ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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投稿が遅くなりすみません。
今回は地獄へ行くまでの話となります。
よろしくお願い致します。


第25話 人形、デビルハンター、そして地獄へ

 

 

コベニカーによる騒動から翌日、町中にて

 

 

私達は公園に集まる。日下部さん達や吉田君、私達は皆居場所がバラバラな為、必ずこの公園に集まってから巡回を開始する。そして今日はもう1人巡回に加わる人がいる。

 

 

玲世「大家さん!」

 

 

大家「玲世ちゃん、今日はよろしくね。」

 

 

日下部「貴女があの岸辺さんから連絡のあった…。本日はよろしくお願いします。」

 

 

大家「あら、そんなに畏まらなくてもいいわ。あの子がなんて言ったか知らないけど、只のお婆ちゃんと思ってね。」

 

 

日下部「ははは…………。」

 

 

日下部さんの口から乾いた笑いが漏れ出る。それはそうだ。72歳と言えど、公安のスーツに身を包み、恐らく天使君の槍であろう長い布地の長物を持った大家さんは活力に満ちており、40代と言ってもおかしくはない風貌だった。元々、年齢に比べて若い見た目の大家さんだが、今日は更に若く見えた。

 

 

大家「それにしても最近はいい制服があるのね。私が若い頃もスーツだったけど、こんな良いのじゃ無かったし。時代は変わるのねぇ…。」

 

 

玲世「いや、大家さん似合い過ぎです…。美魔女ですよ、美魔女。ね、レゼちゃん。」

 

 

レゼ「あ、はい!…美魔女、って言うのは分からないですけど…。あ、あの。この間はありがとうございました。お陰でデンジ君と再会出来ました。」

 

 

大家「…良かったわね。もう、離しちゃ駄目よ。会いたくても会えない、なんていうのは辛いだけから。」

 

 

大家さんがレゼちゃんを見る目は慈しみに溢れていた。大家さんの過去に何があったかは分からない。ただ、途轍もない人生であったであろう事は今迄の事から容易に想像出来た。

 

そして、サンタクロースとクァンシを迎え撃つ為、私達は巡回を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

町中のビル内にて

 

 

ビームはマキマ、蜘蛛の悪魔と共にサンタクロースの人形を破壊していた。

 

 

マキマ「サンタクロースが日本に来たみたいだね。私はもう少し人形を片付けます。ビームはデンジ君を助けに行って。」

 

 

ビーム「よっしゃあ!!分かりました!」

 

 

ビームはマキマの言葉に返事をし、地面に潜る。本来であればそのままデンジの元へ急ぐのだが、ビームは地面に潜ったまま息を潜める。

 

 

マキマ「…………プリンシ。ドイツは色んな悪魔を飼っているからサンタが何をしてくるか分からない。どうなってもデンジ君だけは助けてあげて。」

 

 

蜘蛛の悪魔「はい、マキマ様。お任せ下さい。」

 

 

マキマ「それと今回は恐らく大勢死ぬけれども、出来るだけ仲間の死体だけは回収して。」

 

 

ビームはマキマと蜘蛛の悪魔の会話を聞き、玲世の言葉が正しいと確信する。以前であればなんとも思わなかった会話が「支配」が解けた今、マキマは皆を助ける気が無いのがよく分かった。

 

 

マキマ「…………それと七篠さんにも注意を。彼女は特異な存在です。岸辺さんとも違う危険性がある。「支配」は出来ないし、公安襲撃もボムの時も彼女の動きで思った以上に死者が出なかった。…………ああいう存在は初めてですね…。面白い。」

 

 

マキマの顔に笑みが浮かぶ。まるで子供が玩具に興味を示す様に、己の力で支配出来ぬ未知の存在にマキマは目を輝かせる。

 

ビームはそれを見た後にデンジ達の元に向かう。地面の中までは小動物を使ったマキマの耳は届かない。玲世から受け取ったクーちゃんの1部で顔を拭き、綺麗なままなのを見て、自分が支配されていない事に安堵の息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

町中にて

 

 

デンジ「昼飯はデパートで食おうぜ。」

 

 

予定通りデパートで昼食を取ることになった。恐らくすでにサンタクロースは動き出している。デパートに入った瞬間にサンタクロースの人形達が襲撃して来るだろう。

 

 

日下部「ちょっと失礼。」

 

