普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第2話 運命に出会う夜

 あり得ないことが起きている。俺は誰もいない夜の町を必死に走っていた。

 

「OOOOOOOOOOOOOOOOOOWOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

「なんで犬っころがリードもつけないんだよ!!飼い主出てこい馬鹿野郎!!」

 

 俺の後ろを黒犬が涎を垂らしながら追いかけてくる。きっかけは予備校帰りに街の公園でなんか外国人のおっさんがふたりとヘンテコなコスプレしたお兄さんがふたりで喧嘩しているところを見ちゃったところからだ。俺が見ていることに気づいた二人が凄まじい形相で俺を睨み、なんか片方のブリテッュシュなスーツの男の影から犬が出てきて俺にくらいついてきたのだ。必死で今走って逃げてる。

 

「うおおおおおおおお!!!参考書バリアー!!」

 

 大きな口でくらいついてきた犬の口に参考書を投げ込んで躱して俺は走る。もうすこしだ!もう少しで助かる!!

 

「おまわりさーん!助けてぇ!!」

 

 俺は交番に駆け込む。そしてドアを思い切り閉めた。

 

「なんだ君は?!いったどうしたんだ!?」

 

「助けて助けて!犬に追い掛け回されてるんだよ!なんかやばい!!」

 

「犬?日本に野良犬なんて……うわぁ?!」

 

 お巡りさんがドアの窓から外を見ると犬がいっぱい交番の周りを囲んでいた。

 

「なんだこれ?!やばい!すぐに応援を呼ぶ!君は奥の部屋に!!」

 

「すみません!ありがとう!!」

 

 俺はすぐにお巡りさんの言う通りに奥の部屋に逃げる。お巡りさんはピストルと盾を持って窓の外を睨んでいた。その時だ。右手の甲に痛みが走った。

 

「いって?!噛まれた?!いや。そんなはずは?なんだこれ?」

 

 手の甲になんか変な痣が出来ていた。それは綺麗な紋章を象っている。ていうか入れ墨そのものっぽい。なにこれ?この日本で入れ墨入れるようなロックな人生送ってるつもりはないんだけど?

 

「うぁあああ!!」

 

 ドアが割られて犬たちが交番の中に入ってきた。俺は近くにあった椅子を手に取って犬に向かって振り回す。

 

「くそ!くそ!なんなんだよ!」

 

「すまない!頑張ってくれ!すぐに応援が来るから!!」

 

 お巡りさんと二人で犬を相手に喧嘩している時だった。突然、足元になんか異世界転生漫画で見たような魔方陣が浮かんだ。

 

「はぁ?!え?なになに?!異世界転生?!」

 

 そんなばかなことあってたまるか!俺には受験が控えているんだ!理想の大学デビューのために今日まで必死に勉強してきた!志望校の東大文一のB判定なのだ!ここで異世界転生なんて御免被る!とおもったのだが、魔方陣から沸き上がった光が人の形になる。そして光が解けたと思ったらそこにメカニカルなスーツを着た女の子が一人立っていた。

 

「意味不明なんですけどぉ……ええ……」

 

「召喚に従いライダーとして現世にやってきた。問おう。お前がワタシのマスターか?」

 

 銀髪に赤い瞳、抜けるように白い肌の美しい少女は俺を見詰めてそう言った。なお犬が足に噛みついてるのがなんか間抜け。俺はすぐに椅子を振るって少女の足から犬っころを吹っ飛ばす。

 

「いいからお前もなんか持って!犬を追っ払ってくれ!!応援が来るまでの辛抱だ!!」

 

「それが命令か?わかった。魔獣を排除する」

 

 そう言うとライダーとか名乗った銀髪の女は犬を殴ったりけったりした。すると一発で犬は粉々に飛び散ってすごくぐろい。そして交番の中の犬を全部排除し終わると、すぐに外に出ていった。

 

「多いな。騎乗!来い!我が愛馬!!」

 

 するとライダーなる少女の後ろが陽炎のように歪み、メカニカルな形をした白い馬のロボットが現れた。そしてその馬は嘶き、なぜか分解してバラバラのパーツになった。そして少女のメカニカルな全身タイツの上からそれらは装着されていき、よく通販サイトで売ってそうなメカニカルな鎧フィギュアのような姿になった。インフィニットストラトスかな?うん?そして少女の右手に光のオーラが集まってそれを横薙ぎで振るった。

 

「「「「「「OOOOOOOOOOOWOOooooooo...」」」」」」

 

 犬たちはその光に飲み込まれて全部蒸発した。ついでにアスファルトもなんか焦げてた。弁償大変そう。でも緊急避難?だよな?うーん?

