ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜 作:wasirunoguchi
狭間にて
玲世「…ここは…狭間…?」
水平線まで続く扉の床に晴天の青空。私はいつの間にか地獄と現世の狭間にいた。確か私はデンジ君と一緒にレゼちゃんと戦って…。
玲世「…そうだ、やられちゃったんだっけ…。………強いな〜。レゼちゃんは………。」
多分私はあのまま死んだのだろう。悪魔は現世で死んだら地獄で生まれ変わるというし、私もそうなると思っている。
玲世「…レゼちゃんを救えなかったのは…、心残りだな〜。姫野さんは助けられたけど…、皆、ごめんー!!!!」
私は心残りから皆に大声で謝罪をする。私はここまでだ。
「ほう、連絡を受けこの場に来たが、相も変わらぬ騒々しさよ、人間。やはり汝だったか。。」
突然、後ろから声がする。びっくりして振り返ると、この世界に来た時にあった老人がいた。……確かボンちゃんは「監理の悪魔」って言ってたっけ。私は老人に向かって頭を下げる。
玲世「あ、あの節はお世話になりました。七篠 玲世です。前にボンちゃんと一緒に…。」
監理の悪魔「よい。この世界の事は全て監理している。汝があの後、いかように生き、どのようにしてこの場に来たかはな。」
玲世「えーと…。すみません…。」
厳か過ぎて、何故か怒られている様に感じる。多分、そんな事は無いのだろうけど。
玲世「…えっと、此処が狭間なら、私はこれから地獄に行くんですよね?」
監理の悪魔「…?…何故その様な話になる。…………爆弾のが話していないのか…。………おい、爆弾の。人間の後ろから出てこい。眷属達もだ。」
ボンちゃん「………。」ケーちゃん「………。」
驚く事にボンちゃんとケーちゃん達が私の後ろから出てきた。だが、皆雰囲気が暗く、俯いている様だ。
玲世「ボンちゃんにケーちゃん達も…。ごめんね。不甲斐ない私で。…頑張ったけど、死んじゃったみたい…。」
ボンちゃん「…違うんだ…。レーセ。」
ケーちゃん「ボンちゃん様と協力し、私が監理の悪魔様へと連絡を取り、この場に玲世様の精神を誘ったのです。」
監理の悪魔「左様。この様な事は数千年は無かった事でな。興が乗ったので、声に応えた。汝を助けて欲しい、と。」
えーと、よく分からない。ん?今の私は精神?監理の悪魔に連絡した?助けてくれる?どうなってるの?私は、まるで宇宙猫の様に呆けた顔をしてしまっていた。
監理の悪魔「ふむ…。汝もその様な表情をするのだな。…仕方が無い、説明は必要か。爆弾のが上手く説明出来るとは思わんのでな。」
ボンちゃん「…うるせー…。」
それから監理の悪魔は今の状況を説明してくれた。私が今、本当の死の淵にいること。ボンちゃんが私を助ける為に、ケーちゃんと協力して監理の悪魔に助けを求めた事。地獄では落ち着いて話が出来る場所が無いため、狭間に招かれた事。狭間は時間の進みが現世と違い、現世ではまだ1秒も経っていない事。他にも色々説明があったけど、監理の悪魔の説明が難解な事と内容が難し過ぎて、頭に入ってこなかった。何?シンクロニシティとかリインカーネーションって?花の名前?
監理の悪魔「…という訳だ。理解出来たな。」
玲世「えーと…………、貴方やボンちゃん達のお陰で、私はまだ生きてるって事、ですか?」
監理の悪魔「…………………………………………その通りだ。」
今、すっっっっごい「コイツ、マジか?」みたいな顔して説明諦めた!!撤回を要求するー!!
