普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第15話 狩猟

 俺と九十九とアプスさん。そんでもってライダーとセイバーとアサシンが森で朝から陣取っていた。学校さぼる羽目になったのがマジで苦痛。

 

「準備は出来ているヨ。君たちへ最大限加護が廻っているはずだ。確認したまエ」

 

 アサシンが森を専用のバフフィールドにしてくれたそうだ。なんか俺自身もそこそこパワーアップした感はあるけど、どうせ殴り合う気なんてないので意味ないっす。

 

「ふぅ……」

 

 九十九は腰の刀の柄に手を置いて息を整えていた。よくよく考えるとこいつもたいがいメンタル強いな。ボコボコにされても立ち上がるのはえらいと思う。

 

「肩の力抜いていいよ。俺の秘策が効けば必ず勝てるからさ」

 

「魔術師でもないあなたの秘策が何なのか未だに分からないけど……信じるわ。ありがとう。佐藤君」

 

 九十九は優し気に微笑んだ。可愛いなって思う。進学先別だから今だけの付き合いだけどね。この瞬間は大切にしたいものだ。しかしセーラー服のスカートの腰にベルト撒いてそこに刀差してるとなんかバトルヒロインみたいでコスプレ感高いです!

 

「あなたは秘策を開示しなかった。魔術師なら理解はできるけど、あなたは一般人よね。何で教えてくれなかったのかしら?」

 

 ノウスさんが俺に話しかけてきた。今回の仕込みは俺が独断と偏見で進めた。自信はあるけどね。

 

「反対するのがわかってたからね。だから言わなかった」

 

「自己犠牲かしら?長生きできないわよ」

 

「そんなつもりは毛頭ないよ」

 

 俺はここに戦争しに来たわけじゃない。面倒ごとを処理しに来ただけ。自己犠牲?そんなこと絶対にやるものか。俺は大学デビューする。絶対にだ。そのためにただ生き延びるだけだ。

 

「来たヨ。タイプアース・プロトタイプがネ」

 

 アサシンがそう言うと全員で警戒に入る。俺も肩に下げた袋を確認する。今回の戦いのキーアイテムだ。抜かりはないけど、それでも少し縋りたくはなる。

 

「会いに来たよ。三郎」

 

 森の奥からノクティラリアが出てきた。キャスターも傍に居る。

 

「三郎。そいつらを皆殺しにすればいいんだよね?すぐに終わるから待っててね」

 

「ノクティラリア。警告をもう一度させてくれ」

 

「なに?あたしはもう止まらないよ。幸せを知ってるから」

 

「キャスターとの契約を捨てて、街を出ろ。そうすればーーーーー狩らないでやる」

 

 俺がそう言うと周りの空気が変わった。九十九もノウスさんもセイバーもアサシンも俺を信じられないものを見たような目で見ている。

 

「狩る?…あはは!三郎。笑わせないでよ。あたしはこの星で一番強いんだよ。狩られるのは古い霊長の人間の方なんだよ。やっぱり聖杯にお願いしようか。三郎もガイアの子になろう!そしてあたしと永遠に一緒に幸せに暮らすの!」

 

「そうか……そうかぁ。残念だよ……うん。本当に残念だ。ライダー、あとは任せた」

 

 俺がそう言うとライダーが白い愛馬を召喚して鎧にして纏う。

 

「セイバー。令呪はいる?」

 

「いいえ。今この瞬間は世界の危機です。ゆえにわたしは騎士としての矜持を今は捨てて、剣を抜きましょう!!」

 

 セイバーは腰の剣と背中の剣を鞘から抜いて構える。キラキラ輝いてて目に毒だな。オタ芸なら他所でやって欲しい。

 

「キャスター。鎧を頂戴」

 

「ええ。神繋ぎのマントラよ!スーリヤの鎧をここに!!」

 

 すると黄金の鎧が現れてノクティアリアの身体を包んだ。ドレスの上に張り付いてる感じ。役に立つのそれ?立つのか。神秘ってやつはよくわからないガバガバさだな。

 

「じゃあ、殺すね」

 

 ノクティラリアがふっと消えた。消えたんじゃないんだろうけど俺の目じゃ捉えられない。そしてライダーを思い切り殴っているのが見えた。ライダーはカウンターでお腹にケリをいれていた。一瞬の攻防ってやつなんだろうな。ついてけない。

