ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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お待たせ致しました。あの子が登場です。


第5話 邂逅

 

 

 カランカラン

 

玲世はある場所の扉を開ける。

 

 

「おはようございます!マスター!いつものモーニングセットで!」

 

 

「おっ。来たね。元気娘。注文はわかったけど、今は他のお客様がいるから静かにね。」

 

 

マスターが人差し指を口元に当て、玲世に静かにするよう促す。この場所はカフェ「二道」。原作でデンジとレゼが初めての淡い青春を送った場所。原作に関わる以上、このお店は外せなかった。元の世界での撮影の時に、モデルとなったお店のと同じ場所にあったため、探し出すのは簡単だった。原作通りモーニングの時間以外あまり客足は無い。

 

 

「あ………。すみません……。」

 

 

他の数人の客に見られながら、玲世は恥ずかしそうに俯き、カウンターへ座る。コーヒーの香りが漂い、マスターが料理を作っているとその匂いにつられてお腹の音が鳴る。他にもモーニングセットを食べている客もいるので余計だった。

 

 

「ほら。食べ盛りの元気娘には大盛りモーニングだ。しっかり食べなよ。」

 

 

マスターは笑いながらそう言って、玲世の前に皿を置く。トースト、サラダ、目玉焼き、コーヒーの王道スタイル。但しその量は他の客が食べているモーニングセットの倍近くあった。いただきますの挨拶をし、料理を食べ始める。

 

 

「モグモグ。その元気娘って辞めませんか?モグモグ。私には七篠 玲世ってモグモグ。立派な名前があるんですけど。」

 

 

「生意気言ってんじゃない。大人に見られたいなら、食べながら喋らない。そんな事している内はまだまだ子供さ。」

 

 

「むぅ〜。これでも25なんですけど〜。」

 

 

25にもなってマスターの子供扱いに不貞腐れながら、料理を食べていく。食べている途中、店内に目を向ける。当然ながらレゼはいない。マスターだけがエプロンを付け、調理やコーヒーを注ぎ、配膳している。

 

 

「マスター。誰かアルバイトとか雇わないの?1人じゃキツイんじゃない?」

 

 

「良いんだよ。これで。一応アルバイトは来るけどね、こんな喫茶店で働く物好きなんて少ないさ。」

 

 

「そんなもんかねぇ。客の立場からしたら、もっとなんかこう、花が欲しいと言うか?おっさんだけだと来たくないって言うか?」

 

 

他のカウンターに座っていた客の1人がマスターへ話しかける。まだ1月だ。レゼが働いていた夏までは半年くらいある。原作で画かれていない部分を見れて少し嬉しくなり、話している客に「夏には可愛い子が来ますよ」と伝えたくなる。

 

 

その風景を見ながら、今後の事を考える。原作で死亡した人達を助けるためには、公安に関わる必要があるがこのままの状態で、関わる可能性があるかは分からない。大家さんに相談するのも手段の1つと玲世は考えていた。しかし迷惑をかけるかも分からず、玲世は悩んでいた。

 

 

「どうした?黙りこくって。そんなに料理が美味しかったか?」

 

 

「あ、うん。そうですね。モーニングセットは美味しいです。モーニングセットは。」

 

 

「なんだよ。含みのある言い方して。他の料理だって美味しいだろ?」

 

 

「あはは……。えっと…独創的で面白い味、とは感じますね…。」

 

 

「二道」を見つけて以来、朝昼晩で何回も来ていたが、原作通り他の料理は微妙だった。マスターとデンジは美味しいと言っていたが、レゼが「バカ舌」と言っていたのがよく分かる。正しいのはレゼだった。モーニング以外客が来ないのも納得だ。モーニングセットはトーストとサラダ、目玉焼きと料理の技術が介在する部分がほぼ無い。それが他の客も分かるから、閑古鳥が鳴くのだろう。原作でレゼを雇っていて大丈夫だったのだろうか。

 

他愛ない会話をしながら、玲世は料理をかなりの早さで食べ終わる。早食いも芸のうち。女優をしていた時は撮影中にゆっくりと食事が出来ることは少なかった。大女優ならまだしも、玲世のようにチョイ役は食べれる時に食べないと他に迷惑をかけてしまう。早食いになるのは必然だった。

 

 

「いつもと変わらず早食いだな〜。太るよ?」

 

 

「知ってますか、マスター!それはパワハラですよ!」

 

 

「ぱわはら?何それ?セクハラなら知ってるけど。」

 

 

「あ~、えっと、まぁいいや。ごちそう様でした。マスター、また夜に来ます。」

 

 

マスターのパワハラ発言に思わず言葉に出してしまった。まだ世間はセクハラという言葉が出てきたくらいだ。余計な事を言ったのを誤魔化し、また夜に来る事をマスターに伝える。

