ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜 作:たかしクランベリー
今度こそ見切った。
相手の動きをよく見て
ハンドルを切ってやる。
「木曽路くんっ!」
パッ。
「ナイスパスです!
ほいっ、ヴィヴィちゃん!」
「任しーや!」
『帆呂雷中、
FWとMFをフル稼働し
攻め上がっていく!
敵の動きを華麗にすり抜けて
行きますぞぉ……!!』
よっしゃ。
プレッシャーの分散も
良い感じに出来てる。
次こそは、決めさせて貰うだよ。
「ヴィヴィたん、
ちはにパスよろしくぅ!」
「はいよっ!」
タンッ。
ヴィヴィからの
ボールをトラップし、
颯爽とドリブルで切り込む。
いろは先輩の位置取りもベストだ。
あと数メートル進めば、
余裕を持ってパスを回せる。
そこからダイレクトに
あのシュート技を撃てれば……
ダダダ。
「……ほわぁぁあああっ。
〝地走り火炎〟ッ!!」
カッ!
(何だ。視界が眩しい……)
「痛たたっ。」
一瞬だった。
眩い光に視界を奪われ、
炎が身体を貫いた感覚が走る。
次に目を開けたとき。
ちはは尻餅をついていた。
オマケに、ボールまで敵チームに
奪取されている。
『おおっとォ、ここで大空。
烈火迸る脚回しで
ボールを奪いましたァ!
そう簡単に得点は許さない、
そんな強い意志をfeeling!!』
嘘ぺこでしょ。
また見破られたというか、
ちはの作戦が。
「さっすがだよスバルマッマぁ♪
ナイスうめうめプレー!」
「奏ぇッ!!」
「は、はいっ!?」
「この試合、勝つぞォオオ!」
「当然です……!」
ザッ。
悉く失敗を重ねるちはの前に
現れたのは、
またもや青髪の少女だ。
「君、あのぺこらが
認めた子なんだから
これで終わりじゃないよね。」
そう告げる声からは、
若干の失望が感じられる。
「分かってるだよ。
絶対にこのままじゃ……」
「そうか。」
ダダッ。
彼女は頷き、前線に上がっていった。
負けじとちはも立ち上がり、
状況を整理する。
(慎重になり過ぎたか……)
見えてきた。
今度は慎重になり過ぎるあまり、
序盤ほどの勢いやスピードが
なくなり、相手の用意した
簡易トンネルに引き込まれたんだ。
成る程。
ハイドロプレーニング現象の
次は、『蒸発現象』で
アプローチして
来たという訳か。
※蒸発現象・・・
明暗の急激な変化や
対向車のライトにより、
前方の車や歩行者が
突然見えなくなる目の錯覚のことです。
トンネルの出入り口で
発生しやすく、
景色が白く飛んで
(ハレーションを起こして)
前走車が消えたように
感じる危険な現象。
皮肉なコトに、
カーレース風ゲームメイクが
全て相手のいいように
利用されている。
「くっ……」
(どうすりゃいいだよ……)
ちはの何もかもが裏目に出て
通用しない。
また終わりなのか。
中途半端なまま。
あの時のようなまま……。
『星章っ、再びボールを奪取し
攻め上がっていくゥ!
帆呂雷中、このまま押し切られて
しまうのでしょうかァ!?』
マズイ。指示が間に合わない。
「みこちゃん。
次は私に打たせてくんない。」
「ふっ。そこまで言うなら
しょうがないなぁすいちゃん。
はいよっ!」
パッ。
そういやあの人も、
チームのストライカーだったっけ。
「——〝流星ブレード〟」
その名の通り、
流星の如く素早い
ボールが撃ち下ろされる。
「突っ立ってんじゃねェ千速ァ!
試合はまだ
終わってねーだろうッ!
〝ハンターズネット〟
……ぐあっ!!」
「限界メシで目ぇ覚ました方が
いいんじゃないのッ!
〝グラビテイション〟」
ハンターズネットで
威力の削れたシュートに
重力場が圧力をかける。
エクスプロージョンと
対を成す強力シュートだろうと、
連続したブロック技を
突破するのは困難であった。
シュゥウウッ。。
『おっとォォ!
帆呂雷中、ここで意地を見せたァ!
流星ブレードを
連続ブロック技で間一髪
止め切りましたぞ……!!』
ピッ、ピッ、ピーッ!
『こぉこで前半終了の
ホイッスルだぁああああ!
得点スコアは1-1のeven!
