ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜 作:たかしクランベリー
〜SIDE『輪堂・千速』〜
『今ッ、キックオフです!!』
ピピーッ!
キックオフ権は帆呂雷中からか。
作戦会議とかは重ねたけど、
結局明確な攻略法は立てれてない。
どうやら
あちらのキャプテンは
ぺこら先輩と古くからの親友で、
ぺこら先輩流の策略が
通じ難いそうだ。
互いに考えることが
分かり切ってるなら、策よりも
素のサッカースキルがモノを言う
試合になるだろう。
だったら、ちはなりのやり方で
崩すまでだ。
ぺこら先輩も、それを望んで
指名したに違いない。
彼女は、ちはに
サッカーコートを譜面として
捉えろとアドバイスしていたが、
敵チームは十人十色。
ぺこら先輩ほど器用じゃないし、
リズムで捉えるより
レース的に捉えた方がやり易い。
要は仲間を車と仮定して、
最適な走行コースを指示すれば
いいだけの話。
不幸中の幸いか。
こより先輩が
スタメンとして参加してるし、
即戦力と申し分ない。
出来ないことはないだよ。
「ばんちょー先輩っ!」
トンッ。
「うっしゅ!」
ダッ ダッ。
『輪堂、ボールを轟に渡し
快調の滑り出しだァ!
FW陣とMF2人を前線に
押し出し切り込んでくぞォ!』
見える。
最速で走行できるコースライン。
ハンドル捌き、
ペダル捌きに抜かりなし。
減速、加速、カーブ軌道。
ドライブの緩急を駆使し、
これまで培ったレース観戦の
全てを叩き込む。
パッ!
このコースで決まりだ。
「撃ってください、ばんちょー!」
ピュイーッ。
ばんちょーが受け取ったボールを
高く飛ばし、構えに入る。
「——〝オーバーヘッドペンギン〟」
「〝忘却のソナタ〟———
ぐっ、1オクターブ高いっ……」
パシュンッ。
『ゴーーールッ!
帆呂雷中。キャプテン交代で
苦戦を強いられると思いきや、
見事なボール回しで
疾風の如く先制点を
決め込みましたァ……!!』
「凄い。キャプテン一枚岩の
チームじゃなさそうですね。
みこ先輩っ!」
「あぁ、兎田とは全く違う
ストレートな立ち回りで
圧倒してきたにぇ……。
まるでカーレースみたいな
ゲームメイク。ふっ、
ブハハハハ! 楽しいにぇっ!」
突如笑いのツボに入った
みこに、リオナは冷静な
疑問を投げる。
「あのぅ……どうします?」
「決まってるにぇ。
その欠点を利用するまで。
結局なァ、サッカーを
制すのはサッカーだけだにぇ。」
「深い……深いですみこ先輩っ!」
「深くねーわ!」
すいせいがツッコミを入れた直後。
審判の指示で
両者持ち場に戻った。
ピィーッ!
『さぁ、試合再開のホイッスルです。
星章のキックオフで、
さくらに
ボールが渡りましたぞ!』
ダダダダッ。
「ほれほれェっ!
止めてみろにぇっ……!」
なんと素早いドリブルだ。
しかし、あんだけ言っといて
そっちもストレートな
ドリブルコースじゃないか。
つけ入る隙は充分にあるだよ。
「ニコたん、今だっ!」
「おうよ。
——〝ハンターズネット〟」
ビョイーンッ!
突如現れた弾性の強い網に、
相手はなす術なく
弾き飛ばされる。
コースの読みは的中。
ボールの主導権も取り返した。
1点目と同じように
パスコースを見極め、
更なる得点を叩き込んでやる。
体軸(ハンドル)、両脚(ペダル)
異常無し。
相手に並列走行する隙なんて
与えないだよ。
シュッ。ダダダ
ザザザッ!
「——!!」
予想はしてた。やはり、
ばんちょーを
固めにマークするのは
当然の対処か。
だが、ウチらの車線は
一つじゃあない。
見誤ったな敵チームよ。
「いろは先輩っ!」
「おうっ!」
シュポォン。
届く。ちはのボールコントロール、
本日も異常なし………
グワウンッ。
(何だ。このハンドルが……
いや、車体全体が滑るような
違和感は。)
「嘘っ、ボールの軌道が
捻じ曲がってる?」
ギュルルルンッ!!
『おっとォ!?
輪堂、まさかのパスミスかァ?
ボール軌道が湾曲し、
ボールが音之瀬に渡りましたぞぉ!』
「おやおやぁ〜?