 

日下部さんがデパートの入り口付近で床に陣を描く。これは石の悪魔の力を使う為の陣だ。相手を石化させる力を持つ悪魔だが、この陣の上でしか力を使う事が出来ない。それと同時に外が騒がしくなった。

 

 

大家「来たわね。各自戦闘準備。サンタクロースの人形には触れられない様に距離を取って対処を。」

 

 

日下部「打ち合わせ通り、我々は迎撃しつつ上階へ移動。人形達を引き込んだ後は外の後続部隊が突入、挟み撃ちにして殲滅する。」

 

 

天使の悪魔「ちょっと、ほら!喋ってないで来たよ!」

 

 

入り口から人形が数体入ってくるが日下部さんの悪魔の力で石にされた。安堵した瞬間、まるでゾンビ映画の如く、数十体の人形が雪崩の様に押し寄せてきた。

 

 

日下部「階段へ移動後、各自迎撃を!」

 

 

日下部さん、玉置さん、吉田君を先頭にデンジ君、パワーちゃん、アキ君、天使君が続き、私、レゼちゃん、大家さんが殿を務める。

 

 

大家「2人共、被害が大きくなるから変身してあまり大きな爆弾とかをポカポカ使わない様に。近接戦闘の良い訓練になるわよ〜。」

 

 

玲世「了解です!」

 

 

レゼ「え!?わ、分かりました!」

 

 

寿命武器の槍を振り回し、人形を蹴散らしながら大家さんが私達に近接戦闘のみで戦えと縛りを設ける。私は特訓で慣れっこだったがレゼちゃんは急に言われて戸惑っていた。しかしレゼちゃんは変身しなくても強く、原作さながらの格闘術でレゼちゃんは人形達を寄せ付けなかった。うーん、デンジ君が尻に敷かれる光景が目に浮かぶ…。

 

 

日下部「3人とも!2階へ移動を!」

 

 

日下部さんの声が上から聞こえる。私達は階段で2階に移動するが、人形達が追い掛けて来る。

 

 

玉置「中村ァ!!ヤれ!!」

 

 

中村「押忍!ウオォォォォォ!」

 

 

アキ「誰です!?」

 

 

天使「誰!?」

 

 

デンジ「誰だよ、コイツ。」

 

 

中村「コオン!!」

 

 

あ、人気投票で20位とかになった謎に人気のあった中村さんだ。中村さんは気合を入れた後に狐の悪魔の足で追ってきた人形を蹴散らす。

 

 

中村「皆さん、大丈夫ですか?私は公安対魔2課の」

 

 

玉置「こいつはこのデパート担当のデビルハンターだ。他にも巡回ルートのビル全てにデビルハンターを複数人配置している。人形にされた人間は元に戻れないからな…。どうしても短期決戦で戦いたかった。この数日、囮に使ってすまなかった。デンジ君。」

 

 

デンジ「別に俺が餌だって事は分かってたからな。なんともねぇよ。んで、こっからどうすんだ?」

 

 

日下部「人形は近くでしか操れない…。サンタは近くにいるぞ。今日で全て終わらせる。」

 

 

日下部さん達が話している間、私とレゼちゃん、大家さんは周囲を警戒しながらこれからを話していた。

 

 

玲世「レゼちゃん、大家さん、特に怪我とか無いですか?」

 

 

大家「大丈夫よ、ありがと。あの子とやり合う前の良い準備運動になったわ。それにしてもレゼちゃん、体術のキレが凄いわね〜!」

 

 

レゼ「あ、ありがとうございます。私も今程訓練してて良かったと思った事はありません。」

 

 

大家「ウフフ、デンジ君と何かあったら容赦無くお尻を引っ叩きなさい。岸辺君もそうだけど、男性は女性が引っ張らないとウジウジするんだから。昔は「男は度胸、女は愛嬌」とか言ってたけど、今はそう言う時代じゃないからね。女も度胸を持たなくちゃ。」

 

 

レゼ「…女も度胸…!はい、分かりました!」

 

 

あぁ…。レゼちゃんが徐々に大家さんに染まっていく…。デンジ君、君の彼女は恐ろしい事になりそうです。

 

 

そんな話をしていると、外から更なる人形達が雪崩込んできた。私は皆に警告を飛ばす。

 

 

玲世「皆!人形軍団がまた来たよ!!」

 

