ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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第4話投稿です。よろしくお願い致します!


第4話 半年後

 

 

1996年1月

東京都練馬区 某アパート

 

 

 

「…………はっ!……ここは?……………そっか。私チェンソーマンの世界に来たんだっけ。もう半年も経つのに今更夢で見るなんてね。」

 

 

玲世はベッドの上で目を覚ます。辺りを見渡し、誰に聞かせるでもなくそう呟き、上半身を起こす。

 

 

「ちょっと早く起きすぎたかな?まだ外が薄暗いや。えっと…。」

 

 

「お!起きたか、レーセ!うなされてたけど大丈夫か?」

 

 

時間を見ようとしたら目の前に爆弾の悪魔が現れる。玲世と融合憑依したが、半年も共に過ごせば良い相棒だ。人間呼びから名前呼びになっていた。

 

 

「大丈夫だよ、ボンちゃん。この世界に来た時の夢を見てたんだ。」

 

 

玲世は爆弾の悪魔をボンちゃんと呼んでいた。原作通りボムちゃんでも良かったが、原作でビームがレゼをボムと呼んでいたため、ややこしくなりそうだった。

 

 

「現世に来た時?あぁ。ミブンショウ?とかいうのが無くて途方に暮れてた時か!ミブンショウが無くても食事や寝る所をくれたオオヤのバァちゃんには感謝だな!いや、悪魔は感謝しないけど!」

 

 

玲世がこの世界に来た時はバッグに携帯電話、イヤホン、クリーナーしか無かったのだ。身分を証明するものは無く、携帯電話を使おうにも電波も無ければWi-Fiも無い。住む場所も無かった。無い無い尽くしで困り果てていた。

 

 

「そうだね。大家さんに感謝だね。」

 

 

途方に暮れ、公園のブランコに座っていた時、このアパートの大家さんが助けてくれた。突然この世界に放り込まれた私に温かい食事と部屋、生きる術を与えてくれた。その時の事は感謝してもし切れない。

 

 

「よし。外も明るくなってきたし、そろそろ起きよっか。ケーちゃん。イーちゃん。クーちゃん。おはよう。」

 

 

「2人ニカワッテ、オハヨウゴザイマス。レーセサマ」

 

 

玲世以外誰もいない部屋に向かって挨拶をすると、机の上の携帯電話が立ち上がり、挨拶をした。その携帯電話の画面には電子的なニコちゃんマークが表示され、イヤホンを上部に着け、クリーナーシートを手に持っていた。

 

 

これが監理の悪魔が玲世に与えた眷属。おそらくはこの世界には存在し得なかった異世界の悪魔とも呼べる。

 

「携帯電話の悪魔」ケーちゃん。

 

「イヤホンの悪魔」イーちゃん。

 

「クリーナーの悪魔」クーちゃん。

 

ちなみに名前は玲世が名付けた。センスは無い。話すことが出来ないイーちゃん、クーちゃんだが、おはようの意志は伝わってくる。

 

 

「今の時間は?」

 

 

「ゴゼン7ジデス」

 

 

「ありがとう。30分で支度するね。」

 

 

玲世は脱衣所に行き、顔を洗い寝癖を整える。最後に鏡を見るとそこには逆五芒星が画かれた瞳が写っていた。

 

 

「厨二病っぽくて何度見ても嫌なんだよなぁ…。パワーちゃんみたいに悪魔ってモロバレだし。せめてマキマさんくらいの感じに…。」

 

 

玲世の悪魔化に伴い、外観に大きな変化はなかったが、原作のパワーのように人間ではあり得ない目となってしまった。逆五芒星などいかにも厨二病みたいだ。初めて鏡を見た時は驚きより、戸惑いが強かった。

 

 

「ふぅ。クーちゃん、いつものお願い。」

 

 

玲世の言葉と同時に、クーちゃんが玲世の両目の前に広がる。それと同時に逆五芒星の瞳が、普通の瞳に戻った。クリーナーの悪魔の力。掃除し元に戻す力。とは言っても何でも戻せる訳でなく、シートの範囲や元に戻せる事柄には制限がある。今も玲世の瞳を見た目だけ元に戻し、普通の瞳に見せている。

 

 

部屋に戻ると、玲世はタートルネックのセーターにジーンズ、上着を羽織り、ボンちゃんとアパートを出る。ケーちゃん達はウエストポーチが定位置だ。部屋の外には1人の老婆が箒でゴミを掃いていた。

 

 

「あら、玲世ちゃん、おはよう。今日もお仕事?悪魔に殺されないよう、しっかりやんなさいね。」

 

 

「おはようございます、大家さん。分かってますよ。瀕死で帰ってきて、地獄の特訓はもう勘弁です。」

 

 

