ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜   作:wasirunoguchi

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レゼ視点で開始です。よろしくお願い致します


第6話 共鳴する心

 

 

カフェ「二道」ーーーー

 

 

私は笑顔を振りまき、客の相手をする。

 

 

「いらっしゃいませ~。」

 

 

私はレゼ。私はカフェ「二道」でアルバイトを始めた女の子。その笑顔と仕草で客の心を魅了する女。

 

私はレゼ。私はソ連から来た女スパイ。ある目的の為、日本に来た。作戦開始はまだだけど、地域に溶け込むために偽りの仮面を被るファム・ファタール。

 

私はレゼ。私は爆弾の悪魔。首元のピンを抜くと爆弾の悪魔へ変身する。祖国の為、この力を使い、何人も殺してきた恐ろしい魔女。

 

私はレゼ。私は、私は、わたしは、ワタシハーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

私はジェーン・ドゥ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は一体、誰なんだっけ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モーニングの時間が終わり、店内に客は一気にいなくなる。こうなれば後は稀〜にコーヒーを飲みに来るお客しか来ないので、ほぼ自由時間だ。私は勉強道具を机に広げる。深夜の定時制学校に通う苦学生、アルバイトをしながら生計を立てている、という設定。自分でも無茶があるかな?と思った経歴だけど、マスターは特に気にすることなく採用してくれた。

 

 

「レゼちゃん、今はお客さんいないから良いけど、お客さん来たら、ちゃんと対応してよ。」

 

 

「は〜い。来るかも分からないけど準備しておきま〜す。」

 

 

私は勉強を始める。学生という設定で勉強をしているが、私は学校に行ったことがない。物心つく頃には、祖国の「モルモット」と呼ばれる実験材料の1人だった。過酷な実験、訓練に晒され、周囲の子供は死んでいく。少し年上の兄、姉代わりだった人、私よりも小さく、弟、妹代わりだった子。皆、皆死んでいった。学校にも行かされず、毎日投薬等の実験と、人殺しとスパイの技術を叩き込まれた。

 

 

私が爆弾の悪魔の力を手に入れたのはそんな時。何でも悪魔の心臓を人間に埋め込む事で、悪魔の力を授かろうとする試みだ。今まで何人も拒絶反応や悪魔のなり損ないになり、処分されていった。次は私の番か、と思ったが、すんなりと実験は成功。私はスパイとして近づき、悪魔の力で標的を殺す工作員となった。

 

 

今回の標的はある悪魔の心臓。夏の作戦開始まで近隣に潜伏、作戦開始と共に標的に接触、悪魔の力で心臓を確保し、祖国へ帰還、という流れだ。何故潜伏期間があるかは日本の公安がいるからだ。海外勢力の監視から悪魔退治まで幅広く対応する彼らを刺激しないよう潜伏し、日常風景の一部となって油断を誘う。私の得意分野だった。

 

 

「そういえばマスターって学校出てるんですか?」

 

 

私は参考書の問題を解きながら、マスターに話を振る。

 

 

「はぁ?何言ってんの。今時学校出てない子なんかいないよ。そもそも義務教育で中学校まで行くでしょ?高校の事言ってる?」

 

 

「え、あぁ~、はい。コーコー、高校。何処ですか?」

 

 

「調理師学校。カフェやりたくて調理師免許欲しさに行っただけだけどね。レゼちゃんは定時制行ってるみたいだけど、なにか夢ある?」

 

 

「夢、………ですか?」

 

 

そう聞かれて言葉に詰まる。夢。私の夢。マスターの質問に私は考え込んでしまった。

 

 

「あ~、ごめん。無きゃ無いでいいんだ。まだまだ若いんだから。大人と違って10代なんて恋に勉強に大忙しだからね。」

 

 

そう言ってマスターは私の近くまで来る。マスターも色々経験したのだろうか。私の中で大人と言えば、軍人かスパイの教官、実験を行う科学者のイメージしか無い。

 

 

「って、レゼちゃん。その参考書、中学生用だよ。なんでそんなの使ってるの?」

 

 

「……アハハハ。いや、こうして昔に習った事を復習するとですね…。よく頭に入るんですよ…。」

 

 

しまった。中学生用とかどれがどれか分からず、適当に参考書を選んだった。なんで日本の本屋は参考書で何種類もあるのか。統一しなさいよ。統一を。

 

 

「ふーん。ま、それで良いなら良いけど。ごめんね。勉強の邪魔して。」

 

 

マスターはカウンターの奥に戻り、新聞を広げる。コーヒーのコポコポとした音と、新聞をめくる音、私が勉強するカリカリという音だけが店内に広がる。

 

 

ボーン、ボーン

 

 

時計が昼の12時を告げる。

 

 

「もう昼か。そろそろ来るかな?」

 

 

「ふぅ、勉強の時間、一旦お休みっと。」

 

 

2人してそういうとおそらく来るであろう、あるお客の準備をする。しばらくすると、思っていた通りの人がお店の扉を開いた。

 

 

 

「マスター!今日はカレーでお願いします!あとコーヒー!」

 

 

店内に入るやいなや、マスターに注文をする客。彼女は七篠 玲世さん。アルバイト初日に女性らしからぬ量の注文を頼み、マスターと言い合いをしていた。25歳の大人の女性、とは本人の談だけど、私にはどうしても同年代にしか見えない。精神年齢が。

 

 

「あ、レゼちゃん。今日も可愛い〜。マスターにイジメられてない?イジメられてたら私に言ってね!絶対助けるから!」

 

 

「アハハ…。了解です…。」

 

 

「ほらほら。遊んでないでカウンターに座りな。子供じゃないんだから。少しはレゼちゃん見習ったらどう?」

 

 

(マスター、私を引き合いに出さないで。)

 

 

笑顔の裏で私はマスターに念を送る。言い合いながら玲世さんは席に座る。私はお冷やを準備し、彼女へ渡す。彼女はお冷やを渡すと何故か毎回感動してくれる。何故だろう?私からなにかありがたいオーラでも出ているのだろうか?

