額から血を流すほどのダメージを受けていた。

 

「想像よりも遥かに強くなっているようだな」

 

 驚いたと話し始めたイノセント・ゼロは呆然としているように見えた。

 

「だが少し遅かったようだね」

 

 イノセント・ゼロが杖の先を天井へと向ける。

 貫かれた天井の先に現れたのは太陽に重なる寸前の月があった。

 

「私の力は日食を迎えた時に本来の力を発揮する」

 

 イノセント・ゼロの魔力が大幅に膨れ上がり、圧力となって襲い掛かる。

 

「日食の時だけって、不便そう」

 

 そんな中、マッシュの気の抜けたいつもの口調での呟きがフィンの耳に入った。

 

 イノセント・ゼロが五兄弟たちの心臓を取り込み、その姿を変容させた。

 

「さっきまでの私とは少し違うぞ」

 

 天使を思わせるその翼とその頭上にある輪は漆黒に染まり、頭からは羊を思わせる角が一対生えておりその胸元には横に5つの目が並んでいた。

 

「あ、終わったすか」

 

 その異様な姿を見た上でマッシュは何でもことのないように返答した。

 そして、イノセント・ゼロへ向かって行ったマッシュの隣に突如としてイノセント・ゼロが現れた。

 

 その直後にマッシュは吐血し胸からは血が噴き出した。

 イノセント・ゼロの右手には心臓があり、この一瞬でマッシュの心臓が奪われたことがわかった。

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