 

中村「任せて下さい!コン!!」

 

 

中村さんが狐の悪魔の腕を振るうが、人形達はそれを躱し、駆け上がってくる。

 

 

中村「なぁ〜っ!?」

 

 

アキ「奴ら、学習してきてやがる!!」

 

 

天使の悪魔「ハァ〜…。下がってろ!…5年使用。ごめん、皆。使わせてもらうよ…。」

 

 

天使君が自らの力で作り出した寿命武器の剣を持ち、人形達を一蹴する。流石、岸辺さんを除く4課最強だ。………それ以上に寿命武器を振り回す最恐なお人が天使君を見て拍手しているが…。

 

 

天使「はぁ〜。大家さん、拍手を止めて。なんかムズムズするから。」

 

 

玉置「それが噂の寿命武器か。」

 

 

アキ「最初からそれ使えよ。」

 

 

天使「うっさいな〜。こっちにも色々都合があるんだよ。…皆の寿命はあんまり使いたくないんだ。」

 

 

天使君が記憶を取り戻しているせいか、儚げな表情になる。支配されていたとはいえ、大切な人達の寿命を吸い取り使用していた。色々と思う事があるのだろう。

 

 

アキ「あ〜…、悪い。今の言い方は失言だった…。」

 

 

天使「…いや、僕もこのままじゃいられないからな…。まずは生き残る方が大事だ。」

 

 

アキ君と天使君の雰囲気が原作とは違うのを感じる。アキ君は悪魔に対して少し寛容になり、天使君もマキマさんへの復讐心からか、戦う姿勢を見せている。

 

 

中村「日下部さん、本部へ連絡しました。包囲挟撃の為、近くにいる部隊が応援に来ます。」

 

 

玲世「…!大家さん!」

 

 

大家「…ええ。来るわね。」

 

 

レゼ「これは…。」

 

 

パワー「なんじゃ、この感じ?」

 

 

天使の悪魔「…なんか肌がピリピリする。」

 

 

デンジ「なんかレゼくれーやべー気がする…。」

 

 

直後、デパートの入り口に殺到していた人形達が真っ二つになる。クァンシの斬撃が来る!

 

 

アキ「…天使、中村さん!構えろ!!死ぬぞ!」

 

 

アキ君の言葉に全員が構える。私は日下部さん達にイーちゃんの障壁を張り、中村さんは大家さんが守り、天使君はアキ君が守った。全員無事だが、イーちゃんの障壁は切り裂かれ、天使君、アキ君が吹き飛ばされる。そして、大家さんがクァンシと鍔迫り合いをしていた。

 

 

クァンシ「…お前…。大家か…?」

 

 

大家「…ふふ。随分と手荒な挨拶ね、クァンシ?せっかちな女は嫌われるわよ?」

 

 

クァンシがボロボロになった青龍刀を離し、大家さんから距離を取るが大家さんの槍も鍔迫り合いで折れそうになっていた。あれが始まりのデビルハンター。岸辺さんのバディだった女性。

 

 

クァンシ「…お前がいるのは誤算だったが…、まずは周りを片付けるか。」

 

 

云うやいなやクァンシの姿が掻き消える。

 

 

レゼ「デンジ君!きゃ!」

 

 

デンジ「ブ!?」

 

 

レゼちゃんがデンジ君に向かったクァンシの動きに反応し、デンジ君を守ろうとするが2人纏めて吹き飛ばされる。続けざまに日下部さん、玉置さんが倒され、吉田君が動く。

 

 

吉田「蛸、墨。」

 

 

玲世「そこ!」

 

 

蛸の悪魔が墨を吐き出し、煙幕とする。吉田君がナイフを持ちクァンシの後ろに回り込む。私はそれに合わせ、火花からの遠隔起爆を行うが、クァンシの裏拳で火花がかき消され、その勢いでクァンシの後ろに回った吉田君が蹴り倒される。ナイフを奪ったクァンシが吉田君を刺そうとするが、私はクァンシの眼帯を着けている右目側に回り込み、目一杯身体能力を向上させて左ハイキックを放つ。

 

 

クァンシ「お前、大家みたいな動きだな。私の死角を突くのは良い判断だが」

 

 

まるで見えているかのようにキックを躱され、返しの蹴りを顎に食らう。脳を揺らされたからか、足に力が入らず跪く。

 

