ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜   作:たかしクランベリー   

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25話・ぺこーら、真の策

 

星章vs帆呂雷の試合開始より

2日前。夕刻。

holoX基地第5MTGルームにて。

 

帆呂雷中のマネージャー陣だけ

を招集し、兎田ぺこらは

密談していた。

 

それは勿論、勝利を求めての

事である———。

 

〜SIDE『兎田ぺこら』〜

 

「……こよりちゃん、完成したか。

例のブツは。」

 

「ま、まぁね。

holoXの頭脳担当にかかれば、

ちょちょいのちょいですよー♪」

 

ガチャガチャ……。

 

彼女は徐に、

テーブルへそれを置いた。

 

2丁銃のような見た目だが、

先端に銃口はない。

代わりにあるのは小さな鉄球。

 

各々の銃は赤と白を

カラー基調とし、

プラスとマイナスの記号装飾が

施されている。

 

holoXは情報収集の為、

様々な時代を

トリップしてるらしく……

この兵器も、そこから見聞し

着想したモノだそうだ。

 

アズちゃんはこの

珍妙なガジェットに興味津々で、

目を輝かせて観察している。

 

「ねぇねぇ、ぺこちゃん。

これって何する道具なの。」

「あぁソレはな……」

 

「こほんっ!」

 

あたいの説明を遮るように

こよりちゃんが咳払いした。

 

ふっ、製作者の性という奴か。

どうしても

自ら語りたいのだろう。

 

無理にぺこらが言うまでもない。

好きにさせよう。

 

「それはねぇアズちゃん。

『ミキシマックスガン』って

言うんだ。

人と人のオーラを融合させて

対象をとーっても強くするんだ!」

 

「凄いっ!

でもそんなの反則なんじゃ……」

 

まぁ。普通に考えればそうだよな。

明らかに違法ドーピングだ。

しかしこうでもしないと

後がキツい。

 

相手が全国の強豪校だけなら

まだしも……

 

「アズちゃんの指摘は

間違ってねぇぺこだぜ。

だがな、ウチらは真に

倒すべき敵が居る。

ソイツらを倒す為には、

手段を選んでられねェんだ。」

 

「……『プロコトル・ミミーチン』」

 

「正解だよアズちゃん!

この兵器があれば、

打倒プロミミも夢じゃないって訳!」

 

遂に省略までしやがった。

まぁ、フルネーム一々言うの

面倒だしいいか。

 

「それにな。もうじき、

アイツらの呪縛は解ける。

仕掛けてくるとしたら

本戦の3試合のどれかだ。

兎にも角にも時間がねェぺこ。」

 

「だからって、足の仮病を

作る意味はあったのかなぁ

ぺこら先輩。」

 

「えっ!? 

仮病なのぺこちゃん!」

 

流石サイエンティスト。

肉体の具合を

見るのも得意なようだ。

 

「……まぁな。」

 

サラサラサラァ。

 

包帯を解き、足が無事なのを

アズちゃんに見せる。

 

「どう言う事なの……

ぺこちゃん。」

 

「ニコちゃんからの、頼まれ事だ。

千速を暗闇から救い出せとな。」

 

「暗闇? どうみても楽しそうに

サッカーしてる

じゃないですか。」

 

「どうだろうな。

あたいには、ヴィヴィちゃんと

何かする事を

楽しんでる様に見えるね。」

 

「いい事じゃないですか!

同じ目的を持った仲間と

上を目指して切磋琢磨する!

これの何処が悪いの!?」

 

アズちゃんが柄にもなく

アツくなる。

彼女が持つ、

優しさゆえの訴えだろう。

 

しかし、言わせてもらう。

 

「ああ、だからこそぺこ。

そのムービングは、

善しとなる場合と

悪い方向になる事もある。」

 

おそらく……千速ちゃんの

そばで様子をずっと見守ってた

ニコちゃんも、それを痛いほど

痛感してたのだろう。

 

じゃなきゃ。

あんな苦しそうな顔で

ぺこらに懇願する訳がない。

 

「アイツは協調性が高く、

凡ゆる物事の飲み込みも早い。

だから、躓いてても

問題がない様に見えやすい。」

 

「…………。」

 

「だが、ソレが逆にアダなんだよ。

闘志が燃え上がる前に燃え尽きる。

……いわゆる、不完全燃焼の

スパイラルに陥り易いって訳だ。」

 

「つまりは……

ぺこちゃんは責任感という

重しをつけて、彼女の『熱』を

引き出そうとしてるんだね。

それが結果として『救い』に

なるという訳か。」

 

くっ、全部言いやがったな

こよりぃ。

ここで思いっきりポエムって

カッコつけたかったのに。

 

「そんな意図があって仮病を……

凄い荒療治思いつくね、

ぺこちゃん。」

 

