ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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今回はレゼ視点が中心です。
よろしくお願い致します。


第15話  少女の夢の終わり

 

カフェ「二道」にて

 

 

困った。

 

何が困ってるかって彼と話している時だけ、演技では無く、自然な私で話している事に困っている。私、工作員だよ?彼を籠絡する演技をして、信頼を勝ち取って、誰も居ないような場所に連れて行っても疑いもされない。そこで彼を始末して、悪魔の心臓を奪う。それなのに、何楽しそうに話してるのさ。

 

ここ最近、こんな自問自答を繰り返してる。彼が店に来る前に、なんとか工作員の私になろうとする。……ああ、今日も彼が店に来た。その瞬間、工作員の私は普通の少女の私に塗りつぶされていった。

 

 

レゼ「あ、お客様だ!」

 

 

デンジ「昼、食いきた。」

 

 

レゼ「1週間も続けて来るほど美味しくないでしょココ。」

 

 

デンジ「ウマいよ?」

 

 

マスター「おいしいよ。」

 

 

レゼ「バカ舌。」

 

 

デンジ君は私に会いに1週間続けて来てくれた。それだけで普通の少女になっている私の心は高鳴っていく。学校、というものに行ったことはないが、仕組みは知っている。同級生、というのはこんな感じなんだろう。

 

 

デンジ「そうだなぁ…。カレーと……アイス…あ!あとチャーハン!」

 

 

マスター「はいよ。どこかの元気娘みたいに食べるね。」

 

 

レゼ「ああ。玲世さんも最初会った時、カレーとチャーハンとスパゲティ食べてたっけ。………こっちの席で食べないですか、お客様〜?」

 

 

デンジ「いーよ。勉強中だろ?店員のクセによ。」

 

 

レゼ「キミは学校行ってないだろ〜。16歳のクセによ。そっちの方がヤバいと思いますけどねぇ。学校行かないでデビルハンターなんて珍種だよ、珍種。」

 

 

相席を断られた事で少しムッとした私は売り言葉に買い言葉で返してしまう。私は強硬手段に出た。デンジ君の横に座りに行く。

 

 

レゼ「こっちで勉強しよ〜と。そっちつめてつめて。」

 

 

デンジ「…漢字は読める様になりたいかな……。」

 

 

レゼ「漢字読めないの?じゃあ教えてあげる!」

 

 

玲世さんに勉強を教えて……教わっていた事を思い出し、デンジ君に問題をだす。男の子と言ったらこれでしょ。

 

 

レゼ「問題ジャジャン!これは何と読むでしょう?「金玉」」

 

 

デンジ「キンタマだろエロ女!」

 

 

レゼ「なんだ、わかってるじゃん!」

 

 

デンジ「唯一キンタマだけは読めるんだよ。」

 

 

レゼ「アハハハハハハ!!なんじゃそりゃ!」

 

 

デンジ「………レゼとなら学校行きたかったかな。なんか楽しそうだし。」

 

 

ああ、デンジ君との会話が楽しい。ああ、デンジ君がそう言ってくれて嬉しい。学校に行った事はないけど、私もデンジ君と同じ気持ちだ。………そうだ、実際に学校に行ってみようか。

 

 

レゼ「じゃあ行っちゃいますか?夜。一緒に夜の学校探検しよ?」

 

 

デンジ「します…。」

 

 

よし、学校に誘えた。私が先生として色々と教えてあげよう!…教えるで思い出したけど、公安での玲世さんってどういう感じなのか聞いてみよう。

 

 

レゼ「ねぇねぇ、そう言えば玲世さんとは一緒に働いてるの?」

 

 

デンジ「あ?………ああ、ナナシか。いや、あんま一緒じゃねぇ。1、2回一緒に戦ったぐらいだな。」

 

 

レゼ「そっか…。…玲世さんって強い?本人お店だとあんな感じであんまり想像出来なくて。」

 

 

私はデンジ君に玲世さんの事を聞く。彼女とは仲良くしているが、デンジ君と同じ公安でもある。少し工作員の私が顔を出し、いざという時の情報収集を行う。

 

 

デンジ「アイツか…。うーん、なんていうか…わかんねぇ。アイツは自分が魔人だけど生きてて人間なんだと。この前も腕ぶった斬られてたけど、治ってたしな。」

 

 

レゼ「魔…人…?………そ、そう。あの人には勉強教えてもらったけどそんな感じにみ、見えなかったなぁ。先生…というか学校の先輩?みたいな感じだったし。」

 