 

クァンシ「動きが素直過ぎる。それじゃあ私は殺れないな。」

 

 

ナイフが振り下ろされる。私は死を覚悟したが、大家さんが横合いから槍を投げ、クァンシを退かせる。そのまま大家さんはナイフを持ち、互いにナイフで戦い始めた。

 

 

大家「貴女は変わらないわね、クァンシ。岸辺君とのバディを辞めた時のまま。少し羨ましいわ。」

 

 

クァンシ「あの大家がそんな軽口を叩くとはな。昔のお前は魅力的だったが、今のお前は見る影もない。」

 

 

金属音と風切り音が鳴り響く中、2人の戦いは激しさを増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

町中、デパートの外にて

 

 

クァンシに両断された人形達がそこら中に倒れている。1部はデパートの中に走っていくが、大半は動かなかった。

 

 

コスモ「ハロウィン!」

 

 

ピンツィ「はいソコ!離れないで下さい!さっさとクァンシ様に追いつきますよ〜。」

 

 

クァンシの取り巻く4人の悪魔達が先行したクァンシに追い付こうとデパートに向かう。宇宙の悪魔であるコスモ、対象の契約悪魔等を見ることが出来るピンツィ、炎を吐ける龍(ロン)、謎の存在であるツギハギの悪魔。

 

そんな彼女達に近付く人物がいる。

 

 

ピンツィ「お?」

 

 

岸辺「ようやくクァンシから離れてくれたか。姫野達はデパートの人形を片付けろ。俺もすぐ行く。」

 

 

姫野「了解。」

 

 

コベニ、暴力の魔人「「はい!」」

 

 

ピンツィ「なになに?日本語分かりませ〜ん。…どれどれ、見えた。」

 

 

岸辺が姫野とコベニ、暴力の魔人をデパートに向かわせる。ピンツィは自分の髪の毛を輪っかにして岸辺を見る。岸辺の状態や契約悪魔を見ているのだ。

 

 

ピンツィ「あいつが契約しているのは、爪、ナイフ、針。随分物騒なのと仲良しね。でもこの日本人、雑魚だ。こいつの身体に契約で払える様なものはもうほとんど残ってない。4人で食べちゃいましょ。」

 

 

岸辺「この俺が雑魚か…。中国語はあんまり得意じゃないが何を言ってるかは分かる。来い、ヒヨッコ共。悪魔の力が使えなかろうが、俺の強さを見せてやるよ。」

 

 

大家がクァンシと戦闘を始めると同時に、岸辺もまた4人の悪魔達と戦闘を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

デパート入り口にて

 

 

デパートに突入した姫野達は残存している人形達を排除しながら進んでいた。

 

 

姫野「こいつら気持ち悪!何?死んだ魚みたいな目して!」

 

 

コベニ「岸辺さん、大丈夫でしょうか…。」

 

 

暴力の魔人「大丈夫でしょ。あの人、人間なのに訳分からないくらい強いから。あの大家さん?って人もそうだけど、自分が名前負けしてるんじゃないかって最近不安になってきた。あの人達こそ暴力に相応しい感じがしない?」

 

 

コベニ「あはは…。岸辺さんに怒られますよ…。」

 

 

姫野「私はノーコメント。先生に余計な事言って何度殺されかけたか。暴力君も気をつけなよ〜。」

 

 

暴力の魔人「了解っす。それよりコベニちゃん、人形に気を付けて。俺みたいな魔人は触られても平気だけど、コベニちゃんが触られたら人形になっちゃうから。」

 

 

コベニが暴力の魔人に対して返事をしようとすると、コベニの背後から人形が襲い掛かる。

 

 

姫野「コベニちゃん!」

 

 

ビーム「グァァ!!」

 

 

その時、ビームが地面から現れ、サメの頭とした自身の頭部で人形を噛み砕く。

 

 

コベニ「きゃ!…ビ、ビームさん…。ありがとうございます…。」

 

 

ビーム「チェンソー様の仲間だから助けた。仲間が死ぬとチェンソー様が少し悲しむ。…チェンソー様!!」

 

 

暴力の魔人「助かった、ビーム。…ってもう行っちゃったか。相変わらずデンジ君第一な魔人だ。」

 

 

姫野「ビームもあれが無ければねぇ。ま、協力してくれるだけいっか。」

 