互いに手の内を知った今、
後半の新戦略が
勝利の鍵となるでしょうッ……!!』
「はあっ……はあっ。」
「どしたんや千速。
らしくないで。」
「知ってるだよ。自分が
どうしようなく
焦ってるくらい……でも
大丈夫だよヴィヴィたん。
いい作戦、もっと作るから……」
「……わーかったよ。」
ピーッ!
『さぁ、帆呂雷中の
キックオフから後半開始だァ!』
「ほいよっ、ヴィヴィたん!」
「ええパスや!」
コースが読まれてるからって何だ。
どの道、急拵えの
ゲームメイクをしても
チクバグなプレーになるだけだ。
だからちはには、
これしかない。
序盤のスピーディーな
プレイングで押し切る。
「何度もそう攻めさせないよ!
〝ザ・ウォール〟」
「なんやこのデカい壁ぇっ!?」
ズドドォン!
突如出現した岩壁が、
ヴィヴィを押し倒して
ボールを打ち上げる。
すぐさまそれは、
敵チームの手に渡った。
『響咲、自慢のブロック技で
帆呂雷中の
進撃を食い止めたァ!
立ちはだかる壁は、
想像より遥かに高いですぞッ!!』
くっ、
分かってても防がれる。
もっと加速すべきだったか。
「みこ先輩、すいせい先輩っ!」
「「!?」」
「リオナに……あの『技』を
打たせてくださいっ!
この膠着状態を打破するには、
それしかないです!!」
「本気で言ってるのかリオナ。
アレを使ったら、お前の腰は……」
ガシッ。
忠告するすいせいの肩に、
みこが手を乗せた。
「すいちゃん。やらせてあげよう。
あの覚悟、あの瞳……
応えなくちゃいけないにぇ。
チームメイトとして。」
「……分かった。」
すいせいは渋々と頷き承諾した。
「そんじゃ決まりだにぇ!
ゴールまでのアシストは
ウチらに任せて、
リオナは突っ切れ!」
「ありがとうございます……!」
パッ。ダダダッ!
『何だぁ!?
響咲、なにやらボールを
さくらに託し
全力疾走を始めましたぞッ!
もしや、
新たな策を講じたのでしょうか!』
この期に及んで何の真似だ。
FWじゃなくて
MFを前線に上げるとは……
何はともあれ、
見え見えの陽動だ。
「みんなっ、惑わされないで。
敵FW2人を抑え込めば
防げるだよ……!」
「「「「おうっ!!」」」」
(さぁ、左右どちらでくる。)
どっちで来たとしても、
ここまで固くマークしておけば
そう易々とパスは通せない。
このボール、貰ったぞ。
ザザッ。
「へー、いい守り
やってくれんじゃん。
でも甘いにぇ。
ソレもお見通しだっての!」
パシャンッ。
「!?」
後方のMFにボールを回した!?
苦し紛れの消極的プレーで
お茶を濁す気なのか……。
「はっはーん★ おっそすぎぃん!
アレコレ考えたって
無駄だよーん♪
頼んだよリオナちゃん。」
パッ。
「はいっ、任せてください
かなで先輩。」
ピュイーッ!
「「「!?!?」」」
あの口笛の音……
ばんちょーが吹いてた
音とよく似ている。
……けど。何か変だ。
ズザッ。ズザズザズザザッ!
「ぐっ……」
口笛で現れた
4匹の赤いペンギンが、
彼女の足に喰らいついた。
ボールではなく、
術者本体に集まるのか。
オーバーヘッドキック
じゃないと、ここまで
変わっちまうのかよ。
「——〝皇帝ペンギン1号〟!」
ペンギンと共に放たれた
強烈なダイレクトシュート。
初見ながら……
その威力は、ばんちょーの
必殺シュートより凶暴に見えた。
「ハッ、ペンギンなんか見慣れてん
だよこっちは!!
〝ハンターズネット〟」
ビリィッ!
「——なっ!?」
一瞬でニコたんの網が破られた?
そんな馬鹿な。
「今度はりりかがやる!
〝グラビ……ぐわぁあああっ!」
連続ブロックも許さない
高威力超高速シュート。
恐ろしすぎる。
……らでん先輩、頼むだよ。
「——〝ウズマキ・ザ・ハンド〟
うっ……」
パシィンッ。
『ゴーーールッ!!
星章のブラフが決め手となり、
見事に刺さったァ!
So cool……!!』
「リオナ、よくやったにぇ!」
「やるときゃやる後輩だって、
奏も信じてたよーん★」
「…………。」
「待て。みこ、奏。
どうも、様子が可笑しい……。」
バキ……バキバキッ ゴキッ!
「うぐぁああああああっ!!」
身体中を駆け巡る激痛。
軋み崩壊する腰。
響く断末魔の如き悲鳴。
代償は強大。
彼女は知りながらも、
膝から崩れ落ちて倒れた。
「リオナぁあああああっ!!」
『What’s happening!?
