ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜 作:たかしクランベリー
『さぁ〜っ、前半終盤で
一気に追い詰められた帆呂雷中……
ここからどう巻き返すッ!?
波乱の後半戦、開幕ですッ!!』
ピーッ!
よし、ハーフタイムの作戦を
通していくぞ。
態々味方に変身してまで
急ぎ得点を
ぶち込んで来たって事は、
相手側が焦りを感じてるからだ。
さっさと得点をリードし、
得意の持久戦で詰めていく
つもりなのだろう。
「やられた分はやり返す!
行くぺこッ!」
はじめ先輩のキックオフから
キャプテンに繋がり、
進撃が始まる。
(さっきの流れ通りなら……)
目を瞑って気の流れを見る。
……やっぱり、そう来るよな。
「ぺこら先輩っ、
こっちでござるーー!」
「「「「「否、こっちで
ござるよ……!!」」」」」
「!?!?」
『何という事でしょうかッ!
風真選手がスタジアムに
6人も居ますぞォ……!?
これも、猛暑が生んだ
蜃気楼なのかァ!?』
フッ、ここで活きてきたな。
俺らが味わった
厳しい厳しい修行の成果が。
1秒に9球蹴り返す訓練を
やってモノにしたんだ。
5人程度の残像を
生み出すなんて容易い。
そして。
そんな前情報を持ってない
人狼にとって、
この技は想定外そのもの。
数秒でも隙を晒せば、
得意のイリュージョンも
機能しなくなる。
「何だとっ……!」
それどころか。
敵全体の隙すらも誘い出せる。
「おいおい。バレバレぺこだぜ!
自慢のイリュージョンは
どうしたよッ!」
パッ。 パッ、パッ!
『今度は南雲原中が
錯乱状態になり、
翻弄されてますぞ!?
帆呂雷中、あっという間に
懐へ攻め入ったァ!』
「見事な化かしでござったな。
お礼に、本物のパワーを
見せてやるでござる。」
ゴゴゴゴゴ!
「——〝オーバーサイクロン〟」
大渦と共に、自然のパワーを
凝縮した一撃が放たれる。
謎の獣たちがボールに追従し、
威力に拍車をかけた。
「これは僕も、全身全霊を
尽くさないとダメだね。」
パキインッ!!
氷の塔から黄金の手が出現し、
鋭い爪でボールに切り掛かった。
「〝ゴッドフィンガース〟!
……ぐっ。なんて破壊力だ。」
ドォオオオンッ。
『ゴーーーールッ!!
帆呂雷中、化かし合いを
制し同点に持ち込んだァ!!
試合の行方は、
まだまだ分かりませんぞォ……!』
「ナイス戦略ペコだったぜ
木曽路ぃ、
アンタ結構やるぺこじゃん♪」
「…………。」
「どしたん木曽路、ヴィヴィで
良ければ話きこか?
浮かない顔してんで自分。」
「キャプテン、ヴィヴィさん……」
ああ。作戦が上手くいったのは
正直嬉しい。
でも何処か心に突っかかる。
星章学園のような、互いに本気の
ときめく試合を……
楽しい試合をやりたい。
「俺たちの熱中してた
サッカーって、
なんか違う気がするんです。」
「せやな! だったらさぁ。
今からみんなで
思いっきり楽しめばええ!
見せたろか、ウチらのサッカー。」
「ヴィヴィさん……」
あの瞳、表情。
化かし合いとか
正義感とか一切関係ない。
彼女は最初から最後まで
全力で楽しんでたのか。
……そうか。勝手に
正しい試合、正しくない試合を
決めつけて戦ってたのは
俺自身なんだ。
「みなさぁんっ!
俺からお願いがあります!」
「……ふっ。」
ぺこら先輩が分かりきったように
微笑んだ。
「俺っ、みんなと
全力でこの試合に
打ち込んで楽しみたいッ!
どうか……
手を貸してくれませんか!」
ポンッ。
ヴィヴィさんが俺の肩に
手を乗せた。
「なぁに今更
改まってんのや自分。
今の今までも、
全員で力合わせて
やってきたやろ。せやから、
仲間の気持ちに応えるのは
チームとして当然や。」
仲間を見渡すと、
賛同するように笑みを浮かべ
頷いていた。
「そうっスよね。
じゃあ、遠慮なく
暴れていきましょう……!」
「「「「おーー!!」」」」
スッ。
『おっとぉ!? ここで南雲原中
ポジションチェンジだ。
黒原と忍原のポジションを
試合開始時の状態に
戻しましたぞォ!!』
「代役ご苦労だぜ黒原。
やっぱり、締め括りには
テメーが居ねぇと始まんねェよ。」
「待たせたね桜咲クン。
私も、ようやくフルパワーで
リベンジ出来そう♪」
ピーッ!!
『南雲原のキックオフで
試合再開だァ!
果たして、どう巻き返して
行くのでしょうかッ……!』
今やっと分かった。
みんなの
気持ちが1つに束ねられた。
最後のピースは、
俺自身が皆と同じ気持ちで
楽しくサッカーと
向き合う事だったんだ。
始めよう。
みんなと紡ぐ、最高の
エンターテイメントを。
「来いっ!
——〝エンターテイナー〟」
「「!?!?」」
ポフゥンッ!
緑色の花火と煙幕が打ち上がり、
自由の道化が顕現する。
そのオーラは、
凄まじいモノだった。
「遂に来たぺこか。
あれが……木曽路の化身。」
「——ほう。あれが噂の『化身』と
いう奴か。面白れぇ!!」
「待って桜咲っ、前!」
ヒュォオオ……
「——〝アイスグランド〟」
パキインッ!