 

 

「はいよ。また来な。……………………あ、そうだ!今日の夜はね………って行っちゃったか。夕方からアルバイトの女の子が来るから、気にかけてもらおうと思ったんだけど…。」

 

 

「なに?マスター。女の子が来るの?」

 

 

「五月蝿い。お前はカミさんの心配でもしてろ。」

 

 

 

 

 

 

玲世はマスターの言葉を聞くことなく、店を後にした。意識はこれから起こるであろう悪魔との戦うに向いていた。

 

 

「レーセ。マスターのおっさんがなんか言ってたけど良いのか?」

 

 

「夜も店に行くんだしその時話すでしょ?それより今度の悪魔はなんだっけ?」

 

 

「ツギノアクマハ「ヌイグルミノアクマ」デス。ゲームセンターニヒソンデイルトノコトデス。レーセサマ。」

 

 

「了解!ケーちゃんありがとう!」

 

 

「ドウイタシマシテ。」

 

 

玲世は駅前のゲームセンターへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗した…。ピンポイントで悪魔を狙うつもりが、UFOキャッチャーごと爆散させるなんて…。」

 

 

「レーセはまだまだだな〜!私だったら、あんなミスはしなかったぞ!もっとセンサイに力をだな〜!」

 

 

ことは昼過ぎに遡る。ゲームセンターのUFOキャッチャー内にぬいぐるみの悪魔が潜んでいるとの情報でゲームセンターに来た玲世。民間ハンター組織に連絡し、討伐となったが、人々が見ていることで格好つけようと不慣れな事をしてしまった。それは遠隔爆発。レゼが変身した爆弾の悪魔が、指を弾き、離れた所で爆発させた技。ボンちゃんが玲世を焚き付け、それでピンポイントで悪魔だけを爆発させようとしたのだ。

 

 

「機械の弁償やら警察の事情聴取やら…。もう夜になっちゃったよ…。」

 

 

結果、当然の如くUFOキャッチャーごと爆発。周辺の機械にも損害を出し、警察沙汰になってしまった。テロリストと間違われても無理は無い。不必要な損害に対する弁償や事情聴取で、玲世が解放されたのは、夜になってからだった。

 

 

「全く。悪魔なのに気にしすぎだ!もっとドーンっていこう!ドーンって!」

 

 

「ドーンってしたからあんな事になったんでしょ、ボンちゃん〜!」

 

 

幸い、デビルハンターとして徐々に回数をこなしているので、金銭には若干だが余裕はある。こんな時はやけ食いするのが玲世の癖だった。ボンちゃんの言葉を気にしながら、

 

 

「も〜!!こうなったらやけ食いだ〜!お店でとことん食べてやる〜!!」

 

 

「二道」に移動し、どうせ他の客は居ないだろうと、中を確認せず、大声で扉を開けた。

 

 

「マスター!!カレーとチャーハンとスパゲティお願い!コーヒーもつけてね!」

 

 

すると

 

 

そこには

 

 

「い、いらっしゃいませ。」

 

 

いきなり大声で入ってきた玲世に驚きながらも挨拶を行うレゼがいた。

 

 

「………………………………………………ぁえ?」

 

 

予想他にしない邂逅に玲世はフリーズする。

 

 

「?…あのー。いらっしゃいませ〜?………ダメだ。反応が無いや。マスター。なにか不思議な女性が来たんですけど〜。」

 

 

玲世の顔の前で手を振るレゼ。玲世はフリーズ中のため、全く反応せず、レゼはマスターに助けを求める。

 

 

「あ、来たな。おい!元気娘!おーきーろー!!」

 

 

マスターが玲世の肩を掴み、前後に揺さぶる。頭をガクンガクンさせられて玲世は正気に戻る。

 

 

「あれ?私は何を?お店に入ったら最推しのレゼちゃんが居て、可愛い声でいらっしゃいませ言ってくれて、そしたら髭のおっさんが目の前に居て。ハハ、夢か。」

 

 

「それだけバカ言えれば大丈夫だよ。この子は今日からアルバイトに入ってもらうレゼちゃん。今日が初めてだから同じ女性として気にしてもらおうと朝思ったけど、全部言う前にお店出てっちゃうから。」

 

 

「あ!なんか言ってたのはこの事!?マスター!私みたいなレディでも心の準備ってものがあります!」

 

 

「じゃあ少しは大人しくなったらどうだ。レディはいきなり店に入ってきて、大声でカレーとチャーハンとスパゲティは頼まないよ。」

 

 

「………アハハハハハ!」

 

 