 

「マスター。敵は排除した」

 

「あ、はい。マスター?俺のこと?」

 

「お前がワタシを召喚しただろう」

 

「したつもりないんだけど。ていうか召喚?何それラノベの話?その恰好コスプレ?」

 

「だがパスは通ってるし令呪もある。お前がマスターだ」

 

「あ、話が通じてねえ。おまわりさーん!とりあえず犬消えましたけど!どうします!」

 

 お巡りさんはぜはぁぜはぁしていた。必死に俺を守ってくれたもんな。

 

「お巡りさん、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

「いや。かまわないさ。市民を守るのが俺の仕事だからな!」

 

「お巡りさん!ありがとう!」

 

「ところでその少女は?明らかに危険人物のようだけど……」

 

「知り合いじゃないです。関係ないです。知らない人です」

 

「だが君のことを知っているようだが?」

 

「俺は知りません」

 

「まあ応援来るからしばらく待っててくれ」

 

「はい」

 

 そしてしばらくしてパトカーがいっぱい来て、現場検証が始まった。俺も手当というか救命士さんに見てもらったけど特にけがはない。

 

「ちょっといいかな?君の名前は?」

 

「あ、はい。佐藤三郎です。高校生です」

 

 いかめしい黒いスーツにサングラスの男の人が話しかけてきた。警官ぽく見えない。でも周りは気にしてないから、警察関係者なんだろうけど。

 

「聖杯戦争の関係者だな?神秘の隠匿を考えてくれ。今回は我々が処理するが、このように表の世界に神秘の漏洩のような措置を取るのはやめてくれ」

 

「はい?聖杯戦争?」

 

「周りの記憶は消しておく。いいな。戦争は夜にやって表の世界に漏らすな。いいな?」

 

 それだけ言って男は去っていった。

 

「お巡りさん。おれどうすればいいんですか?」

 

「なんかさっき上からお達しがあったよ。君はすぐに家に帰れとのことだ」

 

「ええ。調書とか書いてくださいよ。変なおっさんの喧嘩に巻き込まれてこうなったんですよ。間違いなく犯罪に巻き込まれてるんですけど!」

 

「すまないけど、なんかそっちもやばい案件らしい。君はその子と帰って欲しいとのことだ」

 

「え?この子と帰れ?はぁ?!いや、この子知らないんですけど!」

 

「すまないけど、とりあえず今日は帰ってくれ。すまない。一警察官としては上には逆らえないんだ」

 

「そんなぁ……でもありがとう。助けてくれて」

 

「いや。こちらこそ助けてもらった。何かあったらまた来てくれ。警察としてはともかく個人としては助けるよ」

 

「はい。では失礼します」

 

 なんか結局帰されてしまった。俺はとぼとぼ道をあるく。後ろからライダーがついてくる。ライダーって人名かな?称号っぽい感じするけど?うーん。関わりたくない……。

 

「とりあえず君も家に帰ったら?」

 

「ワタシに家などない。ワタシは終末にこの世界を糾す粛清装置だ」

 

「週末?まだ月曜日なんだけどなぁ……」

 

 なんだろう。ハリウッド映画で宇宙人の事件に巻き込まれた警官みたいな気持ちになる。そして家に着く。

 

「あの。家に上げられないんだけど?」

 

「ワタシはお前のサーヴァントだが?」

 

「親にどう事情を説明しろっていうのさ。行くとこマジでないの?金とかないの?ていうかパスポートとか持ってないの?」

 

「パスポート?それはサーヴァントには必要ないだろう」

 

「めんどくさー。ああもう!わかったよ!ついてきて!」

 

 俺は家のすぐ近くの漫画喫茶にライダーを連れてきた。

 

「カップルシート」

 

「はい。かしこまりましたー!」

 

 そして通されたシートにライダーと一緒に入る。

 

「お前はとりあえずここで寝泊まりしろ。明日学校が終わったら事情聴くから大人しくしてろ。ああ、まあどっかいきたくなったら勝手に出てくれてもいいよ。お金は置いておくよ。今日は助けてくれてありがとう。助かったよ。ありがとうな」

