ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜   作:たかしクランベリー   

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1話・不器用うさぎと関西少女

 

ピピーーーッ!!

 

試合終了のホイッスルが

サッカー場に響き渡る。

 

『おおーっとォ、なんたる圧勝!

流石サッカーモンスター円堂ハル!

北陽学園に一切の追随を許さない

パーフェクトゲームでしたァァ……!!』

 

司会のアナウンスがコメントした通り、

まさしく圧倒的な差を感じる試合やった。

 

(円堂ハル……)

 

めちゃオモロいやん。

ワールドカップの成人プロサッカーも

見応えあるけど……

少年サッカーに、

こんな大物が紛れこんどるだなんて。

 

しかし、どうしてやろな……。

 

ヴィヴィ、なんか燃えてきたわ。

明日の入学式の緊張が吹っ飛ぶくらいに。

 

それに、シャレにならない

野望まで抱いてしもうた。

…………ヴィヴィのサッカーで、

円堂ハルを倒してみたいと。

 

 

 

翌朝。

 

チュン、チュンチュン……!

 

「んあ?」

 

小鳥の囀りが耳に入り、

軽く意識が上がってくる。

眠た気で重たい瞼をゆっくりパチパチと

開閉しながら、

今日の予定を一つ一つ思い出していく。

 

えーと。昨日はあの試合に興奮して

就寝時間30分くらい遅れとったなー。

そんで、今日は何やっけ。

 

なんか大事なこと忘れとるよーな

気がせーへんでも……

 

バッ!

 

「アッカーーーーーン!!!」

 

1番大事な予定を今しがた思い出した。

そのショックで思わず声を張って

飛び起きてしまう。

 

「せや、

ちんたらしてる場合やあらへん!

今日は帆呂雷中学の入学式やないかい。

もし遅刻なんかしよーモンなら、

変に浮いてまうでッ……!」

 

慌てて支度しリビングに降りると、

オカンがキッチンで

朝食の準備を進めていた。

 

「あ……」

「あら、ヴィヴィ。

急いだ様子でどうしたの。」

 

「あ……はは。

気にしーひんといとや。

ヴィヴィの早とちりみたいやったわ。」

 

良かった。

寧ろちょいと早すぎたくらいか。

まぁ、余裕があるに越した事はない。

 

つまり、もう何も焦る必要はないんや。

穏やかな気持ちで入学式に臨もう。

サッカーだって、ヴィヴィの事を

気長に待ってるに違いない。

 

………………。

 

……。

 

入学式も平和に終わり、

クラス紹介、ガイダンス等も

順々と進行。それからほどなくして……。

 

「―――はぁあっ!?

サッカー部が〝存在しない〟やと!

どないなってんねんッ花園先生!

今や大サッカー時代やで、

そんな事ありえるんか……!」

 

早速、担当教師に色々と部活動を

聞こうとした矢先にこれだ。

運が悪いとかどう以前に、

声を荒げてしまうのも無理はない。

 

先生はというと、申し訳なさそうな

顔つきで返事をした。

 

「ごめんね。あなたの熱意は伝わるけど

私もつい半年ほど前に

就任したばかりで、

詳しい事情は分かってないの。」

 

「うっ、強く言ってごめん。

ヴィヴィも

予想外の事で取り乱しとった。」

 

「良いのよ。説明不足だった

私のせいでもある。

せめてもの償いとして、

私もサッカー部設立に助力してあげる。

部員が揃ったらいつでも声かけてね。」

 

(なんというラッキッキーミラクル!)

 

まさしく、

渡りに船とはこういうことやな。

 

バッ。

 

「?」

 

これは、敬意の礼だ。

今まで粗暴な態度をとったのに、

ヴィヴィを受け入れ譲歩してくれた

先生への。

 

「ありがとうございます先生!