響咲、突如ダウンだぁ!!』
ピピッ!
『ここで審判から一時中断の
ホイッスルぅ!
選手らの様子を見つつ、
試合を再開する
運びとなるようですッ……!』
あの子……リオナっていうのか。
ただ得点を入れる為だけに、
なぜそこまで身を粉にできる。
どうしてだよ。
なにが彼女を駆り立てる……。
結果がついてくるとは
限らないのに必死こいて。
一体何になるってんだ。
……ああ。
あの日々を思い出して、
こっちまで苦しくなるだよ。
*
———数年前。
「凄いわ。
色んな楽器が弾けるのね。」
「はっはっは、
父さんも誇らしいぞ。」
「まだまだだね……。
青春はテニスだろ。やっぱ。」
「いやいや、
勉強は全てを解決する。」
ちはは、
シングルファザーと
シングルマザーの再婚で
生まれた子。
それは、
盗み聞きだけど……
深夜に水飲みに行ったら
偶然知った情報だ。
だから母子の兄と
父子の兄が居て、
2人とも別ベクトルで
優秀な人だった。
ちはも負けじと、色んな特技を
探し出そうとした。
本当は、
埋もれちゃうのが怖かった。
そうして触れたのが、楽器。
ハーモニカ、管楽器。
エレキギター、
アコースティックギター。
飲み込みが早く、
演奏を体得するのは
そう時間が掛からなかった。
クラスでも
オールラウンダー千速
として一時期持て囃された。
しかし。
そんなぬるま湯から、
熱湯の湯船に
突き落とされるのは
すぐの事だった。
「ちは、ピアノ教室行ってみたい!」
「いいわ。」
家族は協力的で。
あっという間に
通えるようになった。
ピアノ教室に入ると、
金髪の穏やかそうな大人が
教壇に立っている。
「ああ。あなたが今日から
生徒になる子ね。
私は担当の音乃瀬。
あなたの話は親御さんから
聞いてるわよ。よろしくね。」
「ちはやっていいます!
よろしくおねがいします!」
元気に挨拶をして、
案内された場所に着席する。
授業の準備を整えた先生が、
ようやく講義を始めた。
「さぁて。新たな生徒も
加わった事ですし、
改めてあなた達にお伝えします。」
「「「…………。」」」
生徒一同に、緊張感が走る。
「良いですか。
色んな土壌や環境で、
あなた達だけの
音楽が生まれるのです。
演奏は自分を映す鏡。
ゆえに、音色の美醜は正直です。
それを忘れてはなりません。」
「「「はーい!!」」」
演奏が自分?
音色にびしゅー?
何を言ってるんだこの人は。
当時の自分は、
その意味についてまるで
分かっていなかった。
通ってから1週間ほどだろうか。
案の定、
そこそこ弾けるようになった。
でも、ちはの演奏を聴く
先生の顔は……
嬉しそうなモノじゃない。
そして。
ピアノ教室の中で
埋もれたのは千速の方だった。
「♬♬〜〜」
「きゃーーっ、
流石姫森さまですわ!」
「なんて上品な音色!」
「……まだ遊び足りねぇのら!
ゆくゆくは、自慢の
マイエレクトーンを
手に入れて……
豪快に弾いてやるのら!!」
「♬〜〜♬」
「見て、あっちでは
玲銘ちゃんが弾いてるわよ!」
「行くしかないでしょ……!」
姫森ルーナと玲銘ミラ。
このクラスには、
凄腕のルーキーが2人もいた。
演奏の腕もさる事ながら……
彼女たちの演奏は、
なぜか心から
楽しんでるように聴こえた。
彼女たちから秘訣を
聞き出そうと
色々絡んでみたものの……
未だ、何も得られずじまいだ。
「千速ちゃん。」
「あ……先生。」
「レッスン後、
補講に付き合いなさい。
親御さんにも伝えとくわ。」
「はい……」
(可笑しいな。
レッスン通りに弾けてるのに、
何が悪いんだろう。)
そんな疑問を抱きながら、
補講の時間を迎えた。
「あの……先生。
ちは、何が
悪かったんでしょうか。」
「まぁ、実力的に
悪い所はないわね。
それにあなた、飲み込みも早いし。
オールラウンダーの
異名は伊達じゃないわ。」
「じゃあなぜっ……!」
「でもさ、みんなは
ルーナちゃんやミラちゃんの
演奏に惹かれる。
なぜだと思う?」
「———!!」
見透かしたように、
先生はちはの目を覗き込む。
「言った筈よ。
演奏は自分を映す鏡と。
