ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜   作:たかしクランベリー   

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15話・2次元vs8次元

 

 

『今ッ、キックオフです!!』

 

ピピーッ!

 

「行くぜヴィヴィちゃん!」

 

パッ。

 

「いっちょかましたるでぇ!」

 

ぺこら先輩のキックオフで

試合が始まる。

ヴィヴィにパスを回し合い

前線に駆け込んでいく。

 

出会って間もないというのに、

まるで数10年戦線を

共にした戦友を思わせる

隙のないバディプレー。

 

味方ながら、末恐ろしいっちゃん。

 

ピピピ。

 

あっ、イレブンバンドが

なったばい……。

 

※イレブンバンド・・・

リストバンド型のスポーツギア。

選手は装備してよい。(任意)

選手の運動測定や、

試合中に監督の指示などを送れる。

 

《ねねち、らでん、前線へGO (^-^)》

 

文体的に、花園先生じゃなく

こより先輩の指示ですな。

おそらく、

試合開始前からぺこら先輩と

マネージャー陣は会議を重ねて

戦略を練っている筈。

 

今らでんのリベロを

所望してるのも

大きな意味があると見た。

 

ならば、行くしかあるまいよ。

 

ダダダダッ。

 

「どぉりゃゃっ!」

「ちょいらでんちゃん、

張り切り過ぎだって……」

 

『なんだぁ!?

兎田の猛進を続くように、

JFTが走り出したぞぉ!

唐突な彼女のリベロ起用、

一体どのような策なのかァ!?

試合は早々にカオスな様相を

見せていますッ……!』

 

いや違う。今のらでんの

役割は、敵選手のヘイトを

一瞬でも買う事。

ぺこら先輩お得意のブラフか……。

 

だが、目的はそれだけじゃあない。

 

前線に上がると同時に、

敵の動きを観察する。

ふっ……良い役を任されたばい。

 

「…………しまった!」

「狙いは、ハナからこれか!」

 

機械的な動きをする敵チームの

人間性を突くとは、

面白い事してくれますなぁ。

 

パッ。

 

「はじめちゃん!

そのまま決めちまえぺこっ!」

 

頷いたはじめは、

高く飛び上がり例の口笛を吹く。

 

「――〝オーバーヘッドペンギン〟」

 

敵も予選エントリー校。

ただのノーマルキャッチでは

終わらせないだろう。

 

「ジジちゃん!」

「――〝シュートポケット〟!」

 

「頑張れー!」

「止めろぉー!」

 

「……ぐ、ぬぬ……ぐわぁあー!!」

 

『ゴーーールっ!

兎田の見事なゲームメイクに

より、敵を撹乱し先制点を

決めましたァ!

さぁ、ここからどう切り返す

御影専農!?

Don't miss it!!』

 

バリ凄いっちゃん。はじめ……。

 

あの時、河川敷で

必殺シュートを胸トラップ

されたの……根に持ってたんだ。

 

素人目でも分かる。

必殺シュートの威力・スピードが

あの時より格段に上がってる。

 

みんなの合同特訓とは別に、

独りで脚力トレーニングまで

してたという訳か。

 

天賦の才なんかじゃあない。

 

彼女を『雷神の踊り子』

たらしめてるのは、

弛まぬ向上心と努力の賜物だ。

寧ろ、そのくらいの気概が

ないとキャッチされてた

可能性もあるっちゃん。

 

らでんも、何か示さなくては。

これまでの特訓を

無駄にしない為にも。

 

「おいっ、どういう事だロボ子!