集まったら、絶対に声かけます……!」

 

その日は、僅かな希望を胸に抱き

帰路に着いた。

 

(これからは、この街で登下校を

繰り返すんやな……)

 

次第に景色に

慣れて感動も薄れてくるはずだ。

小学時代とはまるで違う通学路……

折角だし、今関心がある内に

街並みをしっかり目に焼き付けておこう。

 

ふむふむ。展望台施設に

続く長めの階段。

風情のある甘味処、それに駄菓子屋。

 

テクテク……テクテク。

 

おお、懐かしい。

一昨年の夏休みもあの河川敷で

よく涼んで遊んどった…………ん?

 

小学生くらいのちっさい子供たちが

サッカーしとるなぁ。

そこに混じって一回り身体の大きい

女の子もサッカーしてる。

 

おや、あの制服。

帆呂雷中学の制服だよね。

遊んでるけど、どちらかというと

コーチもしてるって感じ。

 

にしても……良い顔やな。

心の底からサッカーを楽しんでる顔や。

 

(お邪魔しちゃおっかな★)

 

ヒューーンッ!

 

「っ!?」

 

そうこう考えている矢先、

ヴィヴィの方にボールが飛んできた。

すかさずサッカー選手の見様見真似で

それを胸で受け止め、

ボールを足で押さえる。

 

返そうと構えると、

暫定帆呂雷中の兎耳少女が

此方へ駆け寄ってきた。

 

「空気の読めないガキ共が

すいませーん!

あたいが後でキツく言っときますんで

大目に目てやってくださいな……」

 

ボールを回収し、そそくさと持ち場に

戻ろうとする彼女を引き留める。

 

「待ってください!」

「――!?」

 

よし、足留め成功や。

まだ逃がせへんで。寧ろ……

 

「私も……ヴィヴィも

サッカーに参加させてください!」

「は? 

アンタさぁ、サッカー好きなの。」

 

「勿論です!

『綺々羅々ヴィヴィ』って言います!

今後ともよろしくお願いします!!」

 

ここ一番の気合を入れて挨拶する。

 

帆呂雷中にも

サッカーに興味がある人が居る。

その事実だけで、

元気が沸々と湧いてくるんや。

 

「その目……ふーん、嘘じゃあ

なさそうぺこね。良いぺこ。

でも、相手がガキだからって

甘えたプレイしたら許さないよ。」

 

「分かってます!」

「ついてきな。ヴィヴィ。」

「あ、あのっ!」

 

「次は何だよ。」

「名前、訊いてもいいですか。」

「――兎田ぺこら。好きに呼ぶといいさ。」

 

踵を返し、彼女は河川敷へ降ってく。

呼び方かぁ〜。

せやな。同じ中学の先輩っぽいし、

ぺこら先輩と呼ぶことにしたろ。

 

そう決意し、ぺこら先輩を追うように

歩み始めたタイミングで。

今度はヴィヴィが足留めをくらう。

 

「待った待った待ったォアアア!」

 

「「―――!?」」

 

慌てて声の方へ顔を向けると、

ケモ耳の集団が居た。

しかも、制服まで帆呂雷中のヤツだ。

 

何という奇妙な縁。

それほどサッカーというスポーツが

魅力的って事やな。

 

「てんめぇら何モンだよッ!

今まで素通りしてたクセに

急に声かけてよォ……!!」

 

あまりのしつこさに、ぺこら先輩の

堪忍袋の緒が切れたようだ。

威嚇混じりに声を荒げ

彼女らの正体を探っている。

 

「ふっふっふ、新入生と在校生の

熱い青春……! 見てるだけじゃあ

勿体無い気がしてね★」

 

「だから何モンだって訊いてんだよッ!」

 

「私は『白上フブキ』。

帆呂雷中のPCゲーム部部長……

そして、彼女らも部員仲間SA★

つーわけでサッカーやろうぜ!」

「………………。」

 

