普通すぎる男が聖杯戦争を壊すまで   作:笑嘲嗤

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第25話 それは神話よりも遥か彼方の意思

 砂浜に爆発の風が吹き荒れる。そして爆発の煙が消えて中からバーサーカーが出てくる。

 

「信じられない?!まだ生きてるの?!」

 

「いや。もう終わりだよ」

 

 バーサーカーの姿が半透明になりかかってる。どうやら倒せたらしい。不思議なことにバーサーカーはさっきまでと違ってとても穏やかな顔をしていた。

 

「マスター、召喚してくれてありがとう。私の願いは今叶った……」

 

 穏やかな笑みをラピスさんに向けてバーサーカーは言った。そして彼は海の方を優し気に見詰める。

 

「ああ、あの日還りたかった海によく似ている……私は……還りたかったんだ。海へ……」

 

 バーサーカーはゆっくりと海へと歩いていく。

 

「私は神々の悪戯によって生まれた剣という名の兵器だった。ナルトたちのように自由ではなくただただ戦うためだけにこの身は生まれた……」

 

 その声にはどこか寂しい色が混ざっていた。

 

「外宇宙より来る脅威セファールを斃すために私は聖剣を持ってあの神に挑んだ。そして倒してしまった。神々の思惑通りに……だが待っていたのは称賛ではなく排除だった。ナルトたちも神々も呪いと闘争によって私をこの世から殺そうとした。だが誰も私は倒せなかった。私は剣そのもの。誰も打ち砕くことはできなかった。私は聖剣を海に還して倒れた。私は兵器ではなく人として死にたかった……それが今叶ったよ。ありがとう。三郎君……」

 

 バーサーカーは波打ち際に立つ。寄せては帰す波に腰までつかってただただ彼は世界を見詰めていた。

 

「ああ……やっと海に還れる……美しいなぁ……」

 

 そしてバーサーカーは消えた。その場には剥き身の剣だけが突き刺さって残った。俺はその剣を抜く。

 

「さようならバーサーカー」

 

 そして九十九達の下へと戻ってきた。セイバーとライダーがラピスさんを連れてきた。

 

「どうしてなんだ。僕は神代を学んだ!神秘の限りを尽くしたはずだ!なのに君は!どうしてそんな石ころ一つであの大英雄を倒せたんだ?!」

 

「神秘を俺は否定してないですよ。神秘はより古いものが勝つんでしょ。この石はね、330万年前の猿人が作った石器です」

 

「はぁ?330万年……神代よりもはるか前の……道具……?」

 

「そういうことです。そんな大昔に生き残るために人の祖先か、まあ滅びた別の系統樹かは知らないけどそんな連中が作ったものです。思い入れが違うんですよ。神話よりも伝説よりもただただ生きることに真摯な時代です。強いに決まってる」

 

 まあ俺は神秘が古いものが強いっていうルールからこの石器を博物館から借りてきたわけだ。

 

「そんなぁ……神代こそ至高だと思っていた……人よりも前の人にならざる存在の作ったものの方がはるかに……神秘だったというのか……」

 

「ラピスさんって人が知りたいから神代を研究してるんですよね?」

 

「まあそうだが」

 

「なら大学行ったらいいんじゃないですか?考古学とか遺伝学とかの発展はすさまじいですよ。神々のいた時代よりも前のヒトの歴史は歴史書には書いてないけど土の下には確かに残ってる。それって神秘じゃないですか?」

 

 俺がそう言うとラピスさんが俺をまん丸な目で見詰めている。

 

「人の歴史は……神代からではないということなのか……あはは!そうか!そうだったのか!あはは!あはははははははは!!」

 

 ラピスさんは砂浜に横たわって笑う。それは負けた人とは思えないほど無邪気なものだった。

 

「そうか。まだこの世界にはいくらでも神秘があったんだな。……彷徨海は嫌いじゃない。だけど……そうか……この世界にはまだまだ僕が調べて知りたい神秘が沢山あったんだ……ありがとう。三郎君……僕は神秘の夢に囚われ過ぎていたんだね」

 

 まあなんか納得してくれたみたいだし。よかった。しかし。

 

「ううぅ!寒い寒い寒い!!セイバー寒くないの?!なんでそんな際どいエッチな水着で平気な顔してるのさ!!寒い寒い寒い!!」

 

 俺は九十九に預かってもらってたリュックからタオルを取り出して体を拭く。もう一つのタオルもセイバーに渡しておいた。

 

「まったく。やせ我慢ねぇ。ヒート」

 

 九十九が指を弾くとなんか体の周りが暖かくなった。あと海水の不快な感触が消える。体が綺麗になってる。水着もなんか一瞬で乾いた。

 

「なにこれすげぇ?!これが魔術?!……天才か?」

 

「この程度は何処の魔術師もできるわよ……はぁ。本当に普通のやつよねあなたは」

 

 セイバーは体を拭き終わるとすぐにいつもの鎧姿に変わった。俺も体が綺麗になったのでリュックから学ランを取り出して着替える。

 

「じゃあラピスさんは俺たちと教会に行きましょう」

 

「わかった。助かるよ」

 

 ラピスさんはすっきりとした顔をしている。そして俺たちが砂浜を出ようとした瞬間だった。

 

『油断は禁物だよ。だってこれは戦争なんだからね』

 

 ランサーの声がしたと思ったら。俺の足元が影に覆われて、俺はそのままするっと落ちていった。

 

「ああ?うああああぁあああああああああ!!」

 

「佐藤君?!」「佐藤さん?!」「マスターぁあああああああああ!!?」

 

 そして俺は奈落の底へと落ちていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちてすぐにどこかの通路にいることは分かった。石造りの世界史の資料で見たような神殿のような王宮のような感じ。

 

「なんだここは?」

 

 おれはすぐにスマホを取り出して九十九達に連絡しようと思った。だけど電話は通じないLINEもなんかメッセージが送れない。

 

「ジャミングにしては機械的っていうか……魔術的な妨害ってやつなのかな?」

 

 だけどここでぼーっとしてても仕方がない。俺は通路を歩く。ランサーが俺をここに閉じ込めたのは間違いない。だけどなんだろうこれ?しばらく歩くと十字路に出た。とりあえず右に行ってみる。そんでしばらく歩くと。

 

「■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!SATOOOOOO!!■■■ーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 通路の先に俺の名を呼ぶ何かがいた。松明の明かりに照らされるそれは。牛の頭をしたムキムキマッチョなデカい男。回れ右!!

 

「ざけんなぁぁあああああああああああああ!!なんだよこれぉ!?」

 

 バーサーカー倒し終わった瞬間にこれかよ!だからランサーは油断ならないって思ったんだ!!あいつ戦争してやがる!!俺はダッシュで逃げる。牡牛の怪物に追い掛け回されながら。




本作ではセファールを倒した聖剣使いはバトラズってことにしてみました。
エクスカリバーとセファール倒した聖剣の関連が神話では匂わされてるし、該当するとしたらバトラズだと思います。


ランサー、お前、ほんと勝ちに来てるなあ。
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