 

私はデンジ君の言葉に動揺していた。玲世さんが魔人?どういう事?デンジ君との会話は少女の私に任せ、工作員の私は彼の言葉に動揺する。魔人。それは人の死体に悪魔が憑依した存在。玲世さんが悪魔?いや、そんなはずはない。魔人特有の特徴なんて無かったしあの人は、そんなモノじゃない。私達と違って感情豊かで、暖かくて、姉みたいな人。…作戦が上手く行ったら最後に聞いてみよう。

 

デンジ君と楽しく夜の予定を話をする裏で、私は玲世さんと作戦の行く末を考えていた。

 

 

 

 

学校にて

 

ザァァァァァァァァァ

 

 

レゼ「止みませんねぇ。」

 

 

私とデンジ君は夜の教室で雨が降りしきる夜を眺めていた。さっきまで教室で勉強ごっこをして裸でプールに入っていた。改めてデンジ君のおかしな境遇に疑問を投げかけるとデンジ君はオーバーヒートしてしまった為、プールに入り、泳げないデンジ君に泳ぎを教えた、裸で。………いや、痴女じゃないよ?あれも籠絡させる為の作戦というか、私自分も初めての学校にテンションが上がったというか、デンジ君にもっと私を見てもらいたかったというか…って誰に弁解してるんだろ、私。

 

雨が降りしきる中で私はデンジ君にある問いを投げかける。

 

 

レゼ「デンジ君はさ、田舎のネズミと都会のネズミ…。どっちがいい?」

 

 

デンジ「…なにそれ?」

 

 

レゼ「ん?童話のひとつ。田舎のネズミは安全に暮らせるけど都会の様においしい食事は出来なくて、都会のネズミはおいしい食事が出来るけど猫とかにやられちゃう可能性があるよって話。」

 

 

デンジ「……俺ぁ、都会のネズミがいーな。都会の方がウマいモンあるし、楽しそうじゃん。」

 

 

レゼ「え〜。田舎のネズミの方がいいよ〜、平和が1番ですよ。……キミは食えて楽しけりゃいいのか?」

 

 

デンジ「ああ。」

 

 

デンジの答えに私は言葉に詰まる。彼は私より酷い。私はまだ周りに仲間がいた。モルモット時代にも同じ境遇のみんながいたし、武器人間になった後も任務はあったけど、不自由では無かった。でも彼は違う。ずっと1人で生きてきて、1人の悪魔と出会っただけだ。そして今は公安で戦っている。自由そうに見えるが、生殺与奪の権利を握られている。……しょうがないから、私が楽しいを教えてあげますか、先生だし。

 

 

レゼ「じゃあ明日さ、近くでお祭りあるから一緒に行かない?きっと楽しいしおいしいよ?」

 

 

デンジ「…仕事終わってからならいーよ。」

 

 

レゼ「いえーい、やった!約束ね!」

 

 

その時、私達以外の気配がした。…多分、デンジ君への刺客だ。だけど、何処か別の国だ。気配がだだ漏れでなっていない。デンジ君には始末する所を見られたくはないので、場所を離れないと。

 

 

レゼ「ちょっとおトイレ行ってきま〜す。」

 

 

私は暗い廊下に出る。刺客は私に釣られたようだ。教室からは離れた為、雨の音でデンジ君には聞こえないだろう。私はか弱い少女を演じながら後ろを振り向く。

 

 

レゼ「デンジ君…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を上り、雨が降る屋上に出る。刺客が私を追ってくる。万が一デンジ君が来ないとも限らないので、ここに来た。丁度顔見知りもいるし。

 

 

刺客「お~い、もしも〜し。キミは屋上でションべンすんのか〜?」

 

 

レゼ「アナタ…、アナタ、なんなの!?」

 

私は刺客に問う。すると刺客は私がチーズだのネズミをおびき寄せるエサだの言っている。…すっかり私の演技に騙されてる。ただの雑魚ね。刺客が不用意にナイフを突き出してきた為、私はナイフを躱すと同時に組み付き、腕を折りながら後方へ回る。そして後ろからチョークスリーパーで仕留めようと腕を伸ばす。

 

 

その瞬間、刺客の頭が弾け飛ぶ。

 

 

狙撃。私の頭にその二文字が浮かぶ。私は急いで屋上の扉の影に隠れる。しばらくそのままだったが追撃は無い。チョーカーのピンに指を掛けながら、影から出る。狙撃は刺客を狙っていたが、私も標的かは分からない。最悪撃たれても、ピンを抜いて武器人間になれる。