 

ビームはコベニを助け、一声掛けるとそのまま地面に潜り、デンジ達の元に向かう。マキマの支配を受けていたビームだったらコベニを助ける事はしなかっただろう。しかし、支配を逃れた事で僅かながらデンジの事を慮り、仲間であるコベニを助ける事となった。

 

 

暴力の魔人「大丈夫?コベニちゃん。デパートに入ってからなんか嫌な予感がするんだ。危なくなったら避難してね。」

 

 

コベニ「す、すみません、暴力さん。ここからは油断せずに行きます!」

 

 

姫野「さ、行くよ、2人共!アキ君達が私達を待っている!!」

 

 

3人は引き続き人形を排除していく。その先に文字通り地獄が待ち受けている事を知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

デパート上階にて

 

 

大家さんとクァンシの戦いは激しさを増していた。吉田君のナイフで戦うクァンシとナイフの悪魔で戦う大家さん。ナイフ以外にも体術の応酬で周囲が切り刻まれ破壊されていく。

 

 

大家「…クァンシ。アナタ、少しは先輩を立てるとかしないのかしら。」

 

 

クァンシ「ふざけろ。お前相手に手が抜けるほど楽観視はしていない。…だが、体力的にキツくなって来たんじゃないか。このままじゃ勝つのは私だぞ。」

 

 

大家「嘘おっしゃい。勝つのは私よ。…アナタのその性格、とうとう治せなかったわ。玲世ちゃんを見習いなさい。とっても良い子よ。」

 

 

高速で戦闘している2人の会話が聞こえる。いくら大家さんと言えど、クァンシの相手はキツそうだった。負けはしないが、勝てるかは分からない。大家さんはそんな感じだった。私も参戦したかったが、無駄に動いて大家さんの邪魔をしたくはない。故に私はイーちゃんのバリアで皆を戦闘の余波から守る事に徹していた。

 

 

クァンシ「アイツか…。動きがお前に似ているとは思ったが、お前が目に掛ける様な奴か?岸辺や私には遠く及ばない。」

 

 

大家「それはアナタに人を見る目が無いからよ。彼女は面白いわ。アナタも話してみれば分かるかも、ね!!」

 

 

大家さんの強引な一撃で2人の距離が開く。クァンシと大家さんの頬に一筋の傷が付き、血が流れる。私は大家さんに近付き、クーちゃんで傷を元に戻す。それを見て、クァンシが頬の傷の血を親指で拭いながら口を開く。

 

 

クァンシ「…お前のその力…。何の悪魔の力だ。」

 

 

玲世「…………。」

 

 

私は答えない。答えない事で私の事を警戒するかと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 

クァンシ「…………まぁ、答えないならそれで良い。纏めて殺すだけだ。」

 

 

またもやクァンシの姿が掻き消える。と同時に

 

 

岸辺「待て、クァンシ。…久しぶりだな。」

 

 

岸辺さんが2人の悪魔の首を腕で抑えて現れた。あれはクァンシの悪魔の2人。私の目の前に現れたクァンシは岸辺さんの方に顔を向けていた。ナイフを私の顔寸前で止めながら。

 

 

デンジ「…痛って〜。…レゼ、大丈夫か…?」

 

 

レゼ「うぅ〜ん、あ、デンジ君、大丈夫!?」

 

 

岸辺「デンジ、パワー、この2人を拘束。レゼ、倒れてる奴らを全員起こせ。玲世は防音を頼む。何か邪魔が入るかもしれん。」

 

 

岸辺さんがクァンシに目を向けながら私達に指示を出す。私は皆を守っていた障壁を広げ、周囲を囲む様にした。これでマキマさんの盗聴は防げる。

 

 

デンジ「パワ子…、おい、起きろパワー。」

 

 

パワー「どうじゃ。死んだフリしとったわ。」

 

 

デンジ「バ〜カ!あ〜、痛って〜!!」

 

 

パワーちゃんが起き上がり、デンジ君とパワーちゃんが岸辺さんが抑えていた2人の悪魔を受け取る。レゼちゃんも倒れている皆を起こしていく。

 

 

アキ「う……。」

 

 

天使の悪魔「いてて…。いきなりなんだよもう…。」

 

 

アキ君、天使君を皮切りに次々と起き上がる。私が皆に状況を説明し、クァンシを遠巻きに囲む。

 