出た。ラミィ先輩の
ブロック技、アイスグランド。
相手を凍結させ
瞬時にボールを奪取する
華麗な妙技。
不意に攻められたら
躱すのは至難。
「ナイスですラミィ先輩。
このままみんなで、
攻め上がりましょう!」
「なぁに言ってんのさ!
その化身とやらは
お飾りかい?
そいつのパワー、
とことん見せてやんなぁ!」
パシュンッ。 トンッ。
「……分かりました!」
ヒュロロロロォォオオ !
「なんやて!?
木曽路の進行コースに
またサイクロン来よったで!」
「問題ないっスよ
ヴィヴィさん!」
「どういうこっちゃ自分!」
山修行の期間中、
何も化身の鍛錬や新技だけに
注力してた訳じゃない。
試合中もしもの事態に備え、
互いの技を体得する
特訓も密かにしていた。
そうだ。
……あるじゃないか。
風そのものを利用する
ドリブル技が。
「いろは先輩っ。
アレ、使わせて貰うっスよ!」
先輩は
俺のやりたい事を察し、
激励の喝を飛ばしてくれた。
「向こうに
入らんかぁあああっ!!」
「〝そよ風ステップ〟!」
ササァッ。
『何という事でしょう!?
木曽路、まさかの竜巻を
正面突破だァ……!!』
ふっ。嵐を抜けた先に、
思いがけない
ラッキー到来だぜ。
竜巻の所為で
相手のDFラインが崩壊し、
キーパーとタイマン
張れるようになった。
俺自身も化身が
どれ程のパワーを
秘めてるか未知数だ。
けど。
ここで決めなきゃ、
あの日々に顔向け出来ない。
「いくぞっ、
ぅぅぉおおおおおおっ!!」
「——〝ゴッドフィンガーズ〟!
……ぐっ、この球……
11人分の力なのかっ…………」
パシュンゥウンッ!
『ゴーーーールッ!!
帆呂雷中、嵐を切り裂き
勝利への活路を拓いたァ!!
しかし、南雲原中も
ここで黙って終わる程
甘くは無いですぞォ!?』
[得点表]
帆呂雷中 / 南雲原中
1 <1st> 2
2 <2nd> 0
3 <total> 2
「おい雲明。もう頃合いだろ。
そろそろ良いよな。」
「ええ、時間はジャストです。
桜咲先輩。並びにみなさん。
本領発揮と行きましょうか。」
「よっ、待ってたぜ雲明っ♪
そー来なくっちゃな!」
敵チームのあの口振り……。
まだ相手は
余力を残してたのか。
これはキツイ戦いになりそうだ。
ピーッ!
『さぁあっ、南雲原の
キックオフで
試合再開だァ!』
「「「「必殺タクティクス・
『ブースト15』!!!」」」」
「「「「!?!?」」」」
何だ?
前半戦より
格段に動きが良くなってる。
速さや動きの滑らかさまで。
マズイぞ。
このままじゃ、
体力面的に押し込まれる。
そうか。
敵チームは
途中で敢えて攪乱戦法を仕掛け、
体力面を温存と回復に努めた。
全ては、この15分で
逆転ホームランを
かます為の布石。
最初から最後まで、
相手の天才策略家が建てた
レールの上だったのかよ。
「激ヤバっスよキャプテン!
俺ら……」
「しまったぺこだな。
——なんて、言うと思ったか?」
スッ。
ぺこら先輩が一瞬で消えた?
さっき不敵に
笑ってたのは一体……
「どりゃああああっ!」
パフォンッ!
『おっとォ!?
兎田、スライディングで
ボールを場外に
吹っ飛ばしましたぞォ!』
「へいへいへーい♪
スローインの前にちと待ったァ!
GKとDFの交代を
所望するぺこ!!」
『審判……これはっ。』
「ピッ。」
『GKの身体ダメージを
鑑みてOKのようです!
さてはて。
JFTと輪堂の
ポジションチェンジが
どう試合に活きるでしょうかッ!
この試合、最後まで
目が離せませんぞ……!!』
ピーッ!
らでん先輩を
フィールドプレイヤーに起用した。
まさか……キャプテンの狙いは。
「らでんちゃん。
分かってるぺこだよなぁ?」
「そういう事ですか。
流石、面白い事を
思い付きますなー。」
ピーッ!
『南雲原中のスローインで
試合再開だッ!
さぁさぁ、15分の攻防の
行く末は如何にっ!』
ポンッ!
「——必殺タクティクス
『ペンローズの階段』!!」
「なんだコレは……
どんなパスをしても
攻めに繋がらねー。
まるで、無限の階段を
昇降し続けてるみてェだ。」
「なんでよ。ゴールまで
然程距離はないのにっ……!
マジでシュートコースが
掴めない!」
なんつーキャプテンだ。
相手の秘策まで既に把握し、
最適なカウンターを叩きつけた。
錯視の回廊に一度陥れば、
抜け出すのは至極困難。
タイムリミットが
15分未満ならば尚更だ。
「南雲原の策士さんよぉ〜。
どうやらアンタより、
あたいの方が策士として
一枚上手だったぺこだぜ♪」
「そのようですね。
御影専農の崩し技でしかない。
という認識を、
改める必要がありそうです。」
ピッピッ ピーーーッ!!
『試合終了のホイッスルぅうう!
竜巻吹き荒れる激戦の中、
準決勝への通行切符を得た
勝者はァ〜〜……
〝帆呂雷中〟だぁああああっ!!』
「「「「ォォオオオオオオ!!」」」」