 

 

レゼ「……ふう。何処の誰かは分からないけど、礼は言っておくね。始末する手間が省けた。後は……。」

 

 

私は排水口に声を掛ける。

 

 

レゼ「嵐で学校に閉じ込めたのキミでしょ。台風。」

 

 

台風の悪魔「レゼ様ガイタトハ知リマセンデシタ。」

 

レゼ「今回の事は見逃すからしばらく私に服従ね。この男の死体は処理しておいて。」

 

 

返事を聞かず、私はデンジ君の元に戻る。雨に濡れ、透けた私の服を見て、デンジ君が凝視してきた。…スケベ。

 

 

 

 

 

 

同時刻

学校より200m離れたビル屋上にて

 

 

玲世「ふう。なんとかなった…かな?」

 

 

降りしきる雨の中、私は腕を下ろし、変身を止めた。視力を向上させていた為か、目が痛い。レゼちゃんに返り討ちにされそうな刺客の男を空気弾ではなく、遠隔起爆で殺した。今日の夜に2人が学校に行く事も、レゼちゃんが男に襲われ返り討ちにし、殺す事も知っていた。……これは私のエゴだ。レゼちゃんには人を殺して欲しくない。それだったらレゼちゃんを守る為に私が殺す。

 

昨日、あの後に大家さんに言われた言葉が頭をよぎる。

 

 

大家「いい?玲世ちゃんの決意は分かったけど、力だけ有っても心が伴わなければそれはただの暴力。心だけ有っても力が無ければ、ただの夢想。だから私達は両方を供えなければいけない。貴女の決意を押し通そうとした時に、押し通せるだけの力を持ちなさい。そして、押し通すなら殺す事を迷ってはいけないわ。敵を殺す事を後悔するなら、初めから何もしない方がいい。……岸辺君にもよく言ったものよ。」

 

 

そう。私は今、決意を押し通した。レゼちゃんを守る。その為に敵を殺した。………自分の手が震えていることに気が付く。ボンちゃんが私を不安そうに見ている。

 

 

ボンちゃん「レーセ。だ、大丈夫か…?具合悪いのか?」

 

 

ケーちゃん「レーセ様。心拍数が急上昇しています。深呼吸を」

 

 

玲世「…大丈夫だよ、2人とも。ケーちゃんもサポートありがとうね。」

 

 

高まった心拍数と身体の熱を抑えるため、深呼吸をする。冷たい空気が入り込み、熱くなった息を吐き出す事を繰り返し、心拍数と熱は収まっていくが手の震えは止まらない。。

 

 

玲世「よし、撤収しよう。本番は明日だからね。ゆっくり休もう。」

 

 

ボンちゃん「なら私はカレーが食べたい!…………なんだ、その顔!?あのカフェ?って所でレーセだけ食べてるのがズルいって思った訳じゃないぞ!」

 

 

ケーちゃん「ボンちゃん様。それは羨ましいと言っているも同然です。もっと素直になればよいものの…。」

 

 

ボンちゃん「う、うるせー!難しい言葉使いやがって!」

 

 

玲世「…………アハハハ!!」

 

 

2人のやり取りに笑いが溢れる。…ああ、私にはボンちゃんと眷属達がいる。大家さんがいる。4課の皆がいる。ならレゼちゃんは私が守ろう。1人で孤独だった名無しの少女を守ろう。

 

帰る道の中で、私の手はもう震えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日夜

街外れの高台にて

 

 

レゼ「この場所、カフェのマスターに教えてもらったんだ。花火が1番見えて誰も来ないマル秘スポットなんだって。」

 

 

デンジ「ふ〜ん。」

 

 

2人で神社でお祭りを堪能してきた。まるでデートみたいで年頃のカップルに見えただろうか。私はデンジ君を連れてマスターに教えてもらった高台に来た。

 

…………私はこれからデンジ君に確認しなくちゃいけない。私のエゴでデンジ君を困らせたくはないけど、どうしても必要だ。

 

 

レゼ「色々考えたんだけどさ、やっぱり今のデンジ君の状況おかしいよ。…16歳で学校にも行かせないで悪魔と殺し合いさせるなんて、国が許していい事じゃない。」

 

 