 

 

私は自分の仕事は終わったと言わんばかりに勉強へ戻る。なんだかんだで勉強自体は好きだ。知識を蓄える事で出来る事は増えていく。スパイとしても、人間としても。

 

 

「あれ?レゼちゃん、勉強してる。偉いな〜。何の勉強してるの?」

 

 

「わ!び、びっくりした…。」

 

 

気が付くと、玲世さんが隣にいた。なにかおかしい。いくら勉強してたとしても、近づく気配に気が付かない訳が無いし、そこまで鈍っている訳でもない。なにかこう、自分の一部だから気にならない、みたいな違和感が。

 

 

「あ!びっくりさせてごめんね!勉強してるの、懐かしくなっちゃって。」

 

 

違和感があるが、同時に親近感が湧いていた。何故だろう。今までも彼女のような人はいた。スパイとして潜入した時も、標的として暗殺した時も。だけどこんな事を感じた事は無い。彼女には不思議な安心感がある。だからか、

 

 

 

「あ、それじゃあ勉強教えてもらっても良いですか?」

 

 

自分の口からとんでもない提案が出ていた。言った後に自分にびっくりしたが、言ってしまった以上すぐに訂正はおかしすぎる。

 

 

「え!良いの?……よし、任せなさい!お姉さん、頑張っちゃう!」

 

 

玲世さんは腕まくりをして私の隣に座る。それだけでなにか暖かい気持ちになる。私にお姉ちゃんがいたらこんな感じだったのだろうか。

 

 

「レゼちゃん?ぼーっとしてどうしたの?大丈夫?」

 

 

いけない。普段陥らないような思考になっていた。こんなんじゃスパイ失格だ。私は何のためにここにいるのか思い出せ。今、心にある謎の暖かさに蓋をし、玲世さんに対応する。

 

 

「だ、大丈夫です。えーと、じゃあこの問題なんですけど…。」

 

 

こうして、「二道」での不思議な一時は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランカラン

 

 

「ありがとうございました〜。」

 

 

レゼちゃんの天使の声でお見送りされ、満足した気持ちで「二道」を出る。

 

 

「レーセ。あいつとやけに仲が良かったけど、大丈夫なのか?なんかあるのかと思って私はドキドキしたぞ。」

 

 

「そう言わないの。ホントだったらあの子も学校行って、勉強して、男の子と恋をして…。素敵な女の子になってたはずなのにね。」

 

 

「レーセサマ。ヤハリボンチャンサマトレゼサマガキョウメイシテイマシタ。ボンチャンサマノドキドキヤ、フシギナカンカクハソノタメカト。」

 

 

私はレゼちゃんに会いにわざと「二道」に来た。モーニングの時間は他のお客がいるし、夜はいるか分からない。ここ数日、昼に行くのを繰り返し、確実にレゼちゃんが居て他のお客がいない時間を絞った。……………なんかストーカーみたいだ。

 

 

「やっぱりか〜。なんとかデンジ君と知り合う前に、仲良くなって戦いを辞めさせたいけど…。」

 

 

春からデンジ君は対魔特異4課に入り、サムライソード達による特異課への襲撃、夏の時点でレゼちゃんとデンジ君は出会い、事件が始まる。私の目指す目標は3つ。一つは原作で死亡してしまうキャラクターの救済。これは公安の人や対魔特異4課の人、レゼちゃんだ。もう一つはデンジ君とレゼちゃんの恋の成就。デンレゼを推していた私にとってとても大事なことだ。そして最後の一つは………。

 

 

「まぁ、今の所は、もっと強くなることが優先かな?助けるにしても、力が無いと出来ないことだし、戦いを止めるのもそう。まだまだ道は長いなぁ~。」

 

 

「レーセが強くなるなら願ったりだ!爆発の悪魔として地獄と現世に名を轟かせようぜ!」

 

 

「ボンチャンサマ。アマリユウメイニナリスギルト、ギャクニネラワレテシマイマス。」

 

 

「うるさぁ〜い!いつもいつも一言言いやがって!お前は喋るだけじゃないか!眷属がそれでいいのかよ!」

 

 

「ワタシハモチロン、イーチャン、クーチャンモヒビシンカシテイマス。アナタトハチガウノデス。」

 

 

「なんだと〜!!」

 

 

2人がまた言い争いをしている。ケーちゃん達も進化してるのか。まだ謎が多いけどこうして2人が話をしてくれるだけで、1人じゃないと安心出来る。

 

 

「2人とも言い争ってて大丈夫なの〜?これから大家さんの特訓だよ〜?…………特訓……だよ〜…。」

 

 

「うわぁ!レーセがどんどん落ち込んでく!おい、ケーちゃん!ここはイチジキューセンだ!」

 

 

「リョウカイシマシタ。ボンチャンサマ。」

 

 

 

 

 

 

 

名無しの少女と異世界から来た女性ーーーー

 

近しいようで、遠い2人の境遇ーーーー

 

それでもより良い未来を目指して歩いて行くーーーー

 




原作キャラを描くのは難しいですね…。キャラクターの印象を崩さないよう、口調など気を付けていますが、難しい…!

おかしな部分等が有りましたら、感想等でお知らせ頂けると幸いです。

よろしくお願い致します。
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