こりゃあ、ウメウメな展開って
ヤツですかい。……嬉しいねぇ〜。
てかさぁ、代理キャプテンって
この程度なんだぁ〜♪」
嘲るように笑い、彼女は煽り倒す。
「……何をしただよ。」
「教えませーん❤︎
何で負けたか、
明日までに考えといてね〜♪」
負けなんて認めるもんか。
集中だ集中。
ハンドルが滑ったのは
一時的な油断が生んだミスだ。
「ねぇ君、今のは偶然だと思うか。」
「ちょっ、すいせい先輩
ネタバレやめなって!」
青髪の少女が、
見透かしたような目で
ちはに疑問を投げかける。
「そりゃあ当然、
だだの軽いプレーミスで……!?」
「それはどうかな。
よく戦場を見直すといい。
戦局をちゃんと理解できない
奴に、勝利はない。」
ダッ。
彼女はそう言い捨て、
仲間と共に走り出した。
「ちょちょっ、すいせい先輩。
敵に塩を送るなんて
どーゆーつもりなんですかー!」
「このまま終わっても
互いの成長に繋がらない。
意味のある試合こそが、
アツく楽しく尊く……
価値あるモノになるんだ。
それだけだよ。な? みこ。」
「ブハハハハ!
言うにぇーすいちゃん。
相変わらずスゲェ向上心だにぇ。
んじゃ、とっとと決めるか……!」
ダッ。シュンッ。 パッ。
『ここで星章、形勢逆転ッ!
FWコンビとMF2名の
華麗な4軸連携で、
スルリと帆呂雷中の
包囲網を抜き去ったァ!』
マズイ。
動揺して後衛の指示が遅れた。
「みんなっ、頼むだよ!」
「「「はい!」」」
「もう遅いにぇ。」
バッ。
高く蹴り上げたボールを
追い、彼女は飛びあがる。
そして。
ボールを縦横無尽に
蹴り飛ばしエネルギーを集約。
爆発的な弾として、
それは撃ち下ろされる。
「——〝ザ・エクスプロージョン〟」
「らでん先輩っ!」
「言われなくともわかっとーばい!
ぅううぉおおっ……
〝ウズマキ・ザ・ハンド〟」
水球が渦を放ち
巨大な手を生成。
渦中の水流はシュートの威力を
弱め、キーパーの手に
引き寄せられるが……
相手のパワーは想像の上を行った。
「うっ、ぐわーーーっ!」
パシュンッ。
『ゴーーールッ!
星章、速攻で点を返して
試合ペースを戻したァ!!
早々にして
両者一歩も譲らぬ戦い、
しかし。互いに手の内は
出し切っていません……!』
「——は……ちはっ!」
「ハッ。」
ヴィヴィたんの声で、
上の空だった意識がなんとか戻る。
「ご、ごめん……
ちょっと考え事し過ぎたかなぁ。」
「何はともあれ
リラックスやリラックス。
相手ん言葉一々鵜呑みに
しとったら
敵の思う壺やで。」
「だ、だよね。心配させて
ごめんだよヴィヴィたん。」
「ええて!
次、張り切っていくで!」
そうだ。張り切ろう。
イーブンに持ってかれただけで、
前半はまだタンマリとある。
しっかり見よう。
(プレーを、見直すか……)
あの身体が滑るような感覚は
何なのだろう。
……思い出そう。隅から隅まで。
敵全体の動きを。
自分のプレーと走行コースを……。
ピチャ……ピチャ。
(ん。まさかコレは。)
分かっただよ。さっきのアレは。
「——そうか。
『ハイドロプレーニング現象』。」
「ん、どしたんや千速。
急に厨二っぽいコト言うて。」
※ハイドロプレーニング現象
・・・雨天時など、路面に
水がたまった場所を比較的高速で
走行した際、タイヤと路面の間に
水の膜ができて
車が水の上を滑るようになり、
ハンドルやブレーキが
効かなくなる非常に危険な現象。
「まぁ、そんな感じかな。
あんがとねヴィヴィたん❤︎
リラックスしたおかげで、
色々見えてきたよ。」
「何や急に……」
ピーッ!
『帆呂雷中のキックオフから
試合再開ですッ!』
ダッ。
気づいたぞ。
さっきのプレーの欠点。
相手チームは、
適度なポジショニングと
フットワークでウチら全員に
プレッシャーの『雨』を
降らしていたんだ。
先制点で生まれた余裕の所為か、
プレッシャーに対する意識が
薄れ、身体に滑りを産んだ。
……否、それを意図的に
戦略で誘発させたんだ。
また相手選手一人一人の
動きや圧に、
無意識下で慄き
軌道ミスを誘発されては
元も子もない。
慎重にコースを選定し、
仲間が心身ともに
負担の少ない道を選べば
突破できる……!
パッ。
「ナイスパスやで千速ァ!」
「ヴィヴィたん。
そしてみんなっ、この点……
取り返すぞぉ!!」
「「「「——おうっ!!!」」」」