「……ああ。けどな、

これは諸刃の剣だ。

もし本気に目覚める様であれば、

千速ちゃんはサッカー部を

辞めるぺこだろうな。」

 

「「えっ!?」」  

 

不意の発言に

2人して驚愕する。

そこまで読んでると思ってたが、

ぺこーらが買い被りすぎたか。

 

ニコちゃんにもその旨は

伝えておいた。

それが千速の為に

なるならと、

覚悟の決まった顔で承諾してたな。

 

そして、あたいがOKしたのには

個人的な理由も一つある。

 

アイツなら、

ぺこらの成し得なかった

あの伝説のタクティクスを

〝完成〟させるかもしれない。

 

ステージ・ザ・ぺこラップは

それの未完成版だ。

 

故に、賭けてみたくなったんだ。

千速ちゃんの可能性に。

……奏でて見ろ。

アンタだけの本気の旋律を。

 

魅せてみろ。

———〝神のタクト〟を。

 

 

 

 

〜SIDE『輪堂・千速』〜

 

光が晴れた。

何だろう。凄く力が湧いてくる。

 

髪も長くなった気がする。

 

「千速ァ!

自分髪長くなっとるで!?

てかヘアカラーまんまヴィヴィやん!

どないなってんねん!

コスプレマシン

打たれたんかウチら!」

 

「違うだよ……ヴィヴィたん。」

 

感覚で分かる。

あの光線は単なる

コスプレマシーンじゃない。

 

今ちはは、

ヴィヴィと一つになったんだ。

 

ヴィヴィには、

世界がこんなキラキラして

見えているんだね。

 

ワクワクしてきたよ。

 

「じゃあ何や。」

「んー。秘密っ❤︎

さっ、チンタラしてらんないよ。

ウチらの本気、いっちょ

ぶちかまして行こう!!」

 

「わーかったよ!!」

 

ピーッ!

 

『さぁて、星章のスローインから

試合再開です。

帆呂雷中、この苦境を

どう覆して  

行くのでしょうかッ!?

ワクワクが止まりませんぞ……!』

 

ピッ。

 

「投げには自信があるのらよっ!」

 

ポシュンッ!

 

姫森の速い投げを

測ったようにみこがトラップする。

 

「ナイスボールだにぇ!」

 

「いいトラップですね

みこ先輩っ♪

そんじゃ、もういっちょ

フォーマンセルアタック

ぶっ込んじゃいます〜?」

 

「無論だにぇ……!」

 

今ボールを奪おうと思えれば

幾らでも付け入る隙はある。

しかし、目先の防衛策を

打つより大切なことがあるだよ。

 

……次に繋がる一手を見つけるんだ。

相手の動きをとことん観察し、

個々の動き……音色を完全に

インプットしてやる。

 

一挙手一投足まで見逃すな千速。

 

このどデカい譜面に、

みんなのパワーと

ガッツを刻んで

勝ち上がりたいから。

 

『WAO!

帆呂雷中の包囲網がまたもや

突破されていくゥ!

コレは絶体絶命かッ……!?』

 

ダダダダッ。

 

やはり、みこめっとの

定番FWコンビが

攻め込んで来たか。

 

「すいちゃん!

あのオーバーライド技を決めよう!」

「おいっ、正気か!?

あの技はまだ未完成だぞ……!」

 

「だからこそだにぇ!

ウチら大先輩なのに、

散った後輩の勇姿に応えなくて

どうするよッ!?」

「仕方ねェなァ!

後で文句垂れんなよ!!」

 

バンッ!

 

空中に飛ばしただと。

あんな高さじゃ介入の余地もない。

 

何だ。

2人で飛び上がって

ボールを蹴り合ってる……?

 

ザ・エクスプロージョンの

2人撃ちなんて

芸当も出来るのか。

 

信じられないだよ。

 

「「——〝コズミックブラスター〟」」

 

「ハンターズネッ……」

「グラビティ……」

 

「「ぐはーーーっ!!」」

 

黒き球体から放たれた

隕石の渦は、DF陣の得意技さえも

簡単に貫いた。

 

「ニコたん、りりか先輩っ!!」

 

「らでんも負けてられんばい。

——〝ウズマキ・ザ・ハンド〟

…………ぐぐぐっ。」

 

ガシッ。

 

「おしりに力入れろや!

オイらでん!!

ここ一番の『芸術』

見せなきゃいけねーなぁ。

いけねぇよ。」

 

ガシッ。

 

「はぁーんっ!