 

「いきます!!」

 

 セイバーがライダーとノクティラリアが殴り合っているところに飛び込む。そしてノクティラリアの背中に一太刀入れた。無傷だけど、ノクティラリアはなんか驚いた顔してた。

 

「え?なんで。なんで当たったの?」

 

「届いた!マスター!佐藤さんの仕込みは効いてます!!剣が届きました!」

 

 セイバーも驚いてる。え?もしかして剣さえ届かないレベルだったの?どんだけ圧倒的だったのさ。こわ。つまり俺のデバフとアサシンのデバフ&バフでやっと互角レベルなのね。おっそろしいなぁ。

 

「うそ。本当に神秘が薄れてる……私の魔眼でも捉えられた!何も見えなかったのに!」

 

 九十九も驚いている。そしてライダーとセイバーとノクティラリアの格闘戦が激しくなっていく。周りの木々をなぎ倒して、地面を余波でえぐる。環境大事にしてほしいなぁ。

 

「あのぶ厚いガイアの神秘が剝がれてるなんて……いや。確かにギギ・アプスとの繋がりから期待はしてたけど、本当にここまで弱体化させたの。どうやったのあなたは?!」

 

 ノウスさんが俺に近寄ってきてめっちゃ鼻息荒く問い詰めてくる。まあ別に言ってもいいか。

 

「どうやったって。簡単だよ。市役所の環境課にノクティラリアを害獣として届けて出て受理させた。市役所から害獣駆除の告知が出て、懸賞金もかかった。そんだけ」

 

「はぁ?!え?!はぁあああ?!」

 

「うそなにそれ?!ええ?!どういうことなの?!」

 

 なんか魔術師界隈が驚いてる。むしろなんでこいつらは国家制度に頼るって発想がないんだろう。裏家業なのかな?反社?税金ちゃんと納めてる?

 

「なんでそんなことで神秘が剥がれるの?!意味わかんないんだけど?!」

 

 九十九も俺に迫ってくる。美少女二人に迫られるとかラブコメ好きとしてはロマンだけど鬱陶しいな実際は。

 

「神秘って幻想でしょ?」

 

「まあそうだけ。ノーブル・ファンタズムとも言うわ」

 

「知ってる?共同幻想って言葉?」

 

「なにそれ?」

 

「思想家の吉本隆明が提唱した概念だね。国家とか社会って目に見えないよね?でも確かに存在してる。人々があるって信じてるから存在するんだ。英霊と同じだよね?」

 

「まあそうだけど……え?うそ?!じゃあ国家制度って?!」

 

「そう。すごく強い幻想なんだよ。その意思決定はブラックボックスだから外から見るとわからないし、神秘的だろ?国家という最高最大最強の幻想が用いる神秘的な官僚機構の意思決定と手続きは神秘に対抗できる最高のリソースなんだよ。それに向こうも役所がその存在を害獣として登録して観測して公知した。国家の法と手続きがガイアの幻想を食い破ったんだよ」

 

「……あり得ない……なのにロジックが通ってる……そんなぁ……神秘が……私の信じてた神秘ってお役所の決定にさえ劣るものなの?……っ」

 

 九十九が何か泣きそうな顔してる。だけど現実に作動している以上俺のやり方は正しかったのだ。

 

「弱点がなきゃ作ればいい。神秘は屁理屈合戦。だからこっちで定義しなおした。ガイアの怪物ではなく、熊と同じ害獣ってね。だから今のノクティラリアは……人に狩られると定義されたただのけだものだ」

 

 神秘に恐れおののくのは自由だろう。崇めるのも自由。だけど縋るつもりはない。ルールを押し付けてくるならこっちはこっちのルールを適用し返せばいい。ただそれだけ。

 

「俺たちはノクティラリアと戦争をしにきたわけじゃない。あの子を狩りに来たんだ。そう世界が定義した。もうそれは覆らない」

 

 もっとも害獣は人間を害することはできるから油断はできない。だけどもう戦争じゃない。ここら先は狩りだ。ただ粛々とやるべきことをこなすだけ。……そうするだけなんよ。もうそれしか出来ないんだ。……ただただ俺は虚しい。そう感じていた。




三郎「その幻想をぶち壊す!!」→役所で書類提出

型月文法をクラッシュするのは市役所のお仕事です(´・ω・`)

無常だなぁ
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