成り代わりデリザスタはシラフではいられない   作:月夜鴉

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本日1話目の投稿です。


05話 テスト対策(1/2)

 フィンくんに誘われて海に行ってマッシュくんたちと過ごしつつウォールバーグ校長に意味深な視線(疑惑)をもらった翌日。

 俺は自室で酒を飲みつつマッシュくんのテスト対策に頭を悩ませていた。

 

 原作通りならマッシュくんは無事にテストを突破する。

 が、何がどう掛け違って赤点を取るとも限らない。そうならないためにも協力したい。

 とはいえ、どのようなことを勉強しているのかすら分からない俺が勉強を教えられるはずもない。

 

 では誰が適任か。そう考えた時に思い当たる人物が1人いた。

 

「ワース・マドル」

 

 彼と直接会ったことはないため原作知識によるものとなってしまうが、彼は努力型の秀才だ。

 砂の神覚者であり天才型のオーター・マドルの弟。兄が天才であるが故に親から兄と比較され苦い思いをしてきた。

 彼は兄に追いつくために努力を重ねている努力家だ。彼以外に適任はいない。

 

 問題は、どうすればマッシュくんに勉強を教えてもらえるように交渉するかだ。

 居場所についてはセルくんに頼んだり、ファミ兄に頼んで姿を消す魔法をかけてもらって俺が直接イーストンへ行って探したりできるからな。

 寮室さえ分かれば、置手紙を用意したり発信機的な魔道具をローブに仕込んでイーストンから離れたところで接触することも可能だ。

 

 とりあえずセルくんに頼むか。原作から考えると知り合いな可能性高いし。

 そうと決まればと伝言ウサギでセルくんを呼び出す。

 

「あ、セル坊? ちょーっと頼みたいことがあるんだけど今大丈夫そ?」

「デリザスタ様。ご要望にお応えできるか判断するためにも内容についてお教えください」

 

 セルくんの言葉に口元が緩む。

 安請け合いせず内容を確認してから厳しいなら厳しい、もっと情報が必要ならそうと言ってくれることが助かる。

 

「イーストンの学生、ワース・マドルって奴の行動習慣や学外へ出る時の良く行く先が知りたいんだわ。特に直近の外出先と日時が分かれば最高」

「承知致しました。その情報であれば外出申請書の有無で調べることができます。一週間以内での外出があれば本日中にでも調べられます」

 

 わ~、めっちゃ有能。

 

「セル坊、さっすがー! 超助かる~」

 

 今度何かお礼しないとなと思いつつワースさんの外出予定の調査を依頼した。

 

 

 

 セルくんは半日も経たずに調査結果を教えてくれた。

 そして俺は今、アルフの恰好をしつつも酔った状態でセルくんから聞いた図書館へと来ている。

 

 図書館内を探せばワースさんの姿はすぐに見つけることができた。

 彼は複数並んでいる6人が座ることのできる大きな机の1つに1人で座っていた。彼の近くには開かれた本の他に何冊もの本が積み上げられており、集中した様子でノートにペンを走らせている。

 

「……ワース・マドルさんですね。お忙しいところ恐縮なのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」

 

 テストも近い大切な時期に申し訳ないなと思いつつ声をかけると彼はゆっくりと顔を上げて俺を見た。

 

「誰だテメェ」

「アルフと申します。あなたに頼みたいことがあるんです。もちろん、無償とは言いません」

 

 微笑んだけどワースさんからは警戒と苛立ちを感じた。素面の俺ならここで怯んでいるかもしれないが、ほろ酔いの俺には怖くない。

 俺はワースさんの斜め前にある椅子に座って、学生ではないがマッシュくんたちと友人であること、マッシュくんがテスト勉強に苦労していることを説明した。

 

「だからワースさんにマッシュくんの勉強を見てもらいたいんです」

「理由は分かった。が、何でそれをオレに言う。ランス・クラウンがいるじゃねぇか」

 

 確かにランスくんは原作だと編入試験で1位をとっている。勉強会でもランスくんが中心になって教えていたはずだ。

 

「それは確かにそうなのですが、僕はランスくん以上にワースさんが適しているのではないかと思っているんです」

 

 人に何かを教える場合、教える側は教わる側の3倍の理解が必要だと言われている。

 それに加えて自分が勉強する場合と人に勉強を教える場合には必要となる技術が変わってくる。

 

「それに、人へ教えることも良いテスト勉強になるはずですよ」

 

 と、ワースさんに頼む理由を伝えながら彼のノートへ視線を向けた。

 

「それから、あなたのノートがとてもよくまとめられていて分かりやすいと思いました」

 

 そう言って俺は微笑んだ。

 

「テメェみたいな怪しい奴に褒められても嬉しくねぇよ。……んで、テメェは何を差し出すんだ?」

 

 ワースさんはチッと小さく舌打ちをして頭を掻いた。

 

 舌打ちをしているが、これは恐らく照れ隠しだ。

 つまり、感触は悪くない。ここまでくれば、あとは交渉次第で引き受けてくれそうだ。

 大丈夫。俺には秘策がある。

 

 俺は笑みを深めた。

 

「――もし、勉強を見てくれてマッシュくんが無事に赤点を回避できた暁には……オーター・マドルの1/12スケールの木彫り人形を渡そう!」

「おい待て何でそれで行けると思った!?」

「く、小さいか。1/7スケール、いや1/5スケール? ええい1/1スケールでもやってやる! それかぬいぐるみか!?」

「そこじゃねぇよ! ちったぁ落ち着け!」

「そこ、静かにしてください」

 

 お願いが成功しそうで気が緩んだこと、勢いで押し切ってしまえと声を上げたら司書さんに注意されてしまった。

 呆れたようにため息をついたワースさんに促されて俺たちは個室へと移動した。




次話は20時に投稿します。
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