不器用狼と猛進うさぎ   作:3割びきの子ブタ

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第4話【鈴音の自宅にて】

 

あ゙ぁぁぁ…泣きながら走って帰ったから肺に酸素が足りないぃぃぃ…!

 

部屋まで一瞬で駆け上がり、ベッドで天井を見上げながら思う。

初めてせんぱいに拒絶された。

いつもの優しさや気遣いが見え隠れする柔らかい拒絶じゃなくて、断ち切るような。

せんぱいは雪のような人だ。

冷たいけどフワッとしてて、そのままの自分を受け止めてくれる。さっきは……氷が割れる前のヒビみたいな音がした。

 

指先がかすかに震えてた。目の奥が、私への気遣いより外敵への恐れで揺れていた。

何が逆鱗に触れたのかは分からない。

分かるはずもない。だって私はあの人の事を何も知らないんだから。

 

「あっ、まずい。涙出てきた……」

 

いつもは推しの過剰摂取でお腹はち切れそうだけど、リアル推しが弱ってるとわかるとこれはこれで胸が痛むぅぅぅぅ!!

いや、私が泣いてる場合じゃなくて……

 

『ほっといてって言ってるでしょ!?』

 

あの声に籠められた怒りは相当なものだったはずだ。

なのに直後に私を気遣って約束を取り付けてくれた…お人好しだなぁ…。

普段は人を寄せ付けない鉄壁の仮面が剥がれた瞬間を見てしまった。私は血の滲む傷口にズカズカと無遠慮に踏み入った愚か者だ。

 

「……どうすればよかったんだろう」

 

スマホを開いても通知ゼロ。

当たり前じゃないか連絡先の交換すら出来てないんだから。

でも明日はちゃんと行くって言ってくれた。

約束してくれたからには絶対来てくれる。だってせんぱい嘘つくようなタイプじゃないし。

 

「……」

 

そこでふと気付く。

私、せんぱいのことほとんど知らない。

好きな食べ物も、誕生日も、趣味も知らない。

毎日話しかけてるのに、何ひとつ聞けてない。

 

「バカだなぁ……」

 

泣きながら笑ってしまう。

こんなに近くで騒いでるのに、実際の距離は遠いなんてもんじゃない。

でも、それでもいい。

知りたいから傍にいるんじゃない。

傍にいたいから傍にいるだけ。

だから。

 

「よし!決めた!」

 

ゴロンと仰向けになって拳を握る。

明日、いつもの私で行こう。

明るくて少しうるさくて、せんぱいのことを尊敬してる後輩として。

深いところには踏み込まない。

でも、離れるのはもっと嫌だから。

 

…!?

そうだ、お弁当作ろう。

いつも購買に行ってるなら、せんぱいは明日もお弁当を持ってない。

なら今日のお詫びとして…どうだろう?

いやこれ私がやりたいだけだな。

さっきやらかしといて反省って概念が無いのかな???

いやでも私が引き摺ってたら、せんぱいもっとダメージ受けるんじゃない…?

つまりここは私が明日もやりたいようにするのが正解なのでは…

ええい!食べてもらいたいだけだよ!

美味しいとか言われたら毎日作ろうもう決めた。

 

「せんぱい、明日は美味しいものいっぱい食べて元気出してもらお〜っと♪」

 

明日はいつもと同じ、でも少しだけ違う一日になる。

そしてきっと、それは私にとってもせんぱいにとっても大切な一日になる…といいな?なって欲しいな?なんて。

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