玲世とマスターが言い合いをしているとレゼの笑い声が響いた。玲世とマスターはレゼを見た後、お互いを見合い、そっと離れた。

 

 

「っと笑っちゃってごめんなさい。2人の掛け合いが面白くて。貴女がマスターの言ってた元気むす……じゃない。玲世さんですね。はじめまして。今日からここで働きますレゼって言います。」

 

そう言ってレゼはお辞儀をする。

 

 

「あ、うん。こちらこそはじめまして。七篠 玲世って言います。同じ女性同士、よろしくね。レゼちゃん?」

 

 

「はい。よろしくお願いします!」

 

 

玲世も動揺を抑えつつ挨拶をする。定位置のカウンターに座り、今の状況を考える。

 

 

(今はまだ1月。漫画や映画では確か夏ぐらいがレゼ篇だったはず。時系列的にまだここで会わないと思って油断してた。それにしてもリアルレゼちゃん、可愛い。良い声。けどそっか。夏に働いてても、何時から働いてたかは明言されてなかった。今から働いてても何もおかしくはないんだ。)

 

 

途中余計な事を考えながら、情報を整理する。マスターは別として初めて会う原作キャラに戸惑いが隠せなかった。

 

 

「玲世さんはマスターと気軽に話してますけど、お付き合いは長いんですか?」

 

 

「え、あ、いや?私も1ヶ月くらい前に常連になったとこ。偶然、このお店に入ってね。それからだよ。」

 

 

アルバイトでありながら隣の席に座ったレゼが気さくに話しかけて来た。

 

 

「そうですか。なーんか一目見た時から、玲世さんとは他人のような気がしなくて。これって一目惚れ?なーんて。なにかあったら相談しても良いですか?」

 

 

レゼは玲世にグイグイ近づく。顔と顔が当たりそうなくらい近づいていた。

 

 

「う、うん。良いけど…。ちょ~っと近いかな〜、なんて。」

 

 

「あ、ごめんなさい!私マスターのお手伝いして来ます!」

 

 

レゼはカウンターから離れ、マスターの手伝いに行く。頭の中ではボンちゃんが警鐘を鳴らしていた。

 

 

(おい、レーセ!あいつがお前が話してた爆弾の武器人間か!?あいつに私の心臓が埋め込まれてるのか!?)

 

 

武器人間。原作では武器にちなんだアクションを起こす事で悪魔に変身する事が出来る人間。レゼはソ連によって爆弾の悪魔の心臓を埋め込まれており、首元のチョーカーのピンを抜く事で爆弾の悪魔へと変身する。この世界では心臓の半分は玲世にあるが。

 

 

(うん。多分だけど原作通り首にチョーカーをしていて、右側にピンがあった。他人の気がしないのも私がボンちゃんと融合した爆発の悪魔なのを無意識に感じ取ってるのかも。とりあえずは悪魔だって気づかれないよう、気をつけて接していくしかないね。)

 

 

(レーセサマ。アクマハ、カンガスルドク、イツバレルカワカリマセン。ジュウブンゴチュウイクダサイ。)

 

 

(そうだな。レーセも私みたいに早く悪魔の力を理解して強くなんなくちゃな!)

 

 

昼の失敗からのやけ食いを、と思っていたが、あまり食が進まなかった。レゼを実際に見て、原作が進んでいることを否応無しに理解する。食事を終え、二道を出た後、星が瞬く夜空を見ながらアパートに帰る玲世。

 

 

 

 

 

 

そこに、悪魔が待っていることを知らずに。

 

 

 

 

 

 

「玲世ちゃん、おかえりなさい。」

 

 

「あ、大家さん、ただいま……で…す……。」

 

 

「お昼は大活躍だったそうね?ゲームセンターを壊して、警察にお話されて。なにか言う事はあるかしら?」

 

 

アパートの前には笑顔の大家さんが待っていた。片手の爪を伸ばし、片手にナイフを持ち、後方には無数の針が先端を玲世に向けていた。

 

 

「いや……、あの…、あれはですね。ボンちゃんに乗せられたと言いますか…。」

 

 

「おい、レーセ!私のせいにするな!オオヤさん!私はカンケーないぞ!レーセがやったんだ!」

 

 

「問答、無用。」

 

 

「「あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして玲世とレゼの邂逅は終わったーーーー

 

 

同じ爆弾の悪魔の心臓を持つ2人ーーーー

 

 

その先に待つのは悲劇か、喜劇かーーーー

 




ということでレゼ登場です。次回はレゼ視点を少し描こうかと思いますのでよろしくお願い致します。

※ちなみにレゼは玲世に対して初めて会う、同じ女性、年上、という事で敬語になっています。キャラと合わないかも知れませんがご容赦下さい。
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