成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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続きは翌日の20時に投稿予定です


番外編 幼い頃のファーミンとデリザスタ(1/3)

 デリザスタは赤ん坊の頃からよく笑い、よく泣いた。

 何が面白いのか、ファーミンを見ると笑顔になり、ハイハイができるようになれば後追いするようになった。

 それが鬱陶(うっとう)しいと思う反面、どこまで追いかけてくるのかという興味も沸いた。

 ハイハイでは来れないような階段の上に行けば、階段を登ろうとしてひっくり返って泣いた。

 その泣き声に乳母がやってきてデリザスタを抱き上げた。

 あやされたデリザスタが泣きつかれて眠る。

 ひっくり返らないまでも、階段を上がれず癇癪(かんしゃく)を起こしたように泣くこともあった。

 

 なぜそうまでして追いかけてくるのかファーミンにはわからなかった。

 

 デリザスタも成長し、やがて階段を登れるようになった。

 ファーミンのところまでやって来ることができるようになったデリザスタは嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「ふぁーみん」

 

 その時、泣き声ではなくファーミンの名前を発した。

 乳母によると始めて意味のある言葉を発したということだった。

 

 デリザスタは5歳になってもそう変わらなかった。

 ファーミンにはわからないが、好きなのかウサギのぬいぐるみを持ち歩くようになった。

 

 それまでぬいぐるみに興味などなかったが、デリザスタが持っていると良い物に見えた。

 

「いいなそれ、くれよ」

「いいよ」

 

 デリザスタは躊躇(ためら)うことなく了承した。

 言葉の意味を分からずにいいと言ったとかと思ったが、ファーミンの予想に反してデリザスタはぬいぐるみを差し出してきた。

 ファーミンはぬいぐるみを受け取って手触りを確かめたり、軽く動かしてみた。

 

 しかし、満足できたのも束の間のこと。

 ぬいぐるみがつまらない物になるのはあっという間だった。

 

 せっかく手に入れたのに思うようなものではなかった。

 ファーミンはその苛立ちをぬいぐるみにぶつけた。

 

「なんだこれ。違う違う! いらない!」

 

 力任せに引っ張られたぬいぐるみは引きちぎられ、それでも発散できないイライラをぶつけるように放り投げた。

 ぬいぐるみの頭と右足はなくなり、ちぎれた箇所からは綿が飛び出している。

 

 苛立ちをいくらか発散させてからデリザスタを見れば、目を丸くして驚いているようだった。

 デリザスタがファーミンの投げ捨てたぬいぐるみを拾って戻って来る。

 

「もういらない?」

 

 デリザスタ以外の兄弟には嫌な顔をされたり文句を言われたので予想外の反応だった。

 

「いらない」

「そっか」

 

 何をするのかと様子を見ていれば、デリザスタが使用人から何かを受け取った。

 

「何だそれ」

「裁縫セット」

「さいほうセット」

 

 引き続き様子を覗えば、デリザスタはぬいぐるみに残った手足も胴体から切り離しそれぞれの穴を塞いだ。

 手のひらに乗るくらいの小ささになったそれを空中へ投げ上げ、落ちてくる前に次を投げ上げ、落ちてきたものをキャッチして投げ上げるということを繰り返している。

 

「お手玉っていうの。片手でやるパターンもあるよ」

 

 そう言ってデリザスタは片手でお手玉をしようとするが、両手の時と違ってキャッチできずに落としたり、おかしなところへ飛ばしてしまったしていた。

 

「ヘタクソ」

 

 見かねたファーミンがお手玉を奪い取ると片手でお手玉を始めた。

 デリザスタより手が大きいこともあるが、器用なこともあって上手くお手玉ができている。

 

「すごい! じょうず!」

 

 デリザスタは目をキラキラさせて拍手をした。

 ファーミンは得意になってデリザスタには大きくて扱いが難しいだろう、ウサギの頭と胴体を入れてお手玉をした。

 デリザスタが嬉しそうにはしゃぐ。

 

 今度は自分がとウサギの頭と胴体でお手玉に挑戦するも、ファーミンの見立て通りデリザスタでは上手くできなかった。

 だからファーミンは見せつけるようにお手玉をした。

 

 そんなことをしている途中、デリザスタが眠そうに目を擦り始めたため解散となった。

 

 ファーミンは気づいていなかったが、苛立ちはすっかりなくなり機嫌も良くなっていた。

 

 その後もファーミンは度々デリザスタの部屋を訪れ、目についたものをねだった。

 人形、絵本、模型など様々だ。

 デリザスタは1つ返事でそれをファーミンへと譲った。

 どれもすぐにバラバラとなった。

 

 デリザスタはそれらを拾い集めて別のものに変えた。

 人形に関してはバリエーションが豊富で、お手玉だったり手足を繋ぎ合わせてロープのように伸ばしたり、中の綿を減らしてパペット人形にした。

 絵本は文章の書かれた箇所と絵が描かれた箇所を切り取ってそれを組み合わせて即興で物語を作ったりした。

 模型はその即興劇の小道具になった。

 

「大変だ! 家が巨大なヘビに襲われてるぞ!」

 

 屋根が無くなった家の模型には人形の手足で作ったロープが引っかけられていた。

 

「あぁ! 女の子がヘビに連れて行かれる!」

 

 家の後ろから取り出されたのは頭だけのウサギだった。

 そこで現れたのは絵本から切り取られた剣士だ。

 

 紙の剣士とぬいぐるみのヘビが戦い、ヘビが倒された。

 最後に絵本から切り取られた文章『こうして2人は幸せに暮らしましたとさ』を剣士と女の子の前に置いた。

 

 デリザスタはやり切ったとばかりに何かを期待した様子でファーミンを見た。

 しかし、ファーミンはデリザスタよりも繋ぎ合わされたぬいぐるみの手足でできたロープの方を見ていた。

 手に取り気まぐれに振り回す。振り回しはするが、引きちぎるには少しだけもったいない気がして適当に放り投げるだけに止めた。

 

「僕の部屋にある物で気になったのがあったら好きに持って行っていいからね」

「そうか」

 

 デリザスタの言葉にファーミンは短く返事をした。

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