成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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明日、明後日の20時にそれぞれ1話ずつ続きを投稿します


番外編 セルから見たデリザスタ(1/3)

 セルはイノセント・ゼロからの指示で悪魔の五つ子を集結させるために各地を飛び回っていた。

 そのうちの1人、四男のデリザスタについては探す必要もなく連絡を取ることができる。

 

『セル坊、これやるわ』

 

 ある時デリザスタから投げ渡されたのは伝言ウサギだった。 

 連作先を見ればデリザスタだけが登録されている。

 

『ありがたいのですが、なぜ私に?』

『ふつーに便利だって思ったからだけど。それがあればセル坊、呼び出し放題じゃん?』

 

 プククと笑うデリザスタにセルは少し気が重くなった。

 

『あ、他の兄弟には内緒にしとけよー』

 

 ということがあった。

 実際、デリザスタから連絡を受けることはあるがそう頻度は高くない。

 

 最近あった連絡は、ワース・マドルの直近の外出先を調査して欲しいというものだった。

 すぐ調査できる内容だったためその日のうちに報告できた。

 これについては特に問題ない。役に立つことができて良かったと思ったくらいだ。

 

 問題はその前、用なしになったアベルを始末しにイーストン魔法学校を訪れた時のことだ。

 

 セルはイノセント・ゼロの探し物である末の弟を発見し、交戦した。

 固有魔法を聞いても答える気がなく、魔返しの鏡を使用したがそれを蹴り壊された。

 

 情報収集を続けるため、セルがさらなる攻撃を仕掛けようとした時に伝言ウサギが鳴った。

 

「少し待て」

「うす」

 

 意外にも末の弟は聞き分けが良かった。

 セルは少し離れてから伝言ウサギに出た。連絡先は1つのみ、相手は誰か分かり切っている。

 

「はい。セルです」

「あ、セル坊? 俺っち外で飲んでたんだけど、チョー眠いし迎えに来てくんない?」

 

 用件を聞けばくだらない内容だった。普段であればともかく、今は優先事項がある。

 デリザスタの行きつけの店を知っているセルは後でもいいと判断した。

 

「デリザスタ様、私は今任務中でしてそのご要望にはお答えできません」

「マ? じゃあオレ絶賛任務中のセル坊にかけちったんだ、ごめーん」

 

 幸い、デリザスタは酔っていても話が通じる。

 しかし、そんな余裕も次のデリザスタの言葉で吹き飛んだ。

 

「じゃ、それが早めに終わったら迎えに来て。よくわかんねぇけど何か森の中にいるんだわ。俺っち絶賛迷子中」

「森!?」

「んじゃ、任務ガンバー」

「ま、待ってくださいデリザスタ様!? 今から向かうので切らないでください!」

 

 セルは慌ててデリザスタを呼んだが、デリザスタは伝言ウサギを切ってしまった。

 

「……僕の名前はセル・ウォー。急用を思い出したから帰るよ。まぁ、またすぐに会うことになると思うけどね」

 

 マッシュたちにそれだけ告げてセルは転移ゲートでイーストン魔法学校を後にした。

 マッシュもセルが帰るならありがたかったのでそのまま見送った。

 

 その後、デリザスタを探し回ったセルはある木の上で眠っているデリザスタを発見してマゴル城へと連れ帰った。

 

 

 

 苦い思い出を回想し終わったセルは、少し悩んだ末に伝言ウサギを使ってデリザスタの居場所を尋ねる。

 マゴル城へ戻るよう伝えるだけで済むが、セルは直接デリザスタの元へ向かうことにした。

 

「ん~、やっぱ一仕事のあとの一杯は格別だなぁ」

 

 デリザスタは殲滅したエルフの精鋭の山の上に座ってワイングラスを傾けていた。

 

「デリザスタ様。イノセント・ゼロ様がお呼びです。マゴル城にご集結をとのことです」

「りょ。てかセル坊、それ伝言ウサギで良くね? クマあんじゃん。ここまで来る時間あんなら睡眠とっとけー」

 

 振り返ったデリザスタはセルに近づくと目の下にできたクマを親指で摩った。

 

「あ、そうだそうだ。この前のあれ、ワース・マドルについての情報助かったわ。急に頼んだことなのに超神対応してくれたじゃん? これ、ご褒美な」

 

 そう言ってセルの頭を撫でた後、デリザスタが収納魔法から取り出したのは1本のリップだった。

 

「セル坊の好きなブランドかはわかんねーけど新色の紫リップだってよ」

 

 セルは両手でリップを受け取ると頭を下げてお礼を言った。

 

 伝言ウサギでも済む内容を直接デリザスタに伝えにきたのはこれがあるからだった。

 酒好きでいきなり呼び出されるなど困らせられることもあるが、デリザスタはドゥウムと同様にセルへ暴力を振るわない。エピデムのようにセルで人体実験を行わない。

 

 それだけでなく、セルを労ってくれるのである。褒めてくれるし心配してくれる。非常にブラックな職場環境に置かれたセルにとってそれが何よりも嬉しかった。

 セルの忠誠心がイノセント・ゼロにあるのはもちろんのことだが、デリザスタもセルにとっては特別な存在だった。

 

「さて、愛しの我が家へ帰るかー」

 

 その言葉にセルは返事をして転移ゲートを開いた。

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