普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第19話 焼肉

 中央区のとある高級焼き肉店の個室にノウスとエーミールとラピス、そして伊吹が集まっていた。

 

「集まってくれて感謝する。ここにいるメンバーですでにどういう会合かはわかっていただけると思う。我々は聖杯戦争最大の障害について話し合わなければいけない」

 

 ノウスがそう言って、カルビを網の上に並べる。

 

「佐藤のことだな!」

 

 伊吹はすでに焼き上がっているロースをタレにつけてライスと共に食べる。体育会系らしくご飯は必須だった。

 

「はっきり言って今回のことはカルチャーショックだったよ。まさかあんなやり方でタイプアース・プロトタイプを撃破するなんて思わなかった」

 

 タン塩にレモンを絞ってエーミールはビールと共に食する。箸の使い方はとても上品だった。

 

「我々は神秘を前提に考えている。むしろそうだからこそ聖杯戦争は成り立っているのにもかかわらずああなった。彼は神秘をまったく信じてない。かと言って否定もしていないのが恐ろしい」

 

 ラピスはマッコリを飲みながらキムチと肉をサンチュに巻いて食べた。

 

「そこでボクは同盟を結ぶことをここに提案したい」

 

 ノウスは焼き上がったロースを食べながらそう言った。

 

「同盟?佐藤をみんなで凹すってことだな!いいぜ!乗った!」

 

 伊吹はライスをお替りしながらそう言う。

 

「……彼相手にみんなで殴り掛かる?冗談だろう?」

 

 エーミールはわかめスープを飲みながら渋い顔をする。

 

「ああ。冗談ではない。我々は彼の所業にプライドを傷つけられた。なのにその雪辱を果たすのに集団で倒すなどありえない」

 

 ラピスはユッケを食べながらそう言った。

 

「そう言うと思っていた。だから同盟と言っても結ぶのは相互不可侵だけ。佐藤三郎が脱落するまでの間のね」

 

「どういうことだよそれ?」

 

 伊吹が首を傾げる。

 

「お互いに攻撃はしない。だけど佐藤には攻撃する。そういう提案だ。各人佐藤三郎の攻略に集中してもらう。それがこの同盟の意図だ」

 

 ノウスはコーラを飲み干してからマスターたちを真剣な顔で見る。

 

「みんな彼を倒したい。なぜならば我々神秘の側からすれば彼はその破壊者だ。放っては置けない。我々は共存できない。彼は自分が責任をもって除く。その機会を担保したい。紳士的に順番を決めて彼に挑むのだ。タイプアース・プロトタイプさえ撃破した怪物をね。英霊のように」

 

 マスターたちは逡巡する。そして。

 

「なら最初に挑むのは私からにさせて欲しい」

 

「ほう。その心は?」

 

「うちのアーチャーは英霊殺しに特化している。堂々と彼のやり方を否定する。聖杯戦争の流儀に沿ってね。私が彼の神秘への冒涜を辞めさせる役を担おう」

 

「他の者は異議はあるかな?」

 

「ない。だめだったら次は僕のバーサーカーで挑む。最高純度の神秘で押しつぶしてみせる」

 

「それでもだめなら俺が倒してやる!ランサーは最強だからな!」

 

「では話は決まったな。同盟はここに締結された。各人の奮闘に期待する。あ、その肉いい感じだから取っておいてくれ」

 

 そして魔術師たちは淡々と焼肉を愉しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お隣の席にサーヴァントたちが集まっていた。アサシン、バーサーカー、アーチャー、そしてランサー。彼らも席に座って大人しく肉を食べていた。

 

「美味しいですね。おかしいな神代の方が神秘が濃いのに、お肉は現代の方が美味しいんだね」

 

 アーチャーが肉を子供のように楽しんでいた。まだ若い男らしくたくさん食べている。

 

「この肉を供犠に振舞えば神も喜んでくれるだろう。というかこの生肉?大丈夫だよな?神代では考えられないのだが?」

 

 ランサーはユッケを前にして戸惑っていた。

 

「牛の肉は好きだろウ?何事も試してみるべきでハ?」

 

「う、うむ。ぱく。……なんだこれは?!生なのに血の味がしない?!なのに油がとけて極上の旨みが口に広がる?!」

 

 アサシンの勧めでユッケを食べたランサーは顔を緩めて笑顔で味を楽しんでいる。

 

「■■■ーーーー!!!」

 

「バーサーカー。石焼ビビンバは素手で食うナ。むしろ熱くないのかその石の器ハ?えエ?お替りカ?肉食っていんだゾ?」

 

 アサシンは端末を操作して追加の注文を入れる。

 

「この牛はわぎゅーというそうだな。種牛を故郷に持って帰りたい。うちの牛たちと交配させてみたいのだが」

 

「法律があるからむりだゾ」

 

「そうなのか……。聖杯に願うしかないのか……」

 

「僕の故郷の神々もこの肉には喜びそうですね。……彼女にこれあげてたら僕死なずに済んでたかな?あはは」

 

「英霊ジョークはなかなかきついナ。まあ女神とはどこの国でもやっかいなものだヨ」

 

「■■■---!」

 

「なニ?タン塩とごはんを一緒に食べたいだト?」

 

 アサシンは端末を操作して追加注文した。ついでに自分もユッケに興味が出たので自分の分のも頼む。

 

「一つ聞きたいガ。君たちは聖杯に何を望ム?」

 

 それを聞いてランサーは真剣な顔で言う。

 

「我が神の復興を」

 

「ふム。まあ妥当だネ。敵対関係になければ応援したいくらいには気持ちはわかるヨ」

 

「僕は……ただ知りたいだけです。知るために聖杯がないと無理だから……」

 

「ふむ。英霊らしい思い残しかナ。まあ頑張り給エ」

 

「■■■■……」

 

「なるほど。だがそれは……いや。まあ案外聖杯なしで叶うともうゾ。他意はなイ」

 

「そういう貴公はどのような願いを持っているのだ?」

 

 ランサーがアサシンに問いかける。

 

「いヤ。聞いておいてなんだがネ。私は聖杯には願いがないのダ。マスターの願いに興味を持っタ。だからその実現に手を貸すことにしているだけダ」

 

「そうか。それは英霊としては後悔のない人生だったのだな」

 

「あア。後悔はなイ。私は大いなる秩序の一部となれタ。だからそこに文句などないサ。だからこそこの間は少し感動したヨ。三郎くン。よくぞタイプアース・プロトタイプを撃破したものだヨ」

 

「まったくだな。あの怪物を何とかしてみせた。大したものだ。出来れば彼がマスターであったならと思うよ。うちのマスターは先走りが酷い」

 

「彼は事実上神霊クラスの敵を退治したんですよね。現代の英雄なんですか?いずれは座に至るのでしょうか?」

 

 アーチャーがどこか心配そうにそういう。

 

「■■■」

 

「バーサーカーの言う通りだネ。英雄になどなってはいけないヨ。もっとも尊いことは日常を生き抜くことダ。だがそれは英雄になるよりも時に難しイ。三郎君は世界に興味がないが、世界が彼を放っておかないだろウ。放っておけば際限なく彼の下に様々な災厄が集っていき、もしかしたら世界を救ってしまうかもしれないナ」

 

 サーヴァントたちは黙ってしまう。その末路が幸せなものではないと理解しているから。

 

「マスターたちは悪だくみしていル。それが叶って彼が脱落することを祈ろウ。まあ。止められる気もしないがネ」

 

 アサシンは日本酒を煽ってそう言った。そしてその後はなかなかに和やかに焼き肉を愉しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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