事前データとシュートの性能が

全然違うぞ!!」

 

「……ごめんね、ジジちゃん。

ボクら、

まんまとしてやられたよ。

お相手氏、今日の為に

一段ギアを上げて

仕込んで来たようだ。」

 

「ええ。私もそう思いました。

シュートの威力だけじゃない。

相手の動きそのものが妙です。

色々、事前データと全く違う。」

「くっ、セシリアまで……」

 

「うん。私たちのコンディションや

機械的チームプレーに

一切支障は無かった。

ただひたすらに、妙なんだよ。

何か引っ掛かるけど……

分からない。」

「アーニャまでどうしたってんだ。」

 

「………………。」

 

ロボ子は、キャプテンとして

今までの相手の動き

全てを振り返り原因を究明する。

 

その答えは、意外にも

10秒に満たず出てきた。

 

「分かったぞ。

お相手氏全員……会敵2〜3秒前に

リズムを取るよう両足を

軽く跳ねらせてた。

おそらく――

『スプリットステップ』だ。」

 

「「「――スプリットステップ!?」」」

 

「そんなっ!? アレはテニスの

プレーテクニックですよ!

サッカー部全員が

元テニスプレイヤーと

言うつもりですかッ!」

 

ロボ子は首を横に振り、

静かにその説を否定した。

 

「スプリットステップ?

それって、ボクサーの

フットワークみたいなモンか。」

 

※スプリットステップ・・・

テニスのフットワークスキル。

連続した軽いジャンプで、

凡ゆる動き出しを半歩分速くする。

 

「まぁ、どちらも源流は同じかもね。

敢えて名付けるなら

『サッカーフットワーク』って

所かな。しかし、実戦に使える程の

練度となると……

そう簡単に身につくモノじゃない。

兎田くん、ボクに

メニューを教えてくれないか?」

 

「教える訳ねェぺこだろ。

ま、ウチらに勝ったら

教えない事も無いぜ!」

 

「ふー、意地悪な兎ちゃんだねぇ。

……もう、〝潰す〟しか

なくなっちゃったよ。」

 

「――!!」

 

ハッとした。

全てに合点がいったのだ。

 

そうか。

執拗に縄跳びトレーニングを

させてたのは、

フットワークスキルを体得させる為。

 

色んな動きを

縄跳びに織り込んだのは、

フットワークの柔軟性と奇襲性を

育むのが目的と云う訳か……。

 

ぺこら先輩……

早めのリークを活かし、

マネージャー陣と話し合い

ここまで対策を講じていた。

eスポーツ界を震撼させた

プロゲーマーのゲームメイク。

凄すぎるばい。

 

『さぁて、どう出る!?

御影専農中のキックオフから

試合再開ですッ!』

 

ロボ子からセシリアに

ボールが渡る。

しかし、彼女は微動だにしない。

 

「兎ちゃん。挑発に乗った

訳じゃあないけど、要望通り

互いの様子見は抜きにしよう。

当然、ボクらが守り頼りじゃない

事も調査済みだよね。」

 

「………へっ、知ってるぺこだぜ。

でもな、

こっちも負けられねんだわ。」

 

「威勢だけは褒めてあげる。

それじゃあみんな、始めるよ。」

 

「「「「YES!」」」」

 

ダダダダッ!

 

御影専農中の選手陣が

相槌をしたのち、

8人ほど疾走しポジションにつく。

 

「見せてあげるよ。

君たちじゃ攻略できない

超精密な妙技を……

必殺タクティクス

――『E8格子・乙式』」

 

「「「「!?!?」」」」

 

『なんだなんだァ!?

8人が重なる菱形の陣形を

組んだぞッ……

なっ、なんという事でしょう!

まるで帆呂雷中の自陣エリアが

数多の球に占領されてるように

見えます!!』

 

『E8格子』……

いつぞやの本で読んだ事がある。

確か、8次元の空間を

球で規則正しく埋めた時に

現れる最密球充填密度の定義。

 

それをいざ再現するとなると、

相当な精密性とチームワークが

必要な筈……。

計算高いプレーを

磨き続けた彼らだからこそ

成せる強力な連携技。

 

一体どうすれば見破れる!?

 

パッ パッ パッ!

 

(ダメだ……)

 

動くボールを目で

追う事しか出来んばい。

まるで無数の鉄球に

押し潰された錯覚、感覚に陥る……。

 

『何だァ!?

帆呂雷中の動きが鈍いッ!

どうやら、御影専農の

必殺タクティクスに翻弄されて

いる様ですッ……!!』

 

「ほらほらァ!?