私は一世一代の行動に出る。正直言うと、なんで自分でもこんな綱渡りをするのか理解に苦しむ。……でもマスターが言っていた。若い日の恋は理屈じゃないって。どうしようもなく暴走する時があるって。だから工作員の私は閉じ込めて少女の私が暴走する。

 

 

レゼ「仕事辞めて……………、私と一緒に逃げない?私がデンジ君を幸せにしてあげる。一生守ってあげる。……お願い。」

 

 

デンジ「遠くに…逃げるって…どこに?」

 

 

レゼ「知り合いに頼めば絶対に公安から見つからない場所があるの。そこだったら………すぐは無理でもいつか一緒に学校行けるよ。」

 

 

デンジ「なんでレゼがそんなコト…。」

 

 

レゼ「だって私…、デンジ君が好きだから。」

 

 

言った。言ってしまった。もう後戻りは出来ない。これは工作員じゃない、1人の女としての気持ちだ。デンジ君が頷いてくれれば、すぐにでも一緒に逃げる。

 

だけど

 

デンジ君は答えない。何かをとても悩んでる。

 

 

レゼ「なんでそんな悩んでるの?デンジ君は私の事嫌い?」

 

 

デンジ「好きィ!!…だけど……、最近仕事が認められて来てさ…。監視が無くても遠くに行けるようになったし。糞みたいな性格んバディの扱い方もだんだん分かってきた。」

 

 

やめて。それは私が望む答えじゃない。私をまだ普通の女の子でいさせて。キミとまだ一緒にいさせて…。

 

 

デンジ「仕事の目標みてぇなモンも見つけてさ。だんだん楽しくなってきてんだ、今……。」

 

 

私の心にヒビが入っていく。少女の心が剥がれてきて、工作員の、悪魔の私が隙間から覗いて来る。

 

 

デンジ「ここで仕事続けながらレゼと…会うのじゃダメなの?」

 

 

……………分かってた。私は普通の女の子じゃない。普通の生き方なんて出来ない。普通の恋なんて出来ない。なんでこの世は不公平なんだろう。だから最後に思い出を。それでもう終わりにしよう。

 

 

レゼ「そっか、わかった。デンジ君、私の他に好きな人いるでしょ。」

 

 

花火が上がる。私は彼にキスをする。一時、間があり彼が倒れる。彼の舌が私の口にある。続けてナイフで彼の首を切り、胸のスターターを引く手を切り飛ばす。もう一度、彼にキスをする。

 

 

レゼ「痛いね?ごめんね?……デンジ君の心臓、もらうね。」

 

 

「駄目ーーーー!!!」

 

 

誰かが叫びながら、突撃してくる。私はデンジ君から飛び退き、乱入者を……見る。

 

 

レゼ「……玲…世…さん……。」

 

 

玲世「ビーム君!いるんでしょ!デンジ君を連れて早く逃げて!!」

 

 

ビーム「ダ〜〜ッシュ!!ああ、ああ、にげろにげろにげろにげろヤヴァヤヴァヤヴァヤヴァヤヴァ!なんで匂いに気が付かなかった!ビィーム!アイツら、ヤバいですチェンソー様!!あん匂い!アイツら、ボムだあああああ!」

 

 

レゼ「なんで…邪魔するんですか…?玲世さん…。なんで…。」

 

 

玲世「駄目だよ、レゼちゃん。そんな事…誰も望んでない。デンジ君も、キミ自身も、私も。」

 

 

玲世さんが見たことのない顔で私を見る。やめて。アナタがそんな顔で私を見ないで。あの優しい顔をして、私達のことを見守っていて…。

 

 

レゼ「イヤだなぁ…、私が望んでるんですよ?デンジ君の心臓をもらって…一緒に帰るんです。私の国に。」

 

 

私達の

 

 

玲世「違う。そんな事しなくても、もっといい方法がある!誰かが傷付く必要ない!」

 

 

私の

 

 

レゼ「もういいですよ。それじゃあ……」

 

 

邪魔をするな!!!!!

 

 

レゼ「敵って事でいいですね!」

 

 

私は首のピンを抜き、武器人間になる。玲世さんは手足を変身させる。私と玲世さんはぶつかりあう。花火の音に紛れ、高台が爆発する。

 

 

 

…………誰か、この地獄から…助けてーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の孤独な少女の夢は覚めてしまったーーーー

 

そこにいるのは爆弾の悪魔、ボムーーーー

 

果たして彼女が本当に望むものはーーーー

 




次回もよろしくお願い致します。
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