監理の悪魔「…まぁ、とにかく汝は生きているが、このままではいずれ死ぬ。そうならぬよう、ある方法を使う。」
ボンちゃん「…………。」
玲世「ある方法?」
そして、監理の悪魔はその方法を口にする。
監理の悪魔「今の汝の様に、融合ではなく、爆弾のの存在を完全に汝と同化させ、真なる悪魔とする。汝は人間ではなく、悪魔として新生するのだ。」
玲世「え……。いや、もう自分は悪魔だとは思ってたんですが、何が違うんですか…?」
監理の悪魔「そこにいる爆弾のの存在は消失し、汝と真に一体となる。汝が爆弾の悪魔であり、爆発の悪魔となるのだ。」
玲世「…そんな!?ボンちゃんが消えちゃうんですか!?…ねぇ、ボンちゃん!そんなの良いの!?」
ボンちゃんは私の叫びに答えない。ただ俯いているだけだ。
監理の悪魔「…………それを言い出したのは爆弾のだ。汝は不完全な悪魔化しか出来なかったであろう。それは爆弾のと融合していた人間だからだ。無意識の内に汝が人間と思っている故に力が反発し、悪魔化を妨げていた。」
私は大家さんとの地下訓練所での言葉を思い出す。
元の世界には実際の悪魔がいないから、悪魔になるのが想像出来ない。
殺意が無い攻撃。悪魔は相手を殺す事に躊躇いはないけど、私にはあった。学校の刺客を殺した時も、躊躇いはあった。
それは私が無意識に悪魔である事に目を背け、無意識に人間と思っていたから。……普通の人は血で怪我が治ったり、腕がくっついたりはしないか…。
ボンちゃん「…レーセ、いいんだ。レーセと初めて会った時、ホントは私はチェンソー野郎に殺されて消滅してたはずなんだよ。こうして生き残ってる可能性なんて無かったと思う。」
ボンちゃんは私を諭すかのように静かに話す。
ボンちゃん「それがさ、レーセ達と現世で一緒に悪魔を倒したり、怖いオオヤさんと特訓したり、武器人間と戦ったり、カレー食べたり…。そんな事が出来たんだ。これ以上悪魔っぽくなくて、楽しく過ごしてたら、他の悪魔達に怒られちまう。それでも悪魔か!ってな。」
視界のボンちゃんが段々歪んでいく。私の目に涙が溜まっていく。
ボンちゃん「レーセが殺す為じゃなく、守る為に戦うって言った時、目の前が拡がった気がしたんだ。自分の爆弾の力で誰かを守れるんだって。」
ボンちゃんが光っていく。眩しい光が収まると、そこにいたのは等身大になった爆弾の悪魔。初めて会った時に言っていたようにスタイル抜群の武器人間ボムみたいな悪魔が立っていた。
爆弾の悪魔「だから、玲世と一緒に守りたいものを守らせてくれ。それが私の、玲世に対する悪魔の契約だ。」
小さかった時とは違う、凛々しい女性の声。私はびっくりし過ぎて、涙も止まり、シリアスな場面なのに呆けてしまっていた。
爆弾の悪魔「おい、玲世。どうした?ボケっとして。」
玲世「いや、ボンちゃん、スタイル抜群はホントだったんだね…。」
爆弾の悪魔「…。うわぁ!?わ、私の身体が元に戻ってる!?」
監理の悪魔「…ふん。貴様も契約の時は身を正さんか。古来より人間との契約は、人間に下に見られてはならぬ。それは悪魔の矜持と知れ。馬鹿者が。」
監理の悪魔がボンちゃんに説教をする。もしかして、力を貸してくれたのかな?いつの間にか肩にいたケーちゃん達の驚きの感情も感じる。
ケーちゃん「まさか…、貴女に先を越されるとは…。日々の進化が足りなかったか。」
ケーちゃんもケーちゃんで進化してるんだろうけど、方向性がイマイチ分からない。
玲世「…ップ、アハハハハハハハハ!!!…ゴメンね、ボンちゃん。……うん、契約。爆弾の悪魔、私の為に契約して欲しい。」
爆弾の悪魔「…ここに契約は成った。玲世の守りたいものを一緒に守ろう。それが、悪魔の契約だ。」