笑顔の大家さんの言葉に辟易した様子で挨拶を返す玲世。老婆の名前は「大家 メグミ」。御年72歳。大家さんとは管理人という意味、ではなく名前が大家さんなのだ。玲世に温かい食事と住む場所、生きる術を教えてくれた大恩人だ。……………生きる術を授かる前に、死にそうな目に何度もあったが。

 

 

「デビルハンターは一瞬の油断が死を招くわ。気をつけてね。」

 

 

「は、はい!行ってきます!」

 

 

笑顔だが有無を言わさぬそのプレッシャーに玲世は気をつけをして返事をし、アパートの敷地から出た。

 

 

助けてもらった夜、黄昏ていた玲世に優しく声をかけ、このアパートに連れてきてもらった。怪しい人間に何も聞かず、食事を振る舞い、笑いかけてくれた。何故助けてくれたのか、彼女に聞くと、

 

 

「助けてあげられるなら助けたいじゃない?人間だろうと悪魔だろうと。困ってる貴女がいて、助けられる自分がいた。だから助けた。理由としてはそんなとこよ。」

 

 

あまりの温かい心に泣きながら玲世はこの世界に来た経緯を話した。自身が違う世界から来たこと、悪魔となってしまったこと、これからどうすればよいかが分からないこと。自分の身に起こった全てをぶちまけるように話した玲世に向かい、大家は静かに言った。

 

 

「それなら貴女はデビルハンターになりなさい。」

 

 

デビルハンター。人の身で悪魔と闘い、報酬を得る。中には悪魔と契約し、その力を行使する者もいる。所属として個人で請け負う民間と国家に属する「公安」があるが、危険性は一緒だ。

 

 

しかしデビルハンターとなるには戦う力がいる。いくら悪魔化していようと戦える力が無ければ、殺されるのみだ。人を助ける前に自分を助けなければ。

 

 

「大丈夫。私が特訓してあげる。こう見えても昔は公安対魔特異課の教官役でブイブイいわせてたんだから。ブイブイって古い?」

 

 

驚くべき事に、大家も昔はデビルハンターを生業にしており、対魔特異課にいたらしい。今も爪、ナイフ、針の悪魔と契約しているらしく、料理や裁縫、小さい物を抓むのに便利、とは本人の談。それで良いのか、悪魔達。

 

 

何処かで聞いた悪魔達だな〜、などと思っていた玲世だったが、特訓が始まるとそんな事考えてはいられなかった。

 

 

特訓により、自らの力を認識させられ、体術を仕込まれた。さすがに原作の岸辺の訓練のように、容赦なく殺される、ということはなかったが、ボンちゃんが憑依融合したことで、玲世は「爆発の悪魔」と言えるものとなった。力の使い方はもちろん、格闘技に手を出していたとはいえ、命を掛けた闘いなんて初めての経験だ。睡眠、食事以外は特訓となり、厳しい日々が続いた。しかし泣き言は言わない。助けてもらった恩、そして生きる術を教えて貰っている以上、玲世に諦めは無かった。

 

 

3か月の特訓の末、なんとか及第点を貰い、デビルハンターとなった。最初に倒したのは、ヒトデの悪魔。ソロモン王の72の悪魔の中にヒトデっぽいのがいるが、そんな事はなく、単なる雑魚だった。それでも玲世は最後に悪魔を殺すことを躊躇い、その隙を相手に突かれ重傷を負った。幸いボンちゃんが、玲世の身体を操作、戦闘を行い、事なきを得た。瀕死で帰った後は大家さんの地獄の特訓が待っていたが。

 

 

「相変わらずおっそろしいバァちゃんだ。悪魔より悪魔っぽいよ。なんで人間やってんだ?」

 

 

「ソウイウボンチャンサマハ、アマリアクマラシクハナイヨウデスガ。」

 

 

「うるせぇや!オマエにだけは言われたくない!ケイタイって機械だろ!なんでレーセの眷属になってんだ!」

 

 

「ソウイワレマシテモ。カンリノアクマサマニイッテクダサイ。」

 

 

道を歩きながら、ボンちゃんとケーちゃんが喋り合う。

 

 

「はいはい。喋ってないでさっさと行くよ!いつもの喫茶店で朝ご飯食べてから行こう!」

 

 

「さんせー!」

 

 

「ショウチシマシタ。」

 

 

この世界に来て半年。1996年1月ならばおそらくデンジ君がチェンソーマンになり、マキマさんと出会う頃だ。この世界に来た以上、原作で死んでしまった人を助けたい。大好きなレゼを助けたい。原作ブレイク望むところ。自分の悪魔の力はそのためにあるはずだ。

 

 

「皆、助けてみせる。」

 

 

 

 

 

玲世は走り出すーーーー

 

この手で助けられる人がいることを信じてーーーー

 

 




次回、あの子が登場です。(お待たせ致しました(笑))
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