不器用狼と猛進うさぎ   作:3割びきの子ブタ

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第5話【翌日の2-2教室にて】

 

「し、失礼します!1-3 出席番号30番!夏井鈴音です!つぐみ先輩はご在宅でありましょうかっ!?」

 

ここ最近耳に馴染んだその声に、正直驚愕した。

 

「…帰れって事?」

 

「ぁぁぁあ!?違うんです緊張のあまり言い間違えて…!」

 

手をばたつかせて弁明する姿があまりに必死で…昨日の自分を忘れそうになる。

それを咎める己がいるけれど、やはりクスッと笑ってしまう。

 

「ご在宅ならここにいないね?」

 

「もう許してくださいよぉ…」

 

「わざわざここまで来なくても…会いに行ったのに。」

 

「ゔぇ マジですか今から教室戻るんで来てくれませんか!」

 

「なんでだよ」

 

昨日の事など無かったかのように、いつも通りの鈴音に救われた。

あえてそうしてくれてるのかな…優しい子だ。え、あえてだよね…?

周りが少しザワついてるのが肌で分かる。

そりゃ私みたいな奴に慕ってくれる後輩がいるとは思わないよね…私もそう思う。

マイナスイメージを鈴音に付けるわけいかないし。

 

「ん、お昼食べるんでしょ?行こうか」

 

「…!? はぁい!!」

 

……目立つなっての

 

 

「あ、また購買寄っていい?」

 

私は基本的に購買のパンを食べるかどうか…なんならお昼食べない方が多い。

部活を辞めてから低燃費なのだ。

でも鈴音と過ごすなら手ぶらは気を遣わせるだろうと思ったが…

 

「あ!大丈夫です私せんぱいにお弁当作ってきたんです!」

 

「…ん??」

 

え、昨日の私結構な剣幕で怒鳴っちゃったよね???

それで今日お弁当作ってきてくれたの?

なぜ作ろうと思った???えっ?

 

「あのさ、なんでお弁当を…?」

 

「…?食べて欲しかったからですが?」

 

初めて何言ってんだこいつって顔されたんだけど…

え、私がおかしいのかな?いや違うよね?

 

「よく無鉄砲って言われない?」

 

「ふふ…平和主義なのでっ」

 

「???」

 

困った会話が成立しない…こんな不思議な子だったか…?いや変な子ではあったな…

まてよ?無鉄砲→平和主義…

 

「あの、無鉄砲って文字通りの意味じゃないけど…?」

 

「え、Love&Peace的な意味じゃないんですか」

 

「どうやってウチの試験突破してきたの…」

 

アホの子だったらしい。

 

非常階段の踊り場で食べる事にした。

鈴音が座る所に軽くハンカチを敷いて、私はドカッと座り込む。

可愛らしい水色の包みを受け取り開けると、鈴音の雰囲気からはちょっと想像出来ない…その、地味な料理が並べられていた。

 

「あの、ほんとはもっと彩り良く作る予定だったんです。でも私が自信ある料理茶色が多くて…」

 

いつもの声とは別人かというほど小さい声がする。

横を見ると耳まで赤くして顔を伏せる鈴音がいた。

 

「ううん、私はこういう料理好きだから。ありがとね」

 

きんぴらごぼう、蓮根と人参と厚揚げの煮物、ブリの照り焼き…あ、柚子の皮乗せてくれてる…本格的だな

きんぴらごぼうから食べようとすると箸が無かった。

 

「あの、箸あるかな?無いなら購買に取りに行くけど…」

 

「ありますよ!どうぞどうぞ!」

 

…?昨日見た箸じゃないこれ?

まぁいいかと受け取り食べる

 

繊維を短く揃えたごぼうは土の匂いを上手く活かすためごま油を加減している。

タレはご飯を進ませる丁度いい甘辛さ。

醤油を先に少し焦がしてるのかな…香ばしさが風味の強い食材をしっかりと支えている。

こんにゃくは一度凍らせたのかな…?

水分を抜いて硬くなった食感がごぼうとコントラストを作ってて楽しい。

 

…レベル高くない???

 

凄い仕事してあるんだけど朝から作ったのこれ???

 

「あの」

 

「はいっ!?お口に合いましたか…!?」

 

「いや、料理すごく上手なんだね…?大変だったでしょこれ作るの」

 

「いえいえ全然!ちゃちゃーっと作っただけで申し訳ないです…!」

 

んな訳あるかい

 

今度はブリの照り焼きを食べてみる

お弁当に1枚切り身が乗せられるのではなく、切り分けられてる事で見た目が大味になっていないし食べやすい。

それでいて身質を上手く塊で解れるようカットしてるから食べ応えがある。

表面から少し先までタレを絡ませるに留め、中心にしっかりブリの旨味を据えている。

皮目だけ焼き上げ、身の柔らかさを保ちつつ香ばしい風味を乗せている。

柚子の皮も照り焼きを邪魔しない程度に調整し、後味の爽やかさだけが心地良い。

 

…割烹料理か???

 

「このブリの照り焼き…どっしりしてるのにくどくない…タレのおかげなんだろうけど…」

 

「あ、分かります?ほんのちょーっとだけ焦がしバターとゆず果汁絡めてます」

 

…割烹料理か???

 

料理人でも目指してるんだろうか…

少なくとも高校生が昼にこんな非常階段で食べる料理でない事だけは確かだ。

 

「大変だったでしょ。それに材料も…払うよ」

 

「いえいえ!私が食べて欲しかっただけなので!気に入って頂けたなら良かったです…!」

 

すっごいキラキラした目してる…

そりゃこれだけ手間かけた料理なら気に入ってもらえたら嬉しいだろうけど。

 

「うん、凄く美味しい。キミの将来の旦那さんは幸せ者だね。ありがとう」

 

「はぇ…」

 

見た事ないくらい真っ赤になってる…

急に旦那さんとか言ったの良くなかったかな…変に恥ずかしがらせてしまった。

 

「うん、ご馳走様!ありがとね」

 

「お粗末さまです!喜んでもらえて何よりで…」

 

…2人して目線を下に落とす。

そういえばこの子…ずっと食べる私を見ててお昼食べてないな。

 

「あのさ、食べないの…?もうあんまり時間ないけど…」

 

「あ、あの…その、食べれなくて」

 

「えっ?どうしたの…?」

 

「…箸、一膳しか持ってきてなかったみたいです。」

 

私は全力で購買へ走った

 

割り箸を持って戻って来たら、時間が無かったのか顔を真っ赤にしながらさっきの箸で食べてる鈴音がいた。

走った意味よ…まぁそれで良いなら良いのだけど。

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