あの子たちの手指、
ちゃんと見た事あるかしら。」
頭をフル回転して、
思い出してみる。
そういえば、
思い当たる節があった。
「なんか……マメっぽいのあった。」
「正真正銘マメよ。
あの子たち、
演奏が楽しすぎて
痛みを忘れちゃってるわ。」
「ちはは……楽しんでないって
コトですか。」
「いずれ見つけられるわ。
それまでゆっくり休むのも手よ。
走ってばかりじゃ、
道端の宝石を取り逃がすわ。」
「休んでられない
理由があってもですか?」
「へー、理由ね。」
「「…………。」」
先生は天井を仰ぎ見たのち、
語り始めた。
「私ね。千速ちゃんと
同じ年くらいの娘がいるの。」
「は……はぁ。」
「その子はね、人を小馬鹿にするのが
大好きなイタズラっ子。
楽器なんてリコーダー以外
興味なしの自由人。
リン語なんていう変な言葉まで
作っちゃうのよ。」
「…………。」
「けれど、歌が大好きでね。
親バカって奴かしらねぇ。
あの子の歌、
すごく聞き心地がよくて
楽しんでる風に聴こえるの。」
「自慢と比較でマウントとって
楽しいですか。」
「違うわ。私が言いたいのは
そうじゃない。」
「…………。」
「音楽は人を裏切らない。
だから、時間をかけて
ちゃんと向き合って
手を繋いでみなさい。
きっと音楽も、本当のあなたを
待っているわ。」
*
ピーーッ!
『お待たせしましたァ!
星章は響咲とチェンジで
姫森をスタメンに
起用するそうです!』
ピピーッ!!
『さぁ帆呂雷中の
キックオフから試合再開ですッ!』
パッ。
「千速、ボールだけ渡して
ボサッとすんなや!!」
「で、でもどうしたらいいか……」
分からない。
あの時と同じだ。
何をやっても通じない。
みんなは何を見て……
「あーもう知らへんわっ!!」
パシュンッ!!
ピーッ!
『WAO!
キキララ、ボールをコート外に
蹴り飛ばしたぞぉ!?』
ガシッ。
ヴィヴィたんはちはの
ユニフォームを掴み、訴えた。
「しっかりしいや千速!
ヴィヴィはこんな千速と
サッカーしたかったんやない!
思いだしぃや、GWの事……」
ヴィヴィたん、泣いてる……
——サッカーは、みんなでやるモンや——
「みんな本気でやってるんや!
身体をぶっ壊そうとも、
仲間の為に本気でプレーしてるんや。
みんなで
楽しいサッカーをする為に!
勝敗や結果の為なんかやない!」
「——!!」
何やってんだよ千速。
愛しのマイハニーを
ここまで泣かして。
そうだ。
相手も本気でプレーをしてんだ。
なら、此方も本気で応えなくちゃ
サッカーじゃない。
みんなで本気で挑もう。
バッ。
思いっきりヴィヴィを抱きしめた。
そして身体を離す。
「千速……っ。」
「分かった、伝わったよ。
ヴィヴィたんの気持ち。
あと、リオナの気持ちも。」
「ホンマか!?」
「ああ。ちは、
みんなと本気のプレーを
とことんしたいっ!!
もう一度手を貸してくれるか、
みんなぁっ……!」
「「「「おうっ!!」」」」
ベンチ椅子から、ぺこら先輩が
ボソボソと呟いた。
「ホント、気付くのが
遅ぇぺこだな。しかし……
こっからが面白ェぺこだぜ。
アズちゃん、
『ミキシマックス・ガン』の
準備はOKか。」
「はいっ!」
ガチャリ。
(……不思議だ。)
心の靄が晴れたように、
サッカーコートがすっきり見える。
それだけじゃない。
そこら中に彩り豊かな音符が
ふよふよ浮いてるように見える。
まさか、サッカーコートを
譜面として見ろと言ったのは
この感覚を利用させる為か。
——色んな土壌や環境で、
あなた達だけの音楽が
生まれるのです——
脳裏に、先生の言葉がよぎった。
そして、改めて気づく。
凄いな……ぺこら先輩。
「千速っ、ヴィヴィちゃん!
こっちを見ろぺこ!」
「「え?」」
2人して同時に
ぺこら先輩の方を向いた
瞬間だった。
怪しげな2丁銃を構えた
AZKi先輩が、
何かを叫びながら
トリガー引いたのだ。
「綺々羅々ヴィヴィ&千速、
ミキシマーーーーックス!!!」
「「うわーーーっ!」」
カッ。
銃口から放たれた光は、
ちは達を突如として包み込んだ———。