 

クァンシ「………お前と大家がいるなら旗色は悪いか…。」

 

 

クァンシは窓際のテーブルに向かい席に座る。そして顎で岸辺さんに向かいに座る様に促す。岸辺さんも席に座り、2人してガラス越しの外を見るが2人は何も話さない。何故か不意に、バディだった時もこんな感じだったのかなという思いが頭をよぎった。

目を合わせないまま、2人の会話が始まる。

 

 

クァンシ「…………残りの魔人2人はどうした。」

 

 

岸辺「逃げられた。ここら一帯、公安と警察で囲むからすぐに捕まるぞ。」

 

 

クァンシ「…………。」

 

 

岸辺「下にいる人形達を公安で一掃したらお前を連行する。それまで何もするなよ。」

 

 

クァンシ「狂犬岸辺が随分と小賢しくなったな。首輪を付けられて本当に犬になったか。」

 

 

岸辺「こっちは50過ぎてんだぞ。大人しくもなるさ。…………っとここまでは建前で、これからが本題だ。」

 

 

大家「クァンシ、マキマを一緒に倒さない?」

 

 

いつの間にか岸辺さんの横に、椅子に座って会話に参加した大家さんがクァンシに提案をする。漫画では岸辺さんとクァンシの交渉は決裂。最終的にクァンシと4人の魔人は死亡し、クァンシはレゼちゃんと同じくマキマさんに支配され対魔5課としてチェンソーマンの前に現れる。

 

…その運命を変えるのは大家さん、岸辺さんクラスのクァンシをマキマさんの戦力とさせず、私達側に引き込む為。そして傲慢かも知れないが、岸辺さんの為にも彼女達も死なせたくはなかった。

 

 

クァンシ「マキマを…?」

 

 

予想外の言葉にクァンシが目の前の2人を見る。

 

 

大家「ええ。詳細は言えないけど、このままだとアナタ達はマキマによって皆死ぬ。」

 

 

岸辺「協力すれば逃がすし、お前達の安全は保証する。こっちの情報も全て教える。」

 

 

クァンシ「…………岸辺、私がお前とのバディを辞めたのは悪魔にいいように使われる人間の馬鹿さ加減を知ったからだ。お前ら2人の根っこは昔から変わらないんだろうが、知らなきゃいい事を知った私は変わった。」

 

 

クァンシは椅子から立ち上がる。

 

 

クァンシ「この世でハッピーに生きるコツはな。無知で馬鹿なままでいること。岸辺、てめぇは大人しく首輪付けときな。元バディからのアドバイス。」

 

 

大家「…協力は出来ないと…?」

 

 

クァンシ「お前もだ、大家。今更何を考えて出てきたかは知らないが、老骨が出しゃばるんじゃない。元仲間からのアドバイス。」

 

 

私はクァンシの言葉を聞いて、思わず口を開いていた。

 

 

玲世「じゃあ私は「無知は罪」って言葉を貴女に送ります。妹弟子からのアドバイスですよ。」

 

 

クァンシ「……………なんだって?」

 

 

クァンシがこちらを見る。強烈な殺気が全身に刺さるが、内心怒っていた私は意に介さず言葉を続けた。

 

 

玲世「…無知で馬鹿なままでいるのがハッピーになるコツ?ふざけんじゃないわよ!アンタがそんなんだから!アンタと4人の魔人も纏めてマキマさんに殺されんの!アンタなんかねぇ、どうしようもない状態になったらカッコ悪く降参して、馬鹿らしく全員殺されて、挙句に死んだ後に支配されていいように使われんのが関の山よ!」

 

 

駄目だ。怒りが収まらない。クァンシ達が目の前で殺された岸辺さんの悲しみを知っているからか。それともクァンシともあろうものがマキマさんに支配され、いいように使われるのを知っているからか。はたまたその両方か。

 

 

玲世「私はね、この先を知ってるし、それに対してなんとかしようとしてきた!岸辺さんだってアンタを守ろうとしてんのが分からない!?始まりのデビルハンターだがなんだか知らないけどねぇ!知ろうとしないで逃げてる奴が、どうにかしようと足掻いてる人を馬鹿にすんのもいい加減にしなさいよ!!」

 

 

