ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜 作:たかしクランベリー
時は遡り。
ケシン仙人の住まう謎の山林地帯、
開けた崖上にて。
〜SIDE『木曽路・兵太』〜
怪しげな自称仙人は、
整った岩場に俺らを連れてきた。
そこには何故か、
仮設されたテニスコートまである。
「あの……
こんな何もない場所で
何の修行をするつもりっスか?」
「ホントだぁ〜、
古っぽいテニスコートが
ポツンとあるだけじゃーん。」
「ハッハー↑ あるじゃないか。
それこそが第一の修練じゃよ。」
「修練って……俺たちは
サッカーで強くなる為に
遥々やって来たんスよ!?
ここで呑気にラケットを
振る暇なんか
ないんですって……!!」
「誰がラケットを
振ると言った?」
「「「———!?!?」」」
ケシン仙人の声色が
一気に鋭くなった。
「テニスコートの各自プレー範囲は
約10m×約10m。
この範囲を
己の行動テリトリーとして
最適化せねば話にならん。」
「どういう事ですかッ!」
「百聞は一見にしかずじゃ。
ボーヤは、小娘らの闘いでも
見ておくといい。」
「………………。」
確かに、俺がどうこう
お気持ち表明したって
時間を無駄に潰すだけだ。
何が何だか分からないが、
キャプテンが仙人を信じて
送り出してる以上……
最低限は信じてやろう。
まだ、本格的な修行が
始まった訳でも
無さそうだしな。
「そんで、ウチらは何をすれば
いいのさ?」
疑問を投げかけながら、
もも先輩といろは先輩が
テニスコート内に入っていった。
「お主らには、キックベースならぬ
『キックテニス』を
やって貰う。
ルールは大体テニスと同じじゃ。
そして審判は、私が務めよう。」
キックでテニスだと……?
特定範囲の反応速度は
高まりそうだが、
どうなんだ……。
「「キキキィッ!!」」
「「——!!」」
対面のコートに現れた選手は、
まさかの猿だった。
2匹とも首輪をつけてるので、
訳ありなのだろう。
「HAHAHAHAっ★
ボケちゃったのかぁ仙人さんよォ〜。
お猿さんじゃあ
ねね達の相手にならんよー。」
「調子に乗るでない。
あやつらは、私が鍛え上げた
立派な選手じゃ。
……まァ、精々苦しむといい。」
「嫌な予感がするでござるよ……。」
スッ。
仙人は審判台に座すと、
懐からメガホンを取り出し
試合のコールを始めた。
『The best of 3 set match.
帆呂雷中 service to play』
「ままま待ってよ!?
ボールはどこ!!」
「ハッハー↑」
シュッ。
特に説明もなく、仙人は
甲高く笑いボールを
先輩たちの方に投げ込んだ。
「強引すぎでしょ!?」
「でも、やるしかないで
ござるよッ……!」
ザシュンッ。
なんて対応力だいろは先輩。
咄嗟に跳ね上がって
サーブを決めたぞ。
スピードも結構速い。
これなら、得点もあっさり
稼げそうだ。
「キェェエ!!」
ドシュッ。。
『0ー15』
「え……?」
何だよ、今のリターンエース。
気がついたら
先輩側のコートに土煙が立って、
ボールが転がっていた。
今まで共に厳しい訓練を
積んできた先輩たちが、
反応すらできないなんて……。
※リターンエース・・・
相手のサーブをレシーブ側が
打ち返したボールが
サーバーのラケットに一切触れず、
そのままポイントになるショット。
「してやられたでござるな。
ねね殿。なるべく後衛側で
対応頼んだでござる。」
「うっしゃ!
今度こそ見極めてやんよ!」
『いろはto serve! ハッハー↑↑』
「おりゃあっ!」
パシュンッ!
「キキェエ!」
「2度も同じ手は
食わないよっ……!」
パッ。
すげぇ、たった一度の
ミスをカバーし乗り越えた。
ようやく良いラリー勝負に
持ち込めたけれど……
相手と違ってやり慣れてない
からやや押され地味。
初見にしては頑張った方か……。
パンッ!
『Game won by モンキーズ.
Game count 3 games to 1……!』
「ふぅ、風真たちの負けでござるか。」
「んあーもう! いきなり
こんなゲームやらされて
勝てる訳ないじゃん!」
「まぁ、次があるだろうし。
そこでリベンジすれば
良いでござるよ!」
「お、おう。」
「こほんっ!」
いろは先輩のナイスフォローで
険悪ムードが解れたその時。
仙人が咳払いをし
注目を集める。
「その通りじゃ。
彼らに勝つまで、休息1時間ごとに
キックテニスをやって貰うぞ。
当然、勝つ度に難易度を高める
ご褒美付きじゃ。
覚悟しとけよ小童ども。」
「あ……あの。」
パーンッ!
手拍子で〆アピールした
仙人は、俺に分厚い
テニス技巧本を手渡した。
「……三人寄れば文殊の知恵。
新技開拓のヒントはそこにある。
よく話し合うと良い。
ボーヤよ。」
ダダダダダ。バッ!
「ちょちょちょっとぉ!?」
質疑応答タイムすら許されない。
仙人はダッシュして崖から
飛び降りた。
急ぎ追って崖下を覗いたが、
仙人は姿を消していた。
「ねぇねぇ木曽路くん。
何貰ったんだよー。」
「風真も知りたいでござる!」
「予め言っときますけど……
そんなに
面白いモノじゃないっスよ。」
それからは早かった。
3人で色々な技巧を蹴りとして
上手く再現し、
難なくモンキーズを
キックテニスで
倒せるようになった。
でもそれは、訓練の序章に
過ぎなかった。
合金の重たい下駄を履かされて
山の往復ランニングや
キックテニスやらされたり。
次は目隠しを付けた状態でも
キックテニスをやったり。
風船を狙う10匹の鷹から
逃げるゲームやったり。
四方八方から来るボールを
1秒以内に9球蹴り返す
訓練もやったり。
俺に至っては、森羅万象
凡ゆる生命のオーラを感じ取り
己に束ねる座禅をやれ……!
