ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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オリキャラ目線で話が進みます。彼女の世界ではアニメではなく実写版としてチェンソーマン レゼ篇が上映されている設定です。(バトルシーンとか実写化無理だろ、などのツッコミは無しでお願い致します(笑))


第1話 七篠 玲世という女性

 

12月31日 夜

東京都内 某マンション

 

 

「ありがとうございました!良いお年を〜!!」

 

 

 年末恒例の紅白歌合戦も佳境に入り、今迄歌っていたアーティストが挨拶を行う。年明けまで後少しといったところだ。

 

 

「はぁ~。さっすが米◯玄師さん。最高のパフォーマンスだったわ!」

 

 

 そう言って夜遅くにも関わらずテンションが上がっているのは1人の女性。名は七篠 玲世(ななしの れいせ)。年齢は25歳。1LDKのマンションに一人暮らし。職業は女優。趣味は漫画と運動。

 

 

「映画の主題歌を生で歌ってくれるとは思わなかったし演出も凄い凝ってた!ビームカー最高!私も乗りたい!」

 

 

 何故ここまでテンションが上がっているかというと、アーティストのファンということもあるが、それ以上に自分がヒロインで出演した映画の主題歌だったから。その映画は「チェンソーマン」という人気漫画の実写化映画。漫画の人気エピソードを実写化したものだ。

 

 

「実写化発表時は、「実写化大丈夫?」とか「漫画を実写化すると駄作になる」とか好き勝手言われたけど…。私がレゼちゃんを貶める訳には行かないもんね。」

 

 

 壁にあるレゼのポスターを見ながら呟く。大好きなレゼというキャラクター。当時駆け出しの私がチェンソーマンを読み、その姿に魅了され、主人公デンジとの純愛に引き込まれ、儚い最期に涙した。また、私の名前「玲世」も読み方によってはレゼと読めることもあり、親近感が湧いた。

 

 

 女優として、ドラマで一言二言の小さな役を演じる日々をすごしていた頃。正に晴天の霹靂。チェンソーマン実写化のオーディションの知らせを受けた。私がやらねば誰がやる、と言わんばかりに人生で1番の気合いを纏い、レゼ役のオーディションに参加した。

 

 

「少しでも受かる可能性上げるために髪型、服装を似たようにしてセリフも全暗記していったっけ。運動も得意だからアピールしたけど、熱が入り過ぎて監督や審査員も引いてたなぁ。時間もオーバーして後の人にも迷惑掛けたし…。」

 

 

 色々とドン引きされた甲斐あってかオーディションに見事合格。良くも悪くも監督の印象に残ったようだった。合格の連絡があった時なんかは狂喜乱舞、壁に頭が激突し穴を空けてしまったくらいだ。

 

 

だが痛む頭を押さえると同時に現実に戻り、そして恐怖した。

 

 

ーーーー私にレゼちゃんが務まるの?

 

 

 オーディション中は平気だった。なぜならそれは七篠 玲世だから。ドン引きされたが、まだまだ実績も少ない女優に期待を掛ける人は少ない。だから良い意味ではっちゃけられた。

 

 だけど。

 

 レゼは違う。登場自体は少ない話数だが人気投票では上位。それだけ読者の印象が強い。無邪気な姿と冷徹な刺客の姿。その心に眠る普通の女の子でいたい気持ち。それらが皆を惹きつける。そんな強烈なキャラクター。そんな子を演じるのだ。初めから期待値が段違いだった。

 

 

 眠れぬ日々が続いたが、気持ちが落ち込む度に漫画のチェンソーマンを読む事で気持ちを振るい立たせた。レゼに呆れられる気がしたし、それ以上に大好きなキャラクターでの映画を失敗させたくはなかった。

 

 

「…で、レゼちゃんの色んな考察とか作中の描写とか寝る間も惜しんで研究して。アクションもあるから格闘技にも手を出して。」

 

 

 無邪気な仕草、蠱惑的な表情、甘い声色…。自慢ではないが20年以上生きてきて、全く経験の無い表現に悪戦苦闘の毎日だった。夜の街に繰り出し、水商売をされている方々に弟子入りする事もしばしば。キスシーンの練習中に危うく知り合いに見つかりそうになったが…。

 

 

 また、なんと言ってもチェンソーマンは悪魔のバトルがメイン。いくらCGやワイヤーでカバー出来ると言っても、私自身が動けないと意味が無い。元から運動は得意だったが格闘技にも手を出した。お陰でアクションは際立ったが、誤ってデンジ君役の人の股間に蹴りが直撃してしまった事もあった。…私は悪くない。

 

 

 あと学校のプールのシーン。最低限隠してはいたものの、ほぼ裸で恥ずかしさで死にそうだった。年配のスタッフに、「昔のドラマではお風呂シーンとかが必ずあった」と熱弁されたが、どんな現場なんだろうか。若い女性スタッフ全員からもれなく白い目で見られていた。

 

 

 そんな努力も実を結び、他キャラクターの俳優、女優の方々、現場のスタッフ、監督に支えられ無事クランクアップ。公開するやいなや、日本映画史に残る大ヒットとなり、私の演技も大好評でテレビのインタビューや番組の番宣にも出演した。実家の母親がご近所に、娘がテレビに出ると言って回った時は恥ずかしさで死にそうだった。

 

 

 そんな忙しい今年ももう終わり。明日からはまた新しい年が始まる。寝室の電気を消し、ルームランプを点け、布団へ潜る。寝室の壁にはキャラクターの姿をした皆が全員集合した写真が飾られており、隣の色紙には皆のコメントが書かれている。今の自分の宝物だ。それを見ながらルームランプを消し、少しずつ眠りに落ちる。

 

 

「次のエピソードも実写化決定したけど…、レゼちゃんは回想とかで出るし……。だけど実写化が進むとレゼちゃんはマキマさんの…支配の………餌食に……………やだ……なぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スー、スーと寝息が聞こえる。

 

 新年を迎えた午前0時0分。

 

 部屋の闇から金色の目が光る。

 

「あの少女を演じた貴女が彼らと関わった場合、どのような可能性が生まれるのか…。地獄の底より楽しみにしています。」

 

 その言葉に返答は無くーーーー

 

 金色の目だけが静かに玲世を見つめていたーーーー

 

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