あまり乗り気じゃああらへんな。

いや、こーゆー時こそヴィヴィが

背中押しとくべきや。

 

「ぺこら先輩…………きっと、

みんなでやった方が楽しーで!」

 

一瞬瞼を閉じ俯いたぺこら先輩は、

すぐに顔を上げて快諾の意を示した。

 

「分かったよ。丁度やってみたい事が

あるから、許可してやるぺこ。」

 

「うぉお! ぺこーらいつもありがとう!」

「「「ありがとう!!!」」」

 

「全く……愉快な奴らだな。

でも、悪くねェぺこ。

――おいガキんちょ共ォ!!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「散々待たせて悪いなァ!

今日という今日こそ、練習試合やっぞ!」

 

「「「ぺこーらいつもありがとう!」」」

「おめぇらまで真似すんじゃねぇッ!」

 

「あ、わたくし白上は実況役でよろー。」

「好きにしやがれ!」

 

なんだかんだで、ぺこら先輩って

好かれやすいんやな。

よーし、ぺこら先輩との初練習試合……

張り切ってやるか。

 

『さぁ始まりました

河川ジュニアーズvs帆呂雷中(仮)チーム。

5対5の青春草サッカー。

勝利を手にするのは一体どちらか!?

最後まで目が離せません……!』

 

[河川ジュニアーズ]

FW-赤倉

MF-青柳

DF-黄浜、緑川

GK-黒宮

 

[帆呂雷中(仮)]

FW-兎田ぺこら、ヴィヴィ

MF-戌神ころね

DF-猫又おかゆ

GK-大神ミオ

 

ピピーーーッ!!

 

『試合開始のホイッスル!

河川ジュニアーズ赤倉の

キックオフでスタートだ。』

 

タッ、タッダッ。

 

なんという綺麗なドリブルフォーム。

舐めるなと忠告した

ぺこら先輩の言う通りだ。

 

まともに遊んでないヴィヴィでも分かる。

せやけど……

 

(くらいついて

こそのサッカーやろがい!)

 

ボールを奪うべく、

ドリブルをする彼に駆け寄る。

視線を合わせるなり、

少年は不敵な笑みを浮かべた。

 

「すごい熱意だねネーチャン。

そんなにこのボールが欲しいの。」

「当然や。

ボールがなきゃ得点は取れへん!」

 

「分かったよ。その熱意を買って

サービスしてあげる。」

 

右足の内くるぶしでボールを

少し跳ねらせ、コロコロと

転がしながらソレを譲ってきた。

 

「一体……なんのつも……」

 

「ヴィヴィっ!

そいつぁ罠だッ! 気をつけろ!」

「はっ、ぺこら先輩びびり過ぎですよ。

このトロいボール、ヴィヴィでも――」

 

「――〝オーバーグロウ〟!」

 

ポッ、ポッ……カッ!!

 

淡く点滅し始めたボールは

突如として白く眩い光を放つ。

 

「うわっ、眩しっ。」

 

反射的に瞼を閉じ、

視界が開けた時……彼の姿は消えていた。

否。

 

後ろから聞こえるドリブルの音で

否応なく状況を察した。

 

「ぺこら先輩が言ってたのは、

こういう事やったんや……!」

 

悔しさに奥歯を噛み締め、

再度見逃したボールを追う。

しかしもう、彼らは攻撃射程内へと

達していた。

 

「赤倉ァ、決めちまえッ!」

「任せろ!」

 

青柳くんから赤倉への

素早いパス回しが通り、

シュートの準備が整った。

 

最早嘆く暇もない。

 

それは、2秒を待たずして放たれた。

 

「――〝ソニックショット〟!」

 

『出たぁ〜、赤倉渾身の必殺シュート。

ソニックショットぉ!

高速で駆け抜けるボールが

キーパーへ迫り来るぞォオオ!!』

 

頼みます大神先輩。

こんな所で取られる訳には

いかへんのです……!

 

 

 

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