自慢のサッカーフットワークは

どうしたよ君たちィ!

まさかだけど、

これで終わりじゃあないよねェ

意地悪兎ちゃん!!」

 

「くっ……」

 

「さぁて、ボクが直々に

点を返してあげるよ。」

 

マズい、仲間が誰一人として

ボールに触れられないまま

敵がシュート技圏内まで入った。

 

「行くよ。

――〝パーフェクトコース〟。」

 

ダダッ。

 

虎を自称するだけあって、

素早い身のこなしで

シシュートラインにニコちゃんが

割り込む。

 

「ハッ、残念だったなァ

アンタらよォ!

その技は履修済みだっての!

――〝ハンターズネット〟」

 

ギュルルルッ……シュゥゥゥ。

 

「ナイスディフェンスやニコ。

あとはヴィヴィに任せときぃ!」

「あいよぉ!」

 

ポォン。

 

「しまった!?」

 

よし。良い展開ばい。

相手は攻めに執着したばかりに、

選手リソースを8人前衛へ割いた。

 

本来FWやMFが

会敵してくる中盤ラインは

今となってはもぬけの殻。

 

守備のディフェンダー2人と

キーパーだけなら、

更なる追加点を

易々と狙えるっちゃん。

 

(ん、今ロボ子さんが

一瞬……にやけなかったか?)

 

「……なんてね★

逆に人が少ない分、後衛は何かと

動きやすいのさ。」

 

「はじめ先輩、もう一丁

決めたれやー!!」

「あぁ!」

 

パッ。

 

ボールがヴィヴィから

はじめちゃんに渡り、滞りなく

ドリブル進行していく。

 

が。

ぺこら先輩は違和感に

気がついたようだ。

 

「待てアンタたち!

何か様子がおかしいぺこッ!?」

「指示が2テンポ遅いよ兎ちゃん。

ふふ♪ どうやら

ボクらの方が、一枚上手だね。」

 

「「――〝デスサイズミドル〟」」

 

「なにゅっ!?

ぐわぁあああああ!」

 

襲い掛かる凶悪なエアカッター。

 

ディフェンダー2人の

合同ディフェンス技に

不意を突かれ、

はじめちゃんのボールは

敵へ渡る。

 

「オラよキャプテン!」

 

ポヒューンッ。

 

ロングパスでボールの主導権は

再び前衛側に戻った。

 

「まだボクらのタクティクスは

継続している。攻めの手は

緩めないよ〜。

さ、次はそうだなぁ〜……

アーニャちゃんお願い。」

 

ポンッ。

 

「了解。キャプテン。

――〝パトリオットシュート〟」

 

「「!?!?」」

 

速い。

ディフェンス陣すら置き去りにする

ミサイルの様な必殺シュート。

 

千速ちゃん……大丈夫なのか。

 

「任せるだよ!

――〝バーニングキャッチ〟」

 

ググググ……

 

「止めてや……ぐっ、うっ。

どわーーー!!」

 

『ゴーーールッ!

御影専農、華麗なリベンジで

巻き返しましたァ!

試合の展開が、いよいよ

分からなくなって来たぞォ!?』

 

「分かったかい君たち。

これがボクらの実力だ。

付け焼き刃の

フットワークプレーじゃ、

8次元の球体構築は

突破出来ない。」

 

「へっ、よく言うぺこだぜ。

残念ながら、

ウチには2次元の

スペシャリストが居るんだよ。」

 

言って。ぺこら先輩は

自慢気な目線を

らでんに送ってくる。

 

「へー、2次元オタクなんて

怖く無いね。萌え絵で

ブヒってる非リア如きが、

戦況を覆せる訳ないでしょ。」

 

「違う違う。あたいが

言ってんのは〝アート〟だ。

アンタ達が愛してやまない

『演算』の天敵だよ。」

 

「面白い事言うねぇ。

……けどさぁ、所詮

2次元は8次元の下位互換。

どう足掻いても無理だよ。」

 

「らでんちゃん。

見せてやんな、アンタの底力。」

「はい……!!」

 

 

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