私の剣幕に思わずその場にいる全員が目を丸くする。大家さんや岸辺さんも同様だ。私はフー、フーと肩で息をして仁王立ちをする。私や皆がこれまで頑張って来た事を馬鹿にされたような気がして無性に悔しくなった。

 

 

クァンシ「…………お前、名前は?」

 

 

玲世「あん?七篠 玲世よ!文句ある!?」

 

 

大家「プッ。アハハハ!……クァンシ、言ったでしょう?彼女は面白いって。もう少し人を見る目を養いなさいな。」

 

 

岸辺「クァンシ。お前の考えている事は知らん。だが、呉越同舟って言葉があるだろ。仲良くしろとは言わんがマキマを倒すまでは協力しろ。それが1番の近道になる。」

 

 

クァンシ「…………。」

 

 

クァンシが目を閉じて黙り込む。するとデンジ君達に抑えられていたクァンシの魔人が目を覚ます。

 

 

ピンツィ「……クァンシ様!」

 

 

龍「くそ、離せ!」

 

 

デンジ「おい!暴れんじゃねぇよ……、痛ぇ!!…う〜、なんだよ。釘踏んじまった…!」

 

 

暴れる魔人を抑えようとするデンジ君が釘を踏んだ?…あ!怒ったせいでイーちゃんの障壁が消えてるし、デンジ君の足元に人形が近寄ってる!?

 

 

玲世「デンジ君、ごめん!ビーム君、いるでしょ!?デンジ君の足元の奴を捕まえて!!そいつはサンタクロースの仲間!!」

 

 

ビーム「グギャァァァ!!」

 

 

トーリカ「チッ!邪魔だ!」

 

 

デンジ君の足元に近寄っていたサンタクロースの仲間、トーリカにビーム君が攻撃を仕掛けるが避けられてしまい、デンジ君は呪いの悪魔によって中に浮かび上がる。

 

 

デンジ「なんか動けね〜!あ、なっ、体がハリツケになってくよォ〜!?…ぐべぇ!」

 

 

ビーム「チェンソー様!」

 

 

デンジ君が呪いの悪魔によって殺される。そこに拍手が鳴り響きサンタクロースが姿を現した。

 

 

サンタ「やりましたね、トーリカ。トーリカは私の課した仕事を果たしました。あなたはもう立派なデビルハンターです。人形達、行きなさい。」

 

 

現れたサンタクロースを止めようと各自が動くが、サンタクロースと共に現れた人形達が津波の様に襲い掛かり、動きを封殺されてしまう。

 

 

トーリカ「師匠…、お話は後です。早くコイツを運びましょう。…………師匠?」

 

 

サンタ「その死体を運ぶ必要はありません。これまで私の言いつけをよく守ってきましたね。時には厳しく叱った事もありましたが全て貴方の為でした。貴方も家族です。」

 

 

トーリカ「何を言って………」

 

 

サンタ「トーリカ、精巧な人形を作るコツを教えましょう。人形にする人間に人間にしか持たない感情を入れる事。敬愛、崇拝、哀憐。そして隠し味は罪悪感。」

 

 

サンタクロースがトーリカに触れる。トーリカは顔を上に上げ、目を見開く。

 

 

サンタ「完成。」

 

 

顔を下ろした時、それはもうトーリカではなく、サンタクロースの精巧な人形となっていた。

 

 

アキ「…………くっ!…なんだ、この…未来は?」

 

 

大家「岸辺!この場から離脱!後の事はお前に任せる!」

 

 

岸辺「!…行くぞ、吉田。着地は任せる。」

 

 

ガシャーン!!

 

 

吉田「ちょ!まっ!!…蛸!」

 

 

 

大家さんの指示に岸辺さんが最も近くにいた吉田君を掴み、窓から身を投げた。いつの間にかサンタクロースも姿を消していた。これは…あれだね…。

 

 

サンタクロース「私の心臓と愛する子供達を捧げます。その代わりに地獄の悪魔よ。このデパートにいる全ての生物を地獄へ招いて下さい。」

 

 

不思議とサンタクロースの言葉がデパートに響き、私達は上から押さえつけられるような力を感じ、落下していく感覚に見舞われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

人形の襲撃、クァンシの説得、そして玲世の怒りーーーー

 

様々な思惑が絡み合い、一同は地獄へ堕ちるーーーー

 




次回、地獄からの開始です。
次回もよろしくお願い致します。
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