普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第2章 不毛と豊饒の循環
第17話 葬式


 ノクティラリアは死んだ。これで脅威は去ったわけだけども、そのあと少し悶着があった。

 

「遺体を実験に使いたい」

 

 アサシンのマスターのノウスさんがそう言ってきた。だけど俺はその申し出を拒否した。

 

「人としての尊厳がある。遺体は渡さない」

 

「あんなに美しい少女に好かれてたくせに殺したのに?」

 

「人としての一線は守らなきゃダメだ」

 

 遺体は俺が引き取ることにした。そんでもって市役所からまずは狩りの報奨金を受け取り、それと遺体を持ってシスターのところへ行った。

 

「葬式をして欲しい。遺体は火葬で魔術師たちに利用されないようにしたい」

 

「ちっ!」

 

 やっぱり舌打ちされた。

 

「うちの宗派は火葬ではないのですが」

 

「じゃあこっちの世界に理解のあるお坊さんとか紹介して。葬式やるからさ。あと全マスターとサーヴァントたちも出席させてね。弔わなきゃ」

 

「……あなたはおかしい。なぜ人外の姫を殺して自分で葬式などするのですか?死を悼むくらいなら最初から殺さなければいいでしょう?」

 

「選択肢が他になかっただけ。それに葬式は必要だ。この子は怪物だったかもしれない。だけど人間だったよ。だからだよ。ちゃんとお別れしたいんだ」

 

「……わかりました。手配はします。でも費用はあなたが負担してくださいね」

 

「わかってるよ。はい。これね」

 

 俺は報奨金と自分の貯めてきた小遣い全部をシスターに渡した。そして葬式は行われた。市の火葬場のホールでお坊さんを呼んで粛々とお経を唱えて貰った。マスターたちは全員来てくれた。サーヴァントたちも椅子に座って静かにしていた。そして火葬場に遺体を置いて、俺は彼女が好きだった石鹸を棺に入れた。そして棺は炉に入れられて焼かれた。その間シスターが聖書をみんなに向けて読んでくれた。なんか言葉を残してくれるのは嬉しい。

 

「故人は愛に生きて愛に死にました。愛は何物にも負けることはありません。アーメン」

 

 そして焼かれた遺骨を壺に納骨して俺が引き取った。墓はまだ建てられないので俺が預かることにした。位牌もお坊さんに作ってもらった。戒名は星静信女。俺のお小遣いではこれくらいの長さしか貰えないのは少し悔しかった。

 

「サーヴァントは本来死者なのだがネ。葬式に参加することになるとは思わなんだヨ。だが悪くはなイ。生き続けるために区切りをつけるのはいいとこダ」

 

 アサシンはお通夜の席で酒と飯を食べながらそう言った。

 

「お前はあの子を救えたんじゃないのか?」

 

 伊吹がそう言った。

 

「俺にそんなつもりはそもそもないよ」

 

「あの子は運命に苦しんでた!お前を必要としていたんだぞ!なのにそれを見捨てたんだ!」

 

「それは恋愛の話か?なあ伊吹。そもそも俺はあの子と付き合ってたわけじゃない。受験生なんだよ。恋愛しているつもりはないんだ。付き合ってもいない女の子を命を捨ててまで守る責任、俺にはないよ」

 

「お前はいかれてる……冷たすぎる……マスターに相応しくない」

 

 勝手に言っていて欲しい。俺とノクティラリアは言うならばタイミングが悪かっただけだ。ちゃんと選択肢も与えた。だけどそれを選ばずに暴走したのは彼女だった。

 

「伊吹君もうやめて」

 

 九十九が口を開いた。

 

「だけどこいつは!」

 

「もう終わったことよ。魔法でもなきゃ死者は蘇らない。もしもは私たちにはないのよ。……佐藤君は出来ることしか出来なかっただけ」

 

 九十九は俺を庇ってくれた。だけどどこか心配そうに俺を見ていたと思う。お通夜は淡々と過ぎていった。特に揉めることもなく。そんでもって休戦協定の話がシスターから出た。

 

「全陣営に疲労が見られるため休戦を残り一週間とします。各人その間に英気を養ってください。令呪は休戦協定が終わった瞬間に各自にお配りします」

 

 ということになった。運がいいのかな。俺は何とか模試に集中できる時間が与えられたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校にやってきた。いつも通りのランチの時間。ライダーはもくもくとチキンを食べている。セイバーも唐揚げをお箸で食べている。九十九はサンドイッチを食べているが俺をなんか心配そうに見ている。

 

「やっぱり悲しいのね」

 

「うん。……だってあんまりだろ。こんなの……こんなの。畜生!!」

 

 俺は泣きながら両手で屋上のフェンスを叩く。悔しいに決まってる!悲しい!あんまりだ!こんなの!頑張って頑張って頑張ってこんな結果だなんて!納得できない。

 

「うう。うわぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 

「でもあなたは出来ることをちゃんとやったじゃない。ノクティラリアもきっと納得できるわ」

 

 九十九が俺の背中を撫でる。だけどなんでノクティラリアのこと言ってんだ?

 

「俺は高校三年間をかけたんだ!理想のために!努力を惜しまなかった!なんで俺がC判定なんだよ!!」

 

「はぁ?C判定?」

 

「東大模試がぁああああ!!C判定だったんだよぉ!!畜生ぅ!これじゃあ俺は大学デビューできない!人生を賭けたのに!なんで俺は!こんなところでぇ!!」

 

 もう真っ暗だ。世界が鎖される。なんで俺はこんなに頑張っちゃったんだろう。どうせ受かりっこないのに……ああ、無駄な夢を見ていたんだなぁ……。

 

「あなた模試の結果でそんなに泣いてるの?!馬鹿なの!?」

 

「そうだよ!俺はバカなんだよ!だからC判定なんだよ!ううぅ!こんなことってないょう……くそぉ……あんなに頑張ったのに世界は俺を裏切ったんだ!!」

 

「ええ……あきれてものが言えないわ……」

 

「なんだよ!お前なんかもう進学先内定してるんだろ!俺なんかこのままだと夢が叶わないんだぞ!うう。俺の人生終わった……」

 

「いや終ってないわよ……はぁ……でもなんか安心した。あなたって普通の人なのね」

 

 ずっと言ってるじゃん。普通なんだよ。だから辛い。努力が実を結ばなかった。最後の模試だったのに……。結果は出なかった。

 

「ほらシャキッとしなさい!」

 

「お前の何がわかるんだよ!!」

 

「わかんないけど!あなたが悲しいのはわかった!だから今日はパーッとしましょう!パーッと!まだ休戦協定中だし!放課後遊びに行きましょう!ラーメンも奢ってあげる!」

 

「ふん。そんなことで俺の傷ついた心の傷は癒えない……俺はもう終わったんだよ……」

 

「いいからついてきなさい!もういいわ!今から遊びに行きましょう!人生終わったんでしょう!なら学校くらいさぼれるでしょ!」

 

「まあ。たしかにすべてどうでもいいかな。ふん。まあいいさ。付き合ってやるよ!」

 

「なんかムカッとするわね。でもいいわ。ほら行くわよ!」

 

 そして九十九に手を引かれて俺は学校から出たのであった。




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