って言われて
ずーっとその訓練をやってた。
色々ハード過ぎて
FF本戦までに間に合うか
不安だったけれど……
なんとか俺らは『形』にしたんだ。
*
[得点表]
帆呂雷中 / 南雲原中
1 <1st> 0
0 <2nd> 0
1 <total> 0
『南雲原、驚きの逆転シュート
からどう展開を
切り返すのでしょうかッ!
今っ、再開のキックオフです!』
「行くぞジョーカー。」
「ええ。お任せあれ。」
ダダダッ!
また性懲りもなく
変身しやがったか。
しかしもう好きにはさせない。
俺たちMFにも意地って
モンがある。
「俺が食い止めるっ!」
ダッ。
見切った。
ツーマンセルプレーで
攻め込むんなら
パスラインはかなり狭い。
修行でスピードも付いたし、
ボール奪取は
全然狙えるラインだ。
「ああ。そう来るだろうと
思ったぜ。空宮、かませ。」
「——!?」
パフゥンッ。
「ナイスパスだぜ桜咲ぃ!
ふっ、ようやく俺の力を
披露できる。
見てろよ雲明……!」
しまった。
ストライカーは3人だった。
序盤の流れで
ヘイトを2人に集中させ、
もう一方の伏兵を放つ機会を
伺ってたんだ。
だが。リカバリー
出来ない距離じゃない。
向きを変えて、
すぐさま追跡再開すりゃあ
問題は無い……
ヒュォオオオッ!
「これはっ、突発サイクロンか!」
くっ、
なんてタイミングの悪さ。
追跡ルートが
一瞬にして分断された。
「守備のみなさん、
お願いしまーーーすっ!!」
後はDFとGKに託すしかないか。
……悔しい。
俺がもう少し冷静に
動いてれば未然に防げた
ミスなのに。
『風圧と視界不良で
あっさり突破される
帆呂雷中。コレは
大ピンチでございますぞッ!』
小柄な男はニヤリと笑い、
ボールと共に高く飛び上がる。
彼のパワーと日光のエネルギーが
球に圧縮され、
刺突の様に鋭く放たれる。
「——〝サンシャインブレード〟」
「止めてやるっちゃん。
〝ウズマキ・ザ・ハンド〟
……ぐぐっ。どわーー!」
パシュンッ。
『ゴールっ!
南雲原中、的確な戦略と
ヘイト管理が功を奏し
得点を返したァァ!!
試合の行方は、
まだ読めませんぞォ……!』
「すみません、キャプテン。
俺……まんまと嵌められて
しまいました。」
「仕方ねぇさ。相手にも
ぺこら並みの策士が
いるからな。
けどな、ウチらはまだ
力を出し切ってない。
逆転の目は充分あるぺこ。」
「了解っス!」
ピピーッ!
『さぁ、帆呂雷中の
キックオフから試合再開だァ!
両者得点はeven!
前半戦タイムも僅かな中、
互いにどう突破口を見つける
のでしょうかッ!?
ワクワクでございます……!』
逆転の目……。
そうだ。仙人曰く、
俺には化身の素質がある。
今は気持ちを整え、
あの座禅の時のように
みんなの『気』を束ねよう。
目を瞑り、感じ取るんだ。
(みんな、いい気の色をしている。)
これなら、状況に合わせて
すぐに顕現できそうだ。
瞳を開け、
戦局を注視しておこう。
よし、ぺこら先輩が
進んでる。
「ぺこら先輩ーーっ!
風真が切り返すでござるよー!」
「へー、珍しく張り切ってる
ぺこじゃんかいろはちゃん。
はいよーっ!」
待てよ。
さっきあの位置に
いろは先輩の『気』は無かったぞ。
ご自慢のフィジカルを
行使したとしても、
この戦局でそこにパス出し
するメリットは……
いや、まさかっ。
「先輩、感謝でござるよっ!」
「何、礼には及ばねぇぺこ。」
「待ってくださいキャプテン
何か変———」
パシュンッ!
「え? いろは……ちゃん。
嘘ぺこだよな……。」
『ゴーーーールっ!
南雲原中?
更なる追加点で
差をつけましたぞォ!』
「変って……何を言ってるんで
ござるか木曽路殿。」
「やっぱりっスか……。」
俺の真横に居るのが
『本物』のいろは先輩だ。
ならば、ゴール付近に
突っ立ってる
もう1人のいろは先輩は……
「ぺこら先輩……
今オウンゴールを決めた
アイツは、化けた敵です。」
「おいおい木曽路くんよォ……
そんなのって、無いぺこじゃん。」
ピッ ピッ ピーーッ!
『こぉこで前半終了だァ!
さぁ、どうする帆呂雷中ぅ!?
イリュージョンの魔の手は
味方にも忍び寄る!
後半の展開は難儀を極めますぞ!』
なんて極悪非道。
これじゃサッカーどころか、
俺だけが本物を見分けられる
人狼ゲームだ。
しかしこの人狼、必勝法がある。
修行の成果を活かした、
仰天の一手が。
「ぺこら先輩、いろは先輩。
俺、イリュージョンに
効く戦法……思い付きました。
協力してくれませんか。」
「「——!!」」