 

 俺はテーブルの上になけなしの一万円札を二枚置いて、ライダーを置いてシートから出る。そして家に帰ってシャワーを浴びて眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、朝起きてシャワーを浴びても右手の入れ墨が消えなかった。

 

「こんなの中二病すぎだろ……包帯で隠す?それもダサい……デカいばんそうこうで……」

 

 デカいばんそうこうで入れ墨を隠して俺は学校に行った。クラスメイトの田中に話しかけられた。

 

「おう!なんか昨日中心街で爆発とか起きたらしいぞ!ってなにその右手?ケガしたのか?大丈夫か?」

 

「うん。まあね。てか爆発?なにそれ?」

 

「なんでもガスがどうとかってさ」

 

「ふーん。こわ。予備校に近くないとこだといいけどねぇ」

 

「まあな。そろそろ最後の模試だもんな。調子崩されても困るしなぁ」

 

 そして授業を受けて、体育は欠席した。手を怪我したふりしておかないといけないしな。俺は校舎の隅で参考書を読みながら勉強していた。その時女子の一人が俺に近づいてきた。あれ?おかしいなここは誰にも見られない場所なのに。

 

「あなた。その手……」

 

 体操服を着た黒髪ロングの綺麗な子が俺をひどく驚いた目で見降ろしていた。

 

「うん?ああ、気にしないで。ちょっとケガしただけだから」

 

「怪我?……セイバー」

 

 少女がそう言うと、突然少女の隣に大きな盾を持った美しいピンク髪の少女が現れた。赤いレオタードの上に鎧みたいなのが張り付いてるコスプレっぽい服装。でもコスプレと違って安っぽさはない。むしろなんか荘厳というか外連味はあった。

 

「コスプレ魔法少女でも流行ってるの?」

 

「やっぱりあなたもサーヴァントを召喚したのね。まさか同じ学校に私以外のマスターがいるなんて思わなかったわ……まだ昼だし戦う気はないけど……あなたはどうなのかしら?」

 

「戦う?何言ってんの?俺君の名前も知らないんだけど?なんで戦う必要があるのさ?なんなのまじで?新手のいじめ?」

 

 黒髪ロングの少女は俺を青い瞳で睨んでいる。だけどふっと目から力を抜いて俯く。

 

「あなたもしかして魔術師じゃないの?」

 

「漫画の話?ラノベの話?俺はラブコメしか読まないから中二病は趣味じゃないんだけど」

 

「その反応……本気で何も知らない?」

 

「だから何言ってんだよ。昨日のライダーとかいう女といい、君たちはなんかコスプレイベントでもしてるのか?俺は受験生なんだぞ。遊びに巻き込むなよ!」

 

「遊びじゃないわ。はぁ。噓でしょ。マスターにど素人が紛れ込んだ?」

 

「マスター。この少年は何も知らないし、聖杯戦争が何なのかも理解してないようですね。どうしますか?いずれは戦わざるを得ないと思いますが、積極的に敵対する必要もないと思います。巻き込まれたならただの事故です。無辜の民草相手に戦争するのは騎士としてはできかねます」

 

「私だってそんなのしたくないわ」

 

「あのさ。勝手に話進めないくれないかな?」

 

 女子二人はなんか勝手に納得しちゃったっぽい。けど俺は納得してない。

 

「何が起きてるの?俺は何に巻き込まれたの?」

 

「あなたが巻き込まれたのは聖杯戦争」

 

「なにそれ?インディージョーンズ?」

 

「確かにあれも聖杯だけど!そうじゃないから!!あーもう!放課後暇でしょ!?」

 

「予備校があるから暇じゃない」

 

「暇にしなさい!あなたを監督役のところに連れて行くわ!そこでちゃんと説明してあげる!!いいわね!わかった!?」

 

「ええ?勝手に決めないでくれよ!」

 

 だけど俺の抗議は届かない。黒髪の少女の顔はおっかなかった。

 

「放課後校門のところで待ってるから逃げないでよ!!」

 

 そしてセイバーが消えて、少女は去っていった。

 

「結局名前も知らないんだが……はぁ。なんなのもう……さぼりたくねぇ……」

 

 模試も近いのに、予備校休むとかないよ。だけど断れない空気だし、なんかにまきこまれてしまったのもたしかだ。俺は空を仰いでため息を吐いた。




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