監理の悪魔「……爆弾のも少しは成長したか…。………ではよいな。汝らの同化を開始する。」
爆弾の悪魔が再度光り、光の球体になる。それはまるで、表面が爆発している太陽のようだった。
ボンちゃん「また会おうな、レーセ。」
玲世「うん、また。」
私達は本当に一つになる。胸の奥に、感じた事の無い熱い鼓動が脈打っていた。
監理の悪魔「これで汝は真に爆発の悪魔と成った。なにか不具合はあるか。」
玲世「いえ。なんというか…、充実感があります。」
監理の悪魔「それは不完全な状態では無くなったからだな。未だ心臓の片割れはないが、それでも悪魔だ。不自由はしないだろう。しかし、忘れるな。爆弾の悪魔との契約を破れば、汝がどうなるかは分からぬ。この様な事は我が監理の中でも初めてなのでな。」
玲世「はい、肝に銘じます。この力は守りたいもののために。」
私は監理の悪魔に意思を伝える。これはボンちゃんとの宣誓だ。
監理の悪魔「……、では良いだろう。汝を現世に戻す。」
玲世「あ…一つ良いですか?……なんでこんなに協力を?」
監理の悪魔「言ったであろう、こんな事は初めてだと。まぁ、わかり易く言うのであれば、暇つぶし、と言う奴だ。汝の動きは我ですら監理出来ぬ。あの問題児の闇のも汝を見ているぞ?闇を通じて、な。ではさらばだ。」
玲世「え、闇のって…。闇の悪魔!?なんで!?最後に変な事言わないでぇぇぇぇ………………」
私は1番の問題発言を聞きながら、現世に戻されて行った。
監理の悪魔「これで良いのだろう?可能性の。」
可能性の悪魔「はい。翁にはお手数お掛け致しました。」
監理の悪魔の言葉にいつの間にかいた影が答える。可能性の悪魔だ。
監理の悪魔「白々しい。あの者の眷属の力なぞ、狭間にいる我に届くことなぞほぼ有り得ん。貴様の仕業は分かっておる。何が狙いだ。」
可能性の悪魔「私は可能性を見たいだけ。貴方も彼女の行く末を観たいからこそ、あそこまで手助けしたのでは?「闇」も彼女には興味があるみたいですから。」
監理の悪魔「…チェンソーの小僧といい、貴様といい…。我をなんだと思っている。我はただ、監理するのみ。」
監理の悪魔が消える。可能性の悪魔は1人呟く。
可能性の悪魔「可能性と言うのはやはり素晴らしい…。未来の悪魔が未来最高、と言うのが分かる気がしますね。……可能性、最高。」
しばらく間があり、可能性の悪魔も消える。狭間には静寂のみが残されていた。
現世、町中にて
玲世「…ぐっ……!」
狭間から戻った私は自分の状態を思い出す。無事なのが右腕しかない。相変わらず瀕死の状態だ。
玲世「ハァ…ハァ…ハァ…。」
道の真ん中でアキ君がレゼちゃんと戦っているのが見えた。デンジ君が倒れているのを見ると、どうやらデンジ君もやられてしまったようだ。
玲世「レゼ……ちゃん…。」
あそこにレゼちゃんがいる。私には彼女が泣いているように見えた。孤独な少女が駄々をこねるように力を振るっている。
玲世「止め…ないと…。」
私は無意識に変身する為に意識を集中させる。ボンちゃんと同化し、真に悪魔となった私なら完全に変身出来るはずだ。私は悪魔。私は爆発の悪魔だ。芝居と一緒。心に役の仮面を被り、異なる自分になりきる。
玲世(私はレゼちゃんや皆を助けると誓った。あそこで泣いているレゼちゃんを助けないと!)
ボンちゃん(大丈夫だ、レーセ。頑張れ!)
ふとボンちゃんの声が聞こえた気がした。私は笑みを浮かべ、右手を顔に持ってくる。まるで、仮面を着けるように。
刹那
激しい爆発が起こり、私は完全に変身した。
玲世は爆発の悪魔と契約し、真に悪魔となるーーーー
共に守るべきものを守る為に変身するーーーー
玲世の変身回でした。
次回もよろしくお願い致します。