ホロメンイレブン〜雷門をぶっ倒ぉおす!〜 作:たかしクランベリー
〜side『綺々羅々ヴィヴィ』〜
今日という今日は、恐ろしく
テンションが上がっている。
登校の時なんか、
ラッキッキーって口ずさんで
スキップを10分間やるくらいや。
まさか昨日。
ぺこら先輩からエグい懺悔を
聞くとは思うとらんかったけど、
それはそれとして。
ヴィヴィに同意してくれたのが
何より嬉しかった。
おかげで、学校の何気ない
ホームルームの時間も
ほんの少しワクワクしている。
……そんな折。
新しい風が教室に吹き込んだ。
「皆さんにご報告があります。」
ざわ・・・ ざわ・・・
花園先生が教卓に立つと、
にこやかにそう告げた。
ただならぬ雰囲気に
騒つくクラスメート一同。
大した間もなく、それは訪れた。
「本日、転入生がやってくるので
温かく迎えてくださいね。
木曽路くーん、入室どうぞー。」
ガラガラガラ……
先生の合図に答え、
教室のドアは横に開かれる。
ドアを静かに閉めると
テクテクとお行儀よく歩き、
教壇の横で転入生は立ち尽くした。
「簡単な自己紹介、お願いね。」
花園先生が指示をし、彼は小さく頷く。
とうとう始まるんやな。
自己紹介とやらが。
「木曽路兵太です!
親の転勤の都合で当中学校に
通うコトになりました。
俺、みんなと仲良くなりたいと
思ってるんで、
これからよろしくぅ……!!」
ほぉ。結構明るい好青年やんけ。
きっと、クラスメートとも
すぐに馴染めそうやな。
「よく出来ました。
綺々羅々さんの後部席が
空いてるから、そこに座って頂戴。」
「りょーかいです先生♪」
特にトラブルなどはなく。
木曽路くんも颯爽とヴィヴィの
後部座席に着席した。
それからは何事もなく
スクールライフが進んでいく。
彼のフレンドリーな雰囲気の賜物か。
はたまた人当たりの良さなのか。
予想通り、
今日1日で多くのクラスメートと
すんなり馴染んでたなぁ。
(お、もうこんな時間なんか。
1日ってあっという間やな。)
放課後のホームルームも終わり。
帰りの支度をしてる時だった。
「おいっ、
そこの髪色が派手派手な君ィ!」
突如として背後から声をかけられる。
背後っていうことは、
高確率で例の転入生くんやろな……
そう予測して振り返ると、
見事に的中した。
「なんや自分、今さら声かけて。
今日は友達いっぱい出来たやろ。
ヴィヴィとお話したいん?」
「まっ、それもあるけどさ。
ちょっとだけ帰り付き合ってくれよ。」
「何言うとんねん!
ヴィヴィ、これからぺこら先輩と
会いに行かなあかんのに!」
ざわ・・・ ざわ・・・
下校時刻だというのに、
クラスの面々はこちらを見るなり
甘酸っぱい青春を
予見し勝手に騒つく。
ええて! 何期待しとんねん。
あかんな、
ここに居ちゃあ埒が明かない。
一旦教室から退こう。
「分ーかったよ木曽路くん!
ほな、さっさと行くでぇ!」
「うぉっ、ちょちょ!?
手ェ引っ張り過ぎだって……!」
ビビッ!
来た。アホ毛がピンと立つこの感覚。
ヴィヴィのラッキッキーセンサー、
今日も今日とて絶好調や。
なんか木曽路がモゴモゴ言っとるが
気にせんでセンサーの示す方へ
疾く向かう。
ぺこら先輩の居る教室は……
ここやな!
ガラガラガラ。
教室のドアを開け、すぐさま視界に
先輩を捉える。
「ぺこら先輩、今日もサッカーやるで!」
「――!?」
こっちを見るなり、
驚いたように目を見開く。
……が。元気の良い返事を
返して来る訳でもなく、
荷物をそそくさと纏め
反対側のドアから
全力疾走して先輩は逃げ出す。
今日は追いかけっこの特訓からか。
ええで。
その特訓、全身全霊で受けたる。
ダッ! ダダダダ!
「廊下は走るなよー。」
風紀委員の忠告などどこ吹く風。
負けじと奔走し学校中を駆け回る。
ダダダダ! ダダ ザッ!!
なるほど、体育館裏の茂みに
身を潜める魂胆か。
甘い、甘い甘い甘いッ!
ヴィヴィのセンサーは全て
お見通しやで!
「木曽路ぃ、そこでお座りしときぃ!
ケリはこっちで付けたる!」
「アンタが勝手に連れてたんだろ!?
責任とって
名前くらい名乗ってくれよ!」
「ヴィヴィ……
――『綺々羅々ヴィヴィ』!
ぺこーら先輩の、愛弟子やぁああッ!」
ダッ! ドガシャアン!
絶対に逃さない方法を、
追いかけながら考えていた。
それはつまり……
飛びつきからの寝技だ。
いくら瞬発力とパワーに
長けた脚だろうと
四肢を同時に封じ固定した場合、
本来の力を出すのは極めて難しい。
ふっ、この勝負もろたで先輩……!
「愛弟子って弟子側が
自称するものじゃないだろ!?」
またまた木曽路がツッコミを
かましているが、かまへん。
目的は取り敢えず果たした。
「捉えたで、ぺこら先輩っ!
堪忍せぇやっ!!」
「あひん……❤︎」
むむむ?