微力ながら、

ラミィもお供するよ……!」

 

ねね先輩に、ラミィ先輩……

らでん先輩の両肩を支えてまで

点を守り抜こうとしてる。

 

ここまで

本気になってくれるなんて。

……嬉しいよ。

 

「へぇー、中々いいガッツだにぇ。

でも、あと一歩足りない。」

 

「「「どわーーっ!!」」」

 

「みんなぁっ!?」

 

パシュンッ。

 

『ゴーーールッ!!

帆呂雷中、ここで2点のBehind!

逆転は困難を極める一方です。

さぁ、どう立ち向かう

帆呂雷中……!』

 

「そろそろ危なくなっとるで

千速……でも。」

「あぁ、ワクワクするだよ。」

 

何でだろうな。

追い詰められてるというのに、

先程のような

焦燥感も苛立ちもない。

 

代わりにワクワクと闘志が

湧き上がってくる。

……そっか。

みんなと熱中して

取り組むのって

こんなに楽しいんだ。

 

「わーかって来たか。

流石ちはやで。」

「そりゃどーも。んじゃ、

こっちも仕掛けて行こうか!」

 

「あったり前や!!」

 

ピーッ!

 

『帆呂雷中のキックオフで

試合再開ですッ!

おっと何だァ!?

輪堂、急に指揮の動きが

滑らかになりましたぞ……!』

 

パッ パッ シュパッ。

 

「木曽路くんは速めに右方向へ、

こより先輩は直進からの

左へ忍び込むようにアクセルを。」

 

「!?」

 

やっぱりだ。

個々の音が見える。

あちこちに浮かぶ音符を

利用し、最適な旋律を直感で

組み立てられる。

 

コースの導線が、音色と共に

輝いてるから。

 

「くっ、まるでボールが

意思を持ったように

すり抜けるにぇ。」

 

「ああ。まるで誰かさんの

旋律に乗ってるみてぇにな。

変わったのは、顔付きだけ

じゃあないようだ。」

 

そう呟くみこめっとを

眺めながら、

帆呂雷中のベンチ陣も

驚きを漏らす。

 

主にアズキが。

 

「何だろうぺこちゃん。

疲れてるのかなぁ……

一瞬わたし、千速ちゃんが

オーケストラの指揮者みたく

見えちゃった。」

 

「流石プロゲッサー。

お気づきになったぺこか。」

「え? 気のせいじゃないの。」

 

「気のせいなんかじゃねぇぺこ。

アレが千速ちゃんに

眠っていた力。

ありゃあ間違いなく

最強の必殺タクティクス……

『神のタクト』だ。」

 

『ななななななんとぉ!?

帆呂雷中、

さっき苦戦してたとは

思えない動きで

星章の防衛網を軽々すり抜けたァ!

シュート圏内が近いですぞォ!?』

 

姫森ルーナ先輩。ミラちゃん。

ちは、ようやく気付いただよ。

 

『演奏』って、こんなに

清々しくて

気持ちのいいモノなんだね。

 

なら今度は、

こっちが届ける番だ。

あの日から塞ぎ込んでた

自分とはもう違う。

 

受け取ってくれ。

今のちはが出す全力の音を。

 

「ヴィヴィたん、

ボールをちはにお願い!」

「シュート技持っとるんか自分!」

 

「任せてよ!」

「わーかったよ!!」

 

パーーンッ。

 

今なら打てる気がする。

……否。

どうしても伝えたい。

この想いを。自分の足で。

 

「行くよ、ミラちゃん。

——〝フォルテシモ〟」

 

「——〝忘却のソナタ〟

ふふっ、この音……待ってたよ。」

 

パシュンッ。

 

『ゴーーールッ!!

帆呂雷中、輪堂の

新必殺シュートで得点だぁアア!

アツい、まだ帆呂雷中の

闘志はメラメラと

燃え滾っておりますぞ……!』

 

「やっとみつけたのらね。

自分の演奏を。」

 

ピーッ。

 

『さぁて、星章からの

キックオフで試合再開です!』

 

はしゃぎ過ぎたな。

次の相手の攻め手。どう捌こう。

みんなにも高負荷の

動きをさせ過ぎた。

 

(けど……やるっきゃない。)

 

ポンッ。

 

「千速ちゃん。よく頑張ったね。

追い上げ、今度は僕に任せてよ。」

「……え?」

 

こより先輩が

ちはの肩に手を乗せ、

ウィンクで突然アピールする。

疲労度は同じ筈なのに、

まだ動けるのか。

 

……驚きだ。

 

ジャラジャラジャラ。。

 

「——!!」

 

こより先輩の身体から、

鎖が落ちてきた。

 

「君たちの本気を見たら、

居ても立っても

居られなくなったこよ。」

 

「フッ、

今更プロプレイヤー気取りか。

おめでたいこった。」

「甘い。

勝利はこっちのモンだにぇ。」

 

くっ、また鉄板FWに突破され……

 

「星街すいせい。あと4歩先で

右折中軌道のパスを回す確率……

99・7%。」

 

ザッ。

 

「「——っ!?」」

 

嘘ぺこでしょ……。

何だ今のインターセプト。

速すぎて見えなかった。

 

「どうなってやがる!?

ただのハッタリじゃないのか!」

 

「ハッタリじゃないこよ。

じゃ、お先行かせて貰います♪」

 

『WAO!

博衣、コレまでとは

打って変わって

精巧かつ素早い動きで

星章を圧倒している!?

一体何が起きてるのでしょう!』

 

「こっからシュートが

決まる確率……100%。

——〝パーフェクトコース〟」

 

パシュンッ。

 

『ゴーーールッ!!

帆呂雷中、あっという間に

同点まで追い上げたァ!?

しかし試合時間も残り僅か!

最早技の応酬すら難しい領域。

両者の気合いが

肝になりそうです……!』

 

「こより先輩……ホントは

めちゃくちゃ強いんですね。」

 

野球部代行チーム戦の時から

思ってたけど……

慢心しなかったら本当に

勝ち目なかったじゃんこの先輩。

 

「当然でござるよ。

こより殿は

データのプロフェッショナル。

風真でも、勝負事では

全然歯が立たないでござる。」

 

「マジですか……。」

 

データ>フィジカルって、

俄には信じ難いが……

いろは先輩が言うなら

間違いないな。

 

「感心しとる場合か自分ら!

時間もないし、最後は気合いで

押し切るしかあらへんで!」

 

その通りだよヴィヴィたん。

最後の最後まで力を振り絞って……

悔いのない、

気持ちいい勝負にしよう。

 

そして、勝利をモノにしてやるんだ。

 

「そうだねヴィヴィたん!

みんな、最後までがんばろーー!」

「「「「おーーー!!!」」」」

 

ピーッ!

 

試合再開のホイッスルが

鳴り響く会場のベンチで、

ぺこらはアズキに語る。

 

「こっからが正念場ぺこだな。

フブちゃんの言う通り……

互いに技や戦略を撃ち合う

時間も体力も

然程残っちゃいない。」

 

「じゃあ、気合い勝負なんですね。」

「ああ。だが、

今のアイツらなら

勝利の星……

掴み取ってくれるだろうな。」

 

パシュンッ。

 

『ゴーーールッ!!!』

 

 

 

———試合から2日後。

 

「ほらほらほらァ!

アンタ達ぃ、

もっと準備早くせんかァ!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

ぺこら先輩に怒鳴られながら、

誕生日パーティーと

FF本戦出場記念パーティーの

準備を急ぐ。

 

場所はholoX基地の

第三食堂ホールだ。

 

(散財を抑えたいからって、

2つのパーティを同時開催とは……

ぺこら先輩らしいな。)

 

と心の中でフッと笑う。

 

そうしてなんやかんや

準備しながらも、

ちははある事を伝える為……

ぺこら先輩を

廊下に連れて行った。

 

「何だよ。急に呼び出して。」

「ぺこら先輩……この

フットボールフロンティアが

終わったら、

退部しても良いですか。」

 

細かい御託は要らない。

単刀直入に言った方が、

相手も納得しやすい筈だ。

 

「………分かってたよ。

やりたいんだろ。吹奏楽部。

どの部に居ようが、

アンタが大切な

仲間であるのには変わりねぇぺこ。

我が道を行け。

それが『青春』ってヤツだ。」

 

「……はい。」

 

「ウチらに向けた

特大のファンファーレ。

期待してるぺこだぜ。」

「はい!!」

 

ぺこら先輩はキザな振る舞いで

背中を押したのち、

時間に目を通す。

 

「……おっと、もうすぐ始まんぜ。

アズちゃんの誕生日会。」

「分かりました。」

 

準備した暗がりの中。

帆呂雷中サッカー部、

帆呂雷中PCゲーム部、

holoX一同が会場に集まり

待機する。

 

メールで主役を呼んだのは

ぺこら先輩だ。

 

ギィーーッッ。

 

食堂の扉が開いた。

お待ちかね……主役のご登場だ。

 

「あれ……暗闇?

誰も居ない。」

 

「千速ちゃん、照明つけよろぺこ。」

「はい。」

 

ポチッ。  カッ。

 

リモコンで照明が起動し、

AZKi先輩の姿が

はっきり見えるようになった。

 

視界に捉えるなり、

スタンバイしてたみんなは、

彼女に向かって次々と

クラッカーを放つ。

 

パンパンパンッ!!

 

放つタイミングは多少ズレてても、

言うタイミングは

ピッタリ合わさった。

 

「「「「AZKi、誕生日

おめでとうーーー!!!」」」」

 

 

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