ぺこら先輩にしては、声が低いな。
って、いやいやいや。
この期に及んでヴィヴィが
人違いなんてありえへん。
ぺこら先輩の気配を
随時センサーで追ってたんや。
(誤作動なんて決して……)
恐る恐る冷静になり、押し倒した
少女と視線のピントを合わせる。
うん。思いっきり人違いや。
身体の育ちからして全然ちゃう。
黒髪に緑のメッシュをかけた子……
襟元リボンの色合い的に同級生か。
いや、そんな事より
「誰や自分!?」
「もぅ忘れちゃったのぉ?
ほら、あたしは
ヴィヴィたんのフィアンセ……
『輪堂・千速』だよ❤︎」
「ヴィヴィにフィアンセ!?」
「知らんて!
木曽路もそこに反応すんなや!」
「もー、こんな激しい
アプローチしといて
今さら有耶無耶にするのぉ〜?
ちはちゃん悲しいな〜。」
「おし、河川敷行くで木曽路。
次にぺこら先輩が行くとこは
大体そこや。」
「お……おう。」
「――無視すんじゃねェ!!」
「お、まだ居たんか自分。
サッカーしたいん?」
放置しても良かったけど、
面倒くさそうだから別ベクトルで
揺さぶりをかける。
サッカーに興味なさそうだし、
撒くには充分な投げかけやろ。
「ヴィヴィたん。
これからサッカーしに行くの?」
「せや、木曽路と一緒にな。」
「そうなの!?
木曽路くんとヴィヴィたんって
どんな関係なのさ!」
「今日出会った友達や。
お話ししたいゆーてな。
ぺこら先輩追跡しながら
会話なんて成り立たへんし、
サッカーを通じて
話してこうっていう算段や。」
「……ほう。良い提案だね。」
木曽路も事情を理解したようで、
一声上げて頷いた。
「待って待って!
ちはもヴィヴィたんと
いっぱいお話ししたいだよ!
サッカー参加させてっ……!!」
おやや?
これは予想外の反応やな。
でも、うまく行けば部員を
一気に2人増やす好機。
乗るしかない。
このビッグウェーブに。
「そっか。
なら断る理由はあらへんな。
木曽路、ちは、行くで!」
「待った待った待ったァ!」
「今度は誰や!」
出発しようとする足を
止めてくる声に身体を向けると、
これまたスタイルの
良い女生徒と目が合う。
金髪でグラサンかけた、
如何にもチャラそうな子だ。
「あーしは『虎金妃・笑虎』!
輪堂・千速のボディーガードだ!」
「だから何や。
別に、ちはに手ェ出す気はないで。
安心して帰っとき。」
「ニコたんは知ってるぞ!
サッカーは激しいスポーツだ。
万がいち大怪我したら、
誰が責任を取るってんだ!」
あーだこーだ。
さっきから皆々様しつこいな。
あ、分かった。もしかして。
「ニコたんも、サッカーやりたいん?」
「ちっ、違ーし。友人として
千速が心配だから
付き添ってやるだけだ。」
「分ーかったよ。
じゃあ、ニコも一緒に
サッカーやってちはを守ったれ。
それで万事解決や。」
「おうよ!」
思わぬ収穫やな。
2人どころか
3人まで候補が増えた。
ぺこら先輩、びっくりするやろな。
合流が楽しみや。
そんなかんやで。
愉快な面々と共に色々と
語らいながら
河川敷に赴くことにした。
案の定、ぺこら先輩は
河川敷ジュニアーズとの
特訓サッカーに励んでいた。
「おーーい、ぺこら先輩ーーーっ!」
「おう。ヴィヴィか。
ったく、会う時はアポの一つくらい
取れってんだ――って、
なんかめっちゃ増えてね!?」
「はい。サッカーに
興味ある系フレンズ連れてました!」
「「「よろしくお願いします!」」」
「たった半日で何があったァ!?
ヴィヴィあんた、一体全体どんだけ
人望あんだよ……!」
「いえいえ!
これもサッカーのおかげやで!」
ぺこら先輩が一呼吸置くと、
小さく微笑んだ。
「しゃーないな。おいアンタらぁ、
気ぃ引き締めろぺこ!
ぺこーらのサッカーは甘くねェぞー!」
「「「はいっ!」」」
何はともあれ。
ヴィヴィの
サッカー部再興プロジェクトは
大きく前進した。
この調子でバシバシ仲間を集めたる。
……きっと、もっと面白い奴らが
帆呂雷中の
何処かに潜んでるに違いない。
その為にも、キラキラした
今を思っきり楽しもう。
「ヴィヴィ、何わろてんねん!」
「ワクワクが止まらへんのや。
ぺこら先輩……
サッカーやろうや!!」
*
SIDE『???』
とある屋敷の一室。
仰々しい椅子に座る1人の男の前に、
少女が歩み寄る。
「――インタラプトの修正を確認。
木曽路兵太は南雲原に入学せず
帆呂雷中へ入学。
これで、南雲原のサッカー部は
大幅に弱体化しました。」
「よくやったぞベータ。」
「…………。」
ベータと呼ばれた少女は、
何か言いたげに口を窄めた。
「どうした?」
「一つ伺っても宜しいですか。
ミミーチン様。」
「申してみよ。」
「兎田ぺこらをeスポーツ界から
追放したインタラプト修正には、
何の意味があるのです?」
「私的な意味などはない。
クライアントが相応の依頼料さえ
支払えば、私は働く。」
「私が訊きたいのは――」
憤りの意図を汲みとった様に、
彼は言葉を紡ぐ。
「……ある『お方』の依頼だ。
どうやら、彼女が
〝配信者として活動しない世界〟
が好都合らしい。」
「左様ですか。
ご返答ありがとうございます。」
「さぁ、戯れはここまでだ。
これから与えられるミッションに
備え鍛錬しておけ。」
「了解です。ミミーチン様。」